「機動戦士ガンダム バトルオペレーション2」レビュー

機動戦士ガンダム バトルオペレーション2

僕らはこれを待っていた。鋼と泥と硝煙香る重低音の戦場ふたたび

ジャンル:
  • チームバトルアクション
発売元:
  • バンダイナムコエンターテインメント
プラットフォーム:
  • PS4
価格:
基本無料(アイテム課金制)
発売日:
2018年7月26日

 2012年にPS3にて配信を開始し、2017年にサービスが終了した「機動戦士ガンダム バトルオペレーション」。その正統な続編「機動戦士ガンダム バトルオペレーション2(バトオペ2)」が、7月26日ついに配信を開始した。

 この「バトオペ」シリーズは、6対6で「機動戦士ガンダム」シリーズ――おもに宇宙世紀0079年を中心としたモビルスーツが登場し、ドカドカとその足で地を踏みならし、硝煙に煙る弾丸を、装甲を灼き溶かすビームを叩き込み、ときにはコックピットを飛び出し生身で「やらせはせんぞ」と戦うチームバトルアクションだ。

自分専用のアバターを作成

 私たちパイロットは、その世界でアムロ・レイでもシャア・アズナブルでもなく……ただひとり、民間軍事組織「P.M.U.」の一員である名もない傭兵としてMSに乗る。周りの仲間とともに戦い、孤立すれば待っているのはだいたいが死。なれば難しいゲームなのでは?――否、これは深淵への誘いである。MSが奏でる重低音と弾薬が打ち鳴らす轟音の尊さ、そして重厚な装甲が織りなすとてつもない情報量のモデルの美しさ。難易度の高さを上回る魅力がそこにあり、つられてプレイを続ければ楽しくて楽しくて楽しくてたまらない。最初のひと口のパンチと、噛み締めるうちに広がる芳醇な味わいが私をパイロットにさせる。本稿は、そんな「バトオペ2」の魅力を始めたての新兵にでもすぐ触れられる範囲でご紹介しよう。

精巧なモデルが生み出すフルコース

 昨今のゲームに誰しもが求めるもの、それは「見た目」ではないだろうか。繊細なポリゴン、特徴的なディテール、カッコいいエフェクトとモーション。

 ご安心ください。本作はそれをすべてクリアしております。筆者はジオン軍MS大好きジオニストなので、「ザクII」をはじめとしたモノアイが睨みを利かすMS群を中心に解説していこう。

 まずはその外観、オーバービュー。そう、全体の見た目は大事。装甲の分割線やディテールが多く引かれたリアル志向で、ガンプラモデラー諸氏向けに言えばPGやRGレベルで描き込まれている。ザクIやザクIIはもちろん、ドムにゲルググ、ザクII改、ザク・タンクに至るまで。これは賛否両論あるところかもしれないが、私は大好きだ。

MS選択時にL3を押すとMSをじっくりと堪能できる

重厚な挙動は機械の脈動

 本作におけるMSには、バランスの取れた「汎用」、高機動が取り柄の「強襲」、遠距離から大火力でプレッシャーを掛ける「支援」の3属性が設定されている。汎用は強襲に、強襲は支援に、支援は汎用に強いといったように、3すくみの関係が成り立っているのだ。

初期状態で選択できる「強襲」ザクI、「汎用」ザクII改

 そんなMSたちは、どれもがずしりずしりと重量感のある挙動で動き、照準速度も設定ではなく機体性能に左右される。さらには脚部、頭部の部位破壊という概念もあり、頭部なら攻撃力とレーダー性能、脚部なら移動性能が被破壊時にガクッと落ちる。

 この、この地を震わす重苦しい轟音が魂を震わせる!重めの挙動は初めこそ少々もどかしさがあるが、少し慣らし運転をするとそれこそが「バトオペ2」が持つMSたちの魅力なのだとわかる。そして挙動が重たいからこそ、パイロットとしての腕が試されるのだ。MSそれぞれが持つスキルを活かし、取り回す武器を活かし、戦場を生きる。強力なMSにはそれ相応の操作が要求されることがほとんど。ゲルググやドム、アッガイといった最高にロックで魅力的なMSを抱き締める前に、量産されて圧倒的信頼性を勝ち取ったザク(あとジム)で準備運動をしよう。

そのイケメンすぎる練り込まれたモーションの数々

これぞメインディッシュな出撃シーン

 はいここ、「バトオペ2」最大の魅力にして最高の演出、見てるだけでよだれと手汗と涙が止まらなくなるシーン。出撃カットだ。

 パイロットたちはメンバーが集まり、いざ出撃となると自分のMSが懸架されたハンガーへ走る。宇宙の場合はレールに沿って移動する。そこから自分の背中ごしに、愛機を望む。

