レビュー

「メトロイドプライム4 ビヨンド Nintendo Switch 2 Edition」レビュー

18年ぶりに「プライム」の世界に帰還したサムスの勇姿をSwitch 2で体験する

【メトロイドプライム4 ビヨンド Nintendo Switch 2 Edition】
12月4日 発売
価格:8,980円
※Nintendo Switch版は7,980円

 任天堂の探索アクション「メトロイド」を一人称視点のアドベンチャー(FPA)へと昇華させた「メトロイドプライム」シリーズの最新作「メトロイドプライム4 ビヨンド」が12月4日に発売される。

 前作「メトロイドプライム3 コラプション」から実に18年(国内では17年)ぶりとなる本作は、2017年の発表後に開発体制の見直しが行なわれ、約8年もの歳月を経てついに発売を迎えた。また、当初の予定であったNintendo Switch版に加え、Nintendo Switch 2版「メトロイドプライム4 ビヨンド Nintendo Switch 2 Edition」も同時に発売される。

 Nintendo Switch 2 Editionはゲーム内容は同じながら、最大4K/60FPS/HDR出力やJoy-Con 2のマウス操作に対応するなど、ハード性能を生かしたアップグレードバージョンとなる。本稿では後者の「Nintendo Switch 2 Edition」を使用した「メトロイドプライム4 ビヨンド」のレビューをお届けする。

【メトロイドプライム4 ビヨンド Nintendo Switch 2 Edition 紹介映像】

18年ぶりの続編が、オリジナルを手がけたレトロスタジオの手によりついに完成

 シリーズ最初の「メトロイドプライム」は、2003年2月28日にゲームキューブでリリースされた。ファミコンのディスクシステムで発売された「メトロイド(1986年)」のゲームシステムを、一人称視点の「ファースト・パーソン・アドベンチャー(FPA)」へと昇華させ、FPSとはまた違う「メトロイド」シリーズならではの移動や探索を主体としたアクションを、主人公サムス・アランのバイザー越しに体験できるようになったのだ。

シリーズは一部外伝などを除き、バウンティーハンターのサムス・アランが主人公となる

 筆者は初代「メトロイド」をディスクシステムでプレイして以来のファンで、以降「メトロイド」シリーズはほとんどプレイしている。22年前に「プライム」に出会ったのは仕事がきっかけで、「メトロイド」シリーズにおける探索の面白さ、アイテム取得により行動範囲が広がる仕組みをFPAに見事に落とし込んだゲームデザインに感銘を受け、その後何度も周回したほか、2023年にNintendo Switchで発売された「メトロイドプライム リマスタード」ももちろんプレイした。

【メトロイドプライム リマスタード 紹介映像】

 初代「プライム」の印象が強すぎて「メトロイドプライム2 ダークエコーズ(2005年)」と「メトロイドプライム3 コラプション(2008年)」はそれぞれ1度だけのプレイにとどまったが、2017年のE3で「メトロイドプライム4」が発表されたときは期待に胸が弾んだ。そこからまさか8年も待つことになるとは思いもしなかったわけだが……。

 2017年の発表以降長らく音沙汰がなく、2年後の2019年にはそれまでの開発内容が任天堂の求めるクオリティに届いていないことを理由に、開発体制の見直しが発表された。過去に「メトロイドプライム」シリーズを手がけてきた北米のデベロッパーであるレトロスタジオにより、本作が改めて作り直されることとなった。

【Metroid Prime 4 (Nintendo Switch) 開発状況に関するお知らせ】

 開発体制の見直しから6年、2017年の発表からは実に8年もの歳月を経て、ついに2025年12月に「メトロイドプライム4 ビヨンド」として発売に至ったのだ。

当初のSwitch版とともに、本稿で扱う「Nintendo Switch 2 Edition」も同時発売される

サイラックスの急襲が物語を動かす。アーティファクトの力によりサムスは未知の惑星ビューロスへ……

 筆者を含む世界のファンが待ちわびた最新作「メトロイドプライム4 ビヨンド」は、まったく新しいストーリーのもとで始まる。惑星タナマールの銀河連邦「UTO研究所」が、サムスとの因縁を持つバウンティーハンター「サイラックス」が率いるスペースパイレーツ軍の襲撃を受け、近辺の調査任務に就いていたサムスは救援要請を受けて現地へと向かう。

