先行体験
「鬼武者2」先行レビュー、嬉しい調整多数で見事な現代ゲームに
23年経っても色褪せないゲーム性と高解像度化で生まれ変わったグラフィックスをチェック!
2025年4月23日 10:51
- 【鬼武者2】
- 5月23日発売予定
- 価格:3,990円
2002年にカプコンがプレイステーション 2でリリースした戦国サバイバルアクション「鬼武者2」が23年の時を経てHDリマスター版で蘇る。プレイステーション4/Xbox One/Nintendo Switch/PC(Steam)とマルチプラットフォームで展開し、5月23日に発売する。DL版のみで価格は3,990円。
全世界累計200万本を突破した大ヒット作品で、第1作に引き続き実在の俳優をフェイスモデルに起用。本作の主人公・柳生十兵衛に「松田優作」氏を起用したことで当時大きな話題を呼んだ。
本作は、ゲームの根幹はプレイステーション 2版そのままに、グラフィックスの向上と操作感を現代向けにチューニングを施した作品となっている。
今回弊誌では、「鬼武者2」HDリマスター版のSteam版を先行でプレイする機会をいただいた。23年前の作品ということもあり本作をプレイしたことがない人もいるかと思うので、「鬼武者2」が持つ魅力やゲーム性、リマスター版でどのように進化したのかを紹介していこう。
敵を斬り捨てるバッサリ感がクセになる爽快アクション
舞台は前作から13年後の戦国時代。幻魔と呼ばれる魔物の王となった織田信長によって柳生の庄を壊滅されてしまう。皆殺しにされた一族の敵を討つため、柳生十兵衛の戦いが始まる――といったストーリー。
設定や世界観などは前作を踏襲したものにはなっているものの、ストーリーや登場キャラクターなどは「鬼武者2」で独立しているので本作からでも問題なく楽しむことができる。
壊滅された柳生の庄に十兵衛が駆けつける場面からゲームが始まる。最初に少しキャラクターを動かしただけで操作感が圧倒的に良くなっているのが感じられた。オリジナル版ではキャラクターの移動は方向キーのみだったが現代風の調整がなされており、スティック操作が可能になっている。
それもただスティックに対応しているだけではない。オリジナル版では初期の「バイオハザード」シリーズと同様の方向キー左右で旋回、前後で前進後退といういわゆるラジコン操作で、アクションゲームにしては少々とっつき難い操作方法であった。
しかし本作では、スティックを入れた方向にキャラクターが移動する直感的な動きになっており、敵を避けながら進行する際や、戦闘で相手との間合いの取り方などが圧倒的にやり易くなっていて非常に快適だ。方向キーの入力ではオリジナル版のままの操作方法になっているので昔の操作に慣れている人も安心だ。
固定カメラ視点とラジコン操作ということもあり、当時は和風の「バイオハザード」という印象が強かったが、大きく異なる点は“爽快感のある剣戟アクション”にある。ザコ敵は極力無視して進んでいく「バイオハザード」に対して、「鬼武者」は出現する敵は基本的には倒していくのが好ましい“戦闘に重きを置いた作品”になっている。
本作では敵を倒した際に4色の“魂”が放出され、吸収することで色に応じて体力の回復や装備の強化に必要なポイントが獲得できるなど、メリットが沢山ある。装備を強化するために敵を倒しまくってポイントを貯めていくという、RPG的な楽しさが味わえるのも「バイオハザード」とは異なる魅力である。
基本となる攻撃アクションは刀をはじめとした近接攻撃。攻撃ボタンを連打するだけで連続で斬撃を叩き込むことができる。敵を斬った際のSEがとにかく気持ち良く、激しい流血表現も相まって刀による鋭い一撃が肌で感じられる。
近い敵をロックオンする構え状態では、方向キーとボタンの組み合わせによって斬り上げや防御崩しの蹴りなど多彩な攻撃を繰り出すことができる。敵の性質によって攻撃を使い分けるのも重要になる。
