X68000用「イースI&II ~Lost ancient kingdom~」レビュー

イースI&II ~Lost ancient kingdom~

X68000ユーザーの熱い想いに応え、ついにオリジナル版「イースI・II」の完全移植+αが実現!

ジャンル:
  • RPG
発売元:
  • BEEP
開発元:
  • BEEP
プラットフォーム:
  • X68000
価格:
8,800円(税込)
発売日:
2021年3月9日

 三月うさぎの森のゲーム販売部門「BEEP」より3月9日に発売される、パーソナルワークステーションX68000向け新作タイトル「イースI&II ~Lost ancient kingdom~」。

 その元となった、最初に発売されたPC-8801mkIISR版「イース」&「イースII」は、それぞれ1987年と88年に日本ファルコムより発売されたタイトルだ。当時のゲームが持っていた“難しいほど良い”という風潮を一蹴し、“誰もがクリアできるけれど、理不尽ではない謎は仕掛けられている”という難易度設定、プレーヤーの心を震わせるハイクオリティなBGM、美しいキャラクターと練り込まれたストーリーなどが多数のユーザーの琴線に触れ、以降大ヒットシリーズとなったのは記憶に新しい。

 最初に発売されたPC-8801mkIISR以外にもFM-7版(「イース」のみ)、FM77AV版、X1版(「イースII」はX1Turbo版)、PC-9801版、MSX2版と、当時流通していたメジャーどころのパソコンほとんどへ日本ファルコムが移植したことで、楽曲やグラフィックスなど多少の違いはあれども大多数のユーザーが同じ経験を体験することができていた。

当時発売されていた、ほとんどのパソコンへと移植された「イース」シリーズ。特に1作目は、機種によってBGMが違っていたりエンディングが大きく異なるなどの特徴があった。なかでも、ラストバトルでのBGMが完全版になっているFM77AV版の人気が高いようだ。写真は、最初に発売されたPC-8801mkIISR版の「イース」と「イースII」

 しかし、唯一の例外がパーソナルワークステーション・X68000向けに発売された「イース」。他機種よりもずば抜けたスペックを持つX68000というハードを活かす方向での移植が行なわれ、1991年に他機種とは一線を画す唯一無二のタイトルとしてリリースされている。もちろんこれはこれでアリなのだが、やはりアレンジなしのオリジナル版を作ったクリエータたちが手がけた日本ファルコムバージョン、つまり「PC-8801mkIISR版と同じもの」を遊びたいという想いを持った人が多かったのも事実だろう。

これが、X68000版として発売された「イース」。パッケージイラストを「ファイナルファンタジー」シリーズでお馴染みの天野喜孝氏が手がけている。ゲーム画面も他機種とは大きく異なり、ハードを活かしたリッチなグラフィックとアレンジされたBGMが特徴だった

 そんなX68000版の発売からちょうど30年、そしてオリジナル版の登場から34年が経過した2021年に、まさかのPC-8801mkIISR版を忠実に移植したX68000版「イースI&II ~Lost ancient kingdom~」が登場したのだった。2月2日には生配信も行なわれたのだが、そのときにマスター版のフロッピーディスク(FD)をデュプリケイトした評価版FDをお借りして一足先にプレイを満喫したので、その模様をレポートしよう。移植度については文句なしのレベルとして仕上がっているので、ここでは主にX68000版ならではの部分を中心にチェックしている。

【【まさかの2021年新作】X68000用「イースI&II ~Lost ancient kingdom~」発売記念特番! オリジナルのPC-88版との実機比較もやります!完全版のFM77AV版も登場!】

パッケージは当時風を再現! ゲームは、HDDへのインストールが可能に

 まずは、パッケージと同梱物からチェックしよう。オリジナル版の「イース」は1987年、「イースII」が1988年に発売されているので、当然ながら当時はソフトもパッケージ2本分となっていた。これが今回はセットで発売されるということで、外箱は1つになっている。ベースとされているのは、「イース」のパッケージだ。

 本作の同梱物は、「イース」と同じ左開きになっているハードカバーの資料集1冊と、操作の手引き書が1冊、そして「イース」に入っていた山下章氏が執筆したライナーノーツ、X68000版「イースI」、「イースII」のディスクがそれぞれ1枚となっている。

「イースI」・「イースII」のディスク、ライナーノーツと資料集、操作説明書がブック型ケースに収められている。ハードカバーの資料は、当時購入した人ならば見覚えのあるものだろう。操作の手引き書には、当時のマニュアルで使われていたイラストなども引用されている
本作は5インチFD版と3.5インチFD版が発売される。写真は、CompactXVIなどに対応した3.5インチFD版
3.5インチフロッピー用のスペーサーも付属
ケースは「イースの書」をイメージしたブック型仕様
当時のものを再現した資料集(下)と特典のライナーノーツ(右上)。新たに追加された操作の手引き(左上)には、細かな操作方法が書かれている
資料集は当時のものを可能な限り再現。操作説明書には新規コマンドも追加されている

 仕様として大きく違うのは、各作品がそれぞれがディスク1枚に収録されている点だろう。元となったPC-8801mkIISR版は、「イース」がディスクA、Bの2枚組、「イースII」はプログラム、A、B、USERのディスク4枚組だった。両タイトル共に、ゲーム進行に合わせてディスクを入れ替えるタイミングがあったが、本作ではそれが一切ない。単純計算で、5インチ2Dのディスクは両面合わせて容量が約320KBなので、2枚組の「イース」なら640KB、4枚組の「イースII」では1,200KB弱(USERディスクは容量が少ない)。かたやX68000版は、5インチまたは3.5インチの2HDディスクなので、1枚に約1.2MBが収納出来る。シンプルに考えれば、どちらもディスク1枚で収まるというわけだ。これにより、ゲーム中にディスクを入れ替える煩わしさから解放されたのが嬉しいところだろう。さらに、オリジナル版では一手間かかったセーブ機能も、本作ではマスターディスクへ直接保存することが可能になっている。

