★PS3/Xbox 360ゲームレビュー★
5本のDLCを同梱したファン待望の“完全版”過酷な世界で成長した主人公は次なる旅路へ 「Fallout 3: Game of the Year Edition」 |
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ゼニマックス・アジアは、PS3/Xbox 360「Fallout 3」本編とすべてのダウンロードコンテンツをセットにした「Fallout 3: Game of the Year Edition」を12月3日に発売した。諸般の事情によりダウンロードコンテンツがリリースされなかったPS3では追加コンテンツのみを収録したパッケージも発売された。
「Fallout 3: Game of the Year Edition」はこれまでXbox 360版でのみ発売されていた5つのダウンロードコンテンツ(DLC)「Operation: Anchorage」、「The Pitt」、「Broken Steel」、「Point Lookout」、「Mothership Zeta」がPS3でも楽しめる、PS3ユーザーにとっては待ち望んだ作品でもある。またほぼ同時期に廉価版の「Fallout 3」も発売されており、「Fallout 3」の世界に飛び込む人はさらに多くなるだろう。
筆者は以前日本版「Fallout 3」のXbox 360版、PS3版のレビューを行ない、そしてDLCショートレビューとして、「Operation: Anchorage」と、「The Pitt」と「Broken Steel」を紹介している。各タイトルの詳細はこれらのレビューを参考にして欲しい。今回は「Fallout 3」世界全体の総評として、「Fallout 3: Game of the Year Edition」で体験できる世界を紹介したい。
■ 生きることすら過酷な核戦争後の世界、放浪者はやがて世界の命運を握る
核戦争で荒廃した大地。どう歩き、どう生きていくか、全てはプレーヤーの手に委ねられている |
小型核ロケットで人間の数倍はあるスーパーミュータントを攻撃。過去の遺産を発見し、修理しながら戦っていく |
拳で敵を爆砕。スキルを上げていくことで様々なキャラクターに育てられる |
「Fallout 3」本編では、主人公は核シェルター「Vault 101」から出て、核戦争後の荒野をさまようことになる。「Fallout 3」の世界は200年前の核戦争によって破壊しつくされ、文明は崩壊してしまっている。地上の水のほとんどは放射能を帯び、都市は廃墟と化している。巨大化した昆虫や凶暴な熊のミュータント「ヤオ・グアイ」など怪物化した生物が周囲を徘徊している。
そんな地獄のような世界でも人類は滅んではいなかった。核戦争を生き延びた人々は崩壊した都市にわけいり、瓦礫の中から使える部品をかき集め、残存する放射能に苦しめられながら日々の糧を得ている。旅人を襲う「レイダー」となる人間も数多い。また荒野に自分たちだけの小さな国を作る連中もいる。
主人公はこうした過酷な世界で生きていく。「Vault 101」を追い出されたのは、主人公の父がシェルターを脱走したためで、この父の足跡を追う、というのが「Fallout 3」のメインストーリーとなる。しかし、プレーヤーはなによりもまず「生き延びること」に必死になるだろう。回復薬であるスティムパックは数に限りがあり、この世界の通貨であるヌカコーラのビンの蓋「キャップ」はなかなか貯まらない上、物の値段は高価だ。敵と戦うだけで体力はぼろぼろになって、装備品もすぐに壊れる。「なんてキツイ世界なんだ」と誰もが思うことだろう。
