コメディアンBJ Foxの脱サラゲームブログ

連載第17弾

「テトリス」は1980年代の世界秩序そのもの。だから「TETRIS 99」は今の世相を反映してバトルロイヤルにしたんだと思うんだよね。

 1980年代後半、西側諸国の資本主義と、東側諸国の共産主義の間で発生していた冷戦の最終段階で、面白いことに、ロシア製のゲームがアメリカの子供たちを夢中にさせていた。そのゲームは日本製のゲームボーイで動作した「テトリス」だった。英国ではゲームボーイ本体に同梱されていたため、当時英国で1番広くプレイされ、1番愛されていたゲームだったと言ってもおおげさではないだろう。今で言うところの、PS4のトータルセールスのトップ5にランクインしている「Knack」みたいの存在だったわけだが、「テトリス」は当時の子供達を本当に夢中にさせていた。それはまるで冷戦の最期を表現しているかのように、ゲームボーイの「テトリス」において、ロシアが西側諸国に対して立てていた高い壁を欧米の子供達が壊していたのだ。

 1991年にソビエト連邦が崩壊して冷戦が終わり、ゲームボーイも徐々に「カラー」や「アドバンス」に進化して「テトリス」の存在感も少し遠くなってしまった……。

 しかーし、2019年! その「テトリス」が戻ってきている! ほぼ、プーチン大統領のリーダーシップのもとで再度台頭してきたロシア連邦と同じように、「テトリス」もまた戻ってきているんだ!

 ロシアがどこまでイギリスのEU離脱投票に手を出しているかという容疑の中、そしてモラー米特別検察官が捜査している2016年米大統領選挙へのロシア干渉疑惑の最終報告書の直前だけあって、「TETRIS 99」は通常の「テトリス」ではなく、バトルロイヤル式になっているのだ。

【TETRIS 99】
これは「テトリス」の殺し合いだぞ! うかうかしているとすぐにやられてしまう

 前回のコラムでは、バトルロイヤルのブームを見逃した人や初心者(全部僕のことだ)に「Apex Legends」を勧めたが、2019年の頭に爆発的に配信開始したバトルロイヤルゲームは「Apex Legends」だけじゃなかったんだよね! シューティングが苦手な人や初心者の中の初心者にもお勧めできる「TETRIS 99」も出てきた。大人数のプレーヤーによるラスト1人までの殺し合いの形式がこんなに完璧にパズルゲームに当てはまるとは思わなかったね。

 こんな僕も実は小心者で心配性だから、たまに世界の行く末を心配する。特に寝不足時にその思いに襲われてくるし、最近あまり寝ていないんだ。「TETRIS 99」のせいで。

 寝る前に1回やろうと思っても3、4、5回になってしまうし、最後の最後にスピードした動きや音楽のせいで、電源を消してもテンションが残り、なかなか眠れないんだ。目を閉じても下からどんどんせり上がってくるグレーな壁が見えてしまう。まるで、鉄のカーテンが落ちた床からまた引っ張られているかのように見えてしまう。

 僕は「TETRIS 99」は最高のバトルロイヤルゲームだと思った。僕と同じ年齢の友達全員は、自分が「テトリス」がうまいと信じ込んでいるし、僕ら3人兄弟も、3人とも自分が家族の中で1番「テトリス」がうまいと信じ込んでる。夏休みの長いドライブの車の後ろの席で、 ゲームボーイを回しながら順番に「テトリス」をプレイしていたが、今は3人同時にでき、一体誰が1番うまかったかバトルロイヤル形式で決めることができる。

【バトルロイヤル風景】
プレイして懐かしく思ったのは、僕がどれだけT型のテトリミノを好きかを思い出せたこと。いろんな枠に入れこめる便利屋さんだ。もちろん、主役はI型のテトリミノで、4ラインを一気に決してしまうTETRIS!を決めた瞬間は、プレイしていて最高のひとときだ。が、派手なエムバペ選手よりも、頑張り屋の中盤のエンゴロ・カンテの方は僕が好きだね

 しつこいようだけど僕は「テトリス」がうまいと信じているが、「TETRIS 99」ではまだ1度もトップ5にランクインしていない。この原稿を提出するまでに、絶対1位を取って「1位だ!」というスクリーンショットを見せながらGAME Watchの読者全員に自慢したかったが、今までのベストが7位だ。難しいよ。

みんな自分がうまいと思っているかもしれないが、「TETRIS 99」は半分スキル半分ラックだろう。ラスト15くらいに入るとどんどんスピードアップしてどこからやられるか予想できない。僕は大体この位のランクイン

 なぜ脳内の実力と、実際の実力に差異が出るかというと、青春時代の「テトリス」と少し違うから。「TETRIS 99」はバトルロイヤル形式だから、自分の壁だけに集中するだけでは十分ではなく、より高度な戦略が必要だ。ラスト50になったら、全体的のスピードが早まり、本番が始まる。さらにラスト10になったら、もう目が回るほどのスピードになる。ついでに言うと、あの「テトリス」の主題歌もどんどんテンポアップして耳も懐かしさで回ってしまう。

 対戦型のようにテトリミノを消すことで相手を攻撃できるし、もちろん自分も攻撃されてしまう。どんなに綺麗な「白壁」を保っていても、急に攻撃され、急に満タンとなって「死」。ゲーム毎にその攻撃の戦略を微調整して行きたいと思うが、なかなかあのスピード感で自分の壁の整理だけで手一杯なんだ。

よりアドバンス的な戦略と言うと、自分が消したテトリミノを誰へ送り込むか、という4つの攻撃があるんだ。僕は大体「ATTACKERS(カウンター)」にしている。つまり、自分へ送り込まれているプレーヤーに返すわけだ
攻撃されてしまうと、ほぼクリア状態の壁から、数秒後に「死」へ。だから、このゲームは、半分スキル半分ラックと言っていい。仕方ない時もある

 僕が書いたロシアに対するストーリーは、正しくないかもしれない。だけど、もともとゲームボーイの同梱ソフトの「テトリス」が、Nintendo Switch Onlineの目玉の無料ソフトとなって復活したのは紛れもない事実だ。実は去年Nintendo Switch Onlineのガラガラさに不満を持っていた。安いけど、もう少し欲しいなぁと言っていた僕には、もう不満がない。1位まで頑張るぞ。パズルゲームのバトルロイヤルは最高に面白いから、他のジャンルも積極的にバトルロイヤルに挑戦してほしいね。

でも、「死」で終わってもやはりもう1回だよね

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