レビュー
「オクトパストラベラー0」レビュー
まさに王道を行くJRPG。キャラメイクした自分だけの主人公を中心に物語が展開する最新作
2025年12月3日 20:00
- 【オクトパストラベラー0】
- 12月4日 発売
- 価格:
- 通常版 7,678円(税込)
- デジタルデラックスエディション 9,878円(税込)
- コレクターズエディション 25,980円(税込)
- CEROレーティング:C(15才以上対象)
全世界500万本を突破した、王道のJRPG「オクトパストラベラー」シリーズ。その最新作となるプレイステーション 5/プレイステーション 4/Xbox Series X|S/Nintendo Switch 2/Nintendo Switch/PC用RPG「オクトパストラベラー0」が、いよいよ12月4日に発売となる。
オルステラ大陸の過去が舞台となる本作では、シリーズでは初めて、主人公1人を据え置いてのさまざまな物語が描かれるようになったのが大きな特徴の一つだ。もちろんそれだけではなく、キャラクターメイキングやタウンビルドといった新システムも導入されたことで従来以上に自由なスタイルでのプレイも楽しめるようになっている。
今回、リリースに先駆けて本作を体験することができたので、そのレビューをお届けしよう。
大胆なシステム刷新はないものの、新要素はどれもハマるものばかり
「オクトパストラベラー」シリーズは、2018年にNintendo Switch向けにリリースされた初代「オクトパストラベラー」から始まった、スクウェア・エニックスの新規タイトルの1つだ。前作までは、8人の主人公から1人を選んで物語を進めていき、最終的には8人のストーリーが絡み合うという構成だったが、今作では、シリーズ初となる固定主人公を採用。途中で多数の仲間と出会い冒険を進めていくという、JRPGの王道を行くシステムを採用している。
そんな本作で盛り込まれた新要素の一つとなるのが、ゲームを始めた直後に行われるキャラクターメイキング。ここでは主人公の見た目だけでなく顔や髪型、目の色、仕草、さらには声までもを細かく設定することが可能だ。それだけでなく、最初から習得している技に好きな料理とその名前、初期持ち物、もちろん名前も決められるなど、かなり自由度の高い設定が行える。
世界にただ1人の主人公を作れるということもあり、筆者もついつい時間をかけてキャラメイクをしてしまった。凝り性の人であれば、キャラメイクシーンからなかなか先に進むことができなくなるかもしれない。とはいえ、どんな持ち物や技を選ぼうともプレイは問題なく進行できるので、あまり深く考えなくても大丈夫だ。
キャラクターメイキングが済めば、ウィッシュベールの町からゲームスタートとなる。しばらくは各種チュートリアルと共に平穏なストーリーが進んでいくが、年に一度の聖火祭の最中に町は襲われ、焼き尽くされてしまう。住人の多くが殺され、生き残った人々も散り散りに逃げてしまったことで、ウィッシュベールは廃墟と化す。なんとか逃げ延びたのは主人公と友人のスティア、そして学者ノモスの3人のみ。身を潜めながら体力を回復させた主人公は、スティアと一緒に町を復興させることを誓う。
この後は、ウィッシュベールを破壊した元凶となる、富・権力・名声を支配した3人の大陸の覇者を追う物語が発生する。ここでメインクエストの3択を迫られるのだが、選んだもの以外を進めることもできるだけでなく、同時にそれ以外のサブクエストを追いかけることも可能だ。1つずつクリアしていくのも良いし、全員平行に進めながらサブクエストも進行してしまうという欲張りなプレイスタイルもアリ。さらに、それらと同時にウィッシュベールを復興するというメインクエストもスタートするので、いきなり4つの物語を楽しむこともできてしまうのだ。
「オクトパストラベラー0」では、前作までの"最初は8人のキャラクターたちのストーリーを追いかけていき、後に合流して大きなクエストへと向かって進んでいく"という形とは大きく異なるものの、仲間になる多数のキャラクターたちとのクエストがいくつも発生するため、それらをプレイしていくことでこれまでと同じように物語の広がりを感じることができた。8人の仲間と絡み合う物語が展開される過去作も良かったが、本作での各キャラごとのエピソードも、負けず劣らず面白かったので期待してほしい。
進行するクエストを決めた際に、クエスト画面で追跡設定をオンにすることで、選んだクエストをクリアするための行き先を示す案内が表示されるようになる。町やお店の出入口、人物などはマップ上に常に表示されているのだが、それらの情報アイコンに追跡クエストと分かる色が付くため、それを目印に移動すれば絶対に迷うことなく物語を進めることができるように。
