レビュー

ビジュアルノベル×シューティングゲーム「カミカゼラスプレーン」レビュー

展開が気になるストーリーに引き込まれる1本

【カミカゼラスプレーン】

発売日:
Steam版 発売中
Switch版 11月21日
価格:2,980円(税込)

 Inky Dreamsが開発したNintendo Switch/Steam用タイトル「カミカゼラスプレーン」は、物語を読み進めていきながら時々現れる選択肢を選びつつ、間に入るシューティングゲームをクリアしてエンディングを迎えるという、いわゆるビジュアルノベルと、本格的なシューティングゲームが融合した作品だ。日本でのパブリッシャーは「Atomic Heart」等で知られるBeep Japanとなっている。

 プレイヤーは、ヴェレスティア王国で一番優秀なパイロットのウォルターとして、ラスプレーンと呼ばれる戦闘用飛行機に変身することができる2人のキャラクターと共に、物語を進めていく。

 すでに本作はSteam版が発売中だが、Nintendo Switch版が本日11月21日に発売される。今回は、そのSwitch版を先行プレイできたので、レビューをお届けする。

【Kamikaze Lassplanes | Official Release Date Trailer】

ADVとSTGを交互にプレイ。中盤からは一気にきな臭くなるマルチエンドの物語

 ゲームを起動しても、世界観説明やそれまでの経緯といったプロローグのようなものは特に流れないので、以下で簡単に解説しておこう。

 主人公が暮らすヴェレスティア王国は、100年ほど前に滅亡の危機に瀕していた。しかし、そのときに発見された“光”と呼ばれる魔法の鉱石が、王国の運命を変えることとなる。“光”の持つエネルギーは機械の動力源となり、王国の経済を近代化し、滅亡から救った。同時に“光”は、他国からの憎悪と、強欲を煽り、そういった外界からの圧力を受けてヴェレスティア王は、国をヴェールと呼ばれる保護境界線で囲ってしまう。そして、さまざまな事態に備えて王国最大の空飛ぶ軍事要塞・天空の要塞を作り上げるのだが、そこへ配属になったのが主人公のウォルターだった。

 ゲームは、伝説と言われるラスプレーンの1人、アルバ・トロッセとの出会いから始まる。基本的には画面下のメッセージウィンドウ部分に表示される文章を読み進めていくのだが、時々選択肢が表示され、このときにどちらを選ぶかで好感度が変化、道中のストーリーが変わったり迎えるエンディングが異なる仕組みだ。また、特定のシーンでは1枚絵のイベントグラフィックスが表示されることもあり、これを集めるのも目的の一つとなる。

今やフルボイスのゲームは珍しくないが、本作はそのほとんどがシーンに合わせた特定のセリフのみ再生されるようになっている。また、グラフィックも基本の立ち絵は数点で、腕が動いたり表情がアニメーションしながら変わるという表現方法を採用していた
選択肢は、通常の決定ボタンであるAではなく、Yで選択する。仮にAボタンを連打して読み進めていたとしても、選択肢の場面で意図しない方を選んでしまうことは無いのは親切だ
イベントグラフィックは全部で18枚用意されており、そのシーンに入ると画面右上にアンロックのメッセージが表示され、自動的にギャラリーアートへと登録されるようになっている

 プレイしていて通常の選択肢よりも“より重要な選択肢”の場合、選んだ後に画面左上にフェイト・ドローンと呼ばれる天秤の絵柄が登場する。これを目安にすることで、繰り返しプレイ時には頼れるガイドラインとなるだろう。最後のシーンまでに登場する選択肢の数はそれほど多くはないものの、マルチエンディングを全網羅したい場合やイベントグラフィックをすべて回収するのであれば、フェイト・ドローンが出現する選択肢はスナップショットを撮るなどしてメモしておきたいところ。

最初に解説も行なわれる、フェイト・ドローン。意外とあちこちの選択肢で出現するが、そのタイミングは“選択肢を選んだ後”なので、あらかじめセーブしておくのが良い

 このような感じで物語を読み進めていき、ラスプレーンのパイロットとしてアルバと日々を過ごして徐々に打ち解け合ってきたタイミングで、彼女からテスト飛行を提案され空へと飛び出すことになる。

 ここからはビジュアルノベルパートから切り替わり、シューティングゲームパートがスタート。プレイヤーが駆るのは、ラスプレーンに変身したアルバだ。アナログスティックなどで上下左右に移動できるほか、AボタンやRボタンなどでショット、必殺技ゲージが一杯になっていればLボタンなどで必殺技を撃つことができる。ショットは、最初のステージは3段階まで、先に進むと最大で5段階までパワーアップすることが可能だ。

