PCハードウェアレビュー「G-Tune LITTLEGEAR i310PA1-SP2」

LITTLEGEAR i310PA1-SP2

Radeon R9 Fury Xを搭載したハイエンドPCを、手軽に持ち運ぶという発想

ジャンル:
発売元:
  • マウスコンピューター
開発元:
  • マウスコンピューター
プラットフォーム:
価格:
発売日:

上部に取り付けられた持ち手が特徴。本体後方から手を入れて持ち上げる

 マウスコンピューターのゲーミングPCブランド「G-Tune」が9月末より展開している「LITTLEGEAR」シリーズは、その名のとおり、Mini-ITXベースの小型デスクトップPCだ。小さいだけでなく、GeForce GTX TITAN XやRadeon R9 Fury XといったハイエンドGPUも搭載でき、性能面でも妥協しない立派なゲーミングPCである。

 加えて、筐体の上部にハンドルが装備され、持ち運びにも考慮されているのが特徴。最近はOculus Riftを始めとしたVRデバイスがブームになっているが、動作には高性能なPCが必要になることが多い。そのためデモ展示を行なう際に大型のデスクトップPCを持ち込まねばならず、開発者の悩みの種になっていた。そこで同社では、小型で可搬性に優れ、性能も妥協しないPCを開発するに至った。

 開発の詳しい経緯や本体の構造については、以前行なったインタビュー記事も合わせてご覧いただきたい。今回は実機をお借りして、ベンチマークや使用感についてお伝えする。試用したのは、AMD製ハイエンドGPUであるRadeon R9 Fury Xを搭載した「LITTLEGEAR i310PA1-SP2」だ。

設計者の苦心が見える超コンパクト&ハイエンドゲーミングPC

 まずはスペックを見ていこう。

 スペック
CPUCore i7-6700
チップセットIntel H110 Express
GPURadeon R9 Fury X(4GB)
メモリ16GB DDR3L-1600(8GB×2)
HDD1TB
光学ドライブなし
電源700W(80PLUS GOLD)
OSWindows 10 Home
価格194,184円(税込/送料別)

 標準で水冷ユニットが付属するRadeon R9 Fury Xのインパクトが強い構成だが、他にもCPUがCore i7-6700、メインメモリ16GBと、高性能パーツを詰め込んだスペックとなっている。メインメモリは8GB×2で、これ以上の増設は不可。ここは小型ゆえに仕方ないところ。

 ストレージは標準モデルだと1TB HDDのみ。持ち運ぶことを前提にするなら、衝撃に弱い3.5インチHDDよりもSSDを使いたいところ。カスタマイズで、M.2接続のSAMSUNG SM951 M.2 SSD(PCI Express×4接続)の256GBまたは512GBを追加できる(SATAタイプのSSDも選択可能)。今回は話題の超高速SSDを組み込んだマシンが見られず残念だが、もし本機を購入する際にはSSDの追加を強くお勧めしたい。

 HDDの容量は最大6TBのものに変更が可能。光学ドライブは非搭載だが、本体の上から挿し込むスロットイン式DVDスーパーマルチドライブもカスタマイズで追加できる。

 電源は700Wの80PLUS GOLD認証品。Mini-ITXに700Wの電源を積むというと冗談に聞こえるが、スペック的に考えればそれくらいは必要で、よく詰め込めるなと感心してしまう。

 USB端子は6つ(うち4つがUSB 3.0)と豊富。サウンド端子は右側面にヘッドフォンとマイク入力、背面にライン出力、ライン入力、マイク入力がある。デジタル入出力はなく、必然的に出力は2chまでとなるので、サラウンド環境にしたい人は何かしらのUSBサウンドユニットが必要だ。

 熱周りの検証は同社で十分になされており。動作に支障が出るようなことはないが、小型ゆえに発熱が気になるという人もいるだろう。CPUグリスをシルバーグリスやナノダイヤモンドグリスに変更するカスタマイズメニューも用意されている。

 本体サイズは178×395×298mm(幅×奥行×高さ、ハンドルを含む高さは330mm)、重量は約8.8kg。数字だけ見ると重そうに感じるかもしれないが、片手で持ち上げて難なく運べる。一般的なデスクトップ型ゲーミングPCに比べれば、取り回しは圧倒的に楽だ。

サイズに似合わぬ性能の高さをいかんなく発揮

 続いて各種ベンチマークソフトのスコアを見ていきたい。利用したのは、「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」、「ドラゴンズドグマ オンライン ベンチマーク」、「バイオハザード6 ベンチマーク」、「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 ver.2.0」、「CINEBENCH R15」、「CrystalDiskMark 5.0.3」。

【ベンチマークテスト結果】

「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」(DirectX 11)
1,920×1,080ドット/最高品質12,174(非常に快適)
3,840×2,160ドット/最高品質4,428(快適)
「ドラゴンズドグマ オンライン ベンチマーク」
1,920×1,080ドット/最高品質10,857(とても快適)
「バイオハザード6 ベンチマーク」
1,920×1,080ドット16,273(S)
「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 ver.2.0」
1,920×1,080ドット/簡易設定555,961
「CINEBENCH R15」
OpenGL135.24fps
CPU814cb
CPU(Single Core)173cb

