★ PlayStation Vitaゲームレビュー★
面白さ、充実度、ともに“ゴールデン”!!
名作輝く! 移植を越えた完成度で登場!
「ペルソナ4 ザ・ゴールデン」
ジャンル:
  • RPG
発売元:
プラットフォーム:
  • PS Vita
価格:
7,329円
発売日:
2012年6月14日
プレイ人数:
1人
レーティング:
CERO:C (15歳以上対象)

 2008年にPS2で発売され好評を博したペルソナシリーズ最新作「ペルソナ4」が、“ゴールデン”となってPS Vitaについに登場! 新キャラクターと新コミュ、追加要素、さらにイベントも多数追加・変更され、その豪華さはまさに“ゴールデン”!! そんなPS Vita「ペルソナ4 ザ・ゴールデン(以下、『P4G』)」をレビューしていこう。


― Story ―

転勤をきっかけに、叔父の家がある
田舎町八十稲羽に訪れた高校二年生の主人公。
ある日主人公は、その町でまことしやかに
流れている不思議な噂を耳にする。

【雨の日の午前0時。1人で消えたテレビの画面を見つめていると、運命の人が見える…。】

その「マヨナカテレビ」の噂と
時を同じくして発生した、連続誘拐殺人事件。
そして主人公たちは、マヨナカテレビに映る人物が
殺人事件の被害者になっていることに気付く。

果たして殺人事件の犯人は?マヨナカテレビの正体とは?
「自称特別捜査隊」を発足した主人公たちは、
事件の謎を解くためにテレビの中へダイブする――。





■ 「マヨナカテレビ」って知ってる……? ポップな現実と忍び寄る非現実が交差する“学園ジュブナイルRPG”

田舎町での平和な高校生ライフ。そこに流れる「マヨナカテレビ」の噂が、主人公たちを少しずつ非現実へと導いていく

 「P4G」の物語は、田舎町「稲羽市」の高校へと転校してきた主人公が「マヨナカテレビ」という奇妙な噂を耳にするところから始まっていく。

 ほどなくして起こる殺人事件、奇妙な噂と殺人事件に揺れる田舎町の高校を舞台に、様々なクラスメイト達との学園生活と、テレビの中の不思議な異世界での冒険していく、現実と非現実が折り重なる独特な世界観を持った“学園ジュブナイルRPG”だ。

 主人公や仲間達は、事件に巻き込まれるうちに「ペルソナ」という不思議な力に目覚めていく。ペルソナとはそれぞれの心の奥底にある“もう1人の自分”が具現化した能力のことで、主人公達は自分の心の影ともいえる内面を克服しペルソナという力を身につけ、自分達にしか解明できない事件を追う「自称特別捜査隊」を結成。異世界の怪物「シャドウ」と戦い、事件を追っていく。

 現実にあるような高校生の日常にあるライトさとポップさ、奇妙な噂と異世界で起こる殺人事件というミステリアスとサスペンス感。この現実と非現実がうまく混ざり合って魅力的な世界観を作り上げているのが、本作の大きな特徴だ。


登下校し、家族とたわいもない会話を楽しむ。そんな日常的なシーンとは対照的な「異世界」での戦い。その二面性がまたペルソナ(心理学上での「心の仮面」)というテーマを感じさせる。現実に少しずつ非現実が浸食していくミステリアスなテイストも秀逸だ

・ 行動することで時間と日付が進んでいく方式が大きな特徴

1年を通して物語が展開する作りで、行動することで時間が進み、日付が変わっていく。その中でどんな事を重視していくか試行錯誤することがプレイのポイントだ

 プレイのメイン要素は、大きく分けると「アドベンチャーテイストの学園生活」と、「RPGテイストの異世界探索」の2つのシーンでできていて、本作では1年を通して高校生活を送りつつ事件を追っていくという流れになる。「P3」から共通しているシリーズのスタイルだ。

 4月から始まって、行動する事で次の時間帯へと進み、1日が終われば次の日へと日付が進行していく。例えば、平日だと朝から放課後までは学校の授業があって、放課後と夜に自由に行動可能で、休みの日では日中と夜にそれぞれ行動できる。この限られた時間の中でプレーヤーが何をしていくかが重要になる。

 「学園生活」では高校生的に勉強をしたり、アルバイトをしたり、部活をしたり。まさに高校生の生活にあるような出来事がたくさんあって、それら行動によって「勇気」や「根気」といったパラメーターが高まっていく。ある程度パラメーターが高まることで、さらに行動や選べるようになる会話の選択肢が増えていく。

