歴史コンテンツイベント「太秦戦国祭り2009」開催
「戦国無双」、「戦国BASARA」のトークショーを開催
太秦戦国祭り実行委員会の主催によるイベント「太秦戦国祭り2009」が、10月3日と4日の2日間、京都にある東映太秦映画村で開催された。
今回で4回目の開催となる太秦戦国祭りは、時代劇に代表される日本の映画制作、映像産業の聖地である京都太秦において、歴史創作、特に戦国時代を中心としたコンテンツにおけるクロスメディア表現を鑑賞、体験する場を提供する産学協同の取り組み。ゲームの試遊や映像作品の上映、コスプレイベントなど、ファンが参加できるイベントが特徴となっている。
「レキジョ」と呼ばれる戦国・歴史ファンの女性や、人気ゲーム・アニメのコスプレをする人々などの太秦戦国祭り2009の参加者と、修学旅行生や外国からの観光客を含む東映太秦映画村の一般客が同じ空間で過ごすイベントは、一種独特な雰囲気をかもし出していた。イベント参加者と一般客が一緒に記念撮影をしたり、イベント参加企業のブースを観光客が興味深げに覗いたりと、通常のイベント会場ではあまり見られない異文化交流も行なわれており、まさにクロスメディアな催しとなった。
一般の来場者とコスプレーヤーがセットの中を歩く、このイベントならではの光景 | 開会イベントの様子 |
■ カプコン、アクワイア、ジー・モード等が出展
東映太秦映画村のオープンセット各所に企業がブースを設置し、歴史(主に戦国)コンセプトの映像作品上映や、グッズ展示等を行なう「ショーケース新・歴史絵巻」。ゲーム関連企業もいくつか出展していた。
・アクワイア
本イベントには3度目の出展となる株式会社アクワイアは、Windows用オンラインゲーム「ZIPANG(仮)」の試遊台を設置。薬師寺健治プロデューサーがブースに立ち、「太秦戦国祭り」というユーザーに近いイベントの特性を生かし、ファンとの交流を図っていた。
「ZIPANG(仮)」はアクワイアが初めて発表したPCオンラインタイトルのMMORPG。「東京ゲームショウ2009」(以下、TGS2009)でも試遊を実施しており、それと同じ仕様の試遊台が今回設置された。薬師寺氏は最新の開発情報として「TGS2009や戦国祭りで試遊した人からいただいた意見は、今後の開発へ活かします。TGSではキーボード操作に対しての不満が多かったので、コントローラー操作にも対応することを決定しました」と語った。
試遊台の前には小学生からコスプレをした人まで、さまざまな人が代わる代わる訪れた | 薬師寺健治プロデューサーが自らブースに立っていたのは、期待と自信の表われだろうか |
・カプコン
会場内には「戦国BASARA」のキャラクター、本多忠勝の像が設置されていた |
株式会社カプコンは、2010年発売予定のプレイステーション 3/Wii用「戦国BASARA3」の映像のみ出展。シリーズ作品の試遊台などは設置されなかった。ブース内のモニターでTGS2009と同内容のトレーラーとプレイ映像が上映されていた。なおブースにPSPを持っていくと、「戦国BASARA3」のオリジナル壁紙2種類をダウンロードできる会場限定の特典があった。
多くの女性が足を止めていたカプコンのブース。壁紙をもらう熱心なファンも見かけた |
・ジー・モード
モバイルコンテンツでは、株式会社ジー・モードが新規サービス「戦国☆パラダイス」のブースを出展。新武将5人の先行発表と抽選会を行なった。9月11日にβ版が始まったばかりの「戦国☆パラダイス」は、Gモード初の女性向け「萌え」を追求した無料サイト。徳川家康、伊達政宗など、イケメンとして描かれた戦国武将の家臣となって、戦国時代を舞台に参加者同士でゲームをしたり、日記などを書いてコミュニケーションを楽しんだりできる、ゲームとSNSが融合したサイトだ。
会場で発表された新武将は、石田三成、真田幸村、島左近、小早川秀秋、甲斐姫の5人で、今月より順次追加される予定。既にいる徳川家康、伊達政宗、本多忠勝、大谷吉継、宇喜多秀家の5人に新武将が加わり、ますますにぎわいを見せそうだ。
抽選会は新規会員獲得のための企画で、「戦国☆パラダイス」加入者は5,000円相当のお米券やワン戦国チューナー(ワンセグチューナー)が当たる抽選にチャレンジできた。同社スタッフも「太秦戦国祭り」に集まった歴史好きの女性にアピールしようと、会場に訪れた人に積極的に宣伝していた。
追加された新武将のイラストを展示 |
コスプレのスタッフも登場し、熱心に新規加入者を勧誘 |
・マピオン
株式会社マピオンは、戦国グッズを扱う「戦国魂」ブース内で「ケータイ国盗り合戦」の戦国祭り限定企画を行なっていた。「ケータイ国盗り合戦」は携帯電話の位置情報サービスを利用したスタンプラリーゲームで、会員数は既に30万人を突破。モバイルコンテンツとしては珍しくビジネスマンにも広がり、大きな話題を呼んでいる。
