素晴らしきかな魂アイテム
【魂レビュー】「HI-METAL R ブラッカリィ」、コミカルポーズも似合う、劇中最後のウォーカーマシンが商品化!
2018年8月14日 12:00
【ライター:稲元徹也】
ゲーム及びホビーを主軸に執筆するフリーのライター。購入する玩具は主にメカ系やゲーム系が中心。どちらかといえばメインストリームから外れたキャラクターが好み。「ザブングル」関連商品に関しては、当時売り上げ不振により後期メカのプラモデルが発売されなかったトラウマ的な体験により、新しく発売されるものはできる限り購入し、次に続くよう貢献してます。今回「超合金魂 戦闘メカ ザブングル」を自宅内で発見できなかったのが本当に残念。ブラッカリィの比較をしたかった……(絵:橘 梓乃)
この連載企画「素晴らしきかな魂アイテム」にて、最初の【魂レビュー】としてピックアップするのは、7月28日に発売された「HI-METAL R ブラッカリィ」だ。1982~83年にかけて放映された日本サンライズ(現:サンライズ)制作のアニメーション「戦闘メカ ザブングル」に登場したウォーカーマシンである。
「HI-METAL R」の「ザブングル」シリーズとしては3体目のアイテムとなるわけだが、BANDAI SPIRITSがブラッカリィを立体化するのは2005年に発売された「超合金魂 戦闘メカ ザブングル」に付属した半完成品モデル以来のこと。筆者も含め「ザブングル」ファンを驚かせたまさかの単独発売となったわけだが、実物を触ってみると、ウォーカーマシンのアクションフィギュアとして、これまでのシリーズ以上に完成度の高いものであった。
今回は筆者が自前で購入したこの「HI-METAL R ブラッカリィ」を、魂レビューとしてお届けしていきたい。
劇中最後に登場したウォーカーマシンを、全高185mmの大型サイズでフィギュア化
「戦闘メカ ザブングル」が放映された1982年は、筆者が小学校6年のときだ。「機動戦士ガンダム」の終了後、2年間復活したスーパーロボット路線(「無敵ロボ トライダーG7」と「最強ロボ ダイオージャ」)から再びリアルロボット路線へと移行する方向性が見られた作品だ。未来の荒廃した地球を舞台とした、ロボットが出てくる西部劇風のコメディは新鮮で、湖川友謙氏によるキャラクター達も魅力的だったが、何より筆者は、その世界で活躍するロボット、ウォーカーマシン(以下、WMと略)に心を惹かれた。
WMは戦いもするが、主な用途は採掘や運搬、移動であり、ロボットというよりは作業用重機のような印象が強い。ガソリンエンジンで動き、丸形ハンドルやレバーで操作するという設定も、その存在をより身近に感じさせたのだ。そんなウォーカーマシンを筆者が意識したのはアニメ本編ではなく、当時のバンダイが発行していた「模型情報」であり、アニメ版のデザインをスケールモデルのようにリファインした設計や、1/100と1/144のスケールによってコンセプトが異なるパッケージアートは、その魅力を増幅させた。
ただし、プラモデル自体の売上はあまり芳しくなかったようで、番組後期に登場したこのブラッカリィやドランはもちろん、ウォーカーギャリアの1/100スケール版さえ発売されず、悔しさに涙を呑んだファンは多い。バンダイからはその後、「R3」シリーズで1/100ウォーカーギャリアが発売され、そして「超合金魂」のザブングルとウォーカーギャリアにそれぞれ同スケールの半完成品キットとしてブラッカリィやドランが付属したという顛末は、当時を体験したファンの夢を叶える意味が込められていたのは間違いない。
さて本題となるこのブラッカリィは、ザブングルに酷似した頭部と、ウォーカーギャリアのようなローターを背中に持つ、劇中で最後に登場したWMだ。イノセント側ブレーカーのティンプ・シャローンの最後の機体として語られることが多いが、実はティンプが搭乗したのは最終話の数シーンのみであり、どちらかというと初登場した41話で、キッド・ホーラの部下ゲラバ・ゲラバが駆る機体のほうが活躍するシーンが多い。
このときは高い機動力とドランと同等の飛行能力が強調され、ウォーカーギャリアと対等に戦う様子を見せていたが、ドランのように大量生産はされなかったようで、劇中では3回しか登場しなかった。実はかなりマニアックな機体ではあるものの、全体の色味やデザインはザブングルよりも作品の世界観にマッチしていて、多くのファンが存在していたはずだ。