これが非常に便利で、お使いを頼まれたとしても迷うことなく目的地へと到達できるため、プレイ間隔が空いてしまった場合でも即座に復帰できるのがありがたかった。この目印は、メニューから大陸地図を開いたりクエスト一覧を選んでも確認ができるので、迷子になりがちな人でも安心して遊べるのは嬉しい配慮だ。
なお、一度行ったことがある町へはファストトラベルで移動することも可能だが、今作では後に解説するタウンビルドという要素が加わっており、そこで使う材料を道中で拾うことができるため、ある程度は徒歩で移動するのが個人的にはオススメだ。材料も集まるし敵を倒して経験値を稼ぐこともできる。
戦闘はお馴染みの「ブレイク&ブースト」システム。最大8人が入り乱れるバトルに
「オクトパストラベラー0」の戦闘に関しては、フィールドでは従来通りのランダムエンカウント方式が採用されている。走りながらの移動も可能だが、その場合はミニマップが赤く点滅し敵と遭遇する確率がアップしていることを教えてくれる。このあたりは前作から変わらないので、過去作をプレイ済みの人ならば勝手知ったる何とやら、という感じだろう。
敵とエンカウントすると、戦闘画面へと移行する。バトルシステムはシリーズお馴染みの「ブレイク&ブースト」システムを採用したターン制バトルだ。敵には複数の隠された弱点属性が設定されており、弱点を突くことで相手のシールドポイントを削ることができる。敵の名前の下部には弱点の数だけ"?"マークが並んでおり、剣や斧といった武器、または光や闇などの属性魔法で攻撃し、弱点だった場合は効果音と共に"?"が弱点のアイコンに変化する。
さらに、弱点攻撃で相手のシールドポイントが0になれば敵はブレイク状態となる。こうなると相手は気絶し、その間ダメージも倍近く与えることが可能と、まさにチャンス到来。このブレイクしたときの"バリーン!"という効果音が、攻撃に耐えていたガラスを破壊したかのようで、非常に耳に心地よかった。これを聞くのが、戦闘での大きな楽しみの一つだったほど。
加えて、毎ターン1ポイントずつ溜まっていくブースト(BP)ポイントがあり、一度に最大3つまで消費して"たたかう"や、各キャラが持つ技や回復といったアビリティなどの威力をアップさせることができる。"たたかう"ではBPを消費した回数分の攻撃を行うので、弱点を突けば敵のシールドポイントを一気に削りブレイクへ状態へともっていけるのだ。
今作では最大8人で戦闘が行えるため、戦略の幅が一気に広がっている。パーティが5人以上になると前衛と後衛が発生し、後衛にいる間はHPと魔法やアビリティなどを使う際に消費するSPが、1ターンごとにMAXHPとMAXSPの1割ずつ回復していく。
これを利用すれば、ダメージを受けたりSPを使ってしまったタイミングで前衛と後衛を交代させ、BPの溜まった後衛キャラで一気にブレイクさせたり勝負のカタを付けるといったことも可能となる。もちろん、それ以外にもさまざまな作戦がとれるので、プレイヤーの数だけ戦い方のバリエーションもあるということ。
味方は30人以上登場するので、その場合は酒場などでメンバーの入れ替えを行う必要があるが、後に解説するタウンビルドで町に訓練所を建てたあとはキャラクターは戦闘に参加していなくても経験値が入るので、新たに仲間にしたキャラを育て直すといった手間が不要なのはありがたい仕様だろう。
戦闘関連での新要素としてはもう一つ、セレクトアビリティシステムがある。物語を進めていくと、時々"極意"と書かれたアイテムを手にすることがある。このアイテムは特技であるアビリティを、剣や鎧といった装備品のように各キャラクターがある程度自由に装備できるというものだ。町に訓練所を建てれば、そこで仲間を育てて技を極意化することができ、それを他の仲間に装備してもらうこともできるようになる。これもプレイヤーの特徴がにじみ出る要素だが、誰に何を装備させるかで戦闘のバランスも変わってくるため、凝り性の人はここでも悩むかもしれない。
また、前作では戦闘中に底力という要素があったが、今作では新たに必殺技というわかりやすい項目が追加となった。
主人公は物語の進行と共に必殺技を覚えるのだが、バトル中は敵をブレイクするなどのさまざまなアクションで必殺技ゲージが溜まっていく。ゲージは3段階あり、最高のLV.3まで溜められれば特大の威力を発揮してくれる。
必殺技なので、ここぞという場面でしか使えないと思いがちだが、LV.1まではすぐに溜まるうえに戦闘が終了してもLV.1分は次に持ち越すことができるので、ちょっとした上位アビリティという感じでジャンジャン使えるのは良いところ。出し惜しみする必要はなく、気軽に発動させられるのが便利だと感じた。
個人的に「オクトパストラベラー」シリーズの「ブレイク&ブースト」システムは気持ちが良くて気に入っているのだが、今作でもそれぞれの戦闘時間がやや長めかなと感じた。味方パーティと敵のレベルが均衡している場面では気にならないのだが、フィールド移動時に弱い敵と遭遇すると戦闘が面倒に思えてしまうこともあった。