それでも、戦い、生き抜いていくうちに「この世界のルール」がわかってくる。時には放射能に侵されながら水を飲み、壊れかけの武器2つを1つにして状態を良くし、ロッカーからゴミ箱までくまなく探しアイテムをゲットする。弾丸や武器が欲しければレイダー達をこちらから襲う事も可能だ。生き抜くための戦いを繰り返しながら、主人公はやがてさらなる装備の充実、よりよい戦い方、そして「この世界でどう生きていくか」を考えるまで成長していく。
「Fallout 3」は画面だけ見るとFPSの様に見えるが、V.A.T.S.(Vault-Tec Assisted Targeting System)というシステムで、コマンド式RPGの様な感覚で戦闘ができる。V.A.T.S.を起動するとゲームが一時的に止まり、どの敵を攻撃するか、どの場所を攻撃するか選べるのだ。アクション性の高いゲームが苦手、銃を撃つだけのゲームはちょっと、というプレーヤーにも楽しめ、さらにスキルを上げていくことで自分の思った方向性に育てられる。素手でスーパーミュータントを粉々にする様なキャラクターも可能だ。
主人公は旅していく中で様々な人に出会い、事件に遭遇する。黄色の肌を持つ出自不明の凶悪な巨人「スーパーミュータント」。放射能の影響で皮膚が崩れ醜い姿に変わったが、人間の数倍の寿命を持つに至った「グール」は敵ではなく、独自の文化を持つ新種族だ。空母だった船の中に街を作った「リベットシティ」に住む人々。200年前の文明をわずかに受け継ぎ、装甲服に身を包んだ武装集団「Brotherhood of Steel」と、そこから離脱した「アウトキャスト」。この他にも吸血鬼になった人々や、小さな開拓村、奴隷商人など様々な人や組織と出会う。
「Fallout 3」は広大なマップに様々なイベントを散りばめるという形のゲームとなっている。プレーヤーはその世界を自由に歩き、イベントに遭遇していく。火を噴く蟻に襲われる子どもを助けることもあれば、ある人物の暗殺を頼まれることもある。家族だけで小さな国を作っているところで「大統領選挙」に巻き込まれることもある。不思議な「しゃべる木」をあがめる人々や、奴隷から逃げ出し自分たちの場所を作ろうとする人達もいる。
彼らからクエストという形で様々な依頼がされ、主人公の介入で物事は変化していく。主人公には善悪を計る「カルマ」というパラメーターがあり、これによって出会う人の反応が変わることもある。クエストの選択は気まぐれに行なってもいいし、善人として生きるか、悪人として生きるか、ロールプレイを意識して決断するのも良いだろう。
「Fallout 3」では多彩なクエストが用意されている。メインストーリーだけを追うというプレイも可能だが、やはりそれではもったいない。サブクエストも含めると50時間以上もプレイできるコンテンツが詰まっている。世界の隅々を歩き、様々な事件に遭遇しひとつひとつこの世界の知識を深くしていくのが楽しい。「Fallout 3」の舞台はワシントンDCだ。行政区にはホワイトハウスや歴史博物館、地下鉄など現実のアメリカを想起させるものが多い。現実のワシントンDCの地図を片手にプレイするのも面白い。
また崩壊した200年前の世界は、「1950年代の人々が夢想した未来」となっており、現実の我々とは価値観も含めてかなり異なる世界だったことが感じられる。廃棄された車は流線型の形をしていて原子力駆動だ。機械のデザインセンスは未来なのにどこか古くさい。不審者に殺人光線を浴びせるような安全性に問題のあるロボットを車掌に使っていたり、人体改造技術がまかり通っていたりと、モラルにもかなり問題がある世界だったようだ。もう滅びてしまったが、そんな「過去の未来世界」に想いをはせるのも楽しい。
「Fallout 3」では様々な状況が主人公の介入で動いていく。核戦争から200年後、大きな変化をプレーヤー自身がもたらしていくのだ。世界はプレーヤーを待っていたのだ。やがて主人公はこの世界の命運を握る大きなプロジェクトに巻き込まれていく。この世界を隅々まで歩き、色々な体験をした主人公は、世界の命運を左右する決断を迫られるのだ。そのときプレーヤーは何を想うだろうか?
