モバイルゲームレビュー

新キャラクターを投入しつつ難易度を大幅にダウン
さらに手軽に遊べるようになったホラーアクション

「魔界村 騎士列伝II」

  • ジャンル:アクション
  • 配信元・開発元:カプコン
  • 利用料金:月額315円(サイト利用料)
  • プラットフォーム:iモード
  • 対応機種:FOMA 903i以降
  • 配信日:11月2日(配信中)
  • アクセス方法:iMenu → メニューリスト → ゲーム → ミニゲーム → カプコンパーティ



 「魔界村 騎士列伝II」は、今年1月に配信を開始した「魔界村 騎士列伝」の続編にあたる作品。主人公の騎士アーサーまたはパーシバルを操作して、ゾンビやゴーストなどのグロテスクな敵たちを倒しながら全6ステージを戦うアクションゲームで、1984年に第1作目が発売されて以来、カプコンの定番となっている「魔界村」シリーズの最新作でもある。

 前作は主人公のアーサーとランスロットが魔王を倒すというストーリーだったが、今回はそのランスロットが魔王の手によってさらわれてしまったという設定でゲームが始まる。アーサーは新たに仲間に加わったパーシバルとともに、魔界に巣食う敵たちと戦うこととなる。

 それでは、1月に掲載した前作のレビューに引き続き、今回の「騎士列伝II」はどのような特徴を持った作品なのかを見ていくことにしよう。



■ ゲームシステムは前作を踏襲。隠された「強化鎧」で主人公がパワーアップ

 歴代「魔界村」シリーズの伝統であるゴシックホラー調の世界観は、本作においてもそのまま継承されている。不気味さと美しさが共存した独特のグラフィックスとサウンドは、モバイルゲームとしてはかなりのハイクオリティを誇る。

 操作方法は、方向キーで主人公のアーサーまたはパーシバルを動かし、9ボタンで攻撃、#ボタンでジャンプ、6ボタンで魔法を使用する。ジャンプ中に再度#ボタンを押すと、さらに空中でもう1回ジャンプする「2段ジャンプ」も使用できる。使用するボタンは「オプション」モードで任意のボタンに変更することもできる。

 これらの基本操作も、前作の「魔界村 騎士列伝」と全く同じなので、前作を1度でも遊んだことがあるプレーヤーであれば、すんなりとなじめるはず。基本のボタン配置だと、左手の親指で方向キーを、右手の親指で各ボタンを押すような形で携帯を持ってプレイするのがベストだろう。

 ゲーム開始時に、主人公の騎士アーサーまたはパーシバルのどちらかひとりを選んでプレイするルールも前作と同じ。キャラクターの途中変更はできないが、ゲームオーバー後はキャラクターを変えて、やられたステージからコンティニューできる。コンティニュー回数は無制限で、また1度クリアしたステージであれば、各ステージの最初からプレイできるステージセレクト機能もついている。


【スクリーンショット】
これまでに多くのプレーヤーを魅了してきた独特のグラフィックスは今回も健在。ステージによっては巨大なボスキャラクターも登場し、かなりの迫力がある


 アーサーは歴代のシリーズ作品と同様、飛び道具の槍を初期状態で装備している。マップ上のあちこちに隠されている宝箱か、敵が持つ壺から時々出現する武器を取ることで、武器を変えられる。武器の種類も前作とまったく同じで、槍以外には短剣、たいまつ、斧、ブーメラン、弓矢が登場する。どの武器が出現するかは毎回ランダムで変化する。

 初期状態でアーサーおよびパーシバルが装備している鎧は、敵の攻撃を受けるとダメージを受け、耐久力がゼロになると脱げてしまう。鎧のない状態で、さらに攻撃を受けた場合はミスとなる。鎧の耐久力は画面左下に表示されている。ステージをクリアするか、または宝箱に隠された新たな鎧を装着すると耐久力が回復する。

 さらに宝箱に隠された「強化鎧」を装備すると、鎧の耐久力の上限がアップするとともに武器の威力も強化される。また、アーサー使用時は「強化鎧」を装備すると新たに攻撃魔法が使えるようになる。魔法は一定時間でたまるゲージが満タンになると使えるようにになり、魔法の種類は装備している武器によって変化する。また、魔法を使用した瞬間は少しの間だけ無敵状態になるので、敵弾などの攻撃を回避に際にも使えてとても便利だ。

