素晴らしきかな魂アイテム
【魂レビュー】バイストン・ウェル上空を飛び交うギブン家の翼が、新たな仕様となって再登場! 「ROBOT魂<SIDE AB>フォウ&スカイステージセット」
2019年1月30日 12:00
【ライター:稲元徹也】
ゲーム及びホビーを主軸に執筆するフリーライター。「聖戦士ダンバイン」のメカデザイナー宮武一貴氏による昆虫をモチーフとしたメカデザインは、このフォウやダーナ・オシーなどに強く表れている。「ROBOT魂<SIDE AB>ダーナ・オシー」(プレミアムバンダイ専売)も、逆関節のヒジなど特徴的な意匠を忠実に再現。この製品でダーナ・オシーへの印象が変わった人も多いのでは!?(絵:橘 梓乃)
BANDAI SPIRITSのプレミアムバンダイにて販売された「ROBOT魂<SIDE AB>フォウ&スカイステージセット」が、1月18日に発売となった。「聖戦士ダンバイン」に登場のオーラバトラーなどをラインナップする「ROBOT魂<SIDE AB>」において、「ウイング・キャリバー」と呼ばれる、オーラバトラーを支援するオーラマシンがリリースとなった。
実はこの製品、2013年に「ROBOT魂<SIDE AB>フォウ」として、同じくプレミアムバンダイにて発売された製品のリデコレーション版であり、一部の仕様変更や付属品などを加えて再発売されることとなったものだ。ラインナップとしてかなり充実てしてきたROBOT魂<SIDE AB>シリーズとの連動をさらに強めたこの製品の魂レビューをお届けしていきたい。
宮武一貴氏による、昆虫をモチーフとしたオーラマシンを象徴するシルエットを再現
1970年代後半から1980年代にかけて、毎週土曜17時30分に放映され主に小中学生の男子を夢中にさせた、サンライズ(当時は日本サンライズ)制作のロボットアニメ群において、1983~1984年放映の「聖戦士ダンバイン」は、異彩を放つ存在であった。
異世界「バイストン・ウェル」に、戦いのために召喚された地上人(ちじょうびと)達と、それを取り巻くコモン(バイストン・ウェル人)の姿を描いた本作は、当時まだあまり一般的ではなかった中世ファンタジーの世界観を全面に押し出していた。さらに企画の段階からメカデザイナーに宮武一貴氏を迎え、それまでのアニメに登場したロボット達とは一線を画す、昆虫をモチーフとした「オーラマシン」と呼ばれるメカが登場する。
そのメインとなるメカがダンバインをはじめとした「オーラバトラー」である。当時中学生になったばかりの筆者は、前年夢中になった「戦闘メカザブングル」とは真逆の曲線を主体とした流麗なシルエットと、虫の翅を思わせるオーラコンバーターや翼のデザインには心惹かれた。
当然、それらの立体化にも大きな期待をしていたわけだが、曲線的なデザインを当時の各社の技術力で再現するのはかなり苦労があったようで、特にバンダイが最初に発売した1/72のダンバインのプラモデルなどはその完成度に難があり、発売早々に改修され、初版がコレクターズアイテムになるなんていうこともあった。
当然ながらオーラバトラー以外のオーラマシンが発売さるなどということもなく、このフォウのROBOT魂<SIDE AB>での発売は、筆者を含むファンにとってはちょっとしたサプライズでもあった。
ウイング・キャリバーはオーラバトラーの長距離移動や先頭を支援する戦闘機である。フォウはギブン家が独自に開発した機体で、機体後部はコンテナスペースとなっていて、オーラバトラー搭載時はこの部分が折れ曲がり、中に下半身を収納した形で飛行する。翼に4門の機銃と6発のミサイル、尾部に回転式の機関砲を2門装備。
他のウイング・キャリバーと比較すると、かなりの重武装であり、第2話でマーベル・フローズンの駆るダーナ・オシーとともに、アの国のドレイク・ルフトに召喚されたショウ・ザマらのダンバインと戦闘を繰り広げるシーンが見られる。後のエピソードでは、主にキーン・キッスが駆る機体として描かれていた。デザインはもちろん宮武氏で、複眼のようなコクピットは昆虫そのもの。機体中心で折れ曲がる構造は、ハチが針を刺すときのポーズをモチーフとしているそうだ。
