(2015/12/4 11:22)
国内では11月19日に発売された「Xbox One Elite」。その魅力については前回レビュー記事でたっぷりお伝えしたとおりだ。通常価格49,980円(税別)という値段のため気軽に手を出せる代物でないことは確かだが、これに付属するゲームコントローラー「Xbox Elite ワイヤレスコントローラー」は、ゲーマーであれば是非1度は手を伸ばして欲しいと思えるほどの傑作だ。
このXbox Eliteコントローラーは、北米では単体での販売が開始されており、定価149.99ドルというゲームコントローラーとしては高価な価格設定ながら、実際には深刻な品薄のため定価ですら買うのが困難という状況が続いているほどの人気ぶり。日本国内ではいまのところXbox One Elite本体のパッケージに含まれるものしかないものの、単体販売が行なわれれば間違いなく、Xbox Oneユーザーの枠を超えて人気を集めることになるはずだ。
Xbox One Elite本体のレビューでも簡単にご紹介したが、まだまだ語り尽くせないXbox Eliteコントローラーの凄さ。現時点で間違いなく人類史上最強の汎用ゲームコントローラーといえるこの一品について、Windows 10 PCでの使い勝手も交えながらさらに深くご紹介していこう。
高級感溢れる各部品が、信じられないほどスムーズかつ快適な操作感を実現
Xbox One Eliteコントローラーは、機能的には通常のXbox Oneコントローラーに4つのカスタマイズ可能ボタンを追加したものと言えるが、根本的な品質の違いは物理的な部分にこそある。
2つのアナログスティックの軸部分はアルミの削り出しとみられる金属製、銀色に輝くDパッドも同じく金属製で、見た目の高級感もさることながら、実際の操作性という部分でも本質的な進化を果たしている。金属部品を多用してることもあり、コントローラー全体の重量は348gと、標準のXbox Oneコントローラー(265g)よりもやや重いことを除けば、すべての操作が一発で違いを感じられるほどに「軽い」。
特に違いが歴然なのが左右両方のアナログスティックだ。Xbox Oneコントローラーのアナログスティックは通常でもテンションが軽く一定しており、非常に操作しやすい傑作だが、Eliteコントローラーではそれがさらに磨かれている。スプリングのテンションがさらにやわらかくなっている印象で、軸そのものの剛性の高さも相まって極めてスムーズかつ正確なスティック操作ができる。スティックを倒しはじめて倒しきるまでの抵抗感は正確に一定で、気持ちよいほどスムーズに「ジワ押し」ができるなど、快適性は間違いなく一回り上のレベルだ。
アナログトリガー(LT、RT)の感触も、標準とは少し違う。通常のXbox Oneコントローラーでは、アナログトリガーを一気に押し込んだ際に帰ってくる抵抗は「カッ、カッ」とプラスティック同士が接触する軽い音を伴うが、Xbox Eliteコントローラーの場合、接触音は「コッ、コッ」と、一回り低く柔らかい感触がある。コントローラー全体の剛性が高いことや全体的に重量が増していることが、激しい操作時の衝撃を柔らかく吸収してくれている印象だ。おかげで長時間プレイ時でも指が疲れにくい。
そしてこのアナログトリガーに、背面のスイッチ切り替えでハーフロックできる機構があるのが面白い。通常、トリガーは100%まで押し込めるが、背面の緑色のスイッチを切り替えると、50%地点でロックがかかるようになるのだ。これはトリガーをデジタル的に使うゲーム(FPS等)で操作のイン・アウトを素早くするために使えるし、また、「Forza Motorsport」のようなレースシムでタイヤロックを防ぐためにブレーキのジワ押しを助けるためにも使える。これを左右のトリガーそれぞれ別個に切り替えられる、というのが凄く良い。
そして、ハードウェア面での極めつけの違いとなるのが背面に用意された4つのカスタム可能なパドル型ボタンだ。4つのパドルにはXbox One本体側の設定画面を通じて任意のボタンや軸の機能を割り当てることが可能(後述)なほか、個々に着脱も可能。使う分だけのパドルを装着しておくことで、おもわぬ誤操作やホールド感の変化を避けることができるなど、各プレーヤーの細かなニーズにきめ細やかに応えられる機能を有しているのだ。
ボタン割り当てやアナログ軸の感度まで! 隅々まで行き届いたカスタマイズ機能