 歴代の「魔界村」シリーズでは、敵の攻撃に1回当たると鎧が脱げてしまうのがお約束となっていたが、前作に引き続きモバイルゲーム版では、鎧にある程度の耐久力を持たせることによってミスしにくくなり、初心者にもとっつきやすい仕様になっている。


【スクリーンショット】
アーサーは歴代の「魔界村」シリーズでもおなじみの主人公。マップ上のあちこちに隠された宝箱や、敵が持つ壺から時々出現する武器を取れば武器を変更できる
特定の場所を通ると出現する宝箱に入っている「強化鎧」を装着すれば、武器がさらに強化され、強力な魔法も使えるようになる。ゲージは一定時間おきに自動的にチャージされる



■ 壁をも壊す能力を備えたパーシバル。アーサーとの性能差はいかに?

 一方、今回が初登場となるもうひとりの主人公パーシバルは、初期状態ではライトニングソードを装備している。ライトニングソードは、アーサーの槍とは違って飛び道具にはならず、近距離の敵しか攻撃できない。ただ剣の周囲に発生するオーラにも攻撃判定があるため、見た目以上に攻撃範囲は広い。また、別の武器を装備することで飛び道具が撃てるようになったり、「強化鎧」を装着すれば武器の射程が伸びたりして使いやすくなる。

 パーシバルの最大の特徴は、一定時間ごとにたまるゲージが満タンになったときに6ボタンを押すと、剣を正面に突き出しながら直進するダッシュアタックができること。このダッシュアタックの攻撃力は通常時よりも高く、発動中は無敵になる。さらに一部の壁を破壊する効果も持っている。

 壁を破壊することで、ステージによってはマップをショートカットして進んだり、あるいはアーサーには進入できない場所に入ることで、より多くの宝箱を見つけられるといったメリットがある。しかもこのダッシュアタックは、「強化鎧」がない状態でも繰り返し使用可能で、ジャンプ中に空中で出すこともできるため、通常攻撃では届かない位置にいる敵に対しても絶大な効果を発揮する。


【スクリーンショット】
剣を振って攻撃する新キャラクターのパーシバル。ダッシュアタック中は無敵状態となり、しかも特定の壁を破壊することが可能だ
パーシバルもアーサーと同様に、「強化鎧」を装備することで武器がパワーアップする。飛び道具が撃てるようになればさらに攻略が楽になる


 ここで気になるのが、アーサーとパーシバルとでは、はたしてどちらを使ったほうが攻略が有利なのかということ。結論から言うと、筆者がプレイした限りでは、キャラクターの違いで優劣が大きく現われる場面はなく、また特定の武器が極端に強くてゲームバランスが崩れるようなケースも皆無だった。

 壁を壊す能力を持ち、また「強化鎧」がなくても強力なダッシュアタックが出せるパーシバルのほうが、アーサーよりも一見有利なようにも思える。だがパーシバルは射程がアーサーよりも総じて短く、またどの飛び道具も単発でしか撃てないため、遠くにいる敵を攻撃する際は、どちらかと言えばアーサーのほうが戦いやすい。

 パーシバルのみが進入できる、壁に囲まれたルートには宝箱も隠されているので、「強化鎧」を発見する確率はアーサーよりも当然高くなる。しかし、敵と戦う機会もその分増加し、攻略にかかる時間も長くなるため、グズグズしているとタイムオーバーになるリスクも発生する。やはり必ずしもパーシバルが有利とは断言できない。

 ということで、アーサーとパーシバルのどちらを使うべきなのかは、プレーヤーの好みで選んでもらって構わない。前述したように、パーシバル使用時は壁を壊すことで別ルートに進めるステージも存在するので、同じステージを両方のキャラクターを使って異なる攻略パターンを作りつつ、じっくりとゲームを楽しんでいくといいだろう。




