素晴らしきかな魂アイテム
【魂レビュー】凶悪なまでの再現度! 禍々しさ全開の「S.H.Figuarts ウルトラマンベリアル」
2019年5月8日 12:00
【ライター:遠藤浩之】
レトロゲー、格ゲー、自分ツッコミくまが大好物なライター。最近定期的に「MARVEL」や「SNK」のポップアップストアが出展されているが、そのたびに物欲ノーブレーキングでグッズを買い込んでしまうこの頃。写真は去年取材で行ったウルフェスの展示物。人だかりがものすごく、ベリアルの人気の高さを再確認した。(絵:橘 梓乃)
同じ特撮ヒーロー作品でも「ウルトラマン」と「仮面ライダー」で大きく違うのは、敵キャラクターのインパクトや存在感だ。「仮面ライダー」にもアポロガイストやシャドームーン、ン・ダグバ・ゼバといった記憶に残る敵キャラクターもいるにはいるが、ほとんどの敵は放送から1年も経ったら思い出せない――というのは筆者だけではないはずだ。
しかし「ウルトラマン」に登場する怪獣や宇宙人はとにかく存在感が強い。ジャミラやメトロン星人。そして第7回の魂レビューでも紹介されたツインテールなど、一目見たら忘れられないような強烈なインパクトのある敵ばかりだ。それゆえに敵キャラクターの人気も高く、近年では敵キャラオンリーのイベントなんかも開催されている。
平成に入ってもイーヴィルティガやジャグラスジャグラーなどのさまざまな人気の敵キャラが誕生してきたが、その中でも圧倒的な人気を誇るのがウルトラマンベリアルだ。初めて登場したのはウルトラマンシリーズの番外編「ウルトラギャラクシー大怪獣バトル」の映画版である。記号的に一目で悪のウルトラマンと分かるデザイン。闇堕ちしたウルトラ戦士というかつてない設定に、筆者は1発で夢中になった。
そんな悪のカリスマ的存在のベリアルが原作のイメージを忠実に立体化されたのだ。今回は4月に発売されたファン待望の「S.H.Figuarts ウルトラマンベリアル」の魅力を紹介していきたい。
残虐、卑劣。突き抜けた悪の生き様が魅力のベリアル
特徴的な吊り上がった目。赤と黒を基調とした禍々しい印象のウルトラマンベリアルだが、かつてはウルトラの星を守る光の戦士で、姿も初代ウルトラマンのような見た目であった。
ウルトラの父の戦友であり、共にウルトラ大戦争と呼ばれる大きな戦いにも参加していた。しかし、ウルトラの父が宇宙警備隊隊長に任命されたことをきっかけにベリアルは妬み、力を求めるようになった。そして、ウルトラマンの力の源であるプラズマスパークを狙い強大な力を手に入れようとするが、強すぎる光のエネルギーに耐え切れず失敗に終わってしまう。このことがバレたベリアルは光の国を追放されることとなったのだ。
その後ベリアルは宇宙の果てで出会ったレイブラッド星人から闇の力を与えられ、光の国への復讐を誓う邪悪なウルトラマンベリアルへと変貌したのだ。絶対的な正義の存在であるウルトラマンでありながら、妬み嫉みといった人間臭い感情を持っているのがいい味を出していて、個人的にはたまらなく好きなキャラクターだ。
映画冒頭では、ベリアルは宇宙牢獄に投獄されている。悪の力を手にした後、100体の怪獣を操ることができる武器・ギガバトルナイザーを手に光の国壊滅を図るも、ウルトラマンキングに阻止され身柄を拘束されていたのだ。正直ここまでは良い所なしなのだが、ベリアルの力を利用して宇宙の支配を企むザラブ星人が、宇宙牢獄からベリアルを解放するシーンにはシビれた。解放したベリアルにギガバトルナイザーを渡した瞬間、ザラブ星人に強烈な1撃を食らわせて命を奪ってしまうのだ。ベリアルの凶暴さと残忍さを視聴者側に強く印象付けた場面だ。
そして再びプラズマスパークを手に入れるため光の国を襲うシーンでは、束となったウルトラ戦士たちをたった1人で蹴散らすという圧倒的な強さを見せつける。女性のウルトラ戦士を盾にして光線から身を守ったりするなどの卑劣な戦い方をする場面もあり、ベリアルの徹底した悪役っぷりがたまらない。