「Fallout 3」の世界は、「実際に住んでみろ」と言われたらとても承諾できないような過酷な世界だが、プレイし続けることでプレーヤーの中に、成長した主人公として「生きている」ことの実感が生まれる作品である。過酷な世界を生き抜き、いずれは世界の重要人物となっていく、その「成長」を体験できるゲームだ。未プレイの人には是非オススメしたい。
■ 過去の大戦、勢力の対立、さらには宇宙からの侵略者! 様々なテーマを持った追加コンテンツ
「Fallout 3: Game of the Year Edition」の大きな特徴は「Fallout 3」本編に加え、5つのDLCをまとめて体験できるところだ。DLCの多くはワシントンDCではなく、それぞれの世界で展開するテーマのはっきりしたコンテンツになっている。「Fallout 3」のフォーマットを受け継ぎながら、さらに世界に広がりをもたらす作品群になっているのだ。本稿ではこの5つのDLCの特徴をまとめて紹介したい。
・「Operation: Anchorage」
「Brotherhood of Steel」が発見した地下施設の中には、200年前、核戦争が起きる前の世界のアメリカ軍が保有していた武器庫があった。しかし武器庫の壁は固く閉ざされており、その扉の鍵を開けるのが「訓練用のシミュレーションポッド」だった。訓練プログラムをクリアした者だけが当時の最新武器を入手できるのだ。
主人公はこのシミュレーションポッドに入り、実際に行なわれたというアラスカでのアメリカ軍と中国軍の戦いを追体験することになる。このシミュレーションは、シミュレーションでの死が現実の死に繋がるという危険な代物だ。中国軍は強力で、高い能力を持った兵士でなくては生き抜くことは難しい。主人公はこの訓練プログラムをクリアできるのだろうか?
「Operation: Anchorage」では「現役だったアメリカ世界」が体験できる。地形を進み、敵を見つけたら撃破していくというFPSに近いバランスになっている戦闘中心のシナリオである。中国軍は「中国語なまりの英語」を話すのだが、日本語吹き替えの本作では、独得のイントネーションでその雰囲気を再現しており、声優の熱演にも注目だ。巨大なホバークラフトと大型兵器で渡り合ったり、光学迷彩で姿を消し刀で斬りつけてくるニンジャ型兵士がいたりと、ユニークな敵との戦闘をたっぷり楽しめる。
シミュレーションプログラムにより体験するアラスカでのアメリカ軍vs中国軍。200年前の戦いを追体験できる。“現役”の科学兵器も新鮮だ |
・「The Pitt」
「The Pitt」はかつてピッツバーグと呼ばれていた土地が舞台となる。ワシントンDC北端の線路から手押しトロッコで向かうこの地は、今はレイダー達が支配している。レイダーは奴隷達に過酷な労働を強いており、さらに奴隷達は徐々にミュータント化していく危険にもさらされている。主人公はThe Pittから逃げ出してきた奴隷に頼まれ、この地を解放すべく出発する。
主人公が最初に目にするのは過酷な環境に置かれている奴隷達の姿である。奴隷達は劣悪な環境で溶鉱炉で流れる鉄を加工しているだけでなく、一部の奴隷はミュータントがうようよいる危険な場所にインゴットを取りに行かされる。奴隷の地位からはい上がるには、この地の由来となるPitt(穴ぐら)と呼ばれる闘技場で、襲いかかってくるレイダーに勝つしかない。
「The Pitt」はすべてが廃墟になってしまっているワシントンDCと異なり、“稼働している”工場で働いている人々の姿を見ることができる。The Pittの過酷な奴隷支配は、崩壊した文明世界で生きていこうという人間達の「闘い」の1つの形なのだ。この支配社会は善なのか、それとも悪なのか、「The Pitt」でプレーヤーは相反する2つの勢力の戦いに巻き込まれ、最終的に大きな決断を迫られることになる。自動車すら切断する回転ノコギリ「オートアックス」などユニークな武器が登場するのも面白い。