■ 前作に引き続き、ゲームの難易度はかなり抑え目に調整

 前作の「魔界村 騎士列伝」は、歴代のシリーズ作品に比べてゲーム全体の難易度が大幅に下がり、初心者でも遊びやすいように調整されていた。あくまで筆者の体感であるが、今回の「騎士列伝II」においても遊びやすさを重視した「難易度マイルド路線」を継承しており、しかも前作よりもさらにやさしくなっているというのが、全6ステージをプレイしたうえでの率直な印象だ。

 その最も顕著な例が、いわゆるトラップの数が極端に少ないことである。「魔界村」シリーズにおいては、触れたり落ちたりすると即死する針の山や谷底などの仕掛けが随所に出てくるのが伝統となっているが、本作品ではこれらのトラップがステージ2の対ボス戦になるまで登場しない。ステージ4の中盤に進むと、着地に失敗すると即死する動くブロックがようやく初登場し、ステージ5には伸縮を繰り返す足場も出現するが、いずれも動き方がそれほど複雑ではないため、歴代の「魔界村」シリーズに慣れたプレーヤーであれば、さほど苦労せずに攻略できるだろう。

 また、トリッキーな動きでプレーヤーを翻弄する、シリーズ作品ではおなじみの強敵「レッドアリーマー」の出現地点も、ステージ5の中盤の1カ所しかなく、しかも以前ほどしつこく追いかけてこないので、やり方次第では倒さずに先へ進むこともできてしまう(パーシバルで壁を壊して別ルートを進んだ場合は、さらにもう1カ所の出現ポイントがある)。

 各ステージの最後に出現するボスキャラクターについても、歴代のシリーズ作品に比べれば、かなり弱めに作られている。さらに対ボス戦でミスをしてしまっても、ステージの途中からではなくボス戦から再スタートするようになっているため、失敗したときのリスクやストレスを感じることもほとんどない。徹底して遊びやすさ重視のゲームバランスに調整されている。

 ただ細かいことを言えば、一部の敵キャラクターの弱点がわかりにくかったり、一見すき間がないはずの階段を歩いていたら、そのまますり抜けて下に落ちてミスになったりと、気になる部分もないわけではない。ただ筆者としては難易度調整についての不満は全くない。これなら、普段アクションゲームを遊ばない人でも十分に楽しめるだろう。


【スクリーンショット】
ステージ2のボスは足場を叩いて壊してしまうが、どんどん先に進めば逃げ場をすぐに確保できる。ステージ4以降の動く足場も、数が少ないのでパターン作りにそれほど苦労はしないだろう
強敵「レッドアリーマー」もステージ5の終盤にしか登場しない。各ステージのボスの強さもほどほどに抑えらている



■ 「難易度抑え目路線」で定着したモバイル版「魔界村」。さらなる進化を期待!

 かつては攻略が難しいことで知られていた「魔界村」シリーズだが、前作に引き続き今回も手頃な難易度に抑えることで遊びやすさを重視した「騎士列伝II」。今後もモバイル版でシリーズ作品がリリースされる際には、必然的に低難易度路線を継続することになるのだろう。

 アーケード版の初代「魔界村」以来、本シリーズ作品が大好きな筆者としては、今後も各プラットフォームで良作シリーズが長く遊ばれるようなビジネススキームが定着するのは大歓迎だ。ただ欲を言えば、iPhone/iPod touch版の「魔界村 騎士列伝」において、鎧をなくすことで難易度を高くしたアップデート版が提供されているが、これと同様のフォローをiアプリ版の本作でも望みたい。ハードルの高さは十分に下げているので、今度は本作によってアクションゲームがある程度上達したプレーヤーに対してさらなる挑戦意欲をあおるような、難易度の上がった2周目やハードモードなどが遊べるアップデート版の配信を期待したい。これからも「魔界村」シリーズには、遊びの幅を広く持たせた作品であり続けてほしいと切に願っている。

 前作ではさんざん苦しめられたという人も、さらに易しくなった本作ならきっと楽しくプレイできるはず。歴代のシリーズ作品を知るマニアからゲームの初心者まで、カプコン伝統のホラーアクションの妙味をぜひ堪能していただきたい。


(C)CAPCOM 2009

(2009年 12月 25日)

[Reported by 鴫原盛之]