レビュー
「FANTASIAN Neo Dimension」レビュー
ジオラマ風背景や曲線軌道のバトルなど独自要素も満載。坂口博信氏と植松伸夫氏コンビの王道ファンタジーRPG!
2024年12月4日 20:00
- 【FANTASIAN Neo Dimension】
- 12月5日 発売予定
- (Steam版は12月6日発売予定)
- 価格:6,500円
スクウェア・エニックスより、12月5日に発売されるプレイステーション 5/プレイステーション 4/Xbox Series X|S/Nintendo Switch/PC(Steam)用RPG「FANTASIAN Neo Dimension(ファンタジアン ネオディメンジョン)」。本作は、「ファイナルファンタジー」シリーズの生みの親である坂口博信氏と植松伸夫氏がタッグを組んだタイトルとしても話題になった作品だ。
元々は坂口氏率いるミストウォーカーから、2021年にApple Arcade向けに「FANTASIAN」というタイトルで配信されていた作品だが、それに新要素が追加されコンシューマーとPC向けに発売される決定版となっている。Apple Arcade版ではアプリのサイズ上限の関係上、前半と後半に分かれて配信されていたが、今回はこれ1本で最初から最後まで遊ぶことができるようになった。追加の要素としてはキャラクターのボイスと難易度調整機能の追加に加え、一部ハードでの4K画質に対応する。
また、ゲーム中に登場するフィールドなどの背景に、実物のジオラマを作って取り込んだものが使われているほか、エンカウントした敵を貯めておくことができる「ディメンジョンシステム」が採用されているなど、本作ならではの要素もいくつか用意されているところもゲームの特徴となっている。
リリースに先駆けて、本作のPS5版をひとあし先にプレイすることができた。ゲーム全体のボリュームとしては60時間ほどあるそうだが、今回はアプリ版でいうところの前半部分が終了して後半に突入したあたりまでプレイしている。こちらの記事では、そこからわかったゲームの魅力や特徴についてご紹介していく。
記憶をなくした青年レオアが仲間達と共に世界の謎に挑んでいく!
本作の主人公は、記憶を失ってしまった青年のレオアだ。主人公らしい力強さを合わせ持ったキャラクターである。このゲームでは、いきなり見知らぬ機械の世界で目が覚めるというところから物語がスタートする。
この場面はなぜか見知らぬロボット達と冒険をしているようだが、レオア自身は自分の名前以外の記憶をなくしてしまったため、何をすればいいのか目的すらわからない状態だ。敵に追い詰められたときに、手に持っていたワープマシンを使って脱出を試みることになったのが、そのワープマシンは自分の記憶の中にある場所にしか飛ぶことができない。そこでひとりの女性の姿を思い出すことができ、なんとか脱出することに成功するのであった。
機械の世界からなんとか元の世界に戻ってくることができたレオアであったが、そこは邪神ヴァムの力により、人々の感情と命を奪う死械球(しかいきゅう)によって危機にさらされた状態となっていた。ここで、自らの記憶を取り戻すための脱出時に頭に浮かんだ少女キーナを探し出し、共に冒険へと出かけることになるというのが序盤の大まかなストーリーとなっている。
この冒険を続けていくうちに、新たな仲間がどんどん加わっていき、この世界を作り出している様々な状況についても明らかになっていく。このように、ストーリー的にはどちらかというと重厚なものとなっているのだが、ときおりユニークな演出も盛り込まれていた。
ひとつは、紙芝居のようなスタイルでストーリーを補完する演出だ。こちらは言葉で語られるよりも、より感情的な演出が取り入れられており、ちょっとした読み物を朗読するかのような面白さがある。
もうひとつは、登場するキャラクターたちのバラエティの豊かさだ。もちろん、レオアの仲間になるキャラクターたちも個性的な面々ばかりなのだが、それだけではなく敵として登場する人物達も癖のあるキャラクターが含まれていた。
