素晴らしきかな魂アイテム

【魂レビュー】バイストン・ウェル上空を飛び交うギブン家の翼が、新たな仕様となって再登場! 「ROBOT魂<SIDE AB>フォウ&スカイステージセット」

題字:浅野雅世
【第30回魂アイテム】
「ROBOT魂<SIDE AB>フォウ&スカイステージセット」。1月18日発送、プレミアムバンダイ専売アイテム。価格は14,040円(税込)。フォウは「聖戦士ダンバイン」に登場するギブン家のウイング・キャリバーで。今回のアイテムは2013年に同じくプレミアムバンダイにて販売された「ROBOT魂<SIDE AB>フォウ」に一部仕様変更を加えたリニューアル版となる

【ライター:稲元徹也】

ゲーム及びホビーを主軸に執筆するフリーライター。「聖戦士ダンバイン」のメカデザイナー宮武一貴氏による昆虫をモチーフとしたメカデザインは、このフォウやダーナ・オシーなどに強く表れている。「ROBOT魂<SIDE AB>ダーナ・オシー」(プレミアムバンダイ専売)も、逆関節のヒジなど特徴的な意匠を忠実に再現。この製品でダーナ・オシーへの印象が変わった人も多いのでは!?(絵:橘 梓乃)

 BANDAI SPIRITSのプレミアムバンダイにて販売された「ROBOT魂<SIDE AB>フォウ&スカイステージセット」が、1月18日に発売となった。「聖戦士ダンバイン」に登場のオーラバトラーなどをラインナップする「ROBOT魂<SIDE AB>」において、「ウイング・キャリバー」と呼ばれる、オーラバトラーを支援するオーラマシンがリリースとなった。

 実はこの製品、2013年に「ROBOT魂<SIDE AB>フォウ」として、同じくプレミアムバンダイにて発売された製品のリデコレーション版であり、一部の仕様変更や付属品などを加えて再発売されることとなったものだ。ラインナップとしてかなり充実てしてきたROBOT魂<SIDE AB>シリーズとの連動をさらに強めたこの製品の魂レビューをお届けしていきたい。


宮武一貴氏による、昆虫をモチーフとしたオーラマシンを象徴するシルエットを再現

 1970年代後半から1980年代にかけて、毎週土曜17時30分に放映され主に小中学生の男子を夢中にさせた、サンライズ(当時は日本サンライズ)制作のロボットアニメ群において、1983~1984年放映の「聖戦士ダンバイン」は、異彩を放つ存在であった。

 異世界「バイストン・ウェル」に、戦いのために召喚された地上人(ちじょうびと)達と、それを取り巻くコモン(バイストン・ウェル人)の姿を描いた本作は、当時まだあまり一般的ではなかった中世ファンタジーの世界観を全面に押し出していた。さらに企画の段階からメカデザイナーに宮武一貴氏を迎え、それまでのアニメに登場したロボット達とは一線を画す、昆虫をモチーフとした「オーラマシン」と呼ばれるメカが登場する。

 そのメインとなるメカがダンバインをはじめとした「オーラバトラー」である。当時中学生になったばかりの筆者は、前年夢中になった「戦闘メカザブングル」とは真逆の曲線を主体とした流麗なシルエットと、虫の翅を思わせるオーラコンバーターや翼のデザインには心惹かれた。

「ROBOT魂<SIDE AB>フォウ&スカイステージセット」パッケージ。本体サイズに合わせかなり大きい
ブリスターはフォウ本体と付属品、そしてディスプレイ台のスカイステージの2段となる

 当然、それらの立体化にも大きな期待をしていたわけだが、曲線的なデザインを当時の各社の技術力で再現するのはかなり苦労があったようで、特にバンダイが最初に発売した1/72のダンバインのプラモデルなどはその完成度に難があり、発売早々に改修され、初版がコレクターズアイテムになるなんていうこともあった。

 当然ながらオーラバトラー以外のオーラマシンが発売さるなどということもなく、このフォウのROBOT魂<SIDE AB>での発売は、筆者を含むファンにとってはちょっとしたサプライズでもあった。

