「フレームミュージック・ガール 初音ミク」レビュー

フレームミュージック・ガール 初音ミク

ぼくらの電子の歌姫がコトブキヤの手で立体化。幅広い可動域であなただけの歌姫に

ジャンル:
  • プラモデル
開発元:
  • コトブキヤ
価格:
5,800円(税別)
発売日:
2018年11月26日

 早速だが、皆さんは電子の歌姫「初音ミク」をいつ知っただろうか。「みくみくにしてあげる♪」とか「メルト」で、または「ワールズエンド・ダンスホール」や「ローリンガール」で、はたまた「千本桜」や「深海少女」、「七つの大罪シリーズ」、「終末」シリーズで、などなど。彼女や「MEIKO」、「KAITO」で一気に高まったVOCALOIDシリーズの波は、今ではひとつの文化形態を形作っている……と言いたい。彼女と同じ時を成長してきた私たちにとって、いわば各世代の方々にとっての並木路子さんであり、松任谷由実さんであり、美空ひばりさんなのだ。

 さて、そんな文化のリーダーとなった初音ミクが、メカと”メカ×美少女”の雄のひとりである島田フミカネ氏と柳瀬敬之氏のデザインとコトブキヤの変態的(とても良い意味で言っている)技術によって「フレームアームズ・ガール」ならぬ「フレームミュージック・ガール」となったのが本製品である。本稿では「素組みでもその魅力に触れられるぞ」という心意気をもってコトブキヤの技術と美しいデザインを紹介していく。

やはりツインテールは最大のトレードマークということで

 今回は全高約150mmのモデルともあり、パーツ点数とランナーのサイズは多め&大きめ。特徴的なグリーンで成形された大きなツインテールや後述のスピーカードローンなどのスピーカーを形作る円形パーツが目を引く(もちろん「FAガール」ならではの肌色パーツも)。

同じカラーのパーツを圧縮しているため点数が多く見えるが、実際通常のFAガールほど多くはない

 ――あれ、そんなにパーツ数多くないかもしれない。何せFAガールでいえば素体に多少の武装が付いたレベルであるから、組み立て難度は高くない印象だ。だからといって造形のレベルが高くないとか遊びの幅が広くないとか、そういうことは全く、全くないので安心して頂きたい。

 なのだが、このでっかいツインテール。

 頭部に装着すると自立します。いつか見たな、頭だけ――いわゆる”ゆっくり”状態でツインテールを脚のように使うミクのファンアート。

 と、おふざけはさておき。可動域については首の前後左右、胴体のひねり、股関節の開き方に肩をすくめる構造など、随所に細かいパーツを配することで豊富な可動ポイントを確保している。もちろんパーツ自体が細かくなるため組み立て難易度は多少上がるが、そのおかげで末永く遊べると思えば。

 なお今回もヘッドセットのマイクやイヤーカップ、髪の細かな房、ソックスにネクタイ、ブラウスと様々なパーツがマルチカラー成形のため細かい。スピーカーやマイクスタンドには細かいパーツも存在するため、ピンセットの使用も視野に入れたい。私は使った。だがほとんどのパーツは手ではめ込めたのでどうにかなる、はず。

今回のここすき

 なんと言ってもブラウスでしょう。

背中も滑らかな線がなんとも美しい。肌に密着する質感が大事ってわかってる”そのすじのひと”の仕業だ

 コルセット状のパーツは細かいが、いざ組み付けてみればその重要性がわかる。さらに裾がわざわざ別パーツで表現されていて、ここに可動ポイントが備えられているため”動いて翻るブラウスとスカート”が表現できる!しかもその裏にはスカートを組み立てる際に使用した肌色パーツがあって、軽く煽り気味に見上げるとブラウスとスカートの間の微妙な隙間から肌が覗くのだ。わーい。

腹部パーツを少し抉ってしまったのが悔しい。塗装する際はパテで埋めよう……

 なおこれは完全な余談なうえ組み立てると見えなくなる部分なのだが、ローレグ気味の(誰がなんと言おうとこう言わせて頂く)下部装甲と肌のやたらとこだわった造形が見て取れる。美しい分、これが見えなくなってしまうのは多少の悲しみがある。

 今回組んだミクさんは、もとが歌姫ということもありコレクションしているM.S.Gシリーズなどは使用しなかった――にもかかわらず!パフォーマンスに臨むミクさんを考えだしたらいくらでもインスピレーションが沸いてきた。今しがた思いついたが、マイクスタンドにランナーのT字になっている部分を組み合わせたらメガホンになる!……いまやってみたら少しユルかったので、実際に作る場合は多少調整が必要だろう。11月の発売当時はあまりにも人気だったため、2019年1月15日に急遽再販が決定している。なので本稿を読んで気になった方は是非、当日ホビーショップに駆け込んで!買って!

やはり歌う姿が最高に画になるミクさん
Ver.4になって活発な印象のミクさん。腰のスピーカーで聴者を魅了する

今回のプレイ・オブ・ザ・モデリング

 そして今回のMVPをご紹介。これは組み立て時というより、今回の画像の撮影に超役立ったものだが。

(テレレレ)コールマンのLEDライト~。

 11月の「FAガール シルフィー」のレビュー時に「なんとなく顔に影ができるなぁ」と思っていて、そこで閃いた。照らそう!と。なお光を柔らかく反射するレフ板はあまり効果がなかったもよう。撮影に使用する際はこのLEDライトに限らず、照らした場所が円形に暗くならないものがよい。豆電球を使用する懐中電灯が使いづらい例である。ミクさんといえばライブ、ライブなら強力なスポット光源、といった具合だ。

 光源を追加すると写真の雰囲気を作り出すのに実際有効というのは――人間やモノに限らず――モデルの撮影におけるコモンセンス。なぜ今まで気づかなかった。とくに今回のミクさんは撮影モデルとして優秀で、マイクやマイクスタンドとスピーカードローン、自身が身につけるスピーカー、「初音ミクVer.4」モチーフの腕パーツ、そしてブラウスとスカートの可動と、豊富なパーツと広い可動域を持つため様々な表現が可能なのだ。ミクさん買ってよかった。

光源なし(左上)、左から照射(右上)、右から照射(下)。どこに影を作るかを考えるのは楽しい

 各部位の「動かし方」も重要だ。今回のミクさん――FAガールでいえば、肩の可動ひとつとっても肩甲骨、鎖骨、腕の付け根に当たる部分で3点の可動ポイントがあり、手首ならば曲げた位置をくるりと回すことで中や外に曲げるポーズ、手首パーツをひねるように2点のポイントがある。こう話すと面倒にも聞こえるが、自分で実際にポーズをつけてみるとわかりやすい。オーディエンスに向かってマイクを向けるときはどう手首を動かすのか、肩をすくめる動作はどの関節が動いているのか……臆せず自分で試すことで、どう動かしたら自然に見えるかもわかってくる。なお袖なしの腕パーツは猿腕ぎみに腕を開くことも可能なので、またひと味違うポージングも可能となる。またここで思いついてしまったのだが、布を広げたところに寝かせて「ワールドイズマイン」を再現してみるとか……とにかくミクさんはその長い歴史と豊富なレパートリーからくる演出の幅が大平原のように広い。だからこそファンそれぞれの体験は個人のもので、再現したいと思うシーンは十人十色だ。つまり何が言いたいかというと、みんな買って。オモ写見せて。

オーディエンスなミクさん
スタンドパフォーマンスなミクさん