レビュー

「俺だけレベルアップな件:ARISE」レビュー

バトルのスピード感がいい! ゲームならではのストーリー演出も注目

【俺だけレベルアップな件:ARISE】

2024年春配信予定

価格:基本プレイ無料(アイテム課金制)

ジャンル:アクションRPG

発売元:Netmarble

開発元:Netmarble Neo

プラットフォーム:Android/iOS/PC

 Netmarbleより今春リリース予定のアクションRPG「俺だけレベルアップな件:ARISE」(略称:「俺アラ」)を、ひと足先に遊ばせてもらうことができた。価格は基本無料で、アイテム課金制。

 本作は全世界で143億PVを記録したWEBTOON「俺だけレベルアップな件」を題材にしたゲームだ。元々は2016年にChugong氏が韓国で発表した小説がオリジナルだが、その後2019年から日本語版のWEBTOONがピッコマにて連載開始されたほか、今年の1月からはアニメ版の放送が開始されている。

 筆者は、オリジナルのWEBTOONは読んでいなかったものの、アニメ版はちょうど毎週楽しみに視聴していた。そのおかげもあって、想像していた以上に感情移入してゲームをプレイすることができた。こちらの記事では、そこからわかったゲームの魅力や特徴についてレビューしていく。

動きのあるカットシーンで原作WEBTOONの雰囲気を再構築!

 この「俺だけレベルアップな件:ARISE」をプレイし始めて、最初に感心させられたのが物語を描いていくカットシーンだ。本作ではWEBTOONがベースに作られているということもあり、コマを切り出したような場面が随所に登場する。それも単にコマを分解して表示しているのではなく、流れるようにスライドしながら表示されるほか、キャラクターの目に動きが付けられていたり、空気感が感じられるような演出が施されている。

 シーンによってはアニメーションが混ざっているほか、ゲーム内の3Dモデルを活用したような場面も登場する。そうしたこともあり、WEBTOONともアニメとも異なる、全く新しいプラットフォームとして作品を見ているような気分になった。

コマがスライドしながら流れるように表示されていく
こちらは連続したカットを並べたてみたところ。単に漫画のコマを切り出しただけではなく、目の動きなど細かい演出も加えられている
漫画のようなカットシーンだけではなく、場面によってはアニメーションも流れる

 こうしたカットシーンには、しっかりと日本語によるボイスが付けられているところもポイントだ。それぞれのキャラクターたちの声を演じているのは、坂泰斗さんや本泉莉奈さんなど、アニメ版と同じ声優陣。物語が描かれるシーンはもちろんのこと、キャラクターがダンジョン内を移動しているときもセリフを話していることがあり、とにかくプレイしていて飽きさせない作りになっている。

 ちなみにゲームをプレイした後で改めてアニメを見直してみたのだが、同じシーンでも別のキャラクターがセリフを話していることがあったり、アングルが異なっているなど、いろいろと細かい違いを見つけることができた。また、同じキャラクターでも原作とアニメとでは微妙に異なる見た目になっている人物もおり、そうしたことも含めて新鮮な気分で作品を楽しむことができた。

漫画ともアニメとも異なるゲーム的な表現も使われている

細かいところまで見たくなる「ストーリーモード」

 本作のメインともいえるコンテンツが「ストーリーモード」だ。こちらは章立てになっており、それぞれいくつかのエピソードをこなしていくことで、原作に描かれていた物語が追体験できるようになっている。

 それぞれのエピソードではストーリーを描くもの、マップを移動してバトルを繰り返すものなどが用意されている。エピソードを進めて、最後に待つ強力なボスとのバトルに挑み、見事勝利することで新たなチャプターが開放されていくという流れだ。

こちらは「ストーリーモード」のチャプター1で用意されているコンテンツだ。それぞれ「STORY」や「BATTLE」、「BOSS」など大まかな内容もわかるようになっている

 この「ストーリーモード」では、原作と同じ主人公である水篠旬の視点で物語が描かれていく。それに加えて、敵側や脇役たちの視点で物語が描かれるサブチャプターが用意されているところも、本作のユニークなポイントだ。メインのストーリーだけでは、たしかに原作通りになぞられてはいるものの、若干あっさり目になっている印象だ。しかし、それを補完するように、同じチャプターから枝分かれしたサブチャプターが楽しめるようになっている。

「ストーリーモード」の選択画面。真ん中が主軸のチャプターで、そこから枝分かれするようにサブチャプターがプレイできるようになっている
サブチャプターでは、必ずしも味方側のキャラクター視点とは限らず、敵側のキャラクターを操作していくものも登場する