かつてピッツバーグと呼ばれていた「The Pitt」。奴隷達の過酷な生活と、それに支えられた活力のある社会。この世界で生きていく上での“善”とは何かを考えさせられるシナリオだ。一方、ミュータントのいる場所でのインゴット集めは「宝探し気分」を満喫できる |
・「Broken Steel」
「Broken Steel」は「Fallout 3」プレーヤーが待ち望んだ「エンディングのその後の世界」を補完するDLCだ。本作の導入によりレベルキャップが一気に20から30まで解放され、プレーヤーは思う存分この世界を歩けるようになる。「Fallout 3」のラストで主人公は大きな決断を迫られる。このDLCではその後の世界が導入される。
主人公の決断で世界は大きな変化のきっかけをつかんだ。しかし世界の変化は遅々として進まない。主人公はそれらの原因を探し出すために再びこの地をさまようことになる。本編のラストで対立していた2つの勢力の闘いは激しさを増している。廃棄された空軍基地に侵入したり、200年間止まっていた大統領専用列車を起動させたりとアクション映画のようなギミックも楽しい。
シナリオ以上にプレーヤーにうれしいのは「レベルキャップの解放」だろう。「Fallout 3」本編のレベルキャップはレベル20で、世界の隅々まで歩いていると比較的すぐ到達してしまうのだ。世界各地のシナリオは楽しめるが、成長しないとなると達成感が薄い。「Broken Steel」導入によりレベルキャップがレベル30まで引き上げられ、主人公はより強力な存在へと成長できるようになった。
本作を導入することにより、「エンディング」という形でゲームが強制的に終了することがなくなり、明確な終わりはなくなった。プレーヤーが望むだけ、この世界での旅は続いていくのだ。
エンディングのその後を描く「Broken Steel」。主人公が決断を下した後も、人々の戦いは終わらないのだ。このDLCにより、主人公は再び荒野をさまようことが可能になる |
・「Point Lookout」
「Point Lookout」ではぼろぼろのフェリーに乗り、沿岸の街Point Lookoutに旅立つことができる。この地は岸辺に遊園地があり、かつては観光地としてにぎわった場所だった。今は奇妙な果実「ブンガフルーツ」の特産地として、知る人ぞ知る土地である。
主人公は「一山当てようと娘がそこに向かってしまった」という母親の願いを聞き、この地へ向かうこととなる。主人公の前に広がるのは陰惨な沼と、怪しげな洋館、廃墟となった観光地だ。ここには生前の狂気を残したような不気味なゾンビや、邪教に洗脳された人々が主人公を待ちかまえている。
アメリカのホラー映画には「キャンプ場を襲う謎の存在」や、「ふと立ち寄った場所で邪悪な儀式を行う集団に捕まる」といった様々な定番のシチュエーションが待ち受けている。旅行者を襲う彼らの動機は全く不明で、明確な悪意のみが登場人物達を追いつめていく。「Point Lookout」はそういったホラー映画を思わせる作風がある。戦闘のバランスは意外にきつく、本気装備でフェリーに乗り込みたいところだ。DLCの中でも傑作の誉れ高い「Point Lookout」は、後ほど改めて詳しく取り上げたい。
怪しい秘密を秘めた、アメリカンホラーのオマージュとも言える「Point Lookout」。登場人物は腹の底で何を考えているかわからない人物ばかりだ |
・「Mothership Zeta」
「Mothership Zeta」はアメリカが生んだ神話「リトルグレイ型宇宙人」に関するエピソードを取り入れたDLCだ。「Fallout 3」本編でも何の説明もなくフィールドにUFOが墜落している場所があったが、今回、謎の電波に誘われた主人公はいきなりUFOにアブダクション(誘拐)されてしまう。
さらわれた場所はエイリアンの巨大UFOの中。ここではリトルグレイ型のエイリアンが人間相手に恐ろしい実験を繰り返していた。主人公は以前さらわれてきた女性ソマーや謎めいたところもある女の子サリーと共にUFOから脱出すべく戦うことになる。主人公が手にする武器は謎めいた宇宙人達の武器だ。奪われた装備品は取り返すことができるが、謎のビームを放つ光線銃や、相手をしびれさせるショックバトンなど宇宙人の強力な武器で戦うのは独得の感触がある。