UTO研究所に駆けつけたサムス。銀河連邦兵士からの信頼も厚い
メトロイドを率いて現れるサイラックス。本作でサムスとの関係が明らかになる!?
サイラックスのメトロイドは他の生物と融合して凶暴化させる。その身体にはメトロイドの一部が露出している

 筆者のプレイ環境は1080p/75Hzなので、この「Nintendo Switch 2 Edition」の映像美を最大限に活かすことはできないのだが、4K/60FPS/HDRの「クオリティモード」あるいは1080p/120Hz/HDRの「パフォーマンスモード」に対応しており、Switch 2の新世代ハードウェアとしての頼もしさを感じられた。

 見せ方や演出面も現代のクオリティで構築されているので、オープニングからゲームプレイまでの展開もなかなかにドラマチックだ。サムスと対峙したサイラックスの攻撃をトリガーに、研究所に保管されていた「アーティファクト」が反応し、そこから発せられた光に包まれたサムスは、巨大な塔がそびえる惑星「ビューロス」へと飛ばされてしまう。この「ビューロス」から脱出するための「テレポーターキー」を探すことが本作の当面の目的となっている。

謎の惑星ビューロスへとやってきたサムス。ここからが物語の本当のスタートとなる
ビューロスの「ラモーン族」最後の生き残り「シャトヤント・ヴールーン」。サムスを“救世主”とし、一族の力を託す

 シリーズ恒例とも言える序盤の出来事により、装備のほとんどを失ってしまうサムスは、ビューロスを探索してアイテムを入手することで行動範囲を広げていくことになる。基本的なゲームシステムや操作はこれまでのシリーズに則っていて、バイザー越しの視点で進行し、右腕のアームキャノンから発射されるビームやミサイルを使って攻撃するスタイルだ。ジャンプやモーフボールなどのアクションもこれまでのシリーズとほとんど変わらない。

ビューロスには複数のエリアがあり、広大な砂漠のどこかに入口が存在する
ボールに変身し狭いところに入っていけるモーフボール。この能力は失われずに最初から使用できる
炎や氷などの属性を持つ攻撃はミサイルと同等の「ショット」となり、専用の「ショットアモ」を消費する

サイキック能力がサムスに新たな力を与え、進むべき道を切り開く

 サムスの新しい能力として、ビューロスに住んでいた「ラモーン族」の司祭から授かる「サイキック」があり、これがサムスの行動や装備に影響を与えていく。Xボタンで切り替える「サイキックバイザー」は、ラモーン族のテクノロジーに呼応し、対象物のスキャンや見えないギミックを可視化するといった効果を発揮する。

サムスの額に装備される「サイキック・クリスタル」は、ラモーン族の力であるサイキック能力をサムスにもたらす
サイキックバイザーはスキャンバイザーと共用で、物質や生物のスキャンが可能だ
これを通さないと見えないものもあり、必然的にバイザーをオンにする機会は多い

 ほかにもラモーン族のギミックを動かす「サイキック・グローブ」、モーフボール時に設置する爆弾「サイキック・ボム」、バイザーで視認した足場に乗る「サイキック・ブーツ」、特定のオブジェクトを引っ張る「サイキック・ラッソ」、グラップリングポイントにぶら下がる「サイキック・グラップリング」など、サムスのパワーアップアイテムの多くがサイキック能力に紐付けられている。

ビューロスで入手するアイテムはラモーン族のテクノロジーのため、サイキック能力に依存するものがほとんどだが、その多くはこれまでのシリーズと同じ要領で使える

 サイキックアイテムの中で、とくに特徴的な存在が「コントロールビーム」だ。これはサイキックバイザー使用時に撃てるチャージビームで、その名の通り撃ったビームの軌道を自在にコントロールできるというもの。特筆すべきは、撃ってから当たるまでの間、周囲の時間が遅くなるという効果があり、動き回るターゲットの速度を遅くして狙ったり、サムスの通常攻撃が及ばない場所へ誘導してヒットさせたりと、かなり特殊な攻撃を行なえるのだ。スティックやジャイロ、マウスによるビームのコントロールは若干クセがあり、慣れるまではちょっと難しいかもしれない。

3つの点となったビームを発射。コントロール時はゆっくり曲線を描いて飛び、自在に動かせる。この攻撃が有効な局面も多い
撃つと周囲の動きがゆっくりになるので、高速で作動している物体の間をすり抜けて通すといった芸当も可能だ

仲間と共闘する新展開も熱い。そして相棒となるバイク「ヴァイオラ」の登場で行動範囲が一気に広がる!