 物語を楽しめるコンテンツとしては、ほかにも「ハンター記録室」と呼ばれるものがある。こちらはハンターごとの個別のストーリーが用意されているほか、「ストーリーモード」同様にバトルも盛り込まれている。ちなみに、「ハンター記録室」をプレイするには、ゲームにログインするごとに1日ひとつだけもらえる鍵が必要だ。

ゲームにログインすることで、「ハンター記録室」がプレイ出来る鍵が毎日ひとつだけもらえる
「ハンター記録室」では、ハンターごとに個別のストーリーが楽しめる

スピード感あるバトル。主人公とハンターで異なる操作感に

 では肝心のバトルはどうだろうか。本作ではバーチャルパッドを用いて操作するが、これがかなりスピード感のある体験となっている。

 主人公の水篠旬は最大ふたつの武器を装備することができ、通常攻撃のほか、2つの通常スキル、さらに武器ごとに用意されている固有スキルの合計4種類のスキルをセットできる。攻撃の手数が多く用意されているので、その操作だけでもかなり楽しい。

 加えて、特定の条件を満たすことでオレンジ色に光るQTEスキルのボタンが表示される。見逃さずにそのボタンを押すことで、特別な演出付きで攻撃を加えることが可能だ。

 それとは別に、バトル中に貯めたパワーゲージが満タンの状態になると必殺技が発動できるようになる。こちらは紫色のボタンで表示され、QTEスキルよりも派手な演出で大きなダメージを敵に与えることができる。手数の多い攻撃と、どかんと派手にダメージの出る演出付きの攻撃で、メリハリのある戦闘となっている。

右下のボタンを組み合わせていきながら攻撃を加えていこう
緑と赤いマークが付いているボタンは、武器固有のスキルだ。装備しているものによって、異なるスキルが使えるようになる
オレンジ色のボタンが光ったら、QTEスキル発動のチャンスだ
必殺技ではQTEスキルよりも派手な演出でダメージを与えることができる

 バトルでは、必ずしも主人公の水篠旬だけで戦うわけではない。メニューでは、最大3人までのハンターを選んでパーティ編成できる。新たなハンターたちは、ゲームを進めていくことで追加されるほか、ガチャからも入手することが可能だ。

「自動編成」を選ぶと、能力の高い順に自動でハンターを編成してくれる
ガチャでは、ハンターに加えて装備も入手することができる

 それぞれのハンターは、特徴的な攻撃スタイルやスキルを持っている。たとえば馬渕勲はスキルで火炎による攻撃ができるほか、剣術にも長けている。また、観月絵里は、魔法の力で敵にダメージを与えることができることに加えて、ヒーラーという職業らしく味方のHPを回復することができるといった感じだ。

 パーティで編成した仲間のスキルは、画面上部に表示されている顔のアイコンをタップすることで発動できるので、積極的に発動して戦闘をより有利に進めたい。

それぞれのハンターが持つスキルは、メニューの「ハンター」から確認できる。スキル発動時のプレビューも表示可能だ

 また一部のダンジョンでは水篠旬を除いたハンターのみで戦っていくこともあり、こちらはまた違った味わいを楽しめる。

 ハンターのみが参加するバトルでは、QTEスキルとキャラクターの切り替えが1つのボタンで実行される。切り替えと同時にQTEスキルも発動するという仕組みで、これが爽快でクセになる。

 ハンターそれぞれの能力は水篠旬と比べれば、手数という点から見ても劣るものの、切り替え&QTEスキルのシステムによって、その分パーティの総力戦のようになるところが面白い。

 そこそこ速い回転速度で切り替えられるし、どんどん使っていった方がバトルが有利になる。何より自分で選んだ編成の特徴がより前面に出てくる仕組みと言え、ここも心地よさに繋がっているのかなと思う。

水篠旬をプレイ中は、画面右上に並んでいるアイコンをタップすることでサポータースキルが発動できる
水篠旬以外のハンターのみで戦わなければいけないダンジョンでは、オレンジ色のアイコンをタップすることでキャラクターの切り替えができる

 そして、バトルの最大の醍醐味ともいえるのが、劇中にも登場した強力なボスキャラクターたちとの戦いだ。いずれもそれまでのザコキャラクターとは比べものにならないぐらいに体力が多く、攻撃力も高い。また、ボスごとに異なる攻撃を仕掛けてくるため、緊張感のあるバトルが楽しめる。

 ボスキャラの多くは、激しい攻撃を加える前に赤く攻撃ポイントが表示されるなど予備動作がある。それを見て、ダッシュなどで交わしていきながら、通常攻撃やスキルでダメージを与えていく。

