レビュー
ビジュアルノベル×シューティングゲーム「カミカゼラスプレーン」レビュー
展開が気になるストーリーに引き込まれる1本
2024年11月21日 00:00
- 【カミカゼラスプレーン】
- 発売日:
- Steam版 発売中
- Switch版 11月21日
- 価格:2,980円(税込)
Inky Dreamsが開発したNintendo Switch/Steam用タイトル「カミカゼラスプレーン」は、物語を読み進めていきながら時々現れる選択肢を選びつつ、間に入るシューティングゲームをクリアしてエンディングを迎えるという、いわゆるビジュアルノベルと、本格的なシューティングゲームが融合した作品だ。日本でのパブリッシャーは「Atomic Heart」等で知られるBeep Japanとなっている。
プレイヤーは、ヴェレスティア王国で一番優秀なパイロットのウォルターとして、ラスプレーンと呼ばれる戦闘用飛行機に変身することができる2人のキャラクターと共に、物語を進めていく。
すでに本作はSteam版が発売中だが、Nintendo Switch版が本日11月21日に発売される。今回は、そのSwitch版を先行プレイできたので、レビューをお届けする。
ADVとSTGを交互にプレイ。中盤からは一気にきな臭くなるマルチエンドの物語
ゲームを起動しても、世界観説明やそれまでの経緯といったプロローグのようなものは特に流れないので、以下で簡単に解説しておこう。
主人公が暮らすヴェレスティア王国は、100年ほど前に滅亡の危機に瀕していた。しかし、そのときに発見された“光”と呼ばれる魔法の鉱石が、王国の運命を変えることとなる。“光”の持つエネルギーは機械の動力源となり、王国の経済を近代化し、滅亡から救った。同時に“光”は、他国からの憎悪と、強欲を煽り、そういった外界からの圧力を受けてヴェレスティア王は、国をヴェールと呼ばれる保護境界線で囲ってしまう。そして、さまざまな事態に備えて王国最大の空飛ぶ軍事要塞・天空の要塞を作り上げるのだが、そこへ配属になったのが主人公のウォルターだった。
ゲームは、伝説と言われるラスプレーンの1人、アルバ・トロッセとの出会いから始まる。基本的には画面下のメッセージウィンドウ部分に表示される文章を読み進めていくのだが、時々選択肢が表示され、このときにどちらを選ぶかで好感度が変化、道中のストーリーが変わったり迎えるエンディングが異なる仕組みだ。また、特定のシーンでは1枚絵のイベントグラフィックスが表示されることもあり、これを集めるのも目的の一つとなる。
プレイしていて通常の選択肢よりも“より重要な選択肢”の場合、選んだ後に画面左上にフェイト・ドローンと呼ばれる天秤の絵柄が登場する。これを目安にすることで、繰り返しプレイ時には頼れるガイドラインとなるだろう。最後のシーンまでに登場する選択肢の数はそれほど多くはないものの、マルチエンディングを全網羅したい場合やイベントグラフィックをすべて回収するのであれば、フェイト・ドローンが出現する選択肢はスナップショットを撮るなどしてメモしておきたいところ。
このような感じで物語を読み進めていき、ラスプレーンのパイロットとしてアルバと日々を過ごして徐々に打ち解け合ってきたタイミングで、彼女からテスト飛行を提案され空へと飛び出すことになる。
ここからはビジュアルノベルパートから切り替わり、シューティングゲームパートがスタート。プレイヤーが駆るのは、ラスプレーンに変身したアルバだ。アナログスティックなどで上下左右に移動できるほか、AボタンやRボタンなどでショット、必殺技ゲージが一杯になっていればLボタンなどで必殺技を撃つことができる。ショットは、最初のステージは3段階まで、先に進むと最大で5段階までパワーアップすることが可能だ。
自機には体力ゲージが用意されており、敵や敵弾に接触することで一定分減少し、無くなってしまうと道中にオートセーブされたエリアからのやり直しとなる。
それ以外にも、取ると一定時間連射速度がアップしたり敵弾も消してくれる全方位弾をその場で発射や、必殺技ゲージMAX、完全無敵のシールドを一定時間張るといったパワーアップも用意されている。どれも取って損のないものなので、積極的に回収しよう。
これらパワーアップアイテムは、画面端にあたると等角度で跳ね返るものと、そのまま画面外へ消えてしまうものがあるので、取る場合は後者を優先したい。なお前者は、一定時間が経過すると点滅し始め、その後に消えてしまう。また、アイテムは回収した瞬間から効力を発揮し短時間で使い切ってしまうので、必殺技ゲージMAX以外はどちらも消えるギリギリを狙って取るのが上手い攻略方法となる。
敵は、被弾せずに倒すことで倍率がアップしていき、最大で10倍となる。ステージクリア後は、スコアによって獲得できる勲章の数が変わってくるため、なるべく敵弾にあたらないのがコツ。なお、敵弾は自機の弾で相殺できるオレンジ色のものと、破壊不可能なピンク色のものがある。一見すると厚い弾幕に見えるのだが、撃ちまくれば避けられるスペースが見えてくるはずだ。
いくつかのシーンでは、ステージの最後にボスが待ち構えている。画面上部に表示された耐久力を0にすれば破壊となるのだが、どれもクセのある攻撃をしてくるため、一筋縄ではいかない。ラスボス以外は、イモータルシールドを回収すると同時にボスにくっつき、必殺技を撃つという攻撃が効果的だ。