HI-METAL Rシリーズとしては、ザブングルに続いてガバメント(ティンプ機)が発売され、次はウォーカーギャリアか? と思わせたところに、このブラッカリィがラインナップされたことには驚かされたが、実物を触ってみるとその満足度は非常に高いものであった。
パッケージを開けてまず気付くのは、そのサイズと重量感だ。全高185mmとかなり大きく、劇中設定では大きいはずのザブングルよりも5mmほど大きい。またHI-METAL Rシリーズは関節など一部のパーツにダイキャストを使っていて、剛性を確保することに加えて重量感があるのが特徴だが、このブラッカリィもダイキャストパーツの使用量は多いようで、先に発売されたザブングルほどではないものの、手に持ったときに重みを感じられるのが、おもちゃとしての所有感を満たしてくれる。
ザブングルに似ているようで意外に相違点がある頭部は、アンテナをユーザーが取り付ける仕様となっている。このとき、実物の設定にはなかったものだが、頭部がまるごと開閉するように設計されていて、その中にシートがちゃんと作り込まれ塗装までされているのは、兵器ではなく乗り物としてのウォーカーマシンを強調したポイントなのであろう。
個人的には劇中では開いている(あるいは演出上、コクピット内が見える)ことの多かったキャノピーが開いた状態、もしくは塗装なしのクリアパーツで中身が見えるような選択ができればさらによかった気もする。
コミカルなポーズも自在な、ロボットフィギュアとしての完成度の高さを実感
「戦闘メカ ザブングル」というアニメは全体的にコミカルな演出のもとに進行したため、キャラクターだけでなく彼らが駆るWMもまたコミカルな動きをすることも多かった。
このブラッカリィは登場回数が少なかったため、そうした動きが見られるシーンは限られるが、ロボットフィギュアに求められるスタイリッシュなポーズにとどまらず、コミカルなポーズが取れるような広い可動範囲を持たせたことで、作品との親和性を高めている印象がある。実際に動かしていると、格好いいポーズよりもコミカルなポーズを付けたほうが、よりWMらしさを感じられた。
本体が大きく重量があることもあって、各関節はかなり固めに設計されている。股関節などは動かすときに音がするぐらいきつめだが、壊れるほどの手応えではないのでご安心のほど。またブラッカリィは飛行するシーンが多かったため、頭部は首とその下にある胴体上面も可動し、斜め45度ほど上を向けるようになっている。さらに胸部と腰部にもそれぞれ関節があるので、のけぞるようすることで、ほぼ真上を向けるため、飛行中のポーズを取るのも難しくない。
ザブングルとウォーカーギャリアの中間的なデザインの本体は、要所に特殊な形状をしたポイントがあり、こうした場所に関しては、可動を妨げないように独自解釈の設計がされていたところにこだわりた感じられた。例えば両肩にあるアコーディオン状のジャバラは、黄色いパーツを軸に肩アーマーの中に収納され、伸縮する様子を再現している。またブーツの左右にあるブロックはスネの側に設置されていて、可動時に大きく開くことで、ブーツの動きを妨げることがない。
後者に関してはブーツを動かした方向によっては設定的に違和感が出てしまうわけだが、アクションフィギュアとしての可動を優先した思い切った設計には好感が持てる。もともと合体機構がない機体だけに、ポーズを付けるときにパーツが落ちたり曲がってしまうようなこともなく、ポーズを付けるのが楽しいフィギュアとして完成している。
少しだけ残念だったのは、前述したように重量があるため、別売りの「魂STAGE ACT.5」を使ってディスプレイしたとき、ポーズによっては支えきれずに倒れてしまうことがあったことだ。ここは仕様として仕方がないところでもあるので、スタンドを複数使うなどしてフォローしてもらえればと思う。
HI-METAL Rの「ザブングル」シリーズ第3弾となったこのブラッカリィは、第2弾のガバメントよりもフィギュアとしてのクオリティが全体的に高まり、機体のことをあまり知らなくても、触っているだけで楽しめるアイテムとなった。そして遊び終えて気になるのは今後のシリーズ展開であり、もし次の可能性があるとすれば、ウォーカーギャリアがラインナップされるというのが妥当な線だろう。
個人的にはこのブラッカリィと同等のクオリティで、ダッカーやオットリッチなどの大型汎用WMを、フィギュアというよりはミニカーや鉄道模型のような精密玩具として出して欲しいという気持ちがあったりもするのだが、現実的にはなかなか難しいかと思うので、妄想だけに止めておくことにしよう。
(C)創通・サンライズ