製品はそんなフォウの特徴的な機体を忠実に再現。スケールはROBOT魂<SIDE AB>のスケールに合わせていて、全長約20cmとかなり大きく、ボリュームがある。特徴的な翅は、これまで発売されたオーラバトラーと同様にクリアパーツで根元はボールジョイントで角度を付けられる設計。尾部の銃座やカギ爪、ハッチやキャノピー、ミサイルのウイング部などが可動する。また2013年に発売されたものは、機種の連なったV字のエンブレムが黄色だったが、今回は番組中盤以降に登場した赤いエンブレムになっている。
本体は外観だけでなく、コクピット周りも設定に忠実に再現していて、内部にはキーンとマーベルの2人のフィギュアを設置。機体下部にはグライ・ウイングのシュットを収納していて、それに乗り込むための床のハッチ開閉ギミックなども用意されたこだわりの設計で、それを楽しむためにコクピット上部が丸ごと外れて中身が見えるようになっているのも嬉しい仕様だ。
ダンバインとのドッキングは、下半身をまるごと収納するために、製品独自のギミックが用意された。引き出してから折り曲げた機体後部は左右に大きく開閉してダンバインの下半身を収納。それを閉じるとドッキングが完成する。設定にはないギミックながら、合体変形のプロセスを体感できる仕様はなかなか面白いものだった。
開発スタッフは、宮武氏によるダンバインとのドッキング時の正面から見たフォウを描いた設定画を目標に設計を行なったことを、公式サイトにてコメント。さらに「フォウのコクピットとダンバインのコクピットが繋がり、ショウとフォウのパイロットが会話する」というシーンを再現するために、ダンバイン専用のコクピットパーツとショウ・ザマのフィギュアを同梱するなど、シチュエーションを楽しませることへの強いこだわりが感じられた。
プレイバリューが大きく広がった、新規付属アイテムの数々
かなりのこだわりのもとに設計された本体の仕様は、カラーリング以外は以前発売された過去の製品と変わりないが、発売かられから6年の歳月が経過し、ROBOT魂<SIDE AB>シリーズのラインナップが充実したということもあり、それらを絡めたプレイバリューを広げる付属品が充実している。
商品名にもある「スカイステージ」は、空をイメージしたスカイブルーのクリア仕様で、このフォウだけでなく、他のオーラバトラーなどを一緒にディスプレイできる大型のものだ。ダンバインをドッキングさせたフォウ本体はかなり重量があるため、それを支えるための支柱は根元の接続部がかなり大きな長方形のブロック状に設計されているわけだが、これを差し込むためのスリットが3カ所用意され、他の製品をディスプレイするスペースを確保できるようになっている。
劇中でダンバイン以外のオーラバトラーを搭載するシチュエーションがあり、これまでROBOT魂<SIDE AB>で発売されたボチューン、ボゾンとのドッキングも可能だ。なおフォウの構造はダンバインに合わせているため、ドッキング時はボチューンは一部パーツの取り外しと専用パーツ(ボチューンに付属)、ボゾンは下半身丸ごとの取り外しと専用パーツ(このフォウに付属)が必要となる。
また第22話では、リムル・ルフトが駆るダーナ・オシーを座らせて搭載するシーンがあり、それを再現するためのパーツも付属するなど、ROBOT魂<SIDE AB>のシリーズを複数持っているほど楽しめる仕様だ。
またこの製品のために新規造形されたオーラマシン「ピクシー」の存在も見逃せない。移動や輸送などに使われるこのマシンは、オーラバトラーよりもさらに小さく、スケールも設定に合わせて約4cmほどの小さなフィギュアとして作られている。
特徴的な3本の脚はわずかながら前後に稼働するのでちょっとしたポーズを付けられ、さらに付属のショウのフィギュアも載せられる。眼のような部分を塗装で再現するなど、フィギュアとしての完成度も高く、複数欲しくなってしまったほどだ。
ROBOT魂<SIDE AB>のシリーズは、本編となるTV版「聖戦士ダンバイン」のオーラバトラーに限らず、このフォウの2度に渡る発売や、OVAや雑誌連載のイラストからの立体化など、同じカテゴリ製品の中でもかなり充実している印象がある。本編で未発売のオーラバトラーで残るのはゲドとバストールのみであり、この2体はぜひとも発売していただき、シリーズを完走してもらえればと強く願っている。
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