たとえば、マップ上で謎のマークを見つけたときに、どこからともなく現われるのが謎の3人組「シンデレラ三連星」である。なぜか登場時にカブキのような見得を切って現われるのだが……彼らの目的は全くもって謎だ。また、仲間のキャラクターたちが増えていくと、そのキャラクター間を巡っての面白いやりとりも見られるようになっていた。このように、ストーリーには絶妙な緩急が付けられているということもあり、飽きずにゲームをプレイできるようになっているのである。
実物のジオラマをベースに作られたゲームの世界
オリジナル版の「FANTASIAN」がスマートフォンでのプレイを中心として想定されたタイトルであることは先ほども述べたが、操作性についてはコントローラーに最適化されてはいるものの、若干癖がある印象だ。たとえばマップを移動するときは、よく地形を見ながら移動しないとあちらこちらに引っかかってしまうことがある。
また、特定の場所に近づいたときなどに、マップそのものがくるりと回転することがあるのだ。この回転がキャラクターの操作をしているときに若干混乱してしまい、ラジコン操作のゲームをプレイしているような感覚になることがある。とはいえ、このあたりはゲーム独特のクセともいえる部分であるため、ある程度遊んでいるうちに慣れることができるだろう。
これはゲームプレイ中に意識することは少ないかもしれないが、ゲーム中に登場するフィールドや部屋の中などの背景は、いずれも実物のジオラマを作ってゲームのマップとして取り込んだものである。この後触れるが、フィールドをじっくりと眺めつつ探索できるような機能も用意されているので、そちらを活用しながらゲームの世界を堪能するのもいいのではないだろうか。
キャラクターごとに用意された異なるスキルを活用して戦闘を攻略!
このゲームでは、基本的に3人ひと組でパーティを組んで冒険をしていくことになる。登場人物としては3人以上が仲間になるのだが、少なくとも今回プレイした範囲では自分で好きなメンバーを選んで戦闘に参加させるというよりは、ストーリー的に途中でいなくなる人物もいるため、自動で入れ替わっていくといったものとなっていた。そうしたこともあってか、パーティのメンバーもその時々で攻守のバランスが取れたメンバーが揃っていたという印象だ。一方でゲーム中盤以降は戦闘中の味方チェンジも可能になる。
戦闘では、画面左下に表示されているキャラクターのアイコン順に行動するシステムが採用されており、ターン制ではなく敵味方の攻撃が入り交じる形になる。順番がまわってきたキャラクターの行動を指定するときは、いくつか用意されているスキルの中から、もっとも最適なものを選んで戦っていく。たとえば仲間が傷ついて体力がかなり減った場合は、ヒールなどの回復スキルやアイテムを選んで使うといった感じだ。
このスキルは簡単にいうと魔法のようなものとなっており、MPを消費する。MPが無い場合は、アイテムで回復するかMPを消費しない通常攻撃しかできなくなるので注意しよう。
バトルで主に攻撃に使えるスキルは、いくつかの特徴がある。ひとつは、複数の敵をまとめて攻撃できるものだ。スキルによっては曲線軌道で複数の敵に対して攻撃する調整することができるのだが、すべてのキャラクターがそうした攻撃をできるわけではない。たとえばキーナであれば、「ライト」というスキルを選ぶことで、曲線軌道の攻撃が可能となる。だが、主人公のレオアは、複数の攻撃ができるスキルはいくつか用意されているものの、いずれも曲線軌道の攻撃はできず直線的なものばかりだ。
また、スキルによっては複数の敵に攻撃するだけではなく、単体の敵のみに使えるものもある。たとえば、レオアの「五月雨」は、敵1体にしか攻撃はできないものの、その代わりに複数回攻撃することができるといったものとなっている。こうしたスキルは複数の敵をまとめて相手にするときには向かないのだが、ボス戦などは有効である場合が多いため、使用する機会もかなり多い。基本的には、これらスキルの特性をうまく使い分けながら効率よく敵を倒していくことになるのである。
エンカウントした敵を貯めてまとめてバトルができる「ディメンジョンシステム」
