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【GDC 2014】SCEA、PS4用VRシステム「Project Morpheus」詳報

フルHD-LCD&ヘッドトラッキング搭載。PS Move連動で最先端のVR体験を

3月17日〜3月21日開催(現地時間)

会場:San Francisco Moscone Convention Center

セッション会場の様子

 GDC 2014会期2日目となった3月18日、Sony Computer Entertainment Americaは“Driving the Future of Innovation at Sony Computer Entertainment”と題するセッションを開催し、VRヘッドセットの開発プロジェクト「Project Morpheus(プロジェクトモーフィアス)」を正式発表した。

 本セッションにはSCEワールドワイド バイスプレジデントの吉田修平氏を筆頭に、「Project Morpheus」研究開発をリードするR&D部門のスタッフらが登壇。SCEがPS4で目指すVRシステムのアウトラインを明らかにした。

長年に渡ったSCEのVR研究が実を結ぶ「Project Morpheus」

SCEワールドワイド バイスプレジデント 吉田修平氏
PS4世代のイノベーション
新たなキーワードは「Virtual Reality」

 発表に先立ち、吉田修平氏はSHAREボタンやリモートプレイ、また夏にスタート予定のストリーミングゲームサービスPlayStation Nowの例を引きつつ、PlayStationにおけるイノベーションは「遊びの地平を広げることにフォーカスしている」と語った。そして今、新たなゲーミングのスタンダードを定義する試みがあるとし、次いで「Virtual Reallity」という単語が飛び出した瞬間、会場からは大きな拍手。

 吉田氏の話はPS3時代に遡る。SCEAでは2010年ごろよりPlayStation MoveとソニーのHMD「HMZ-T」シリーズを使ってVRゲーミングの先行研究をしていたとのことで、過去例として「God of War」のHMD版や2つのPS Moveを使う「Datura」が紹介された。これらは使用HMDが「HMZ-T1」であったため視野角が十分ではなかったものの、VRゲーミングのポテンシャルを感じ取るには十分すぎるほどだったと吉田氏は語る。

 こういった実験を経て、VR研究は本格的なプロトタイプの完成を目指す。これはかなり横断的なプロジェクトとなり、SCEI R&D、SCEA R&D、そしてワールドワイドスタジオのメンバーが参画。PS VitaやPS4の開発でもこれに近い体制が取られており、その有効性は実証済み。

 ちょうどその頃、米Oculus VRによるKickstarterプロジェクト「Oculus RIFT」の成功により業界全体のVRゲーミングに対する期待値が爆発的に高まったことは、SCEAによる研究開発にも大きな影響を与えたようだ。スピーチの後半で吉田氏は、Oculus VRやValveによる情熱的な取り組みに対して深い敬意を表し、プレイステーション 4という独特のポジションから共にVRゲーミングの地平を広げていきたいとの展望を語った。

PS Moveの開発をきっかけにVRシステムの研究がスタート
「God of War」のVR版デモ
「DATURA」までのVRテスト環境には「HMZ-T1」が使われていた
PS4向けVRヘッドセットのプロトタイプ。PS Moveが装着されている
「Project Morpheus」プロトタイプ機

 こうしてPS4向けのVRシステム「Project Morpheus」のプロトタイプ機が披露された。これは最終製品版ではなく、開発機であることに注意したい。仕様としてはフルHD(1,920×1,080ドット)の5インチLCDを搭載し、水平90度の視野角を持つ。両眼立体視に対応し、左右それぞれの目には横解像度が半分となる960×1,080ドットの映像が見える方式だ。有線のHDMIおよびUSBでPS4と接続する。

 ヘッドトラッキングシステムは加速度センサーおよびジャイロセンサーからなり、着用者の360度全方向の傾きと位置を、直径3メートルの範囲で認識。レポートレートは1000Hzとなっていて、操作ラグの低減に配慮した仕様となっているのが特徴的だ。これに加え、完全な音響定位を持つ3Dオーディオシステムも搭載する。

 プロトタイプ機はプレイステーション 4開発キットに含まれ、準備が整い次第、順次各デベロッパーに送られるという。最終製品版の仕様や価格等は不明だが、全体的に「Oculus RIFT」に近い仕様となっていることもあり、少なくとも同カテゴリーの競合に遅れを取らない水準、かなり競争的なスペックと価格で市場に供給されることは期待していいだろう。

