2019年7月24日 10:55
バンダイスピリッツは、プラモデルの新シリーズ「30 MINUTES MISSIONS(サーティミニッツミッションズ)」(以下、30MMと略)を発売した。
同社のプラモデルの新ブランド「FUNPORTER」から展開される第1弾のプラモデルで、その名の通り30分で作れる簡単さと、カスタマイズする楽しみを前面に押し出したオリジナルのシリーズとなる。
弊誌でもレポートした今年2月開催の「『つくる』のホントを知ってるかい?展」で披露された製品が、この6月末についに発売となったのだ。本稿ではその第1弾となる「30MM 1/144 eEXM-17 アルト」と、同時発売されたいくつかのオプションパーツのレビューをお届けしていきたい。
パーツのランナー構成に見る、徹底した作りやすさの追求
近代のプラモデルにおいて“作りやすさの追求”は、各社積極的な様子が見られ、中でもBANDAI SPIRITSホビー事業部は頭1つ飛び抜けている印象がある。この30MMはその究極形といっても過言ではないほどの、作りやすさを意図した設計が施されている。
パーツはポリキャップを除いて3枚のランナーで構成されているのだが、そのうち本体となる2枚は、本体を構築する部位ごとにまとまって配置されているのだ。ランナーの上方向から頭・胸・腕・腰・脚といった具合に、必要なパーツがすぐに見つかるようになっている。
またパーツ番号は部位ごとにほぼ連番で構成され、2組ある腕と脚は左右で形の違う拳以外は共通のパーツを使っていて、迷うことが極力ないような構成だ。
組み立てていて気づいたのは、全てのパーツがいわゆる“後ハメ”ができるような構造となっていたことだ。各部位を構成するパーツは、組み立て後でも容易に取り外しが可能で、塗装や改造がしやすいだけでなく、30MMの他のバリエーションの機体とのパーツ交換も容易だ。
今回は撮影をしながらの製作だったため正確な製作時間はわからないが、近年弊誌のレビューで筆者が扱ったプラモデルと比較すると、作業にかけた時間はずっと短かった。何より、部位ごとにほぼ番号順に並んだパーツの切り出しが非常に楽で、これにより製作時間をさらに短縮できているように感じられた。
可動に関しては、全体的にシンプルな構造ながらよく動き、左右独立して伸縮する股関節など、独自の構造が見られるのも面白いところだ。ただし足首に関しては、軸の構造により左右の可動域は広いが、前後はブーツ側にあるボールジョイントの可動のみで、さらにデザインによって若干範囲が狭い印象を受けた。
メカデザイナーの海老川兼武氏の手による機体のデザインは、特にこのアルトに関してはいかにも量産機然としたシルエットが特徴で、その手のデザインが好きならばたくさん並べたくなるような魅力がある。
付属のナンバリングシールを貼ったりや、ピンポイント塗装をしてみたりすることで、それがさらに引き立つのは間違いない。またプラモデルになるということもデザインの段階から考慮されていたようで、合わせ目なども極力目立たない仕上がりとなっていたのも嬉しいところだった。
充実した別売りオプションに加え、他のプラモデルのパーツも流用可能
完成したアルトは、量産機然としたルックスで、シルエットもかなり細身だ。素体といっても過言ではないシンプルなデザインで、それゆえカスタマイズもかなり楽しいものとなっている。
機体をカスタマイズするための30MM専用のオプションパーツは、「アルト用オプションウェポン1」、「近接戦闘用オプションアーマー」、「長距離狙撃用オプションアーマー」が本体と同時発売された。本体とともに複数買いしていく人も多かったようで、筆者が購入した店頭では、本体キットの在庫よりも少ない状態であった。
オプションウェポンは、アルトのキットに付属する「サブマシンガン」と「ナックル」と同じものが同梱され、それらに付属のパーツを組み替えることで違う形の武器として楽しめるという仕様だ。
一方オプションアーマーは、アルトの装甲の一部分を取り外して装着するアーマーパーツで、装着すると機体のシルエットが変わり、またシールドも付属している。2種類はともにデザインの異なる上半身に装着するアーマーとシールドのセットとなる。
このアイテムにに関しては、装着することでアルトのルックスが劇的に変わるのが面白い。デザイン的に脚のスリムさが目立つ機体なので、欲を言えば下半身のパーツも欲しかったところだ。8月には、脚に装着するバーニアタイプの「マルチブースターユニット」の発売が決定しているが、今回のアーマーユニットに合うデザインのラインナップにも期待がかかる。
カスタマイズは専用オプションのみならず、別の製品の流用もしやすく、本体の各所には3mm径の穴が開けられていて、ここにパーツなどを取り付け可能だ。また手首のボールジョイントも3mmで、1/144スケールのガンプラの一部の手首なども流用ができる。
キットに手首は1種類しか付属しないので、アクションに表情を付けたい場合などは、ガンプラの余剰パーツや別売りのパーツセットなどを使ってみるといいかもしれない。
作りやすさとカスタマイズの楽しさをうたったこの30MM。個人的には後者の部分を推したいと思った。完成後に組み替えをして遊ぶという概念は、プラモデルにおける新しい遊び方の提案だ。作っている間や作った後に、カスタマイズ後の姿をあれこれ考えたり、過去に作ったプラモデルの余ったパーツを掘り出したりするのも楽しいところだった。
また分解が容易に行なえることで本格的な改造もやりやすい点や、一部のジョイントなどを現行のガンプラなどと互換を持たせているのも好感触だった。対象年齢は8歳以上なので、お子様のいる家庭なら、この夏休みに一緒に作ってみるのもいいかもしれない。
30MM第1弾ラインナップは滑り出し好調なようで、一部のアイテムは現在は品薄の状態が続いている。シリーズは今後ももちろん展開予定で、7月27日にはミリタリーテイストあふれる機体「bEXM-15 ポルタノヴァ」がラインナップに加わり、8月以降もアルトの新カラーやオプションパーツなども発売予定で、今回の第1弾の再版とともに楽しみにしていただければと思う。