当時の「イース」、「イースII」に収録されていた同梱物。ハードカバーのマニュアルが見えるほか、FDの枚数もわかるだろう

 一番の違いは、あくまでも自己責任ではあるが、X68000に接続した内蔵または外付けのハードディスク(HDD)へインストールができるようになったことだろう。今や、コンソール機でもHDD(やSSD)へのインストールが当たり前だが、この時代のパソコンはフロッピーディスクから起動してプレイするタイトルがほとんど。もちろん、オリジナル版の「イース」、「イースII」どちらも、HDDへのインストールという選択肢はなかった。今作は、HDDにプログラムを保存しておけば、いつでも手軽に遊べるようになっている。その方法を解説しておこう。

 まずは、HDDの空いている領域に適当にディレクトリを作成し(例:Ys1)、そこへ「イース」であれば“Ys.R”と“Ys.YAR”を、「イースII」なら“Ys2.R”と“Ys2.YAR”をコピーする、これで終了だ。現在でもX68000を日常的に使っている人であれば「mint.x」、「fdx.x」といったファイラーを使用していると思われるので、それらのソフトを利用すれば簡単にインストール作業を行なえるだろう。

 一度HDDへインストールしてしまえば、X68000で日常的な作業をしている合間に遊ぶことができるほか、X68000のデリケートなFDDを酷使せずに済むというメリットもある。特に、オートイジェクト機構を持つ5インチFDDは貴重品なので、なるべくならHDDにインストールしておきたいところだ。

「イースI」のFDを見ると、“Ys.R”と“Ys.YAR”があるのがわかる。これをHDDにコピーすれば、インストール作業は完了だ。「イースII」も、ほぼ同じインストール方法となる

 ファイラーが手元にないというユーザーはSX-WINDOWを起動して、そこから作業を行なうという手もある。または、コマンドプロンプトからmkdirとcopyコマンドを使用するという方法でも問題ない。いずれの場合も万全を期すために、オリジナルのディスクにプロテクトシールを貼っておくのが望ましいだろう。ちなみに、コマンドプロンプトを使用したインストール方法はマニュアルに書かれているが、今でもX68000を所有している人であれば皆Human68Kのコマンドは覚えているだろうから、蛇足に感じるかもしれない(笑)。

 インストールしたHDDからソフトを実行したい場合は、最初に起動するHuman68kはVer3.0以降推奨で、デバイスドライバなどを常駐させない状態にしてほしいとのこと。筆者も、いつものクセで“IOCS.X”や“FLOAT2.X”などを常駐させてから“Ys.R”を叩いてしまったのだが、それはよろしくないそうだ。また、フロッピーディスクから起動するのであれば必要メモリ容量は1MBなので、ほぼどんなX68000でも動くはず。HDDから立ち上げる場合は、メモリは2MB以上積んでおくのが安心とのことだった。もっとも、今時のX68000ユーザーであればメモリは4MB以上を搭載しているから、これはあまり問題にはならないだろう。

 更に詳しいことはマニュアルに書かれているのでジックリと見てほしいが、そこに記載されていない部分をここで補足しておこう。ゲーム中にROLL UPキーとROLL DOWNキーを押すことで、それぞれスピードアップ、スピードダウンが行なえる。また、オリジナル版では機種ごとにさまざまな方法でボツ曲が聞けたが、本作ではゲーム中にF5キーを押すとサウンドモードに入ることができるのだ。ここではカーソルキーの上下で楽曲が選べ、スペースキーで演奏開始となる。モードから抜けるには、ESCキーを押せばOK。さらにもう一点、ゲーム中にCOPYキーを押すと、画面表示が31Khzモード→24Khzモード→31Khzモード……とトグルする。モニタによっては綺麗に映るモードが違っているかもしれないので、いろいろと試してみるのも良いかもしれない。

サウンドモードは、ゲーム中にF5キーを押すと起動する。ゲームをクリアしていなくても全曲聴けるので、仕事中の作業BGMなどとして活用すれば捗ること間違いなしだ
上が31Khz、下が24Khzの画面だ。筆者の環境では、31Khzよりも24Khzに設定した方が画面サイズが大きく表示された。X68000専用ディスプレイで見ると、また違った効果が得られるだろう。ただし、一部専用モニタの中には24Khzを受け付けないモデルもあるので、注意してほしい
【オリジナル/X68000版画面比較】
一部の書体も、オリジナル版から若干変更されている。左がオリジナル版で、右がX68000版だ
今回使用している写真は、すべて実機から撮影したものだ。「イースI」は31Khz、「イースII」は24Khz設定でキャプチャしている。撮影経路は、X68000XVI(16MHz)→IMAGENICS HYB-61→XRGB-3→GV-HDRECとなっており、最終的にはGV-HDRECで録画したMP4形式のファイルから静止画の切り出しを行なった。これら映像機器を経てということで、一部画像にジャギや縞が目立っていたり画面比率が一部歪んでしまっていたりするのだが、これは筆者の技術力不足のために起きてしまったことであり、製品版では綺麗に映像出力されているので安心してほしい。なお、一緒に映り込んでいるCZ-8RL1は気にせずに……。