「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」では、4Kでも「快適」評価
「CrystalDiskMark 5.0.3」の結果。ストレージはWestern Digital製「WD10EZEX-00BN5A0」が使われていた

 ハイエンドGPUを搭載しているだけあり、コンパクトな見た目からは想像できないほどのスコアが出ている。「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」ではフルHD(1,920×1,080ドット)だとオーバースペック。4K(3,840×2,160ドット)にしても「快適」評価が得られている。「CINEBENCH R15」で見るCPUのスコアも良好で、さすがは最新のSkylakeだけはある。

 HDDは、今回お借りした評価機ではWestern Digital製「WD10EZEX-00BN5A0」が使われていた(購入した際の製品では変わる可能性がある)。1プラッタで7,200rpmの3.5インチHDDとなっており、HDDとしてはかなり高い性能を発揮している。

 動作中は、アイドル時には緩やかにファンと水冷ラジエーターのモーター音が聞こえる。動いているのはわかるが、騒音と言うほどではない。高負荷になると徐々に騒音が大きくなり、やや高いモーター音が聞こえる。放熱のためにケースのあらゆる方向がメッシュになっているため、静音面で厳しいのは致し方ない。

 排熱は背面ではなく、左側面から排気されている(詳しくは後述)。左側面のメッシュ部分を塞がないようにすること、また利用者の位置がPCの左側にならないようにすること(結構な温風を浴びることになる)に注意が必要だ。

徹底した作り込みの跡が見られる内部設計

正面にインジケーター用の赤いラインが入っている。他に過度な装飾はなく落ち着いた印象

 次はPC本体を見ていこう。ケースはほぼ全体がマットブラックで、前面にインジケーター用の赤いラインとロゴが入ったもの。前面や天面が丸みを帯びた形状になっており、ゲーミングPCっぽい派手さより、落ち着いた高級感のあるデザインが特徴だ。

 内部は先日のインタビュー記事のものとはやや異なる。Radeon R9 Fury Xから伸びるラジエーターが左側面のプレートに固定されており、それと干渉する背面ファンは撤去されている。そのため排気は左側面からになるというわけだ。「LITTLEGEAR」シリーズの中でもこの形になるのは特殊で、Radeon R9 Fury X以外のGPUを搭載したものは、背面からの排気になるはずだ。なお3.5インチHDDもこのプレートに固定されている。

 ラジエーターが固定されたプレートを動かしてみると、今回お借りした評価機には内部のCPUファンにリテールクーラーではなく、CoolerMaster製のものが使われていた(購入した際の製品では変わる可能性がある)。ラジエーターとの干渉対策、および狭いPC内部で少しでも冷却性能を高めるための方策なのだろう。

 電源は本体の前部に固定されている。ATX電源のようで、小型の本体においてはかなり存在感がある。電源からの排気ファンは右側に取り付けられており、左側面ほどではないが弱い風が出ている。

 とにかく中身はぎゅうぎゅう詰めの状態で、Radeon R9 Fury Xを入れるにはこれしかないと思わせる隙間のなさだ。それでもCPUの排気がGPUのラジエーターを通って外に排出されるという流れなど、冷却面でもギリギリの調整が加えられているのがわかる。自作PCでここまで詰め込むのは不可能だと思わされるほど、かなりの作り込みがなされている。

 最後に1つだけ注意点。筆者が中身を一通り見分してからケースを元通りに閉じようとしたところ、CPUファンとラジエーターから伸びる水冷チューブが接触し、閉じられなくなってしまった。チューブをCPUファンの外に出るよう押し込みつつプレートを閉じることで元に戻せたが、力任せに閉じようとしたり、ホースを強く押しすぎると、破損して液漏れという最悪の事態に陥る可能性もある。ストレージの増設などで内部プレートを開閉する際には、チューブを傷めないよう重々注意していただきたい。

 性能の高さについては先のベンチマーク結果を見ていただいたとおり、立派にハイエンドゲーミングPCと呼べるだけのものになっている。それでいてサイズは今までになくコンパクトで、価格も194,184円(税込/送料別)と、同スペックのタワー型PCとほとんど差がない程度に抑えられている。売れ筋になると思われるGeForce GTX 960搭載モデルなら、96,984円(税込/送料別)と10万円を切ってくる。持ち運び前提の小型PCであるだけでなく、価格的にもお買い得なシリーズだ。

左側面は広くメッシュが取られている
右側面もメッシュ
背面はシンプル。排気ファンは装着されていない
天面はハンドル以外には何もなく、緩く丸みを帯びた形状
底面も大きくメッシュで空いている
左のサイドパネルを開けると、さらにプレートが現われる
プレートは横のネジを外すと、上に開くように動かせる
ラジエーターから伸びる2本の水冷チューブは編み込みネットで保護されている
CPUファンは、今回お借りした評価機ではCoolerMaster製が使用されていた
GPUはRadeon R9 Fury X。これとラジエーターがこのケースに収まったことが驚き
電源はATXらしき形状。80PLUS GOLDのラベルが見える
右のサイドパネルを開けると、電源ファンが見える
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(石田賀津男)