「Mothership Zeta」はUFOネタのパロディーとしても楽しい。UFOは他にも多くの人を誘拐し冷凍保存しており、さらわれてきた人間は時代がバラバラで、鎧姿の日本人武士までいる。また、「実験記録」としてさらわれた人間達の声を聞けたりもする。宇宙人達とは言葉が通じず、彼らが何のためにこうした実験を繰り返しているか結局さっぱりわからないというのも面白い。戦闘中心のシナリオだが、宇宙服を着てUFOの外に出たり、UFOに取り付けられた巨大な破壊兵器「デスレイ」をぶっ放したりと宇宙ネタならではのギミックも満載だ。
宇宙人にさらわれUFOの中で大暴れという、最も破天荒なシナリオが展開する「Mothership Zeta」。結局宇宙人が何をやりたいのか謎なところが面白い |
■ 広大な土地にホラーテイストのエピソードを散りばめた、DLC最高傑作「Point Lookout」
どこに怪物が潜んでいるかわからない沼地にひっそりと建つ洋館。ホラー映画そのままのシチュエーションだ |
任務半ばで倒れた中国軍スパイ。彼の任務を引き継ぐこともできる |
狂信者達に指令を与える傲慢な“神”。彼の正体は? |
ここでは、5つのDLCの中でも特にお勧めの「Point Lookout」を特別に取り上げたい。本作は本編とは独立した広大なフィールドを旅し、様々なクエストをこなしていくという「Fallout 3」そのままの感触で楽しめるダウンロードコンテンツである。「Fallout 3」のDLCは1本道の展開が多いが、本作は独自の世界を描きながら自由度も持っているという追加コンテンツのお手本といえる作品である。
「Point Lookout」はぼろぼろのフェリーに乗って行くことができる。フェリーの運転手であるトバルは「Point Lookoutは謎めいた地元住民がいて、特産のプンガフルーツがあり、そして手つかずのお宝が眠っている場所だ」と説明する。フェリー乗り場にいるキャサリンという女性は、彼女の娘ネイディーンがPoint Lookoutに一攫千金を夢見て旅立ったまま帰ってこないという。キャサリンは娘を見つけて欲しいと主人公に懇願する。
トバルのフェリーによってたどり着いたPoint Lookoutの港は壊れた観覧車のあるうち捨てられた観光地だ。北側には謎めいた洋館のシルエットと、灯台が見える。フェリーから降りて廃墟となった港を抜けると沼地が続いている。水は放射能を帯びており、渡るには注意が必要だ。沼地にはやせこけた餓鬼のような「クリーバー」や、ぶよぶよにふくらんだ「トラッカー」といった怪物がいる。彼らはゾンビのようだが、これまでの「フェラルグール」とは違い、人間の狂気を感じさせる一層不気味な存在だ。
沼地をさまよう主人公は様々なキャラクターに出会う。沼地の一軒家に住む「マルグリット」という女性は秘密めいたトニックを作って欲しいという。灯台近くの洋館ではグールの「デズモンド」という男が、「トライバル」という武装集団に襲われている。Point Lookoutの沼地にはもう1軒大きな洋館があり、そこには「ブラックホール」と名乗る老人が、クリーバー達に奪われた本を取り返して欲しいという。どの人物もうさんくさく、そして何か“邪さ”を感じさせる。協力するのをためらってしまう雰囲気があるのだ。
デズモントのいた館では戦いになったトライバル達だが、彼らのいる教会に行くと、「入信の儀式」さえ行なえば仲間になれるという。仲間になるための儀式とは野生のプンガフルーツの大樹から種を取って来ること。このプンガフルーツを取りに行く儀式は異常な幻覚に悩まされることになる。幼児の鳴き声と核爆発のキノコ雲。何が現実で、何が幻覚なのか。このビジョンもまたユニークで不気味である。
