Electronic Entertainment Expo 2009現地レポート
Take Two Interactiveブースレポート 「Bioshock 2」を筆頭に2Kタイトルを出展
「Bioshock 2」シングル/マルチプレビュー、ポスト「GTA IV」最右翼の「Mafia II」などをたっぷり紹介
Take Two Interactiveは、その傘下に「Grand Theft Auto(GTA)」シリーズを擁するRockStar Gamesや、無数の独立系デベロッパーの総本山となっている2K Gamesを持つ、米国を代表する大手ゲームメーカーだ。日本法人がないことから日本での知名度はいまひとつだが、代表作である「GTA」シリーズは世界規模で社会問題として取り上げられたり、一時は世界最大手のEAが買収に乗り出すなど、独自の存在感を放つメーカーとして知られている。
同社は、E3ではクローズドブースのみの出展を行なっており、クローズドブースの入り口は取材を求めるメディアでごった返している。これだけ人気があるのだから、通常のブースで広く公開しても良さそうなものだが、同社のタイトルはMature指定のクライムアクションゲームが多いため、“人殺しをするゲーム”とむやみにレッテルを貼られないために、一見さんをシャットアウトして、しっかりとした取材対応を行なうのが同社のポリシーとなっているようだ。
SCEAのプレスカンファレンスでは、PS3エクスクルーシブタイトルとしてRockstar Gamesの「AGENT」を電撃発表したが、残念ながらクローズドブースでの出展はなく、昨年に続いて2K Gamesブランドのタイトルのみの出展だった。本稿では、その2K Gamesの強力なラインナップを紹介していきたい。
【AGENT】 | ||
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SCEのプレスカンファレンスでは、Rockstar Gamesの最新作として「AGENT」を発表。「GTA V」の発表ではなかったのが残念だが、PS3エクスクルーシブタイトルであり、「GTA IV」の開発を手がけたRockstar Northが担当。1970年代の冷戦時の東西のスパイ活動をモチーフにしたアクションゲームになる模様だ |
■ 「Bioshock」の前後のエピソードを補完する充実した完全新作「Bioshock 2」
まずは、日本でも知名度の高い「Bioshock」の続編「Bioshock 2」から紹介していこう。「Bioshock」は、2007年8月にリリースされ、完全オリジナルの新作FPSであるにも関わらず、主要ゲームメディアのアワードを独占し、昨年のGDC Choice AwardsでもWriting(ストーリー)、Visual Arts(グラフィックス)、Audio(BGM)の3部門を獲得するなど、大旋風を巻き起こしたFPSだ。
時代性にそぐわないシングルプレイ限定のゲームでありながら、ここまで高い評価を集め得た理由は、1940年代に大西洋の海底に作られたラプチャーと言われる海底都市という独創的な舞台設定と、2007年当時としては群を抜いていた美しいグラフィックス、無人のラプチャーを徘徊する少女Little Sisterとその護衛者Big Daddyという2人のバイプレーヤーが織りなす独創的で濃密なストーリーラインにある。「Bioshock 2」は、こうした緻密に構築された世界観をベースに、主人公ライアンが大立ち回りを演じた前作から10年後のラプチャーが舞台となる。
今回のデモンストレーションでは、ストーリーの詳細については明かされなかったが、現時点で判明しているのは、今回の主人公はライアンではなくBig Daddyであること、物語のガイド役となるのはアトラスではなく、Little Sisterの護り手であるテネンバウムであること。そして前作のBig Daddyに相当するライバルキャラクターとして“Big Sister”と呼ばれる新たなバイプレーヤーが登場していることだ。
プロローグシーンからプレーヤーはBig Daddyと化している。主人公は、テネンバウムのラジオボイスに揺り動かされるようにして覚醒して身を起こし、ドリルでドアをぶち破る。そして、扉の先にいたスプライサーを右手のドリル、左手のプラズミドを使って次々になぎ倒していく。いわゆるチュートリアル的な内容となっているが、Big Daddyらしい圧倒的なパワーを感じられるシーンだ。
Big Sisterはその直後に見ることができた。不意に姿を現わしたBig Sisterは、Big Daddyと似た構造の潜水服に身を包んでいるが、若い女性なのか細身だ。背中にはLittle Sisterを収納するためのカゴを背負っている。何よりも驚かされるのはその身のこなしの早さだ。こちらを確認するや否やロケット弾のような速さで逃げていく。その後シーンは飛び飛びになったが、壁によじ登りガラスをぶち破ってあたりを海水で満たしたり、テレキネシスのような力を使ってイスや机を投げつけてきたり、非常に特殊なキャラクタだ。Big Daddyのように倒せる存在なのか、一方的に堪え忍ぶしかないのか、その点はわからなかったが、重要な役割を担ったキャラクターになるようだ。