今回の企画では、Felicaリーダーにタッチすると、今回のイベントでしか手に入らないレア称号「北面の武士」を受け取ることができた。また先着で人気戦国武将が描かれた携帯クリーナーがプレゼントされ、「太秦戦国祭り×国盗りコラボタンブラー」(1日100個限定、1,500円)も限定販売された。
担当者は「今後は全国各地の町おこしに『ケータイ国盗り合戦』が貢献できるようなイベントを行ないたい」と語っていた。
マピオンのブースの様子 |
■ 草尾毅さんと竹本英史さんが歌を披露した「戦国無双」トークショー
シリーズ最新作となるWii用「戦国無双3」の発売を12月に控えた株式会社コーエー。今年はブース出展を行なわなかったが、シリーズ初となるバラエティCD「戦国無双 百花饗演」(9月23日発売)の発売を記念して、真田幸村役の草尾毅さんと石田三成役の竹本英史さんのトークショーを10月3日に開催した。参加には、会場内の販売スペースでCD「戦国無双 百花饗演」を購入、またはコーエーの商品3,000円以上購入した人に先着で配布された参加券が必要。女性ファンを中心に180名が集まり、歓声と拍手で2人を迎えた。
トークショーは戦国時代や作品について、役づくりなど作品をより深く楽しむための話題が飛び出した。幸村を演じる際の心構えについて「戦国時代も、現代も人々の感覚はそんなには変わらないと考えるようにしている」と草尾さん。シリーズが進むにつれ、ゲーム内の幸村は顔や雰囲気が凛々しく変化しているが「スタッフさんとの話し合いで、あえて芝居は変えないようにしています。真っ直ぐな真田幸村の生き様を見せられるように、どんなキャラクターと絡んでも芝居で負けないように演じています」と話した。
竹村さんは戦国時代について「日常的に命のやりとりがあった、想像を絶する世界なのに普通の暮らしが存在していたのが不思議」と語った。また「戦国無双3」で衣裳や装飾が新しくなった石田三成に対し「今回は冬支度になった三成」と笑いを取りつつも、「三成は基本は冷たい部分を出していますが、幸村や兼続など心を通わせられる相手がいるときだけ、ちらっと熱さを見せるようにしています。クールと熱さとのバランスには気を使っています」と話した。
クイズ対決やCD「戦国無双 百花饗演」からワンシーンを実演したほか、新曲「仰ぎて天に愧じず」を披露してイベントは幕を閉じた。ゲームを飛び越えて広がりつつある作品世界は、ファンや出演者にも支えられて今後もさらなる拡大が見られそうだ。
草尾さんは「『戦国無双』が人気作品だと知らなかった」と語り、竹本さんを驚かせた | 草尾さんと竹本さんの戦国知識を競う対決も | 本来は高塚正也さんと3人で歌う曲だが、録音の声に合わせて2人で熱唱 |
CDに収録されている1シーンを生で再現 |
■ 小林裕幸プロデューサーと大川透さんによる「戦国BASARA3」トークショー
10月4日には、毎年恒例となった感のある「戦国BASARA」のトークショーが行なわれた。小林裕幸プロデューサーが、ゲストに徳川家康役の大川透さんを迎えて、会場満席の400人近いファンを前にトークを繰り広げた。事前申し込み、または販売スペースにて「戦国BASARA」商品3,000円以上の購入者に参加券を配布した。
前作までの子ども姿から「戦国BASARA3」で青年へと成長した家康。最新作では武器を捨て、素手で敵を倒しつつ日ノ本をしっかり治めるとの目的を果たすことになる。大川さんは「今までも子どもの家康役を演じていましたが、『本当に大川さんなの?』と信じてもらえませんでした」と話しつつ、「キャラクターが成長することについては、別人になってしまってはいけないとの不安もありました。“絆の力”で天下を獲りたいと考えるに至った葛藤や心の動き、成長を感じられるように演じています」と、大人になった家康への想いを語った。
小林さんは「今回は歴史を作ろうと、スタッフたちと勉強をした」と関ケ原の合戦というテーマやゲームの世界観について話した。「『戦国BASARA3』では、以前から登場しているキャラクターも、CGを全部作り直しています。雰囲気が変わったように感じるかもしれませんが、爽快感のあるアクションや1ボタンで派手なアクションが飛び出す操作は従来通りです。アクションが苦手な方にも安心して楽しんでいただけます」という。また「新システムとして“陣”があり、陣の中にいる“陣大将”を倒すことで、よいことがある」と、新たな要素についても触れた。
徳川家康と同時に、新作で重要な役を担う石田三成については「皆さんは髪型が気になるようですね」と笑いつつ、スピードタイプのキャラクターで速度はシリーズ最速だと話し「速くて、格好よくて、バッタバッタと敵を切ってくれます」と小林さん。「戦国BASARA3」では「どちらが善、どちらが悪ではなく、それぞれの想いがぶつかったもの」だと説明した。映像では紹介されていないが、三成のストーリーは、家康が秀吉を倒す場面を目の前で見た三成が秀吉を抱きかかえるという悲しいシーンから始まることも明かした。大川さんも「家康と三成は光と影。家康1人では光れません。対照となる三成は強烈なキャラクターですね。ちょっと『家康』、『家康』と言い過ぎですが」と期待を述べた。
