レビュー

DLC「S.T.A.L.K.E.R. 2: Cost of Hope」レビュー

勢力を越え力を合わせるストーリー、敵が活性化する新たな現象

【S.T.A.L.K.E.R. 2: Cost of Hope】
8月20日 発売
ジャンル:追加コンテンツ
※デラックスエディション以上の場合、追加料金必要なしで実装

 GSC Game Worldは8月20日に「S.T.A.L.K.E.R. 2」のDLC「S.T.A.L.K.E.R. 2: Cost of Hope(以下、Cost of Hope)」を発売する。このDLCでは「アイアンフォレスト」、「CNPP(チョルノービリ原子力発電所)」といった新地域が開放、新しいストーリーが展開する。本作を遊ぶ場合、デラックスエディション以上は追加料金は必要ない。スタンダードエディションで遊んでいるプレーヤーは2,950円でデラックスエディションにアップグレード可能だ。

 ちなみに「Cost of Hope」の全貌を楽しむにはメインストーリーを20時間以上、SIRCAA(チェルノブイリ異常地域研究科学研究所)の施設のイベントクリアまで進めておく必要がある。敵も手強いのでしっかり楽しむにはかなりキャラクターを強化して臨みたいコンテンツだ。

 「S.T.A.L.K.E.R. 2(S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl)」の世界は、事故を起こし放射能に汚染されたチョルノービリ原子力発電所が、2006年に再び謎の大爆発により超常現象の起こる奇妙な地域「ゾーン」へ変貌してしまった世界だ。主人公スキフは1つの事件を追ううちに、ゾーンだけではなく世界の命運すら握る戦いに巻き込まれていく。

 DLC「Cost of Hope」に登場する新たな地域「アイアンフォレスト」では「フリーダム」と「デューティ」という他の地域で激しく争う2つの勢力が手を取り合う。彼らはなぜ同盟を組んだのか? それは「S.T.A.L.K.E.R. 2」本編に新しい物語を加え、新しいベクトルから「ゾーン」の謎に迫る物語だ。そしてその物語は、「CNPP」へと繋がっていく……。今回、「Cost of Hope」を発売に先駆けて触ることができた。コンテンツの魅力を紹介していきたい。

【『S.T.A.L.K.E.R.2: Cost of Hope(ストーカー2: コスト・オブ・ホープ) 」ーAnnouncement Trailer】

「Cost of Hope」は2つの対立する勢力の仮初めの平和から始まる

 「Cost of Hope」は“噂”がスタートだ。「ゾーン」で一攫千金を狙いこの地を探索するストーカーがたむろする「ボタ山」で、「アイアンフォレスト」から帰還したストーカーがいるらしい。主人公・スキフはそのストーカーに出会い、酒をおごることで情報を聞き出す。

新たな地域「アイアンフォレスト」が解放された。その奥が「CNPP(チョルノービリ原子力発電所)」だ
「Cost of Hope」はボタ山を訪れた1人のストーカーの話からスタートする

 アイアンフォレストは砕け散った鉄塔と、どこからくるか分からない電流で放電状態が起きている謎の地帯。これまでは壁に囲まれており、行くことができなかった。アイアンフォレストの先に「チョルノービリ原子力発電所」がある。

 この壁を管理しているのが「デューティー」。ゾーンの中で元軍人を中心に組織されている勢力で、ゾーン消滅を目標に活動している者達だ。彼らはアイアンフォレストの異変を調査するために偵察員を送ったが、彼らと連絡が取れなくなってしまった。スキフはストーカーとしてアイアンフォレストを探索していくこととなる。スキフの背後でこれまでの世界とアイアンフォレストを隔てる扉が閉まる。スキフの新しい冒険が始まる……。

これまでの地域とアイアンフォレストを隔てる巨大な扉。スキフを入れるとその扉は再び閉ざされる
廃棄された電気施設と様々なアノマリー。アイアンフォレストはミュータントも盛んに襲いかかってくる過酷なフィールドだ
危険な地域である一方で、アーティファクトを入手できるチャンスも増す。さらにキャラクターを強化できる

 デューティーの偵察員を追う中で、スキフは「クーリン野営地」へとたどり着く。ここは「フリーダム」の拠点。ここにデューティーの偵察隊が逃げ込んでいたのだ。本来、デューティーとフリーダムは相容れない存在。しかしこの野営地では「アイアンフォレストの調査」としてお互いが協力関係になっていた。

 2つの勢力が追っているのが「ブラスト」という謎の現象。突然空間に大きな爆発音が響き、ミュータントが活性化する。このためアイアンフォレスト全体が他のゾーン以上に危険な場所となっている。ブラストの調査を進めるため、デューティーとフリーダムは協力しているという。スキフはこの調査に手を貸すこととなる。