レオアが「ディメンジョンマシン」の使い方を思い出してからは、「ディメンジョンシステム」が使えるようになる。こちらをONにしておくことで、移動中にエンカウントした敵を一定数貯めておくことが可能だ。たとえば、ジオラマで作られたフィールドをじっくりと楽しみながら移動したいといった際には、「ディメンジョンシステム」をONにしてエンカウントを気にせず景色を楽しむことができる。
この「ディメンジョンシステム」は、初期の段階では最大30体まで敵を貯めておくことが可能だ。ただし、それ以上貯まると、強制的に貯めておいた敵とのバトルに突入するので注意が必要である。ちなみに、任意のタイミングで「ディメンジョンシステム」をOFFにしたときもバトルがスタートする仕組みだ。
この「ディメンジョンシステム」でのバトルでは、曲線軌道の攻撃などもフルで活用できるほか、ランダムで攻撃を強化するバフアイテムや、再度攻撃できるアイテムなども出現する。それらをうまく取りつつ戦闘をすることで、効率よく敵を倒していくことができるのだ。
この「ディメンジョンシステム」の活用方法としては、単純に途中でエンカウントする敵とのバトルを一時的に避けるというだけではなく、キャラクターのレベルアップをしたいときなどにも活用することができる。これはゲームをしばらくプレイしていて気が付いたことなのだが、特定のボスキャラクターなどは味方のレベルが一定に達していないと勝つのが難しい場合が多かった。だが、なかなか勝てない敵でもレベルをひとつ上げるだけでそれほど苦労せずに勝つことができたのだ。
そうしたキャラクターのレベルアップをするときにも、この「ディメンジョンシステム」がかなり役に立ったのである。単純にまとめて敵とバトルができるということもあるのだが、味方をバフするギミックも出てくるため、通常のバトルよりも遥かに楽に敵を倒していくことができるのである。30体ほどの敵ならば、近場をクルクルと回っているだけでも簡単に貯めることができるところもポイントだ。
豪華客船のウズラ号やワープマシンを使って未知なる世界を冒険しよう!
こうしたRPGの醍醐味は、普段の生活では行けないような世界を冒険することができるところだ。本作でも巨大な豪華客船のウズラ号に乗り込んで空の旅ができるほか、ワープマシンを使って人の住む世界と機械世界を自由に行き来するなんてことも可能だ。
どの場所も安全なところはなく、何かしらの危険に満ちた場所ばかりとなっているのだが、それも含めて冒険心が煽られるような作りになっているのである。特に初めて訪れる場所は、どんな敵が待ち受けているのかということも含めてわからないことだらけであるため、余計に気になってしまうのだ。
また、ゲームを進めていくにつれて新たなロケーションに行くことができるようになるだけではなく、物語自体もどんどんその先が気になるような展開が待ち受けている。ゲームとしてもかなりのボリュームとなっているので、クリア後のやりこみなども含めるとかなり長時間遊べるような作りになっているところも魅力だ。
冒頭でApple Arcade版では前後編に分かれていたと述べたが、今作では特に前半部分が終わった時点で特別な演出が入るといったことはなく、そのままシームレスに続きがプレイできるようになっていた。この辺りは当たり前と言えば当たり前なのだが、ゲームの頭から最後まで一気通貫でプレイできるのもありがたいところである。
もうひとつ、これはオマケ要素ではあるが、戦闘中のBGMをデフォルトのものから「ファイナルファンタジー」の楽曲に変更することができる。ためしにランダムで設定してみたのだが、「FF」シリーズ作品おなじみのBGMが戦闘中に流れてもまったく違和感がなかった。「FF」シリーズ自体が坂口氏と植松氏による作品というイメージが強いが、同じクリエイターによる作品であるためすんなりと耳に馴染んだのであろう。
この年末はいろいろな大型タイトルも登場してきているが、本作はかなりのボリュームとなっているということもあり、長時間楽しめることは間違いなしのタイトルだ。久々にどっぷりとRPGに浸ってみたいという人はぜひともチャレンジしてほしい1本である。
(C) MISTWALKER/SQUARE ENIX