その他のキャラクターについては、三成に叩きのめされてしまう伊達政宗と、病に倒れた武田信玄の意志を継いで、武田の総大将になった真田幸村が発表されている。「“イケイケGOGO”だった2人ですが、1度地べたをはいずってもらうことにしました」と小林さん。今までとはひと味違う2人の姿や成長を描く。発表された映像の中には、猿飛佐助、毛利元就、本多忠勝も登場。各キャラクターのオリジナルストーリーも用意されているほか、「関ケ原の合戦がテーマで、時代も進みましたから、出てこないキャラクターもいますが、旧キャラクターも活躍します。まだまだ新キャラクターも多数発表しますよ」と小林さん。最後は大川さんが「最初に子ども役をいただいたのにも驚きましたが、家康が成長したことも、シリーズの主役になったのにも驚きました。ゲームが出たら、真っ先に家康で天下平定したいです」と話した。
10月から年末にかけて、新情報が続々飛び出す予定の「戦国BASARA3」。関ケ原の合戦という背景設定に合わせた新キャラクターや新たなシステムの発表が待たれる。
ぎっしりと埋まった会場。コスプレの観客も多かった | 小林プロデューサーが司会進行を務めた |
「戦国BASARA3」のテーマソングを歌うT.M.Revolutionの西川貴教さんがVTRで登場。「戦国BASARA」シリーズへの熱い思いを語った | プレイ映像を見て「早く『戦国BASARA3』を遊んでみたい!」と大川さん | 観覧者全員参加のクイズ。最後まで残った人には「戦国BASARA」グッズがプレゼントされた |
■ シンポジウムで小林裕幸プロデューサーが「戦国BASARA」の魅力を講演
「KYOTO Cross Media Experience 2009」のオフィシャルイベントで、太秦戦国祭り2009のラストを飾ったのは、戦国コンテンツビジネスの第一線を走る4人のクリエーターによるシンポジウム。映画、TV、ゲーム、マンガなどさまざまな文化を生み出した地である京都で、歴史メディアについての講演とパネルディスカッションが行なわれた。
出演者は、「戦国BASARA」シリーズプロデューサーの小林裕幸氏、映画「火天の城」監督の田中光敏氏、NHK大河ドラマ「天地人」制作統括を務めた内藤愼介氏、マンガ「義風堂々!!直江兼続-前田慶次 月語り-」原作者で株式会社コアミックス代表取締役社長の堀江信彦氏。
まずは「作品に込めたクールジャパニーズ」というテーマで、それぞれの手がける作品について映像も交えて講演。内藤氏は「日本や和の精神」に触れ、田中氏は有名な武将や勝者だけが歴史を作ったのではなく、無名の個人や敗者も歴史の主人公であったことを「伝説の中に弱者あり」、「積み重なる力が歴史を起こす」の言葉に託した。堀江氏は「負けにも美しいものがある」と話し、これまで手がけた作品にも「引き際の美しさ」を表現していると語った。
小林氏は「戦国BASARA」シリーズのコンセプトを紹介し、日本人ならではのエンターテインメントを目指していることや、各キャラクターたちの「生き様の格好よさ」や「ゲームならではの柔軟な発想を取り入れている」ことが共感を産んでいると話した。
テレビ、映画、漫画のトップクリエイターたちが、戦国時代に見出した魅力を語る。ゲーム代表として小林プロデューサーも壇上に上がり、ゲーム独自の魅力を語った |
4回目の開催となる今回は、ゲームジャンルに関してはコーエーがブース出展を行なわず、カプコンも映像展示のみ。ゲームの試遊がアクワイアの「ZIPANG(仮)」のみというのは、さびしい状況と言わざるを得ない。回を重ねるごとに、ゲーム関連の出展が縮小しているようにも見受けられたのが残念だ。
「太秦戦国祭り」は戦国に関するコンテンツのイベントであり、TGSなどのゲームイベントと同等に考えるわけにはいかないし、時期的な問題もあるだろう。しかしながら今の華やかな戦国ブームには、ゲームの影響が少なからずあったはず。ゲームにあまり親しみのない人にもアピールできる機会を大いに生かしていただきたい。一方、モバイル関連では「戦国☆パラダイス」や「ケータイ国盗り合戦」が参加し、モバイルの元気さをアピールした。次回以降の展開が楽しみだ。
歴史関連のクロスメディア・イベントとして次第に認知度の上がってきた太秦戦国祭り。ゲームコンテンツがほかのジャンルと交わることで、新しい何かを生み出すような礎となるよう、今後も盛り上がっていくことを期待したい。
□「太秦戦国祭り」のページ
http://www.joraku.jp/
(2009年 10月 5日)