赤い印がボスの攻撃範囲を表している

 こうしたボスとのバトルならではともいえるのが、とどめを刺すときの場面だ。このときも、必殺技と同じように紫色のボタンが表示されるのだが、そちらをタップすることでボスごとに異なる演出で撃退するシーンが見られるのである。通常の戦闘から難易度はグッと上がるが、その分敵のギミックや演出に力が入っているので、ボス戦もプレイの楽しみのひとつとなる。

 ちなみに、今回プレイした範囲では、制限時間が過ぎてクリアができなかったことが何度かあった。そうしたときは、水篠旬やパーティに参加するハンターたちの装備などを見直すいいチャンスだ。

ボスとの戦闘終盤、とどめを刺すボタンが表示
ボスごとに異なる演出で倒すシーンが見られる

ステップ・バイ・ステップで学べるゲームシステム

 手数が多いなど色々と操作が忙しそうな本作だが、ゲーム序盤はいわゆるチュートリアル的な内容になっており、少しずつできることが開放されていくステップ・バイ・ステップ方式でゲームシステムが学べるように作りになっている。

キャラクターを移動するときはマーカーを目安にできるほか、ルート上にもポイントが表示されておりわかりやすい

 最初はダッシュの仕方から学んでいき、徐々に戦闘時のスキルの使い方などが身につくような作りだ。ひとつひとつの項目はそれほど難しくないが、見逃してしまったときなどはメニューに用意されている「チュートリアル」の項目で確認することも可能である。

 プレイ中は、向かうべき目的地がナビゲートで表示されるため、どこに行けばいいのか迷うことはないだろう。また近くの敵や目的の方向を向いてくれる「ターゲットボタン」も用意されており、そうしたシステム上のフォローもしっかりある。

見逃してしまったときや操作がわからなくなったときは、メニューからチュートリアルを選ぶことで確認することができる。ちなみに、チュートリアルは見るだけでも報酬がもらえるのでオススメだ
最初は表示されているボタンの数も少ないが、徐々に増えていく

主人公ならではの「転職」でさらに楽しく

 キャラクターの成長要素としては、水篠旬とそれ以外のハンターたちで異なる。水篠旬は武器をふたつまで装備することができるほか、レベルアップするごとに能力値を振り分けてステータスを強化することができる。また、これは他のキャラクターでも同様だが、武器や装備のレベルを上げて強化することも可能だ。

 もちろん、レベルアップできるのは俺(水篠旬)だけ……というわけではなく、主人公のレベルに合わせてハンターたちもレベルアップしていくことができる。レベルアップにはゲーム内通貨のゴールドが必要だが、可能な限り上げておいた方がいいだろう。

水篠旬は、レベルアップ時に能力値を振り分けて強化することができる
水篠旬だけではなく、ハンターもレベルアップが可能だ

 さらに、主人公ならではの特徴のひとつに、特定の条件を満たすことで転職できる、というものがある。転職するには、自分の分身とも言える存在と戦い勝つなどの条件を満たす必要があるが、それによって能力値を獲得することができるほか、新たなスキルも使えるようになる。

 アニメの劇中ではストーリーが進んで行くにつれて、少年のような見た目だった主人公が急に厳つくなっていったが、本作でも最初の転職で「暗殺者」になることで、急激に強そうなスタイルに変化するといった要素も盛り込まれている。

自分の影ともいえる存在に撃ち勝つことで、最初の転職が行える
転職によって見た目も急に厳つい雰囲気に

 この転職は、暗殺者からスタートしてナイトロード、ネクロマンサー、影の君主と変わっていくことができる。今回はチャプター6までがプレイできたのでナイトロードで止まってしまったが、影の君主に転職を果たすと戦闘中に「影の軍団」が召喚できるようになる。これにより、さらに強力なボスに挑むことが可能となるようだ。

目指すは影の君主!

 今回紹介したもの以外にも、ゲートの攻略や「ストーリーモード」に登場したボスたちと戦えるハンター専用コンテンツの「封鎖任務」など、様々なやりこみ要素が用意されている。元々RPG的な世界観と要素を併せ持つような作品ではあるが、それをさらに本物のゲームとしてプレイ出来るというのも、なんとも面白いところだ。

 オリジナルのWEBTOONやアニメファンはもちろんのことだが、このゲームをきっかけにそれぞれの作品に触れたくなるような作りにもなっているので、少しでも興味があるならばぜひとも挑戦してもらいたい1本である。