 ウイング・キャリバーはオーラバトラーの長距離移動や先頭を支援する戦闘機である。フォウはギブン家が独自に開発した機体で、機体後部はコンテナスペースとなっていて、オーラバトラー搭載時はこの部分が折れ曲がり、中に下半身を収納した形で飛行する。翼に4門の機銃と6発のミサイル、尾部に回転式の機関砲を2門装備。

 他のウイング・キャリバーと比較すると、かなりの重武装であり、第2話でマーベル・フローズンの駆るダーナ・オシーとともに、アの国のドレイク・ルフトに召喚されたショウ・ザマらのダンバインと戦闘を繰り広げるシーンが見られる。後のエピソードでは、主にキーン・キッスが駆る機体として描かれていた。デザインはもちろん宮武氏で、複眼のようなコクピットは昆虫そのもの。機体中心で折れ曲がる構造は、ハチが針を刺すときのポーズをモチーフとしているそうだ。

パッケージから出した状態の本体とパーツ
翼はROBOT魂<SIDE AB>のオーラバトラーと同様のボールジョイントで接続
6発のミサイルはウイング部が可動する
劇中同様、本体下部にシュットを収納できる

 製品はそんなフォウの特徴的な機体を忠実に再現。スケールはROBOT魂<SIDE AB>のスケールに合わせていて、全長約20cmとかなり大きく、ボリュームがある。特徴的な翅は、これまで発売されたオーラバトラーと同様にクリアパーツで根元はボールジョイントで角度を付けられる設計。尾部の銃座やカギ爪、ハッチやキャノピー、ミサイルのウイング部などが可動する。また2013年に発売されたものは、機種の連なったV字のエンブレムが黄色だったが、今回は番組中盤以降に登場した赤いエンブレムになっている。

フォウの本体。宮武氏が本作で強く意識した昆虫のデザインが色濃く出ている機体だ
インテークやミサイル、着陸脚風に畳まれたカギ爪など、下面は戦闘機然としたデザインだ
後部の銃座は、通常時は後ろを向いている。もちろんこの部分も可動する

 本体は外観だけでなく、コクピット周りも設定に忠実に再現していて、内部にはキーンとマーベルの2人のフィギュアを設置。機体下部にはグライ・ウイングのシュットを収納していて、それに乗り込むための床のハッチ開閉ギミックなども用意されたこだわりの設計で、それを楽しむためにコクピット上部が丸ごと外れて中身が見えるようになっているのも嬉しい仕様だ。

コクピット上部のハッチと左右のキャノピーは開閉し、中を覗ける
コクピットは天井部分が丸ごと外れる。中には操縦桿を握ったキーンとマーベルが
取り外したコクピットの前面には、モニターなどメカのディテールがほどこされている
後部座席は折りたたみ可能。またシュットにアクセスするためのハッチが開閉
ダンバインのオーラショットを装備した付属のパーツを取り付けて劇中を再現できる
シュットが飛行形態になるときは、上部はパーツ差し替え、翼と垂直翼は可動して変形する
ニーのフィギュアが乗ったシュット。ボールジョイントが仕込まれた専用の支柱が付属

 ダンバインとのドッキングは、下半身をまるごと収納するために、製品独自のギミックが用意された。引き出してから折り曲げた機体後部は左右に大きく開閉してダンバインの下半身を収納。それを閉じるとドッキングが完成する。設定にはないギミックながら、合体変形のプロセスを体感できる仕様はなかなか面白いものだった。

 開発スタッフは、宮武氏によるダンバインとのドッキング時の正面から見たフォウを描いた設定画を目標に設計を行なったことを、公式サイトにてコメント。さらに「フォウのコクピットとダンバインのコクピットが繋がり、ショウとフォウのパイロットが会話する」というシーンを再現するために、ダンバイン専用のコクピットパーツとショウ・ザマのフィギュアを同梱するなど、シチュエーションを楽しませることへの強いこだわりが感じられた。