本来は敵であるデューティーを受け入れたフリーダムの拠点「クーリン野営地」

 「Cost of Hope」ではデューティーの偵察隊のリーダー「ズールー」と、この地のフリーダムの中心的人物「マカフ」がピックアップされる。ストーリーの展開の中、スキフはズールーとマカフと共に謎に迫っていく。これまでのストーリ-とはひと味違うキャラクターにフォーカスしたストーリーが味わえる。

 ズールーは他の隊員すら驚くほどに任務に対して重い考えを持っている人物だ。彼が持つ“大義”への忠誠心は、上官の短期的な視点による「損耗を避けるため部隊を撤退させる」という命令にすら逆らい、ブラストへの調査を続行させる。マカフもまた上層部の対立意識よりも、ブラストの原因と黒幕への追求を優先する。彼らの調査はやがてゾーンの“新たな深淵”へと迫っていくのだ。

アイアンフォレストを調査するデューティーの偵察隊のリーダー「ズールー」
フリーダムの一員としてブラストを調査する「マカフ」

本編後半の強さが必要となる危険な「アイアンフォレスト」

 「Cost of Hope」は「アイアンフォレスト」に入るだけならば、ゲームを進めフィールドを歩き回れるようになればOKだ。しかしストーリーが進んでいくと、謎を求めSIRCAA(チェルノブイリ異常地域研究科学研究所)の施設に入っていくこととなる。本編ではこの研究所は大きなダメージを受け崩壊してしまい、その後訪れることはなかったが、「Cost of Hope」はこの廃墟に踏み込んでいく。

 「Cost of Hope」は20時間以上メインストーリーを進め、SIRCAAのクエストをクリアしているプレーヤーを対象にしているコンテンツだ。ミュータントの頻繁な襲撃や、危険な地域など、ゲームバランスもきついため、終盤の「ストーリー回帰不能点」直前まで進めたデータをロードして挑戦することをおすすめしたい。

 そもそも「S.T.A.L.K.E.R. 2」自体、難易度が高いゲームだ。プレーヤーキャラクターには特殊能力がなく、銃で敵と戦わねばならない。その弾や装備も入手できる場所は少ない。多くの弾丸や食料回復アイテムは倒した敵から奪い取り、徐々に装備を強くしていくしかない。過酷なバランスのゲームなのだ。

 そして「Cost of Hope」では強かったミュータントがさらに活性化する。危険な現象が起きる「アノマリー」もあちこちにある。装備が整い、ストーカーとしての経験も豊かになったプレーヤーにとっても、かなり歯ごたえを感じさせる難易度だ。

アイアンフォレストはミュータントを活性化させる「ブラスト」が発生する。このブラストを調査するのが大きな目的となる
ブラストを調査するマカフに協力する。調査装置の作動中は次々とミュータントが襲いかかってくる

 新地域のアノマリーは“新たなアーティファクト出現地点”でもある。ゾーンに存在する危険な超常現象発生地点「アノマリー」では様々な特性をもたらす「アーティファクト」が出現する。アーティファクトハントは「S.T.A.L.K.E.R. 2」の大きな楽しみだし、より強力なキャラクタービルドに欠かせない。

 新要素にも注目だ。「Cost of Hope」では”ラジオ”の電波を受信できる。近くに行くと画面に波形が表示され、この波形を追うことで明確にラジオの情報が聞こえるようになる。このラジオは通信記録で新たな情報を入手できる。さらに電気を発生する固定型アノマリーも追加された。こちらは丸いポイントを撃ち抜くことで一時的に無効化できる。

アイアンフォレストで貴重な技術者チーフ
新要素「ラジオ」。画面に波形が現れる場所では正確なポイントを探すことでメッセージが受信できる
電気フィールドを発生させる新しいアノマリー。青い玉を銃で破壊することで電気装置が正常に作動する

 現在まだ攻略できていないのが、「ゾンビが出現するアノマリー」。近くに行くと視界が黄色いもやに覆われ、恐ろしいビジョンが目の前に広がる。その瞬間周囲にゾンビが出現するのだ。ビジョンを見ると体力がごっそり削られてしまい、中心地点に近づけない。この攻略法があるのか、ストーリーを進めてその解法を探っているところだ。今は逃げるだけだが、この謎を解き明かしたい。

光の柱が立つアノマリー。周りにはゾンビがいる
近づくと黄色い光に包まれ不気味なビジョンが現れ、大量に体力が奪われる。このアノマリーはどう攻略すればいいのか?