 ここ。ここがとても気持ちいい。MSそれぞれに設定されたコックピットの閉鎖、メインカメラが点灯してドクンと命が宿り(いわゆる”ぐぽーん”と”シャキーン”である)、ボディの排気孔からダストが噴出する。そして、各機出撃体勢をとって基地から放たれる自分。地上なら戦場の剣呑な雰囲気を忘れさせるような青空が、宇宙でなら吸い込まれそうな光る宇宙が背景を彩る。

このいじらしいまでのフェチズムを追求した出撃シーン。これだけでリック・ドム12機分くらいの魅力

 この出撃シーンにホンモノの愛を感じる。なんだこれは。こんなにファンを感動させる演出があってたまるか。いやたまらない。もうこれだけのためにマッチに出撃してあとは適度に楽しむくらいに戦ってしまいたいし、愛しいジオンMSたちすべてを手に入れて個別に楽しみたい。筆者は支援タイプの、特にザクI・スナイパータイプやザク・タンクが得意――それしか使えないともいう――だが、苦手な強襲タイプやそんなに得意ではない汎用タイプもどっぷりと楽しみたい。今まで映像にもゲームでも見られなかったあのMSの出撃シーンを、「バトオペ2」でならじっくりと堪能できるのだ。

決めろカウンター!ゴリゴリに熱く洗練された反撃モーション

 少々難しいテクニックだが、敵の近接攻撃(ヒートホークやにっくきビームサーベルなど)に合わせて△ボタンで出せる「タックル」を発動すると、うまくいけば高い攻撃力と美しいモーションのカウンターが発動する。押さえ込んで叩き潰す、砲門を密着させて斉射などなど固有のモーションが設定されており、1度は決めてやりたい攻撃だ。ついでに相手を悔しがらせることもできる。

もう格好いい。100点満点で100万点

MSが地を踏み宙を舞う繊細な協奏曲

 ――音響、それも本作の魅力だ。

 10数トンの巨体を支える2本の脚が、交互に地面に突き立てられる。熱核ホバーの吹くエアがスカートを灼き、戦車と形容するには巨大な履帯が地を削る。「あぁ、こいつはこんな音を立てて動くよな!」と激しく頷ける効果音が、それぞれの動きに花を添える。

 ランドセルやバックパックから爆炎を噴射して飛び上がり、高速移動を行なう際もそれぞれ固有の音が収録されている。ザクなら戦闘機が吹かすアフターバーナーのような爆音、ザク・キャノンなら地上の粉塵に耐えられるよう設計されてか静音性の高い噴射音、ザクI・スナイパータイプなら籠もった音といったように。こんな一見そこまで大事じゃない……けどとても大事な音にまで力が入っているのが愛おしくてたまらない。

 攻撃時のSEも、とてもよく検証されている。ビームが頭上をかすめたときは唸るような音が過ぎてゆき、砲弾が足下に着弾すれば装甲を貫徹したり、爆轟が耳を突く。

 そう、そして「宇宙」には「ゴミ」――「デブリ」がある。宇宙世紀なのだから当然そこには戦いの痕があり、儚く破壊され鉄クズとなった構造物の欠片が辺りに漂っている。これにぶつかった音まで表現しているのだ!鉄クズが装甲に当たる「ゴツン」が表現されているのだ!どうしてここまで細かく再現した!ありがとう!

BGMは旧作ファンも新兵も唸るはずのラインナップ

 戦闘中やロビーでの待機中に聴けるBGMはランダム。――その中には、かつてPS2で発売され、またPS3でリメイクされた「機動戦士ガンダム戦記 Lost War Chronicles」で聴けたBGMも収録されている。これは「ガンダム戦記」で総監督を務め、本作でアクションパートなどの監修を担当した徳島雅彦氏の粋な計らいであろう。その今なお色あせない、耳を揺さぶり高揚感を限界まで高めてくれる音楽が随所に仕込まれている。今だから言うと当時ユウキ・ナカサトがとても好きだった。

ボイスも充実!耳が幸せ

 ロビーとなるフィールドでパイロットを歓迎してくれたり、戦いをナビゲートしてくれるキャラクターにはボイスが付いている。ナビゲーターである「テンダ」は七瀬彩夏さんが務め、他にも竹内良太さん、田辺留依さん、沼倉愛美さん、藤田茜さん、新垣樽助さんといった声優陣がゲームを彩る。

実家のような安心感、ロビー

 ときに、筆者はPCで遊ぶMMORPGが大好きだった。そこで重視していたのは、プレーヤーが憩える「たまり場」という概念。それが本作にもあった……ロビーがそうだ。

 本作のロビーは、プレーヤーの作成したアバターが自由に歩き回ってNPCと会話できる小さなフィールドとなっている。P.M.U.の基地として構築されたそこは、61式戦車やザク、ジム・スナイパーカスタム、そしてダブデにHLV、ミデアといった連邦軍やジオン軍に関わらない兵器群が所狭しと配備されている。ジオニストも連邦兵にも欲しい兵器が置かれていて、とても満足。

