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撃つ重み、撃たれる痛み。PS5で"生き抜く"ZONE体験。「S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl」PS5版インプレッション

【PS5版「S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl」】
11月20日 発売予定
価格:
Standard Edition 8,778円
Deluxe Edition 11,528円
Ultimate Edition 15,928円
※パッケージ版はStandard Editionのみ販売

 チョルノービリの地に、まだ人はいる。彼らは“ストーカー”と呼ばれ、常識の外で生きている。その常識の外にある現実を、PS5が圧倒的な表現力で再現するのだ。

 「ZONE(ゾーン)」。それはチョルノービリ特例立入禁止ゾーンにある、謎多く、危険で、我々の世界の常識が通用しないエリアだ。危険で予測不可能なことばかりの地で、生き残りをかけ、プレーヤーと一体となるストーカーがそこで紡ぎ出す"冒険"と“生存”。それこそが「S.T.A.L.K.E.R.」シリーズの魅力だ。

 そんな「S.T.A.L.K.E.R.」シリーズの最新作が「S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl」だ。ファンが待ち焦がれていたこの最新作は、2024年の11月にPC/Xbox Series X|S版が発売されており、来たる2025年11月20日にプレイステーション 5版が発売される。

 PS5版では、アダプティブトリガーやハプティックフィードバックといったDualSense独自の機能に対応。引き金を引く重み、被弾の衝撃、そしてゾーンで起こるあらゆる現象を指先と手のひらで感じることができる。さらにジャイロ照準にも対応し、より直感的で没入感の高いサバイバル体験が可能になった。

 今回はそんなPS5版を実際にプレイできたので、そのインプレッションをお届けする。

【禁忌に踏み入るサバイバルホラーFPS『S.T.A.L.K.E.R.2: Heart of Chornobyl(ストーカー2: ハート・オブ・チョルノービリ)』PS5 Feature Trailer】

時を経て帰ってきたサバイバルFPS

 まずは本作について紹介する前に、「S.T.A.L.K.E.R.」というゲームを簡単に振り返っていきたい。

 「S.T.A.L.K.E.R.」は2007年にシリーズ第1作目「S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chornobyl(発売時タイトル:S.T.A.L.K.E.R. SHADOW OF CHERNOBYL)」が発売され、続編として前日譚の「S.T.A.L.K.E.R. Clear Sky」、後日譚の「S.T.A.L.K.E.R.: Call of Prypiat(S.T.A.L.K.E.R. Call of Pripyat)」が発売された。

 シリーズに共通するのは1986年の「チョルノービリ原子力発電所」の事故後に異常現象で満たされたゾーンに1人のストーカーとして踏み込み、探索しながら真実を追い求めていく。

ゾーンという地は様々な表情を見せてくれる

 プレーヤーは飢えや睡眠、装備の耐久ダメージといった生存要素を管理しながら、ミュータントやアノマリーという異常現象、複数の派閥が暗躍するこのエリアを探索していく。これらの要素が入り交じることで、プレーヤーに“ゾーンで生きる”という体験を提供するのだ。

 そして、そんな3部作の発売から14年。沈黙を破って登場したのが「S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl」だ。

引き金の重み、被弾の衝撃――DualSenseが伝える"命のやり取り"

 PS5で発売されるにあたり、新たに追加された要素がある。それが「アダプティブトリガー」や「ハプティックフィードバック」への対応だ。アダプティブトリガーはPS5用コントローラー「DualSense」の目玉機能で、操作内容に応じてトリガーの抵抗感が可変し、より没入感のある体験を提供してくれる機能だ。

 アダプティブトリガーで銃の引き金を引く重さは、特に強く体感した。それは物理的な重さももちろんだが、心理的な重さの方が大きい。

 というのも、本作は非現実的なゾーンというエリアが圧倒的にリアルで、かつ重厚な表現で描写されている。そんなゾーンで生き延びるために、引き金を引くと発射されるの1発の銃弾は、自分の身を守るための1発であり、目の前の生き物の命を奪う行為でもある。リアルに描写されているからこそ、決して軽いものではなく、殺意を込めた1発の重みを感じられる。これはアダプティブトリガーならではの体験だ。

銃の引き金を引く重さ。それを感じられるのはアダプティブトリガーだからだ

 もちろん、あらゆる行動や衝撃についてリアルな振動を感じられる「ハプティックフィードバック」も没入感を高めてくれる大きなの要素だ。特に、撃たれたときや野生生物に襲われるときの衝撃が手から伝わり感情を動かしてくる。

 また、モーションセンサーによるジャイロ照準も新しいポイント。アナログスティックで大まかに狙いをつけたら、ジャイロで狙いを微調整できる。

 その他にも没入感を高める要素として、3Dオーディオによる音の立体感やコントローラー内蔵スピーカーから無線通信が再生されるなどの機能が追加。DualSenseのタッチパッドでギターを演奏できたり、トロフィー機能にも対応している。