 PSPで発売された「ペルソナ3ポータブル」だと、PS2版よりも各種の要素が簡略化されてフィールド移動も場所を選択する方式で、まさに名前のとおり「ポータブル」な作りになっていた(それでも魅力をしっかり楽しめる)が、PS Vitaでの「P4G」は一切簡略化されていない。商店街などのフィールドをPS2版同様に自分で歩いていけるし、右アナログスティックもあるおかげで視点操作もしっかりできる。それだけにとどまらず、追加要素、新規要素多数で、こちらはまさにPS2版+αでがっつりパワーアップした「ゴールデン」となっている。


全体マップからロケーションを選択肢、その中では自由に移動できるという構成。高校生らしく学校で授業を受け、放課後には部活、アルバイト、仲間と過ごしたり、クエストの依頼が発生することもある

・ 仲間や出会った人々との絆を深めていく「コミュ」が醍醐味

特定のキャラクターと親密になって絆の力を高める「コミュ」。コミュのある人物はそれぞれに事情なり想いを抱えていて、そこで描かれるテーマ性も秀逸だ

 そうした日常シーンの行動のなかでも本作の醍醐味と言えるのは「コミュ」の存在だ。コミュは、クラスメイトの仲間であったり様々な場所で出会った人々と会話し関係性を深めていくというもので、10段階のランクがある。

 主人公達が戦うための力“ペルソナ”は、すなわち心の力であり強さと言えるが、そんな心の強さを、様々な人との“絆”によって育んでいくのが「コミュ」。

 コミュはそれぞれに影響を与えるアルカナが決まっていて、例えば学童保育のアルバイトを始めれば学童保育の母親との「節制」のアルカナのコミュが始まるし、運動部に入部すれば「剛毅」のアルカナのコミュが始まっていく。

 コミュの相手は、それぞれに複雑な想いを抱えていて、そこで見せるテーマ性は秀逸。良質なアドベンチャーゲーム的な魅力を兼ね備えている。特に女性キャラクターとは恋愛関係になっていく要素もあって、見逃せない。

 行動時間にどのキャラクターのコミュを見るか、日付を気にしつつコンプリートしていけるかがプレイの醍醐味と言える。コミュによって相手キャラクターの内面も見え、そのキャラクターの魅力も高まっていくという巧い作りだ。

 そうして得た絆が、主人公の心の強さとなって、ペルソナ合体でペルソナを生み出した時に経験値ボーナスをもらえるようになるし、コミュがMAXになればアルカナ最上位のペルソナが作れるようにもなる。

 このように「コミュ」は、世界観やキャラの魅力をうまく見せつつ、限られている日付の中で攻略順を考えさせる要素もあり、さらにペルソナ合体にも関わっている。シリーズにおけるペルソナという能力のテーマ性ともうまく繋がっていて、非常に魅力的な要素だ。実際にプレイをすると、この「コミュ」をいかに進めていくかに没頭してしまうこと間違いなし!! 目指せフルコンプ!!


ベルベットルームの主「イゴール」いわく、ペルソナは心の御する力。様々な出会いが、主人公のペルソナを生み出す力を高めていく

・ 異世界のダンジョン探索! シャドウとのバトルは属性がカギを握る

ランダム生成されるダンジョンを探索して最深部を目指していく。シャドウのシンボルに攻撃するor攻撃されると戦闘開始!
戦闘は素早い順番に行動していくコマンドバトル。弱点属性をうまく攻撃できるかが重要だ

 事件の謎を解明するため、テレビの世界へと入っていく。こちらはダンジョン探索あり戦闘ありのRPGスタイルだ。時間帯としては「放課後」または休みの日の“夜までの時間”にいけるようになっている。

 ダンジョン内は入るたびにランダムで作りが変化するようになっていて、階段を見つけて先のフロアへと進んでいくというもの。敵はシャドウと呼ばれる怪物で、ダンジョンにシンボルが見えていて、こちらを発見すると襲ってくる。○ボタンでこちらから接触するか、シャドウに接触されると戦闘に突入するシンボルエンカウント方式だ。

 戦闘は、コマンド選択式で敵味方とわず素早さの速い順に行動していく方式。基本的なシステムは「P3」と共通していて、物理や各種スキルなどの属性でシャドウの弱点をつくのがバトルのポイント。弱点属性を攻撃できればシャドウがダウンし、そのまま連続行動が可能になるし、全ての敵をダウンさせれば仲間全員で一斉に攻撃する「総攻撃」にも持ち込める。