もし、パーティの平均レベルが、その地の危険レベルよりも大きく高ければ敵が出現しなかったり、実力差がありすぎる敵とはオート戦闘で済ませられるようなシステムがあれば、より気持ち良くプレイできるのではと思った。次回作があれば、そんな改良が加えられていると嬉しいのだが、現状の戦闘システムが本作の魅力を損なわせているわけではないことは、ここで強く主張しておこう。
プレイヤーだけのウィッシュベールを創りあげるタウンビルド
本作のメインシナリオであるクエスト「復興の灯火」に関わってくる新システムとして導入されたのが、やり込み系要素となるタウンビルドだ。
復興の灯火クエストでは、何もなくなってしまったウィッシュベールの地を再建すべく、主人公とスティアが仲間たちと共に奮闘する。シナリオが進むにつれて少しずつ賑わいを取り戻していくウィッシュベールを見ていると、より一層やる気がみなぎってくるというものだ。個人的には復讐劇を果たすための旅も悪くなかったが、やはり町の復興をするための冒険が心を熱くさせてくれた。
町の再建には、世界中に散らばってしまった元の住人を見つけて、戻ってきてもらわなければならない。彼らにウィッシュベールの復興を伝えると、ほとんどの人が喜び勇んで戻ってくる。ところが、そんな彼らを受け入れる器=建物がなければ話にならないので、タウンビルドで家や畑などを整備していくことになる。
建て方は非常に簡単で、フィールドの光る場所などにある材料を拾い集め、地面に散乱したガラクタを撤去した後に、建築したい建物を選ぶのみ。完成後には、ウィッシュベールに移住してきた住人を入居させることが可能だ。さらに、クエストを進めていくことで町のレベルも上がっていき、地面を装飾したり各種装飾品の配置、建物の見た目の変更なども行えるようになっていく。
シナリオを進めていけば、町の規模が大きくなるにつれてタウンレベルも上昇していく。すると、さらに建てられる建物などが増えるという仕組みだ。
とはいえ、地面の装飾などの部分に凝り出すと、「ここは通路だから他とは違う色のタイルを置いて……」や「その周りは別のタイルを配置して……そうなると、あっちの家は見た目の雰囲気が合わないから壁色を変えて……」などと、とんでもない時間を持って行かれるのが非常にヤバかった。チマチマとした作業が好きな人ならば、ハマってしまうこと間違いなしだ。
まさに王道を行くJRPG。国民性にもマッチしており、誰もが楽しめる1本に
前作までとは違い、ウィッシュベールの復興を進めながら各種クエストをクリアしていくという形を取った本作は、今風ではないかもしれないが非常に遊びやすいオーソドックスなJRPGに仕上がっているという印象を受けた。用意されているクエストに関しても、メインが王道を行くシナリオでどれも盛り上がるのに対して、サブクエストはちょっと笑えたり少し感動したりと、小粒でピリッとした感じのが入っているのもナイス。劇中BGMも相変わらず完成度が高く、特に何度も聞く戦闘BGMは耳に残るほどの良い曲だった。
今作の醍醐味である8人での戦闘は、戦略のバリエーションが増えるため強敵に遭遇した際にも各プレイヤーごとの個性が出せるのが素晴らしい部分。人数に加えて、セレクトアビリティによる各キャラへのアビリティ装備をどうするかでも戦い方が変わってくるため、制作側の想定していなかったトンデモバトルを体験できるかもしれない。それ故に、攻略情報を頼ってしまうと通り一遍の戦い方しか行わないかもしれないため、非常にもったいない思いをするかもしれない。ぜひとも、自力でプレイして自分だけの攻略方法を見つけて欲しいと切に感じた。
もう一つの新要素であるタウンビルドは、凝り性の人にとっては魅力的なシステム。建物の配置だけでなく床の1枚1枚に至るまでを自由に設置できるため、プレイヤーが目指したい理想のウィッシュベールを創りあげられるというのが非常に面白かった。もちろん、そこまで熱を上げられないという人は建物をポンと配置してオシマイにすれば良いだけなので、そういう部分に興味の湧かない人でも問題なく楽しめる。グラフィック面でも、すっかりお馴染みとなったHD-2Dがさらに進化したことで、これまで以上に温かみを感じられるようになっているのも見逃せない。
全体的には非常に手堅くまとまり、シナリオ重視のターン制JRPGとしてしっかりと仕上がった印象の本作。クリアするだけでも最低で50時間前後はかかると思われ、すべての要素をくまなく遊び尽くそうとするならば間違いなく100時間オーバーは楽しめるだろう。購入を考えている人は本作のプレイ時間のみで冬休みが消滅することを、今から覚悟しておくのが良いかもしれない。
(C) SQUARE ENIX











































































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