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【GDC 2014】「Project Morpheus」吉田修平氏インタビュー

「Project Morpheus」の真価は“みんなで遊ぶ”。ゲーム市場を超えたマスマーケットを目指す!

3月17日~3月21日 開催(現地時間)

会場:San Francisco Moscone Convention Center

「EVE: Valkyrie」を体験する筆者。上下左右に激しく移動するゲームですが、3D酔いしませんでした!

 GDC 2014でお披露目されたVRヘッドセット「Project Morpheus」。本誌では発表会、そして体験レポートをお届けしているが、今回SCEワールドワイド バイスプレジデントの吉田修平氏へ合同インタビューを行なった。

 「Project Morpheus」の概要は上記の記事を参考にしていただきたいが、吉田氏からは「Project Morpheus」発表の背景に加えて、デモでは見えなかった「Project Morpheus」の真の遊び方なども伺うことができた。

 なお筆者は、インタビュー前にVRシューティングゲーム「EVE: Valkyrie」を体験させてもらっている。宇宙空間を戦闘機で飛び回り、他の戦闘機とドッグファイトを繰り広げるという内容で、人並みの三半規管機能を持つ筆者には3D酔いが大いに心配されたのだが、これが意外にも全然平気。他の記者もこれには驚いたようで、インタビューは3D酔いに関する質問からスタートした。

「VR」特化の「Project Morpheus」。東京ゲームショウへの出展も?

SCEワールドワイド バイスプレジデントの吉田修平氏
GDC 2014でお披露目された「Project Morpheus」
左にあるのが、ヘッドセットユニットとのセットとなるプロセッサーユニット

――「Project Morpheus」で「EVE: Valkyrie」を体験させてもらいましたが、何より驚いたのは3D酔いが全くなかったということです。ソニーブランドでは「HMZ」シリーズがありますが、あちらとは全く違うものでしたね。

吉田修平氏 私達は「VR」がやりたかったので、目標が違うんですね。同じソニーなので勘違いされることも多いのですが、実は「Oculus Rift」よりも長く研究していて、酔わないということには最も力を入れていました。やっとそれを言うことができました。

――なぜこのタイミングの発表になったのでしょうか?

吉田氏 まずこの時代になって、軽いタブレットやセンサーなどが安く手に入るようになったことがあります。またVRを成立させるには60fpsで動かさないとダメで、プレイステーション 3だとパワーが足りませんが、プレイステーション 4によってやっと実現できるようになったということです。

 PS4よりも前に発表しなかったのは、それではPS4の主軸がゲームなのか、「Project Morpheus」なのか、メッセージとしてぼやけてしまうからです。そこでちょっと落ち着いた今のタイミングでの発表となりました。

――同じVR機器ということで、「Oculus Rift」についてはどのようにお考えですか?

吉田氏 それが敵と思ったことがないんですよ。むしろありがたいなと思っています。「Oculus Rift」が「VRは実現できるんだ」というメッセージをみなさんに伝えてくれて、そのおかげで熱が盛り上がってVRを受け入れる下地ができたと思います。

 今我々が抱えている問題と「Oculus Rift」が抱えている問題はきっとほとんど同じで、向こうはPC、こちらはPS4と両方で展開することで、VRの存在感を示せます。

――気になる発売ですが、いつになりそうですか?

吉田氏 今年は絶対にありません(笑)。来年以降はいつでも可能性があります。

――価格についてはいかがでしょう。

吉田氏 またプロトタイプですから、最終的に搭載されるものが決まっていないので、なんとも言えません。ただ、ほかのプレステーション機器と同じで、誰もが買えて、PS4に繋げばすぐにプレイできることを目指しています。

――次は開発者向けにSDKの配布となりますが、それはいつになりそうですか?

吉田氏 プロトタイプはもうできていますので、数を揃えて、SDKを調整して、年内には。プレイステーションのデベロッパー契約をした開発者に配布します。

――完成品までに、どの部分の完成度を高めていくのでしょうか?

吉田氏 発表会では「Project Morpheus」における5つのキーワードを話しましたが、パネルの反応速度や解像度、リフレッシュレートなどはまだまだ良くできるはずなので、その辺りを改良していきます。

 すでに搭載されているトラッキングがよくできていて、PlayStation Camera1つでヘッドマウントユニット、DUALSHOCK 4のライトバー、PlayStation Moveを同時にトラッキングできます。その世界の中での相対的な位置が正確に取れるので開発がしやすいはずです。

――今後、プロダクトの形は変化するのでしょうか?

吉田氏 基本はあの形です。「Oculus Rift」ではベルトの締め付けがきついのですが、スタッフの努力のお陰で「Project Morpheus」は頭で支える形にしています。また頭に乗るので、圧迫感もありません。目の周りには隙間も設けているので、汗をかいたりせず、長く使っても楽だと思います。

 ただ、現状は誰かが装着を手伝わないといけないので、初めて見る人でも使えるようにしていきたいですね。

――ヘッドフォンは別に装着しますが、こちらはいかがでしょう?

吉田氏 ヘッドフォンはあのままでいいと思っています。ヘッドフォンは色々といい製品を持っている方も多いので、標準のものを付けるに留めて、あとは好きなモノを使う形にしようかなと。

――発売時に想定している、基本セットを教えて下さい。

吉田氏 ヘッドセットユニットとプロセッサーユニットの2つが基本セットになりますが、プレイにはPS Cameraが必要になります。それとPS Moveを持っていれば、それも使用できます。

――「Project Morpheus」とVRの将来性について、吉田さんはどのように見ていますか?

吉田氏 「Project Morpheus」はPS4の周辺機器ではありません。もちろん、ゲームが好きな人が最初のターゲットユーザーにはなるのですが、いけない場所に行ったりフィクションの世界に行ったりしてもいい。

 それはマスマーケットです。ゲームは興味がない人でも、VRの体験がしたいからPS4を買ってしまう。そこまで行くと思います。将来はVRがビジネスとしても大きな規模で展開できるのではないでしょうか。

 家でできますし、動く恐竜にエサをあげたりだとか「何かを体験できる」ものなので、教育にもいいと思います。

――家族で楽しめるようなものを考えているのでしょうか?

吉田氏 体験デモでは体験の様子がモニターに出力されていますが、あれは片目の映像を引き伸ばして出力しています。VR体験というと個人的なものになりがちですが、開発スタッフからの強い要望でみんなで楽しめるものにしようとなりました。

 今回のデモでは出していませんが、深海に潜る「Deep」ではタブレットと連動させることができて、タップした位置にカメを出してサメを誘導したりできるのです。

 これを応用すれば、例えばお化け屋敷に「Project Morpheus」を装着した1人が入り込み、Wii Uのように周りの人がお化けを出して驚かせたりして、みんなでわいわい楽しめます。今後は、そのようなメッセージを内部から発信していきたいと考えています。幅広い人に遊んでもらいたいですね。

――まだまだ始まったばかりという感じですね。

吉田氏 何分プロトタイプ段階ですから、まだコンシューマー向けの形も考えていません。内容もまだまだ研究されないといけませんが、東京ゲームショウでの参考出展の可能性はありますね。

――期待しています! ありがとうございました。

(安田俊亮)