ボスが倒せなかったり道中で自機の体力が0になったとしても、クリアできるまで何度でもやり直しとなる仕様だ。シューティングゲームは苦手で、物語だけを楽しみたいという人であれば、最初の難易度選択で“ストーリー”を選んでおくのがベスト。これならば被弾や体当たりでも体力は一切減らないので、確実に先へと進める。とはいえ、個人的にはシューティングゲームをクリアすることで「敵陣を突破して次の物語の地へと辿り着いた」感が盛り上がると思っているので、イージー以上でプレイするのを進めたいところだ。
自機や敵機はメカらしいデザインが採用されており、ビジュアルノベル中の温かみのある雰囲気とは反対に、冷たい感じだが出ているのは上手い演出と感じた。時々無線が入り、基地やラスプレーンとの会話も挿入されるのも、戦時中という緊迫感を盛りあげてくれるのに一役買っているという印象を受けた。
シューティングパートをクリアすると、再びビジュアルノベルパートへと戻る。これを繰り返してストーリーを進めていくと、新たなラスプレーンのハンナ・ブランデンブルクと出会う。彼女はアルバとは違い、寡黙で、考えていることをなかなか口に出してくれない。しかし、ひとたび心のドアを開けることができれば、主人公のために命をかけてくれる存在となるのだ。プレイしていくうちに、主人公はアルバとハンナ、どちらかを選ぶ場面が出てくるのだが、果たしてあなたは……。
また、序盤は多少なりとも穏やかさが感じられたストーリー展開も、中盤からは一気にきな臭くなっていく。ヴェールの外側はどうなっているのか、「光」の正体は何なのか、ラスプレーンとは一体どのような存在なのか……さまざまな謎が最後に明かされる時、そこにあるのはハッピーエンドか、それともバッドエンドか? それは、これを読んでいるあなた自身の目で確かめてほしい。
シューティングパートの道中や結果は関係なく、ビジュアルノベルパートでどの選択肢を選んだかによって結末が変化するので、すべてのエンディングを見るのであれば何度かプレイし直す必要がある。それでも、2回目以降はシューティングパートはLボタンで飛ばすことができるし、ビジュアルノベルパートもLボタンでメッセージが濁流の如く流れていくので、苦になることなく何度でも遊べるだろう。
シューティングゲームに関しては、タイトル画面からアーケードモードを選ぶことで、最初のチュートリアル部分を除いた全ステージをプレイすることができる。本編中のシューティングパートと違い、回復アイテムは一切出現しない代わりに点数でラスプレーンの残機が増えていくほか、10倍までしか上昇しなかった倍率も最大99倍までアップしていく。ステージをクリアすれば体力は回復するもののシビアな戦いを要求されるので、腕に覚えのある人は是非ともクリアを目指して欲しい。
荒削りな部分も見受けられるが、展開が気になるストーリーに引き込まれる1本
個人的に興味のあったシューティングパートだが、自機の圧倒的火力不足が目立つほか、雑魚敵ですら耐久度が高いため爽快感に今ひとつ欠けるのが少々残念だった。スペースインベーダー時代からアーケードゲームをプレイしている身としては、もう少しゲームバランスの調整ができるのではと感じたので、アップデートでいろいろと手が入ることに期待したい。とはいえ、現段階でもダメージを受けずに敵機を倒していくと倍率がアップし面白いようにスコアが上がっていくので、ハイスコア争いが熱いのはナイスなポイントだろう。
ビジュアルノベルパートは、ストーリーはネタバレになるので展開に関してはノーコメントだが、オートモードがサクサクと進むのは非常に便利。筆者の場合、表示されるメッセージをほぼ一瞬で見てボイスを待たずに次へと進めるのだが、文字送りを早めにしていてもなかなか次が表示されなかったりする作品をいくつも体験してきたため、これまでは積極的にオートモードを使用することはなかった。しかし本作は、メッセージが速いペースで表示されるため、なかなかに快適。ストレスを感じることがなかったので、オートモードに大いに感謝したい。また、2周目以降のプレイは高速スキップが効くので、これもありがたい仕様だ。
ただ、ゲーム中で使用されている漢字が「直」の左縦棒がなかったり「練」も普段目にする文字と違っており、メッセージを読んでいると気になってしまい、今ひとつ物語にのめり込めなかったのが惜しい部分。調べたところ、どうやら一部の漢字は中国語の簡体字と思われる文字で表示されているようなので、これはアップデートで直ってほしいところだ。
個人的には、まだエンディングを5パターンしか見ていないので、残り3パターンのために選択肢を書き出して、違う世界線に辿り着きたいと作業するほどには世界観にハマっている。いくつか不満を挙げたものの、シューティングパートも1コインクリアを目指してプレイしているので、この価格でこのボリュームはコストパフォーマンスが高いと思いながら、今日もアルバと共に空を飛ぶのだった。
Switch版「カミカゼラスプレーン」のストアページ
Steam版「カミカゼラスプレーン」のストアページ
Kamikaze Lassplanes (C) 2023 GMT Inky Dreams Sp. z o.o. Developed by Inky Dreams. Published by Inky Dreams and Beep Japan in Japan. All rights reserved.