 本作にはサムスの仲間や相棒と言える存在が登場する。彼女がビューロスへ飛ばされると同時に、銀河連邦の兵士たちもこの星に飛ばされていて、合流した彼らと協力してビューロスからの脱出を試みるのだ。通信による会話(といっても演出上サムス自身はしゃべらないが)をしたり、こちらから通信したときの応答がヒントになっていたり、シーンによっては共に戦うことになるなど、アドベンチャーゲームとしての演出が強化されている。

ビューロスで出会う銀河連邦の兵士たち。ここでの行動はサイキック能力を必要とするため、主にサムスのサポート役に回る
共闘しているときに、ダメージを受けた仲間が倒れてしまうことも。そのときは急いで回復させよう
彼らからのメッセージに耳を傾けると、次にどこへ行くべきかがわかるかもしれない

 そしてこのビューロスでサムスの頼りになる相棒と呼べる存在が、2輪ビークルの「ヴァイオラ」だ。惑星のとある場所で乗れるようになるこのバイクは、「ブースト」による加速や車体を横にして体当たりする「パワースライド」、「プロジェクタイル」なる誘導弾による攻撃といった機能を持っていて、ビューロスの広大な砂漠「ソルバレイ」や各地の施設への移動手段として活躍してくれる。

ビューロスのテクノロジーであるヴァイオラ。広くて平坦な場所であれば+ボタンでいつでも乗り降りできる
ヴァイオラに乗るために、サムスは新たに「ヴァイオラスーツ」を身に着ける。序盤のバリアスーツとは色やデザインが大きく変わっている
走行時は常に三人称視点となる。ソルバレイだけでなく、エリア内の移動手段として使うこともある

 これまでも宇宙船などに乗ってエリア間を移動することはあったが、プレイヤーが実際に乗り物を操作して移動をするのは、筆者が記憶している限りでは初のことだ。これまでの閉鎖された空間から広大なフィールドの移動や探索という、シリーズにおける新たな可能性が開拓されたことも個人的には評価したい。

ソルバレイはあまりにも広大で、徒歩で移動するのは現実的ではない。ヴァイオラに乗って走っているうちに何かを見つけることもある
改良によりマグマの上も走れるようになったヴァイオラ。ボスとの戦闘でも活躍する

スティック、ジャイロ、マウス……多彩な操作スタイルに対応。Joy-Con 2の持ち方を変えれば、即座にマウス操作に移れる

 気になるSwitch 2での操作についてだが、本作では「デュアルスティック操作」と「ポインター操作」のどちらかを設定できるようになっている。前者はRスティックで視点を変える従来型の操作方法で、後者はジャイロセンサーで照準と視点を動かすスタイルだ。

 Joy-Con 2によるマウス操作はどちらの設定にも対応している。設定画面では右手でのマウス操作を前提としたJoy-Con 2を左右に持つスタイルを提示しているが、マウス操作を行なわないのであれば、グリップに取り付けたJoy-Con 2やProコントローラーでの操作ももちろん可能だ。

ゲーム開始時に提示される操作方法の選択。マウス操作に重きを置く場合はJoy-Con 2を左右に持つスタイルが基本となる

 マウス操作は想像した以上の精度があり、エイムも快適。マウス操作でサムスを操作する感触も実に新鮮だ。また通常のコントローラー持ちから即座にマウス操作に移行できるのもSwitch 2ならではのポイントで、ゲームを進めていくとマウス操作が活きてくるシーンも実際に存在した。通常はロックオンを駆使して戦うわけだが、一部の敵弾や弱点などにロックオンできないものがあり、そういったところはスティックよりもマウスのほうが狙いやすい印象もあった。