通常のXbox Oneコントローラーから物理的にかなりグレードアップしているXbox Eliteコントローラーだが、機能のカスタマイズ性という面ではもはや全く別物レベルの存在だ。Xbox One本体側のアプリ「Xbox アクセサリー」でボタン設定や、各アナログ軸、トリガーの感度設定といった調整が隅々まで可能となっているのだ。
まずボタン設定。設定画面では、「割当先のボタン」、「割り当てる機能」を個別に選択可能で、通常ボタンの機能を変更できるほか、背面の4つのパドルに任意のボタンや機能を割り当てることが可能。マクロ機能までは装備していないものの、あらゆるボタンやトリガー操作を割り当てることができるため、様々なシチュエーションで役に立つ。
例えばFPS系のタイトル。リロードやジャンプ、近接攻撃といった操作はA/B/X/Yのボタン部分に割り当てられている事が多いが、右スティックでエイミングを行なっている間は、普通は右手親指を使うためこれらの操作をすることができない。そこで、それらの機能を背面パドルに割り当てる。すると、ゲーム中1度も右スティックから親指を離すことなく、全ての操作が可能になるのだ。例えばBボタンで近接攻撃をするゲームで、エイミングを継続しながら近接攻撃を発動できるというのはあからさまに有利だし、プレイ上も快適だ。
もうひとつの好適な例はレースゲーム。背面パドルを左右2本装着して、シフトアップとシフトダウンに割り当てる。こうすると、いつもなら右手親指でX、Bあたりのボタンを押して行なうシフトチェンジ操作が、ハンドルコントローラーのパドルシフトと同様の感覚で中指もしくは薬指で可能になる。このほうが直感的だし、右手親指をスティックに乗せて視線操作が常にできるとなれば、コーナリング時の感覚も全く変わってくる。ハンドルコントローラー+ヘッドトラッキングデバイスの組み合わせの次くらいに快適な環境のできあがりだ。
こういった典型的なジャンルのゲームでのボタン割り当ては、標準のプリセットとしてあらかじめ用意されている(Forza 6、GoW: Ultimate Edition、Halo 5等が用意)ので、まずはそれらの既存設定を試してから、自分用に調整していくのがよいだろう。調整した各種設定は新たなプリセットとして保存し、必要に応じてロードすることができるほか、Eliteコントローラー本体に2設定を保存し、スイッチで即座に切り替えることも可能だ。
もうひとつ、ゲームジャンルごとにしっかり活用したいのが各アナログ軸の感度設定だ。これは単に軸感度の大小を選ぶようなものではなく、アナログ的な入力量に応じた反応の強度がエンベロープで示される本格的なもの。高級なフライトスティックや、本格派のフライトシミュレーターでのみ存在するようなやつだ。
このアナログスティックの反応エンベロープを直接編集することはできないが、典型的なシナリオにあわせた「規定」、「スロースタート」、「クイックスタート」、「インスタント」、「スムーズスタート」の5設定から選べる。
例えば「スロースタート」は、ジワ押し時の正確性をさらに高める際に最適だ。FPS系タイトルでエイミング精度を高めたいとか、レースゲームで高速コーナー時の安定性を高めたいなどのシチュエーションに最適。これの繁体の感覚を与える「クイックスタート」は、エイミングにクイックな反応が欲しい際に使うと良い。さらに反応性が高まる「インスタント」では、スティックがほぼ0か1かのデジタル入力と化す。3人称のアクションゲームや格闘ゲーム、サッカーゲームなど、ジワ押しがほぼいらず、操作スピードが物を言うゲームでの使用に最適だ。
これに加えて左右トリガーのデッドゾーン設定も可能となっているが、これについてはもともとトリガーの入力が極めて正確であることもあって、筆者の場合は際立った違いを感じられなかった。まあ、力みすぎて銃を暴発させてしまうとかの、思わぬ誤操作が気になるプレーヤーにとっては有り難みがあるかもしれない。
といった事細かな設定を通じて、各ゲームジャンル、各ゲームタイトルに合わせた最適・最善な操作系を実現できてしまうのがXbox Eliteコントローラー最大の強みといえる。特に背面4つのパドル型ボタンが着脱可能であることも素晴らしい。これらのパドルは、配置的にコントローラーをしっかりホールドしようとするとどうしても指が干渉して暴発しやすいため、4つ全部を使いこなすにはかなりの慣れが必要。なので、まずは1本だけ装着、次は2本装着という感じで、既存の感覚を少しずつ拡張子していくというプレイスタイルをオススメしたいし、実際にそれができるのがこのコントローラーの素晴らしいところだ。
付属のカスタマムパーツで更に操作感を最適化。ロングスティックの精度は次元が違う!