 自分や仲間のペルソナにも弱点属性はあり、シャドウにそれを攻められれば連続攻撃をもらってしまう。そこから一気に崩れて全滅ということもあり、そのあたりのシビアさからくる緊張感がほどよくあって、アトラス作品の良さをしっかり持っている。弱点属性を探っていかに有利に進められるかが重視されたバトルで、わかりやすいながらも戦略性があり、テンポとレスポンスもよく戦闘の見せ方もいい。

 なお、「P3」ではダンジョンに長時間いると「疲労」が蓄積して次の日はダンジョンに行けないという縛りがあったのだが、「P4」および「P4G」にはこれはないので、より一気に進められるようになっている。ダンジョンに挑む日には回復アイテムなどをしっかり準備して、できるかぎり短い日数でその時期の目的を達成しておきたいところ。そうすることで、ほかの日をコミュやパラメーターアップに回せるというわけだ。


ペルソナを駆使してシャドウの弱点をつく! 敵をダウン状態へ追い込めば、全員で一斉に攻撃する「総攻撃」で大ダメージを与えられる

・ 楽曲の魅力も見逃せない!

 音楽の魅力も見逃せない。平田 志穂子さんが歌う“晴れの曲”こと「Your Affection」をはじめ、ボーカル曲をゲーム中に自然と使っているのが特徴。ゲーム自体もテンポよく遊べる仕上がりになっているが、そこに曲によるノリの良さや、気分の良さも加わってくる。それら全体が本作のポップな魅力となって、“面白い”という実感へと繋がっていくというわけだ。



■ 新キャラ・新コミュをはじめ、新要素たっぷり! まさにゴールデンな魅力に

 さて、本作の最大のポイントは“ゴールデン”な新規要素や追加要素にある。PS2で「P4」をすでにプレイしたという人でも見逃せない、むしろ、プレイ済みで本作を気に入っているのならプレイしないわけにはいかないような、要素が追加されている。順に紹介していこう。

【新キャラクター「マリー」&新コミュ、新イベント追加!】

    ・新キャラクター「マリー」と、彼女とのコミュ「永劫」追加!!
    ・刑事「足立」の「道化師」コミュが追加!
    ・新イベント追加!

 

ベルベットルームに現われる新キャラクター「マリー」。彼女とのコミュ「永劫」や、足立刑事との「道化師」コミュが追加されている

 多数の新要素の中でも最も大きいのは、「新キャラ&新コミュ」の存在。ベルベットルームにちょっと変わった趣味を持つ少女「マリー(CV:花澤香菜)」が登場し、PS2版には無かった「永劫」のコミュとなっている。もうひとり、刑事の「足立」にも「道化師」のコミュが追加された。

 PS2版をプレイ済みの人ならもうこれだけで、「え、そんなの追加されているの?」と食いついてしまうのではないだろうか。

【ネットワーク機能を使った新機能】

    ・「救援要請」でプレーヤー同士で励まし合って回復!
    ・「みんなの声」でその時間帯のプレーヤーの行動トップ5が閲覧できる!
    ・「検索合体VOICE」で多く生み出されているペルソナをチェックできる!

 

SOSを発信して他プレーヤーの応援を要請!! 戦闘開始時にHP/SPが回復する

 ネットワーク機能のあるPS Vitaならではの新機能も。ダンジョン探索中に「SOS」ボタンをタッチすると、他のプレーヤーへ救援信号を発信! 互いを励まし合えるようになり、次の戦闘開始時にHPとSPが回復する。

 また、現実世界ではプレーヤーの取った行動が集計され、「みんなの声」でトップ5が閲覧できる。その時間に何ができるのかの把握など、プレイの指針に役立つ機能だ。

 さらに、ベルベットルームではプレーヤーが多く生み出しているペルソナもチェックできる。


その時間帯にどんな行動をしたかが見られる「みんなの声(画像左)」や、どんなペルソナが生み出されているか見られる「Voice(画像右)」も。プレイの指針に役立つ機能だ

【行動範囲が拡大】

    ・夜の商店街でも行動可能に
    ・バイクに乗って行動範囲が拡大!