同じ作品で初登場となったウルトラマンゼロとの因縁もここから始まった。ゼロとの戦いの結果、ベリアルは敗れてしまうのだが、その後幾度となく復活し、姿を変えてはゼロの前に立ちはだかる。少し前に放送されていたベリアルの息子が主人公の「ウルトラマンジード」では、ゼロとジードが手を組み、ベリアルと戦うという熱い展開も見られた。
ベリアルの傍若無人な様をまだ見たことがない人には、初登場の「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE」と、その続編にあたる「ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国」はぜひ見てもらいたい。この2本を見たら、ベリアルが持つ悪の魅力にハマるはずだ。
邪悪な雰囲気が滲み出る、本物のベリアルを再現
「S.H.Figuarts ウルトラマンベリアル」の1番の売りはなんといってもキャラクターを忠実に再現したクオリティの高い造形だ。番組の撮影で使用される本物の小道具やキャラクタースーツを手がける円谷の造形部門「LSS」の協力を得て作られただけに、限りなく“本物”に近いクオリティに仕上がっている。
本物感をコンセプトにしながらもスーツそのままの造形をただ150mmというサイズに縮小しただけではない。縮小した際に起こるメリハリが足らない箇所には、キャラクターの特徴が活きるように“良い意味での誇張”が施されているのがポイントなのだ。
これまで発売されてきた、他のS.H.Figuartsウルトラマンと大きく違うのが、筋骨隆々のマッシブな体つきだ。首から上半身にかけてのシルエットが逞しく、筋肉も腹筋から胸筋までリアルに造形されている。見るからに“コイツは絶対強い”という雰囲気がヒシヒシと伝わってくる出来栄えだ。以前に発売されたULTRA-ACTのウルトラマンベリアルは少しシャープなプロポーションだったが、今回のS.H.Figuartsでは原作さながらのボリューム感があり、まさにファンが待ち望んでいた形を実現している。
フィギュアの命ともいえる顔の造形も文句のつけどころのない仕上がりである。嘲笑っているような切れ長の目にはクリアパーツを使用。オレンジのグラデーション塗装がギラつく炎のような瞳の輝きを見事に表現している。大きくは開かないが口の開閉ギミックもあり。これぞベリアル! といえる劇中で見せる邪悪な笑みを再現できるのも満足度が高い。
本商品には、ベリアルを象徴する武器「バトルギガナイザー」ももちろん付いている。劇中ではグリップが自在に伸縮するのだが、それを再現するために長い状態のものと短い状態のグリップ差し替えパーツがしっかりと用意されている。他にも、ギガバトルナイザーを握る手と、光線のポーズがとれる開いた手の交換用手首パーツが付属。以上がすべての付属品となっており、本音をいえば若干少なめではある。これで攻撃や光線のエフェクトパーツがあれば言うことなしであった。
いよいよ肝心な触ってみての感触だが、さすがは安定のS.H.Figuarts。ポーズを取らせるのが楽しくなるほど可動域が半端じゃなく広い。特に股関節の可動がかなり自由が利くので、劇中で見た動的でダイナミックなアクションを難なく再現できることに感動した。ギガバトルナイザーを豪快にぶん回すポージングやデスシウム光線の構え、そして格闘戦の動きがとにかくカッコよく決まるのが最高だ。
動かしていて不満点がまったく無く楽しめるのが素晴らしい。筆者が感心したポイントは、ベリアルの背中と腰には背ビレが付いているのだが、体を後ろに思い切り反らせても背ビレ同士がギリギリ干渉しないよう作られていたところだ。細かな部分までも配慮している設計にはお見事の一言。
ウルトラマンベリアルはこれまでにも何度も立体化されてきたが、今回のS.H.Figuarts ウルトラマンベリアルは過去最高のクオリティといっても過言ではない。造形からアクションの幅まで完成度が非常に高かった。現在品薄になっているが、「S.H.Figuarts ウルトラマンゼロ」と合わせて並べておきたいアイテムだ。
(C)円谷プロ