マウス操作の使用時はレティクルの中央に小さな4つの点が表示される。ロックオンと併用するとかなり狙いやすくなる

 ジャイロセンサーによる操作も可能で、「スプラトゥーン3」などで慣れている筆者はこちらもかなり快適だったのだが、コントローラーの持ち方や位置によってエイムがぶれたり、画面揺れが発生することもあるので、好みでジャイロの感度やオン/オフの設定をしておくといいだろう。

特定のボスとの戦闘などでは、状況に応じてスティック操作とマウス操作を切り替えながら戦うテクニックもある

シリーズを長く手がけてきたレトロスタジオの真骨頂。8年待った甲斐があった、磨き抜かれたストーリー展開に胸が熱くなる

 本作は、シリーズ恒例のサムスがパワーアップアイテムを装備すると、探索範囲が少しずつ広がっていくゲームデザインを踏襲している。ヴァイオラもその過程で手に入れる乗り物なわけだが、当然ながらそれだけで進めるわけではない。複数のエリアを往来して新たなルートを開拓していくレベルデザインは、レトロスタジオの真骨頂だと感じられた。

 仲間が行くべき場所を示唆してくれたり、ゲームを進めることで取り残したアイテムの場所が分かるようになったりと、プレーヤーに対するフォローもしっかり押さえられている印象だ。

属性を持つサムスのショットは、新たなルート開拓のカギとなる。ボスなどを倒して手に入れる「チップ」をエンジニアのマッケンジーがアームキャノンに組み込んでくれる
ヴァイオラの操作は、エリアに存在するコース上でのチュートリアルによって身に着けられるようになっている

 各エリアのボスも、ショットやアイテム、あるいは周囲の環境を駆使する必要があるなど、一筋縄ではいかない存在も多く、どう攻略すればいいか悩むところもあると思う。サムスが倒れてしまうと、特定のボス以外はセーブポイントからやり直しになるなど、それなりにハードなところもあるので、セーブはこまめにしておきたいところ。ちなみに本作のamiiboを使うと、攻略の手助けになる要素が付与されることもお知らせしておきたい。

ボスとの戦闘時は必ずスキャンを。メニュー画面の「ログブック」を読めば詳細が判明し、弱点が掴めるかもしれない
ビームやショット、ボムなどの攻撃のほか、ロックオンやダッシュなどの動きもを駆使して戦おう
冒頭の事件の首謀者であるサイラックスとの戦闘。彼がサムスに固執する理由は!?
「サムス【メトロイドプライム4】」のamiiboを使うと、1日1回ダメージの回復と、しばらくの間無敵になれる「エネルギーシールド」を得られる
「サムス&ヴァイオラ【メトロイドプライム4】」のamiiboは、ヴァイオラのカラーを変更可能に。走った距離で新しいカラーがアンロックされる

 筆者は少し前まで「メトロイドプライム リマスタード」をプレイしていたわけだが、キーアサインなども一部を除いて共通だったので、操作自体に戸惑うことはなく、比較的すんなりとゲームに入ることができた。ただ戦況によって素早いショットの切り替えや的確なエイミングなどが必要なところもあるので、ロックオン機能やマウス操作を駆使して戦ってほしい。

操作の感触はかなり細かいところまで設定できる。プレイ中に調整して、自身に合った設定を見つけよう

 仲間と共に行動する展開はこれまで以上の盛り上がりを見せ、この手のSF映画などでお約束とも言えるシーンも多数あるので、じっくり楽しんでいただきたいものだ。ちなみにストーリーは、前作と直接繋がってはいないため、本作で初めてシリーズを遊ぶ人でも問題なく楽しめる。

サムスの元に集まった銀河連邦の仲間達。ここからさらに熱い物語が展開していく

 この8年間、筆者は「Nintendo Direct」が配信されるたびに、「『メトロイドプライム4』はまだか!」と叫び続け「本作が発売されるまでは死ねない」とまで思ってきたタイトルをついにプレイできたのは本当に幸せだった。このレビューで試遊させてもらった経験をもとに、製品版に改めて挑もうと思う。