レビュー
「Returnal」レビュー
TPS×弾幕シューターの新しさ! “1プレイでどこまで行けるか”のシビアさにどっぷり浸かる
2021年4月29日 21:00
「Returnal」は、はっきりと“弾幕シューター”だと言える。3Dにフィールドが広がるTPSではあるのだが、何と言っても最初の雑魚敵から“弾幕”を放ってくるところがあまりにも特徴的だ。
プレイステーション 5専用タイトルとして発売される本作は、死を繰り返しながら未知の惑星「アトロポス」を探索するローグライクTPS。プレーヤーは宇宙飛行士「セレーネ」となり、惑星と繰り返される死からの脱出を目指す。
面白いのは、2Dやクォータービューのいわゆる“弾幕シューター”で見られるような弾幕表現が、ほぼそのまま3D空間に落とし込まれている点。弾幕は空間全体に向かって放たれて、プレーヤーに向かって襲いくる。対するプレーヤーは主人公を正確に操って、大量の弾をかいくぐりながら、敵に渾身の銃撃を浴びせていく。
“TPS×弾幕シューター”のアイデアが、「混ぜてよかったんだこれ!」という驚きとともに手応えとして実感できる。そして、緊張感を高める“負けたら最初から”というシステムのシビアさ。やればやるほど、本作の奥深さにすっかり虜になってしまった。また、PS5専用タイトルならではの体験ももちろんある。以下では、より詳しく本作の内容をご紹介していきたい。
わずかなリターンを拾う探索、すべてをぶつけるボス戦
本作では、体力が尽きるとそれまで集めた装備やアイテムなどをすべて失い、一部の特別な装備を除いてゼロの状態で最初からやり直すことになる。いわゆるローグライクのゲームだ。
マップはプレイする度に変化し、マップの構造やアイテムの出現位置、内容はランダム。マップを攻略し、アイテムを集めて装備を充実させつつ、奥へと進んで目標を達成する。ボスを倒すなど、チェックポイントとなるような目的を達成できれば、ショートカットの道が出現する。何度も挑戦しながら、少しずつストーリーを進めていくようなイメージだ。
成長のためじっくり時間をかけて探索してもいいし、ガシガシ進んでプレイスキルで敵をねじ伏せてもいい。とにかく、“1回のプレイでどこまで到達できるか”へのチャレンジが、本作最大のポイントになっている。
操作感はいわゆるTPSで、撃つ以外にも走る、ジャンプ、ダッシュといった操作が可能。身体能力は全体的に高めで、走るとかなりビュンビュン飛ばせる。探索が進むと移動距離も長くなるが、動きの速さによって「移動が面倒くさい」とはならない。そして何より、素早さは弾幕を避けるのに必須だ。素早さを活かし、戦闘を有利に進めるために、ときに大胆にマップを移動することも大切となる。
探索中に注意すべきことはたくさんある。たとえば、ダメージを受けずに敵を倒すことで上昇していく「アドレナリン」。「アドレナリン」は最大5ゲージまで上昇し、段階ごとに射撃に追尾弾が付くようになったり、攻撃力が増加したりする。敵を倒せば倒すほど、こちらが有利になる。
またステータスのひとつ「熟練度」は入手する武器のレベルに関わる。「熟練度」上昇のアイテムを取ったり、敵を倒すと増加し、熟練度と同等レベルの武器がマップに出現する。武器のレベルの高さは攻略のしやすさに直結するので、常に注視したい。
あるいは硬貨の役割を果たす「オボライト」。マップに落ちていたり敵を倒すと入手できるもので、マップにいくつかある「ファブリケーター」で支払うと装備品「アーティファクト」や消費アイテムと交換できる。
その「アーティファクト」は、獲得すると主人公「セレーネ」の能力を底上げするアイテム。スーツ耐久度(体力)の最大値を増やしたり、敵の死体が爆発して周りにダメージを与えるようになったり、内容は様々。オボライトとの交換か、アイテムが入った「コンテナ」から収集できる。
まだある。その「コンテナ」だが、あっさり開けられるものもあれば、ロックがかかっていたり、「悪性因子」に侵されている「悪性コンテナ」なるものもある。ロックがかかっているものはキーを見つけておけば安全に開けられる一方、「悪性コンテナ」は開けるとスーツが「故障」する可能性がある。
「故障」の種類もじつに豊富で、高い場所から落下するとダメージを受ける、散らばったオボライトの消滅時間がはやまる、新しい武器が入手できないなど嫌なものばかり。しかし修理も可能で、敵を倒す、オボライトを集めるなどこれまたランダムな条件を達成すればいい。
ほかにもメリットとデメリットの両方の効果が付く「パラサイト」など、探索中にはありとあらゆるリスクとリターンの駆け引きが待っている。バランス的には、敵の強さも含めてリスクが圧倒的に大きい。
その中にあるわずかなリターンを細かく拾い上げて成長させていくのだが、上手く行かずに倒れてしまうことの方が多い。それでも、多くのリスクを覚悟しながら、敵と戦い、武器を選別し、ステータスを整え、その先に待つ強敵と戦う準備を整えていく。
そして、待ち受けるのは弾幕だ。ボスクラスになると、わずかな操作ミスすら厳しい攻撃を激しく激しくぶつけてくる。緩急つけた複数の弾幕攻撃を同時に放ってきたり、弾幕と近接攻撃を組み合わせてきたり。ボス戦では、プレーヤーが積み重ねてきたステータスとプレイスキルをすべてぶつけることになるので、戦闘中は緊張とスリルと興奮で感情が驚くほど高ぶる。何と言っても、負けたら最初からやり直しだから。