接近武器だけではなく、ゲームを進めて入手すれば弓矢や火縄銃などの遠距離攻撃も使うことができる。遠い場所に敵がいるときに活躍するのだが、オリジナル版では一旦メニュー画面を開いて装備を変える必要があり地味にテンポの悪さを生んでいた。
そういった細かな部分もリマスター版では改善されており、通常のゲーム画面でシームレスに装備を切り替えることができるようになっている。
鬼力と呼ばれるゲージを消費すれば「鬼戦術」と呼ばれる必殺技を放つことができる。鬼戦術の発動時は完全無敵で、敵の猛攻を切り返しながら大ダメージを与えられるのでボス戦などで大いに活躍する。
鬼戦術は装備している武器によって性能がガラリと変化するのも特徴。広範囲に大ダメージを与えるものや、敵を凍らせて一定時間行動不能にするものなど様々な効果がある。状況に応じて鬼戦術を使い分けるのも本作のバトルの醍醐味だ。
ここまではいわばオーソドックスなアクションゲームの範疇だが、「鬼武者」を象徴する「一閃」がバトルの面白さと爽快感を加速させている。
一閃とは、音速の一太刀でボスを除くどんな敵も一撃で倒すことができる特殊攻撃。複数体の敵が固まっていたらそれらをまとめて斬り捨てるという非常に強力な性能を持ち、さらに一閃で倒した敵からは通常よりも多くの魂が放出されるという特典もあり、本作の中で欠かすことのできないシステムなのだ。
どんな敵も一撃で倒せるなら一閃以外いらないじゃないかと思われるかもしれないが、この一閃を自在に使えるようになるにはかなりのプレーヤースキルが必要になる。
一閃は、敵の攻撃がこちらにヒットする直前に攻撃ボタンを押すことで発動する。タイミングが早いと通常の斬撃になり、少しでも遅いと敵の攻撃が直撃してしまうという、成功したときのリターンが大きいだけに失敗したときのリスクを伴うのだ。
このタイミングが結構シビアかつ、敵によってそれぞれ攻撃の速度や一閃のタイミングが異なるので最初のうちはなかなか成功するのが難しい。筆者も今回23年ぶりにプレイしたが、一閃のタイミングが1番簡単な織田雑兵相手にもミスを連発してピンチになる場面に何度も見舞われた。
初めのうちは確かに難しいが、試しているうちに段々と感覚が体に染みつき、思うように一閃が出せるようになると戦闘がとにかく爽快。本作の面白さが格段に上がってくる。一閃を捨てた手堅い戦い方は安パイではあるが「鬼武者2」の神髄を味わうためには狙っていきたいところである。
主人公の十兵衛は鬼の血を引いており、敵が放出する紫の魂を5つ吸収することで一定時間鬼武者に変身することができる。初代「鬼武者」では変身するのはイベントシーンのみで実際に操作することができなかったので、「鬼武者2」で待望の変身が実装されたのは当時テンションがブチ上がったのを今でも覚えている。
鬼武者に変身するとどのようになるのかというと、変身中は敵の攻撃が一切効かない無敵状態となり、攻撃力が格段にアップして、さらに「鬼神弾」と呼ばれる強力な追尾弾を放てるという超強化モードなのだ。
オリジナル版では5つ目の紫の魂を吸収した瞬間に自動的に鬼武者に変身してしまう仕様だったため、ボス戦などのここぞという使いたい場面で狙って変身するのが難しかった。
この鬼武者変身の部分も調整が入っており、本作では5つ目の魂を吸収した状態で任意のタイミングで鬼武者に変身できるようになっている。魂を4つの状態でキープする必要が無くなり、ボス戦で開幕から鬼武者で戦えるのは嬉しい限りである。
イベントやストーリーも変化するやり込み要素“同士との絆”
鬼武者変身も前作には無かった注目システムの1つではあるが、それを超えるのが「同士との絆」という要素だ。本作には十兵衛と共に旅をする個性豊かな4人の同士が存在し、それぞれの同士との絆値を上げることで様々なイベントが発生したりストーリーが分岐したりと、かなりやり込み度の高い要素となっている。
絆値は町にいる同士に贈り物をすることで上げることができる。贈るアイテムは何でも良い訳ではなく同士によってそれぞれ好みがあるので、性格を汲み取って欲しいであろうアイテムをプレゼントしなければならない。