 自機には体力ゲージが用意されており、敵や敵弾に接触することで一定分減少し、無くなってしまうと道中にオートセーブされたエリアからのやり直しとなる。

シューティングパートは、最初に簡単なチュートリアルが入る。表示されている操作を行なえば先に進めるが、「必殺技を出そう」に関しては必殺技で画面内の敵を全滅させないと先に進めない。必殺技ゲージは、敵を攻撃したり破壊することで増えていく。なお、途中でポーズをかけてヒントを選べば、操作方法を見ることも可能だ

 それ以外にも、取ると一定時間連射速度がアップしたり敵弾も消してくれる全方位弾をその場で発射や、必殺技ゲージMAX、完全無敵のシールドを一定時間張るといったパワーアップも用意されている。どれも取って損のないものなので、積極的に回収しよう。

 これらパワーアップアイテムは、画面端にあたると等角度で跳ね返るものと、そのまま画面外へ消えてしまうものがあるので、取る場合は後者を優先したい。なお前者は、一定時間が経過すると点滅し始め、その後に消えてしまう。また、アイテムは回収した瞬間から効力を発揮し短時間で使い切ってしまうので、必殺技ゲージMAX以外はどちらも消えるギリギリを狙って取るのが上手い攻略方法となる。

パワーアップアイテムは、全部で9種類。バウンドと書かれているのは画面端で跳ね返るタイプで、一定時間画面内を移動後に消える。跳弾不可は、出現後に一定速度で画面左へと流れていき消えてしまうので、その前に回収する必要があり。アルバはパワーアップしていくと、メインショットが最大で5WAYまで広がる。必殺技は、自機前方に強力なビームを数秒間放つ一点集中型だ
自機の体力が少なくなると回復アイテムが高い確率で出現するので、逃さず回収しておこう。ダメージを受けるとアシスト・ドローンは去ってしまうので、このアイテムはあまり無理をして取らなくても良いかもしれない

 敵は、被弾せずに倒すことで倍率がアップしていき、最大で10倍となる。ステージクリア後は、スコアによって獲得できる勲章の数が変わってくるため、なるべく敵弾にあたらないのがコツ。なお、敵弾は自機の弾で相殺できるオレンジ色のものと、破壊不可能なピンク色のものがある。一見すると厚い弾幕に見えるのだが、撃ちまくれば避けられるスペースが見えてくるはずだ。

勲章を3つ獲得するには、被弾することなしに敵をほぼ漏らさず倒していく必要があるので、かなり難易度が高い
敵弾が大きめのタイトルは、自機の当たり判定が小さい場合が多いのだが、本作は自機も敵弾も当たり判定が大きい。そのため、とにかく撃ちまくって弾を消し血路を確保しないとツライ戦いに。個々人が「コレなら緻密に操作できる!」と思えるコントローラでのプレイをオススメしたい

 いくつかのシーンでは、ステージの最後にボスが待ち構えている。画面上部に表示された耐久力を0にすれば破壊となるのだが、どれもクセのある攻撃をしてくるため、一筋縄ではいかない。ラスボス以外は、イモータルシールドを回収すると同時にボスにくっつき、必殺技を撃つという攻撃が効果的だ。

ボスは個性豊かな攻撃を仕掛けてくる。攻撃パターンはほぼ決まっているので、それを覚えてしまうのが攻略のカギ

 ボスが倒せなかったり道中で自機の体力が0になったとしても、クリアできるまで何度でもやり直しとなる仕様だ。シューティングゲームは苦手で、物語だけを楽しみたいという人であれば、最初の難易度選択で“ストーリー”を選んでおくのがベスト。これならば被弾や体当たりでも体力は一切減らないので、確実に先へと進める。とはいえ、個人的にはシューティングゲームをクリアすることで「敵陣を突破して次の物語の地へと辿り着いた」感が盛り上がると思っているので、イージー以上でプレイするのを進めたいところだ。

難易度は全部で4種類。ストーリーなら、説明にあるようにすべてのゲームを死なずにプレイできるので、シューティングゲームが苦手な人はこれを選んでおくといい

 自機や敵機はメカらしいデザインが採用されており、ビジュアルノベル中の温かみのある雰囲気とは反対に、冷たい感じだが出ているのは上手い演出と感じた。時々無線が入り、基地やラスプレーンとの会話も挿入されるのも、戦時中という緊迫感を盛りあげてくれるのに一役買っているという印象を受けた。

シューティングシーンは金属っぽさが前面に押し出され、無機質な中で戦っている感じが個人的好みにマッチした。多関節キャラも出てくるので、そういうのが好きな人の琴線にも引っかかりそうだ