 

 行動範囲もPS2版より拡大! 「P4G」ではバイクに乗れるようになり、バイクで出かけることで新たなスポットにいけるようにもなる。また、夜にも商店街などに行けるようになり、お店にいったり、出現するキャラと一緒に過ごすことで、コミュランクアップの後押しもできる。

【戦闘の新要素】

    ・バイクに乗ってドーン! な「バイク追撃」
    ・特定のメンバー同士で繰り出す「合体攻撃」
    ・ペルソナに特定のスキルを追加できる「スキルカード」

 

 戦闘関連でも、パーティー外の仲間がバイクに乗って追撃してくれる「バイク追撃」、特定のペアで発動する「合体攻撃」、ペルソナに特定のスキルを追加できる「スキルカード」、装備とは別でステータスに影響せずに外見を変更できる「衣装」も追加されている。

特定のキャラクター同士で発生する「合体攻撃」! 画像は、千枝と雪子が繰り出す「赤い女将と緑の成龍」。もちろん他にも合体攻撃がある

【新規ムービー、イベント、スキップ機能、衣装】

    ・新規アニメムービー追加!
    ・既存のイベントにもより細かな演出がプラス!
    ・高速スキップ機能で周回プレイも楽々!
    ・外観を変更できる「衣装」

 

 イベントシーンやインターフェースも強化。イベント関連では新規アニメムービーが増量されているほか、イベント事態の会話などにもより細かな演出などの変更がなされている。インターフェース関連では、スキップ機能の強化がうれしい。ムービーだけでなく通常のシーンでも、スタートボタンを押すと映像を早送りするように倍速で進められる。周回プレイも楽々だ。

【その他、難易度調整をはじめ各所に新要素&改善】

    ・難易度に簡単な「SAFETY」と最高難易度の「RISKY」が増えて5段階に
    ・堂島家で家庭菜園ができ、野菜を栽培可能
    ・釣りの操作が変更され、より釣りらしいプレイ感に

 

 難易度調整がPS2版の3段階から、より簡単な「SAFETY」と最高難易度の「RISKY」が増えて5段階になり、より多くの人が楽しめる&やりこめるように。また、堂島家では隣の空き地で家庭菜園ができるようになって、回復効果などのある野菜を育てられるようになった。これは堂島や菜々子がいる時だと一緒に行なえる。さらに釣りの操作も変わり、ロケーションが増えたことで、バリエーション&ボリュームもアップしている。

【ゴールデンタイム級な番組目白押し! 『番組表』でさらに楽しめる】

「番組表」から様々な番組にアクセス! 画像は初期状態に近いが、プレイが進むと番組が増えていく

 トドメと言わんばかりにまだ豪華な新要素がある。「番組表」というもので、各局の番組という形でペルソナにまつわる番組が視聴できる。アニメ番組風のムービー閲覧、音楽番組的なミュージックプレイヤー、サイエンス番組的に展開されるアートワーク、クイズ番組「マヨナカ横断ミラクルクイズ」などバラエティ豊かに並んでいる。

 なかでも豪華なのは「青紫歌合戦 2012」というライブ音楽番組で、ここにはなんと2008年と2009年に開催されDVDでも発売された「PERSONA MUSIC LIVE」の映像が一部収録されているのだ。楽曲の魅力も非常に強い本作だけに、必見の映像となっている。


歴代のイラストを見ることができる「Pの巨人」にはじまり、アニメムービーが鑑賞できる「ペルアニランド」、マヨナカ横断ミラクルクイズに加え、「PERSONA MUSIC LIVE」の映像など 超豪華な内容になっている



■ PS Vitaで名作輝く! その面白さ、充実度、まさに“ゴールデン”!!

現実的な高校生活というポップさから、噂、そして忍び寄る非現実の世界といったミステリアスさと、ペルソナならではの世界観とテイストは非常に魅力的。遊びやすさも手伝って、いつまでも遊び続けてしまうほどに面白い

 もともとPS2版で高く評価されていた「P4」が、これでもか! えーいこれも入れてしまえ!! と言わんばかりにパワーアップしていて、その完成度・充実度たるやまさに“ゴールデン”。もともとテンポよく進んでいくゲームだったところにPS Vitaの手軽にプレイ開始・終了できる良さも加わり、PS Vitaならではの映像の美しさも存分に発揮されていて、欠点が見当たらない。まさに無敵な出来の良さだ。

 問題なく本作にハマっていった時の魅力は凄まじく、時間帯ごとに「○○とのコミュを上げたいな」とか、「主人公の勇気のパラメーターも上げなきゃな」など、やりたいことがどんどん浮かんできて、そうするうちに日付が進んでダンジョンへ。ストーリーが展開され先が気になりつつも、また自分のやりたい事を進めていく……。気がついたら夢中で長時間遊んでしまう。がっつり楽しめるその面白さもまさに“ゴールデン”だ。


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(2012年 7月 23日)

[Reported by 山村智美 ]