ダンバインとのドッキング。機体後部を後方へと伸ばし、付け根のカバーパーツをスライド
後部を折り曲げてから、付け根部分を左右に割るように開く
付属するダンバイン用のコクピットは、若干先が細い。右はショウ・ザマのフィギュア
ダンバインはコクピットを開いて、付属のコクピットパーツを差し替えておく
中央のパーツをまたぐようにしてダンバインを乗せる
爪で支柱を挟むようにして、中央にあるダボを足裏の穴に差し込む
開いた後部を閉じるとダンバインの下半身が完全に収まる
折りたたまれていたカギ爪を前方へと向ける。上下どちらも可動する
ドッキング形態の完成。かなり重量があるので支柱が傾くようならネジを締めよう
バックショットはダンバインのオーラコンバーターが後方に位置し、独自のシルエット
開発スタッフがこだわったという、ドッキング時の正面の姿がこちら
この状態でコクピットを取り外すと、ダンバインのコクピットが繋がっているのがわかる
ダンバインを機体の上に載せるためのパーツは、足の裏の穴に差し込む
オープニングなどでも見られた、機体の上に乗った状態も再現できる


プレイバリューが大きく広がった、新規付属アイテムの数々

 かなりのこだわりのもとに設計された本体の仕様は、カラーリング以外は以前発売された過去の製品と変わりないが、発売かられから6年の歳月が経過し、ROBOT魂<SIDE AB>シリーズのラインナップが充実したということもあり、それらを絡めたプレイバリューを広げる付属品が充実している。

 商品名にもある「スカイステージ」は、空をイメージしたスカイブルーのクリア仕様で、このフォウだけでなく、他のオーラバトラーなどを一緒にディスプレイできる大型のものだ。ダンバインをドッキングさせたフォウ本体はかなり重量があるため、それを支えるための支柱は根元の接続部がかなり大きな長方形のブロック状に設計されているわけだが、これを差し込むためのスリットが3カ所用意され、他の製品をディスプレイするスペースを確保できるようになっている。

左右2分割されたスカイステージの台座。作品の英語ロゴがプリントされている
長さの違う2種類(写真上)の支柱と、共通して使う根元のパーツ(写真下)
支柱や台座の向きなどを変えてスペースを作れば他の機体も一緒に飾れる

 劇中でダンバイン以外のオーラバトラーを搭載するシチュエーションがあり、これまでROBOT魂<SIDE AB>で発売されたボチューン、ボゾンとのドッキングも可能だ。なおフォウの構造はダンバインに合わせているため、ドッキング時はボチューンは一部パーツの取り外しと専用パーツ(ボチューンに付属)、ボゾンは下半身丸ごとの取り外しと専用パーツ(このフォウに付属)が必要となる。

 また第22話では、リムル・ルフトが駆るダーナ・オシーを座らせて搭載するシーンがあり、それを再現するためのパーツも付属するなど、ROBOT魂<SIDE AB>のシリーズを複数持っているほど楽しめる仕様だ。

ダーナ・オシーを乗せるためのパーツ。この他、ボゾンのドッキング用パーツも付属する
22話のほんの短い間シーンを再現。ダーナ・オシーの関節の角度調整がかなり難しかった

 またこの製品のために新規造形されたオーラマシン「ピクシー」の存在も見逃せない。移動や輸送などに使われるこのマシンは、オーラバトラーよりもさらに小さく、スケールも設定に合わせて約4cmほどの小さなフィギュアとして作られている。

 特徴的な3本の脚はわずかながら前後に稼働するのでちょっとしたポーズを付けられ、さらに付属のショウのフィギュアも載せられる。眼のような部分を塗装で再現するなど、フィギュアとしての完成度も高く、複数欲しくなってしまったほどだ。

世界で初めて作られたとされるオーラマシンのピクシー
オーラバトラーの中でもかなり小さいダンバインと並べるとこのぐらいのサイズに
付属のショウのフィギュアを乗せられる。専用のスタンドも付属

 ROBOT魂<SIDE AB>のシリーズは、本編となるTV版「聖戦士ダンバイン」のオーラバトラーに限らず、このフォウの2度に渡る発売や、OVAや雑誌連載のイラストからの立体化など、同じカテゴリ製品の中でもかなり充実している印象がある。本編で未発売のオーラバトラーで残るのはゲドとバストールのみであり、この2体はぜひとも発売していただき、シリーズを完走してもらえればと強く願っている。