Xbox Eliteコントローラーのカスタマイズ機能として特筆すべきなのは、物理的なカスタマイズも可能である点。こればっかりはどうひっくり返しても通常のXbox Oneコントローラーにはマネのできない(物理的に)部分である。
Xbox Eliteコントローラーには、標準で3セットのアナログスティックパーツと2セットのDパッドパーツが付属している。特にアナログスティックの換装による操作感の変化は、想像以上のものがあるので、少し掘り下げてみよう。
まず、標準で装着されているスティックは、Xbox Oneコントローラーのものと同じ、トップ部分が凹んでいて、その周囲にすべり止めのエンボス加工が施されたショートタイプ。換装可能パーツとして用意されているのは、スティック軸の長さがやや長く、トップ部分がキノコのように丸みを帯びたミドルタイプと、軸の長さが非常に長くなっているロングタイプの3種だ。
このロングタイプのスティック、はじめは何の役に立つかよくわからなかったのだが、実際に装着してみるとなかなか凄い。スティックのニュートラルから最大入力時までのストロークが倍以上に長くなるため、アナログ入力の正確性がグンと向上するのだ。例えば「Forza 6」でこれを試した所、コーナリング時の安定性があからさまに向上した。車間距離を詰めて極端に狭いスペースに飛び込んでいくようなバトルも快適にできる。これは通常のスティックとは次元が違うほどの精度、体験だ。
そのかわり、ロングタイプのスティックを使うと、どうしてもフル入力までのスピードが物理的に落ちる。なので、格闘やサッカーゲームのように素早い入力の繰り返されるゲームではいまひとつ合わない。そういうゲームでは丸型トップのミドルタイプスティックか、標準のショートタイプがオススメだ。FPS系のゲームでは、接近戦と長距離戦で求められるエイミングの精度・スピードが変わってくるため、得意スタイルに合わせて選んでみよう。いつものプレイがひときわレベルアップするはずだ。
なおDパッドについては、Xbox Eliteコントローラーで標準装着されている丸型ボタンが充分に使いやすい。とりわけ、上下左右の間違いない入力や、斜め方向の確実な入力もできるところが好印象だ。Xbox Oneコントローラーと同じ十字型ボタンも換装パーツとして用意されているが、よほど丸形ボタンが合わないという事でもない限り、丸形ボタンがオススメだ。
もっとも、Xbox Eliteコントローラーでは、Dパッドに割り当てられる武器切り替え等の操作を背面パドルボタンに割り当てられるので、Dパッドの使用頻度自体が低いということもある。それでも換装可能な選択肢を用意しているというのは、本製品が全てのプレーヤーにとって最善なオプションを提供しようとする姿勢に見えて好印象だ。
Windows 10でも完璧に使える!PCゲーマー垂涎のコントローラー
通常のXbox Oneコントローラーと同様に、このXbox Eliteコントローラーも、Windows 10での完全動作が保証されている。特に期待以上だったのは、各種カスタマイズ機能もXbox One上と全く同じように使えることだ。
Xbox EliteコントローラーをPCにつなぐと、デバイスドライバ的にはXbox Oneコントローラーとして認識される。Xbox Oneであらかじめカスタマイズを済ませておけば、設定内容はコントローラー本体内部に保存されているようで、このままでもカスタマイズされた状態(ボタンやスティックの設定等すべて)での使用が可能だ。また、このような使用であればWindows 10以前のWindowsでも使用できる(Xbox Oneコントローラー対応ドライバが提供されているWindows 7以降)。
カスタマイズ機能も含めてフル機能を活用したい場合は、Windows 10が必要だ。これは、Xbox Eliteコントローラー用のカスタマイズアプリ「Xbox アクセサリー」が、Windows 10専用のユニバーサルアプリとなっているためだ。このアプリは、標準のXbox連携ソフト「Xbox」アプリには統合されておらず、別途Windowsストアでのダウンロードが必要なのでご注意を(無料)。検索窓に「Xbox アクセ」と入力すれば一発で出てくるはずだ。
この「Xbox アクセサリー」では、上述したXbox One上でのカスタマイズと全く同じ画面で、全く同じことができる。Xbox Oneで作った自分用の設定プロファイルが自動的に読み込まれたのには驚いた。各種ゲーミングマウスと同じように、Xbox Eliteコントローラー自体の内蔵メモリを経由して、デバイスの状態が同期されるのだろう。このXbox OneとWindows 10の区別のなさ、プラットフォームの透明感は感動的だ。
しかし欲を言えば、カスタマイズ用の機能はきちんと「Xbox」アプリに統合して欲しいところだ。ちなみに筆者は最初、このアプリの存在に気が付かず、いつもの「Xbox」アプリ上でコントローラーのカスタマイズ項目を探したものの、存在しないため途方にくれてしまった。Xbox関連機能はぜひ一箇所に統合してもらいたい。
なお「Xbox」アプリを通じてWindows 10上でXbox Oneをストリーミングプレイすることもできるが、この際もXbox Eliteコントローラーの設定はきちんと活かせる。各種設定がコントローラーそのものに保存され、またコントローラー側で処理されているためだ。つまり、他のPCや他のXbox Oneといった、いつもと違う環境にコントローラーを持ち込んでも、いつもの感覚でプレイできるというわけ。オフイベントや大会等にも参加するような、活動的なゲーマーにとっては非常にありがたいところだろう。
ただし、Xbox Oneストリーミングプレイを通じてのカスタマイズは付加。各種設定を行なうためにはコントローラーがハードウェア的に接続されている必要があるためだ。Win 10マシンに繋いでるならWin 10側で、Xbox One側につないでいるならXbox One側でカスタマイズしよう。
このように、Xbox Eliteコントローラーは、隅々までこだわり、磨き上げられ、そしてプレーヤー自身の手で最適な形に進化していくコントローラーだ。その質感、機能、カスタマイズ性、ともに現時点で人類最強のコントローラーというほかない。日本国内で単体販売されていないのがもったいない限りである。筆者なら、Windowsゲームでの使用のために1個、Xbox Oneの使用のために1個、計2個は常備したいくらいの逸品である。すべてのゲーマーの皆さんに強く強くオススメだ。