 補給品が並ぶ酒保や、兵士たちの娯楽になるであろう酒場、駐車場、そしてMSが保管されているハンガーと、「まさに基地」といった風体の施設が作り込まれている点も嬉しい。自分がP.M.U.という組織の一員で、まさに今戦っているのだという臨場感がある。

 そして、ロビーでは同じ場所に集まったプレーヤーとチャットやエモーションでコミュニケーションをとれる。エモーションも多彩なため、ザクの足下で座って休憩してみたり、広場で筋トレに励んだりと、個性ある演出が可能だ。

コスト制限で目指すフェアプレイ

 本作には、課金要素として「抽選配給」がある。ゲームプレイで貯まる「DP」を使うより手早くMSや武装、カスタムパーツ、アバター用の衣装が手に入るのだ。

 ここで手に入るMSは、強力であるゆえに「コスト」が高い。高い能力や豊富な武装、スキルを持てばもちろん強力なMSといえるが、被撃破時に相手へ与えるポイントは高く、ハイスペック、ハイリスク、ハイリターン。抽選配給を使えば、初心者や低階級のプレーヤーでも手軽に強力な武装が整う。

 それをフェアにするのが「コスト制限」だ。マッチを選ぶ際には必ずコスト制限のあるマップか存在する。これがあると誰もがある程度同じルールのもとでプレイできるため、戦場でのスキルを磨くよい経験になると思う。

レーティングマッチで成長促進

 手軽に楽しく遊べる「クイックマッチ」やフレンドとの訓練に役立つ「カスタムマッチ」と比べ、報酬が多いがレートの上下があるのが「レーティングマッチ」だ。

 こう言うとなんだか手を出しにくいものに見えてしまうが、レーティングマッチは毎日3回まで獲得DPと経験値が「5倍」になる。5倍だぞ、5倍。悔しいけどザクに対するガンダムくらいある。経験値やDPを多く獲得できるということは、そのまま触れられるMSが増えることにつながる。ちょっとおっくうでも、とりあえず1日3回はレーティングマッチを遊んでみよう。

カスタムパーツで差を付けろ

 もちろん、どのMSも性能が平均的なわけではない。MSには個性を与える「カスタムパーツ」を搭載するスロットが設けられており、その制限内で自分好みのMSを作り上げる。

 たとえばザクI。こいつは高速で走り戦場後方にいる支援機を駆逐する強襲タイプなので、脚を壊されて機動力が奪われると動く棺桶に成り果ててしまう。これを防ぐために脚部のHPを底上げする「脚部特殊装甲」を搭載したり、いやここは当たらなければどうということはないとスラスター性能を上げる「噴射制御装置」を載せたり、「高性能走行制御機構」を載せたりするのがプレーヤーの個性である。筆者は後者なので移動力を上げる。

こんなに嬉しいことはない

 筆者は前作「バトオペ」を長いこと遊んでいた。まだ出撃エネルギーに資金をつぎ込めるような状態でもなかったから、1日3回の出撃と決めて「イフリート改」を必死に探したり、ザク・タンクで格闘MSを翻弄したり、ヅダで好き放題飛び回ったりしていた。それだけに2017年のサービス終了はなかなかのショックだったのだ。

 だからこそ「バトオペ2」の登場は飛び上がるほどの超・朗報だった。またあの重厚な戦場を味わえる!鉄とオイルと硝煙にまみれたダーティで漢(オトコ)なバトルを楽しめる……!と。今度こそジオン軍一筋で戦うぞと心に決め、気がつけばリリース直後の限定抽選配給を回していた。感謝の抽選配給である。「バトオペ」よ、私は帰ってきた。

 ただ、個人的に本作は「ガンダム」ゲームシリーズの歴史に残る超名作だと思いつつも、そのハードルの高さは実感する。ファンを喜ばせる演出を随所にちりばめ、リアリティとゲームバランスを追求したからこそ始めたての数回は難しく見えてしまうのだ。経験者にボコボコにされ、為す術もなく倒される瞬間は筆者だって辛い。

 だとしても、だ。本作は遊べば遊ぶほどに魅力に気づいていく”スルメゲー”で、上達が実感できる――達成感を味わえる。宇宙世紀が、とくに「ポケットの中の戦争」や「08小隊」、「UC」そしてなにより”初代”が好きな方におすすめしたい。これはガンダムを愛するスタッフがガンダムを愛する者たちのために製作し、ガンダムシリーズを愛するべく生まれたゲームだと言いたい。