 シューティングパートをクリアすると、再びビジュアルノベルパートへと戻る。これを繰り返してストーリーを進めていくと、新たなラスプレーンのハンナ・ブランデンブルクと出会う。彼女はアルバとは違い、寡黙で、考えていることをなかなか口に出してくれない。しかし、ひとたび心のドアを開けることができれば、主人公のために命をかけてくれる存在となるのだ。プレイしていくうちに、主人公はアルバとハンナ、どちらかを選ぶ場面が出てくるのだが、果たしてあなたは……。

シューティングパートでは、ハンナはアルバとは違った機体特性となっている。大きく異なるのが、メインショットがパワーアップすると縦に幅が広がり最大で5列弾になることと、必殺技が威力の強い誘導弾ショットになること。雑魚敵に囲まれた時には効果を発揮するが、ボス戦では攻撃が分散してしまうこともあり使いどころを選ぶかもしれない

 また、序盤は多少なりとも穏やかさが感じられたストーリー展開も、中盤からは一気にきな臭くなっていく。ヴェールの外側はどうなっているのか、「光」の正体は何なのか、ラスプレーンとは一体どのような存在なのか……さまざまな謎が最後に明かされる時、そこにあるのはハッピーエンドか、それともバッドエンドか? それは、これを読んでいるあなた自身の目で確かめてほしい。

 シューティングパートの道中や結果は関係なく、ビジュアルノベルパートでどの選択肢を選んだかによって結末が変化するので、すべてのエンディングを見るのであれば何度かプレイし直す必要がある。それでも、2回目以降はシューティングパートはLボタンで飛ばすことができるし、ビジュアルノベルパートもLボタンでメッセージが濁流の如く流れていくので、苦になることなく何度でも遊べるだろう。

ビジュアルノベルパートは、Lボタンで選択肢または未読部分まで一気にメッセージが流れていき、シューティングパートはLボタン長押しでパスすることが可能
先の方には、このような展開も待っている。気になった人は、自らの目でその先の展開を見てほしい

 シューティングゲームに関しては、タイトル画面からアーケードモードを選ぶことで、最初のチュートリアル部分を除いた全ステージをプレイすることができる。本編中のシューティングパートと違い、回復アイテムは一切出現しない代わりに点数でラスプレーンの残機が増えていくほか、10倍までしか上昇しなかった倍率も最大99倍までアップしていく。ステージをクリアすれば体力は回復するもののシビアな戦いを要求されるので、腕に覚えのある人は是非ともクリアを目指して欲しい。

残機は、100万点ごとに1機ずつエクステンドする。無謀なスコアに思えるが、99倍を維持して戦うことで思った以上にストックが溜まっていく

荒削りな部分も見受けられるが、展開が気になるストーリーに引き込まれる1本

 個人的に興味のあったシューティングパートだが、自機の圧倒的火力不足が目立つほか、雑魚敵ですら耐久度が高いため爽快感に今ひとつ欠けるのが少々残念だった。スペースインベーダー時代からアーケードゲームをプレイしている身としては、もう少しゲームバランスの調整ができるのではと感じたので、アップデートでいろいろと手が入ることに期待したい。とはいえ、現段階でもダメージを受けずに敵機を倒していくと倍率がアップし面白いようにスコアが上がっていくので、ハイスコア争いが熱いのはナイスなポイントだろう。

 ビジュアルノベルパートは、ストーリーはネタバレになるので展開に関してはノーコメントだが、オートモードがサクサクと進むのは非常に便利。筆者の場合、表示されるメッセージをほぼ一瞬で見てボイスを待たずに次へと進めるのだが、文字送りを早めにしていてもなかなか次が表示されなかったりする作品をいくつも体験してきたため、これまでは積極的にオートモードを使用することはなかった。しかし本作は、メッセージが速いペースで表示されるため、なかなかに快適。ストレスを感じることがなかったので、オートモードに大いに感謝したい。また、2周目以降のプレイは高速スキップが効くので、これもありがたい仕様だ。

 ただ、ゲーム中で使用されている漢字が「直」の左縦棒がなかったり「練」も普段目にする文字と違っており、メッセージを読んでいると気になってしまい、今ひとつ物語にのめり込めなかったのが惜しい部分。調べたところ、どうやら一部の漢字は中国語の簡体字と思われる文字で表示されているようなので、これはアップデートで直ってほしいところだ。

簡体字と思われる文字は、メッセージ部分だけでなく選択肢でも表示される。写真に挙げたメッセージの「~気を取り直して~」の部分は、読んでいて「きをとり……なんて読むの?」となってしまったので、他の漢字共々、修正されるのを待ちたい

 個人的には、まだエンディングを5パターンしか見ていないので、残り3パターンのために選択肢を書き出して、違う世界線に辿り着きたいと作業するほどには世界観にハマっている。いくつか不満を挙げたものの、シューティングパートも1コインクリアを目指してプレイしているので、この価格でこのボリュームはコストパフォーマンスが高いと思いながら、今日もアルバと共に空を飛ぶのだった。

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