崩壊した研究所から、謎の空間「バブル」へと冒険は続く

 「Cost of Hope」はブラストの謎を追うのが大きなストーリーラインとなる。スキフはズールーとマカフと共に謎を追っていく。ストーリーはアイアンフォレストだけでなく様々な地域も舞台となる。そのなかでも感慨深いのが、SIRCAAだろう。本編では崩壊後、ほとんど訪れることがなかったが、「Cost of Hope」ではこの施設に深く入り込むことになる。

崩壊したSIRCAA(チェルノブイリ異常地域研究科学研究所)。「Cost of Hope」ではこの施設の中に向かっていく

 「Cost of Hope」では様々な驚きの要素があるが、その中でも最大級にプレーヤーを驚かせるのが「遠心分離機のフィールド」だろう。本作ではこの回転する巨大なユニットをかわしながら進まなくては行けないステージもある。

 回っている分離機に触れればもちろん即死。しかも敵がこちらに向かって撃ってくる。なによりもこのステージは明確なヒントがないのだ。プレーヤーは試行錯誤し、解法を探りながらゲームを進めていかねばならない。「Cost of Hope」は特にこのヒント無しの攻略が多いと感じた。こういうときはムキになってもいいことはない。ときには一旦ゲームから離れて冷静になることも大事だ。

【DLC「STALKER 2: Cost of Hope」、巨大な遠心分離機をかわし進む】

 新たなミュータント「アモック」もかなり難しい敵。まるでサイボーグのような姿をしたこの敵は背中しか攻撃を受け付けない。逃げ回り、敵がこちらを見失ったときに背後に回り込み攻撃を当てる必要がある。

これまでと異なる機械的な外見のミュータント「アモック」。背中に弱点があるが、狙いにくい

 そして「バブル」と呼ばれる世界がある。これは従来のアノマリーとは全く異なる空間だ。ここは生活感のある建物が並んでいるだけだが、空間のつながりはめちゃくちゃで迷路そのものになっている。時には重力すらも狂っている空間がある。この世界で先に進める道を見つけていく。フィールドを進むことそのものが謎解きになっている空間だ。

 ブラストを起こそうとする謎の黒幕は、どんな目的を持っているのか? 組織の命令に背いてまでブラストを止めようとするズールーとマカフの物語はどんな展開を見せていくのか? 何よりチョルノービリ原子力発電所はどのような姿になっているのか? 謎は深まるばかりだ。

謎のアノマリー「バブル」。その名の通りこの泡のようなものが入り口となる
中の空間は古い町並みだが、周囲は闇と霧に包まれている
重力すらねじ曲がり、前に進むことも難しい。パズル的な難易度も高いステージだ
不安定な足場を進む

「Cost of Hope」は新たな「S.T.A.L.K.E.R.」シリーズへの第一歩!

 「Cost of Hope」は「S.T.A.L.K.E.R. 2」プレーヤーには文句なしにお勧めできるコンテンツだ。「S.T.A.L.K.E.R. 2」は世界観に強い魅力がある一方で陰鬱な雰囲気。リソース管理が難しく、ゲームオーバーになりやすいきつめのゲームバランス。各拠点にショートカットが存在するものの、基本は広大なフィールドを徒歩で移動。シビアすぎる重量制限などかなり人を選ぶ作品である。「Cost of Hope」もその性質は継続している。即死トラップが多い割りにリトライ時のロード時間が長いなど、アップデート後も批判が出やすい設計だ。

 しかし、そういった問題点があっても「S.T.A.L.K.E.R. 2」は面白い。危険を乗り越え、苦難の道を進み、物語の結末を目にしたい。そう思わせる独特のエネルギーが本作にはある。「Cost of Hope」はズールーとマカフという新しいキャラクターが、「勢力を超えた人間の強さ」という新しい魅力でプレーヤーを引っ張ってくれる。

 そしてGSC Game Worldは、「Cost of Hope」を今後の「S.T.A.L.K.E.R.」シリーズへ繋がる重要な作品に位置づけているという。「Cost of Hope」は思想を越えた個人の思いにフォーカスを当てたストーリー、人間の生活空間を模倣する新たなアノマリーと、これまでのシリーズに新しい要素を盛り込んだ意欲作である。「S.T.A.L.K.E.R. 2」プレーヤーはもちろんだが、未プレイの人もDLC販売をきっかけに「S.T.A.L.K.E.R. 2」そのものにぜひ触れてほしい。

勢力の壁を越え協力するズールーとマカフ。彼らの関係はどのような未来へ繋がるのだろうか?