同士は4人中3人は男(そのうち1人はスキンヘッドの大男)ではあるのだが、この恋愛シミュレーションのようなキャラ攻略要素がなかなかに面白い。本作には膨大なプレゼントアイテムが存在し、プレゼントを受け取ったときのリアクションもアイテムごとに細かく用意されているので“これをあげたらどんなリアクションをするのか?”といった楽しみがある。
別稿の開発者インタビューでも話題に挙がったが、同士たちの絆をリアルな人間関係のように表現したとのことで、本作には目に見える絆値というものは数値化されておらず、絆の深まり具合はプレゼントしたときの反応の変化で察するのみという思い切った作りになっている。
絆値を上げた同士は、十兵衛のピンチに駆け付けて協力して一緒に戦ってくれたり、プレイアブルキャラクターとして同士を自分で操作して進めるイベントなども発生する。武器やアクションなどは十兵衛とは全く異なる固有のものとなっており、操作していてとても新鮮だ。
同士とのイベントは100種類もあり、当然1回のプレイではすべて見ることはできないボリュームとなっている。一周プレイしたら終わりではなく、何度も周回プレイが楽しめる作りになっているのは嬉しいポイントである。
HDリマスターで現行タイトル並みのグラフィックスに! さらに、鬼畜極まりない新モードも
「鬼武者」シリーズといえば、主人公のモデルに実在の俳優を起用しており、既に亡くなられていた松田優作氏の3Dモデルはまるで実写のようなクオリティに仕上がっていた。
当時としては「鬼武者2」はグラフィックスもかなり高い作品であったが、20年以上経った今オリジナル版を改めて見るとイメージしていたよりも荒くぼんやりとした映像で、さすがに時代の流れを感じてしまった。
HDリマスターで高解像度化を施しても20年以上前の3Dモデルが美しくなるのか少々疑問ではあったが、映し出された映像は非常にキレイなものだった。
キャラクターの表情や雨宮慶太氏がデザインした服装&装飾品、背景の草木に至るまで、ぼんやりしていた映像はクッキリと美しくなり、現行タイトルと遜色ないレベルに生まれ変わった。映像力が上がり、十兵衛たちが織り成すドラマチックな世界への没入感が増した。
さらに、ゲームのプレイ感とグラフィックスが向上しただけにはとどまらず、新たな高難易度モード「修羅」が追加されている。
これまでも高難易度のモードは用意されていたがそれらをはるかに超える超難易度で、どんなザコ敵の攻撃てあっても“一撃食らったら即死亡”という凶悪なもの。
実際にプレイしてみたが常に死が隣り合わせという状況はかなりの緊張感がある。カメラの死角に潜んでいる敵や遠距離武器を持つ敵がとにかく鬼門で、不意打ち的な一撃で何度もゲームオーバー画面を見ることとなった。
筆者の実力ではゲーム序盤からほとんど進めることができなかったが、腕に自信のあるプレーヤーはぜひ挑戦してみてもらいたい。
また、黒いスーツの男を操作するミニゲームや特別衣装など、「鬼武者2」には様々なオマケ要素が用意されており、オリジナル版では特定の条件を満たさないと解放されなかったが本作では最初からすべて解放済みでゲーム開始時から楽しむことができる。
ほかにも、雨宮慶太さんが描いた貴重な設定画やアートワークを見られる「ギャラリー」。ゲームを盛り上げる作中の楽曲を自由に聴くことができる「オリジナルサウンドトラック」なども収録されている。「鬼武者2」のすべてを満喫できるファンにはたまらない内容となっている。
ゲーム部分は最小限の調整でほぼオリジナル版のままだが、映像と操作感が現代的に進化していることもあり、総合すると23年前の作品とは思えないクオリティであった。
敵を斬るバッサリ感と一閃を決めたときの爽快感は本作でしか味わえない魅力なので、未プレイの人はもちろん、過去にプレイした人にも生まれ変わった「鬼武者2」をぜひ遊んでもらいたい。