Point Lookoutで注意したいのは戦闘バランスだ。この地の敵は非常に強い。レイダーのようなトライバルでさえこれまでの敵のようにはいかない。高い耐久力だけでなく、攻撃力もすごく油断しているとすぐ倒されてしまう。入手できる新武器「アックス」や「ダブルバレルショットガン」など威力は高くてもスピードに劣る武器で使い所が難しい。この地で戦うには出し惜しみせず、素直に最強武器で臨むのが良いだろう。ただし、Point LookoutではワシントンDCと違って、既存の銃器や防具は入手できない。修理用の予備装備などもあらかじめ持参しておきたいところだ。
Point Lookoutはいくつもの謎を秘めた地である。そのテイストはアメリカのホラー映画のようで、得体の知れない住人達の不気味さ、理解できない狂気に彩られている。こちらの常識が通じない気味の悪さをたっぷり味わって欲しい。この他に「中国人のスパイ」に関するクエストがある。ある任務のためにPoint Lookoutを訪れた中国のスパイは、おそらく200年前の核戦争直後、任務を完了することなく倒れてしまった。彼の任務を200年後に代わって遂行することが可能なのだ。
「Point Lookout」は本編をクリアし、更にキャラクターを育て上げた上級者向けのコンテンツである。他のDLCで得た武器を使って進むのも良いだろう。本編のようなゲーム性に加え、皮膚に何かがまとわりつくような怖さを持った独得のテイストを体験して欲しい。
筆者は「Fallout 3」のレビュー担当として、Xbox 360版、PS3版、そしてDLCショートレビューを2回執筆した。レビューを書くためだけでなく、楽しむために何度も「Fallout 3」の世界を旅した。かすり傷1つから放射能が入って死んでしまいそうな過酷で、正気を失いそうな無法の世界であるが、やはり筆者は「Fallout 3」の世界が好きだ。これだけプレイしてもまだ見つけていない場所、会っていない人物がいる。筆者の旅はまだ終わらない。
序盤のサバイバル感や、敵の体がバラバラになる残酷表現、18歳以上のプレーヤーしか遊べないZ区分など本作のハードルは低いとは言えないが、ぜひ、多くの人にプレイしてもらいたい作品だ。広大なフィールド、コンテンツのボリューム、なによりも未知の世界を旅する「冒険心」を掻き立てる本作の世界は、何度書いても書ききれない魅力がある。
今回、「Fallout 3: Game of the Year Edition」の発売により、「Fallout 3」は他のコンテンツが追随できないほどのボリュームと、濃密な冒険が楽しめる作品となった。本編とひと味違う体験ができるDLC、より高みを目指せるキャラクター育成を楽しんで欲しい。海外では「Fallout」のフランチャイズとして、「Fallout 3」の続編ではない形で、新たな土地をテーマにした「Fallout: New Vegas」というタイトルを発表している。欧米では2010年発売予定ということで、こちらの情報も楽しみである。
Fallout 3 Game of the Year Edition (C) 2009 Bethesda Softworks LLC, a ZeniMax Media company. Bethesda Softworks, Bethesda Game Studios, ZeniMax and related logos are registered trademarks or trademarks of ZeniMax Media Inc. in the U.S. and/or other countries. Fallout, Prepare for the Future and related logos are trademarks or registered trademarks of Bethesda Softworks LLC in the U.S. and/or other countries. All Rights Reserved.
□ベセスダ・ソフトワークスのホームページ
http://www.bethsoft.com/jpn/
□「Fallout 3」のページ
http://www.bethsoft.com/jpn/fallout3/
(2009年 12月 25日)