 なお、本作にはクオリティモードとパフォーマンスモードがあり、PS5 Proの場合はクオリティモードで4K30FPS、パフォーマンスモードの場合は4K60FPSでプレイできる。

PS5 Pro専用機能

・影の品質と解像度の向上
・グローバルイルミネーションの強化
・高品質な反射表現
・ボリュームフォグの改善
・ボリュームクラウドレンダリングの強化

謎の導入、そして襲いかかる理不尽

 今回の試遊では、本作のオープニング部分と、ある程度ゲームを進行させた後の沼地エリアのクエストを探索できた。

 まず、オープニング部分では謎多き導入にグッと引き込まれた。主人公は「アーティファクト」の充電を行うためにゾーンに侵入する。ここではアーティファクトが何かや、充電という行為についての詳細は明かされない。嵐が吹き荒れるゾーンに飛び込む主人公。そこでは多くの危険、そして脅威が待ち受けていた。

 グラフィックは非常に美しく、画面もクッキリとしている。日本語字幕も読みやすく、良質なローカライズが施されているようだ。良いモニターでプレイすれば、その没入感はさらに高まるだろう。暗闇のシーンは本当に怖い。

 奥に進んでいくと、武装した兵士らしき人間が哨戒しており、見つかると銃で襲われる。脅威は人間だけではなく、ミュータントも容赦なく襲いかかってくる。反撃は難しく、逃げるしかない。だがその逃走も容易ではなく、障害物を使った駆け引きが求められる。敵のAIがなかなかに賢いのだ。

この世界はあまりにも厳しい。幾度となく倒されることだろう

 そうして、とにかく指示されるままアーティファクトを充電していく。だが、最後に兵士らしき敵に襲われる。銃口を向けられここまでか……というところが序盤部分のプレイだった。このゾーンという地で生き残るのは簡単なことではない。それは強力な敵の存在だったり、理不尽とも言える環境という脅威がある。それを冒頭からプレーヤーに叩き込んでくれた。

言われるがままにアーティファクトを充電していく。だがその先は……?

常識が通用しない世界の恐怖と美しさ

 そしてもう1つ、ゲームがある程度進行したところから始まるデータもプレイした。

 そこで体験したのは、シリーズ作品らしい過酷なサバイバルだった。敵AIは非常に賢く、プレーヤー側も相応の戦術的な立ち回りが求められる。正面から銃を撃ち続けると弾薬を消費してしまうのはもちろん、回復薬などもなくなっていく。探索すればある程度のアイテムは回収できるが、ジリジリと減っていく物資を見ると、単純な撃ち合いだけでは生き残れない緊張感がある。

 特に印象的だったのが「アノマリー」と呼ばれる現象だ。目に見えない危険地帯が存在し、不用意に踏み込めば命を落とす。この得体の知れない恐怖は、本作の独特な雰囲気を作り出している。

アノマリーは恐怖の存在であり、このゾーンを彩るエッセンスの1つでもある

 さらに驚いたのが、ショットガンで何度も撃ったのに敵が生き返ってくる場面だ。これは「プサイ放射線」という特殊な放射線によってゾンビ化しているらしい。放射線はプレーヤーにも影響を与えるが、高いプサイ防御力を持つスーツなども存在するようで、こういった装備を探すのも本作の楽しみの1つと言えるだろう。

 また、幻覚のようなものを見せるミュータントが現れることもあったし、アノマリーという危険な超常現象もそこら中で発生していた。この世界では普通では考えられないことが日常的に起きる。多少の不可思議な現象は当たり前の世界だからこそ、慎重で勇敢な立ち回りが必要になるのだ。

ミュータントとの戦いでは人間の無力さを感じさせられた

 戦闘については、必ずしも敵と戦う必要はない。むしろ、戦闘を避けることも基本戦術の1つと言える。難易度イージーでも相当に難しく、回復薬でゴリ押ししてようやく突破できた。そのくらい、本作はプレーヤーに慎重な判断と戦略的な思考を求めてくるのだ。

 こう書くと単なる厳しい世界に感じられるかもしれない。だが、ゾーンで見た夕焼けは驚くほど美しかった。“終末の夕焼けは、現実より美しい”。東欧の荒涼とした雰囲気も相まって、独特の世界観が構築されている。

 本作にはストーリーがあり、基本的にはそれを追っていくことになる。だが、じっくりとここで“生きる”のも悪くない。そんなことをふと考えてしまった。

ゾーンの夕焼けは心を奪われるほどだ

 ゾーンの世界。その重みと息遣いを最もリアルに感じられるのは、PS5版のDualSenseを通してだ。そこには“生きる感触”を手で感じられるからだ。

 ぜひ、良いモニターや良い音響環境を用意して、ミュータントや危険な現象が住むこの過酷な世界に飛び込んでみて欲しい。ここは過酷で残酷で美しい。そんなゾーンという異世界で"冒険"と"暮らし"を体験できる作品だからだ。