会場で披露された実機。非常に独特なフォルムを持つ

PS4の強みを生かし、ひときわ最先端のVR体験を

SCEA R&D部門のRichard Marks氏
PS4向けの完成されたコントローラー類が利用できるのは大きな強み
たくさんのテクノロジー企業が協力を始めているという

 吉田氏が「Project Morpheus」のプロトタイプを披露した後は、SCEAのR&D部門で研究開発をリードするRichard Marks氏とAnton Mikhailov氏が登壇。「Project Morpheus」が目指すVRシステムとしての方向性や、現在準備中のコンテンツについて語った。

 Richard Marks氏のスピーチでは「Project Morpheus」の重点として5つのキーワード「SIGHT」(90度の視野、フルHD、PS4の描画力)、「SOUND」(PS4による3Dポジショナルオーディオ能力)、「TRACKING」(低遅延の加速度・ジャイロセンサーを搭載)、「CONTROL」(Dualshock 4やPS Move、PS Cameraとの連動)、「EASE OF USE」(つなげるだけで使える)、「CONTENT」(サードパーティの意欲的な参加)を挙げた。

 やはり、PS4という包括的なゲーミングシステムに含まれることが「Project Morpheus」の大きな強みだ。このセッションでは「For Everyone」というフレーズが何度も使用された。次世代機としての高い能力と、高品質のコントローラーが標準化されており、VRシステムを緻密に連動させることがでる。しかも誰もが使えるほど簡単に。基本的にカオスなPC界を前提とする「Oculus RIFT」には無い利点であろう。

 Anton Mikhailov氏は「Project Morpheus」によるVRシステムを、単なる周辺機器やガジェットではなく“新たな中心”であると定義する。既存設計のゲームを動かして満足するのではなく、VRシステムのために新たなルールでゲームを作る。特にプレーヤーの視点と一体化されるヘッドトラッキングを基準にすえたコンテンツデザインの重要性を語った。

 スピーチ内では「Project Morpheus」のもうひとつの能力も明かされた。少なくとも開発版ではVRヘッドセットから外部モニターに映像をリダイレクトする機能(ソーシャルスクリーン)があり、ヘッドセット装着者と、それ以外の人がゲームプレイ体験を共有できる。PS Cameraを通じて、また新しい形のマルチプレーヤーゲームの実現も可能かもしれない。

VRゲーミングはゲーム開発の方法論を再定義する、あらたな中心となる
乗り物シムは肉体的にもリアルとの連動性が高く、相性が良い。他のジャンルでもどのように肉体性をリンクさせるかがカギ
コンテンツ面の紹介を行なったAnton Mikhailov氏
音響システムの開発風景。さすがSCEといったところ

 このように「Project Morpheus」は、PS4のエコシステムに組み込むことで、単体のVRヘッドセット以上の応用性を発揮しうる。残るは優れたコンテンツの登場ということになるが、この点も抜かりは無い。

 SCEのLONDON Studioでは深海を探検するVRゲーム「The Deep」を開発。また、古城でバーチャルツーリズムを楽しむ「The Caslte」を翌日から開かれるGDC Expo会場で披露する。

 サードパーティからはCCP Gamesの「EVE Valkyrie」が早速名乗りを上げた。本作は元々「Oculus RIFT」向けに開発されていたシューティングゲームだが、プラットフォームの壁を悠々と乗り越えてくるあたり、近年のSCEは変わったなという印象を受ける。その他、スクウェア・エニックス傘下のeidos montrealからは「THIEF」のVR版が登場。独特の世界を全身で体感できるような作品になるようだ。

 PS4でVRゲーミングを実現する「Project Morpheus」。その仕様や周辺の情報からは、これに掛けるSCEAの本気度がひしひしと伝わってくる。すでに支持を固めた「Oculus RIFT」や、網膜投影を売りとする「Glyph」といった製品が多数競合するVRヘッドセット市場。これを一気に一般コンシューマー向きに押し広げる大本命が現れた、という印象だ。翌日から始まるGDC Expoにて展示されるとのことなので、体験でき次第、更なる続報をお届けしよう。

ファーストパーティ、LONDON Studioが開発する「The Deep」
古城の仮想旅行が楽しめる「The Castle」
CCP Gamesによる「EVE Valkylie」
eidos montrealによる「THIEF」もVR版を開発

(佐藤カフジ)