ところで敵の放つ弾幕、あまりにきれいな“弾幕”なのが面白いなと思っていたのだが、開発元は「RESOGUN」などのHousemarqueだと知って納得がいった。「RESOGUN」などを見ると明らかなのだが、Housemarqueは紛うことなき弾幕シューターを得意とするメーカーだ。どうりで弾幕の出し方が手慣れているわけである。今あらためて見返してみると、敵が小さなボクセルとなってバラバラと崩れ落ちる表現などは、「Returnal」とも共通していて興味深い。
これを踏まえると、「Returnal」はゼロからプレイするアーケード的なシューターを、ループものとして再定義した作品だと解釈しても面白い。ストーリーやその他のエッセンスで“1回のプレイでどこまで到達できるか”へのモチベーションを最大化しているところが発明だし、まんまとHousemarqueの得意技に持ち込まれているところが上手いと思う。
「死を繰り返す」というとソウル系のタイトルが思い浮かんだりするが、方向性やプレイ感は似ているようでかなり違う。「Returnal」独自の「死を繰り返す」ゲーム体験が提案されていて、筆者はそこに強く引き込まれている。
ストーリーは“得体が知れない”。奇妙さこそが本作の魅力
今まで「Returnal」のストーリーには深く触れてこなかったが、これが奇妙でとてもいい。
本作は、宇宙飛行士のセレーネがある惑星へ不時着したところから話が始まる。生き延びるために探索を開始したセレーネが最初に発見するのは、自分とまったく同じ宇宙服を着た自分(とそっくり)の遺体だ。
しかもよく見ると、惑星のあちこちに自分の遺体が転がっている(実際、様々な場所にある)。中には音声ログを残している遺体もあって、すでに死んだセレーネ(のような人物)が何を思っていたかも断片的にわかる。それが何を意味するかはまったくわからないが、何か想像の何歩か先を行くようなことが起きていることだけはわかる。
なので、トーンにはややサイコサスペンス的なニュアンスもある。とくに、要所要所で登場するセレーネの“家”は印象的だ。
この“家”は、惑星のある場所にバリバリの違和感とともに建っていて、ストーリー進行に合わせて中に入れる。中に入ると視点は一人称になり、セレーネの記憶にまつわるやはり奇妙なイベントがはじまる。住宅の感じにはやや「P.T.」的怖さもあったりして、「Returnal」というタイトルそのものの得体の知れなさをさらに増幅している。
謎だらけだがそこが魅力になっているし、プレイすればするほど、ゲーム的にもストーリー的にも「Returnal」の深みにどんどんハマっていることがわかる。何度倒されてもプレイする手が止まらなくなっていくような、そんな深みだ。
ロード時間、触覚、そして「構え」。PS5専用ならではの機能
本作はPS5専用タイトルであり、専用タイトルならではの体験も多くある。
たとえばローディング時間。本作はとにかく死を繰り返すのだが、ロード時間はほとんどない。死の直後、ムービーをスキップすれば数秒後にはプレイが再開される。本作をプレイするなかで、ロードに関するストレスはほとんどないだろう。
またDualSenseのハプティックフィードバックも心地よい。銃の反動、走る、ジャンプするといったものから、ポポポ……というオボライト取得時、雨の感覚、激戦での振動まで、細かく振動が来る。
さらには、トリガーの重さが場面にあわせて自由変化するアダプティブトリガーを活かした独特の操作もある。本作ではL2トリガーを押すと銃を構えて画面がズームするのだが、操作が「半押し」と「全押し」にわかれている。L2トリガーは半分あたりでカッと1回止まるようになっていて、これで「半押し」。通常の銃の「構え」ができる。
抵抗を乗り越えてさらに全部押し込むと「全押し」で、すると武器が「セカンダリファイア」モードに切り替わる。「セカンダリファイア」は、強力だが数秒のリチャージが必要な特殊モード。武器種とは関係なくランダムにあるモードで、レーザーだったり爆弾風だったりと様々な種類がある。
つまり、「半押し」と「全押し」で攻撃の種類が変わるわけだ。トリガー1つに機能を2つ与えていて、実質ボタンを1つ増やしたような形だ。面白い使い方である。
「Returnal」は見た目こそ渋いが、中身はこれでもかと詰まった老舗の肉まんみたいなタイトルだ。死を繰り返して遊べば遊ぶほど、さらなる面白さを発見するような興味の尽きない作品となっている。得体の知れない弾幕の世界、とことんまで楽しみたいと思う。
©2021 Sony Interactive Entertainment Europe. Published by Sony Interactive Entertainment Europe Ltd. Developed by Housemarque Oy. “Returnal” is a trademark of Sony Interactive Entertainment Europe. All rights reserved.