なお、Big Sisterという災難から逃れた後、主人公はLittle Sisterとの“再会”を果たすことになる。前作のLittle Sisterは幼女という印象だったが、今作の彼女はすっかりお姉さんになっており、衣服もかわいらしく、受け答えもしっかりしている。前作においてLittle Sisterは、ラプチャーの中でもっとも重要な資源であるアダムを生み出せる唯一の生物として重宝される存在であり、プレーヤーもまたアダムを獲得するためにBig Daddyを倒し、Little Sisterに接触する必要があった。「2」では、自分自身がBig Daddyになるため、役回りが代わってくる。
今回は味方だと認識して懐いてくるLittle Sisterを肩に載せて共に行動でき、特定のスプライサーからアダムを採集させることができる。前作ではBig Daddyとの数々の死闘がゲームにおけるハイライトになっていたが、今回はLittle Sisterにアダムの採集作業を始めさせると、四方からスプライサーがアダムを求めて襲いかかってくるという仕組みになっており、まさにBig Daddy本来の役回りが味わえることになる。デモのラストには再びBig Sisterが登場し、ジャンプ攻撃とビンタ攻撃によって主人公が気絶させられるというショッキングな閉め方で終えた。
【海中空間】 | ||
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Big Sisterの策略により海中に投げ出されてしまう主人公Big Daddy。潜水服を着ているので無事だったが、ラプチャーの入り口を探すハメに。外部からラプチャーを眺めるのは初であり、幻想的な風景が広がっている |
【Little Sisterを護れ】 | ||
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「Bioshock 2」でもLittle Sisterは重要な存在であり続ける。前作では生き残るためになんとしても接触すべき相手だったが、今作では護るべき可憐な味方として登場する |
【Big Sister】 | ||
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プレーヤーの前に立ちはだかるBig Sister。ゲーム史上でも珍しいタイプのヒロインキャラクターとなりそうだ。名前からしてLittle Sisterの成長後の姿を想起させるが、果たしてどうだろうか |
・シリーズ初搭載のマルチプレイヤーモードは、「Bioshock」以前のラプチャーが舞台に
「Bioshock 2」のマルチプレイモードは、スプライサーのひとりとして戦うことになる。ゲストキャラとしてBig Daddy(画面左)も登場し、乱戦は必至だ |
「Bioshock」ファンなら待ち遠しくてたまらない内容だが、「Bioshock 2」はシングルプレイキャンペーンで終わりではない。もうひとつ重要なモード「マルチプレイモード」がある。こちらも設定が見事で、“単なるシングルのおまけ”に留まらせるつもりはないようだ。その証拠にマルチプレイモードは開発を別に立てており、マルチプレイFPS「Unreal Tournament」シリーズの開発元として名高いDigital Extremesが担当している。
「Bioshock」の舞台となる海底都市ラプチャーは、主人公ジャックが飛行機事故で不時着した時点から荒廃の極みの状態にあったが、これはアダムの過剰摂取により、精神に異常を来した住人達(スプライサー)による殺し合いが発生したことが原因となっている。「Bioshock 2」のマルチプレイモードは、まさにこの殺し合いそのものを描いている。時間軸を「Bioshock」以前に戻し、プレーヤーはラプチャーの住人の1人として、アダム獲得のためにその他の住人どもを撃退するというユニークな設定となっている。
実際にマルチプレイモードも見ることができたが、ゲームモードはデスマッチ、チームデスマッチ等シンプルな内容で、最大10人で、ランキングを意識したオートマッチングに対応。キル数、デス数、アシスト数の合計でポイントが決まり、ポイントに応じてアダムが獲得できる。獲得したアダムによって新たな武器やプラズミド、トニック、武器のアップグレードなどが獲得できる仕組み。
プレーヤーにはマンションが与えられ、そこから出撃する形となる。マンションでは、アバターや武器、プラズミドを設定する形で、室内を自由に動き回ることができる。戦場となるのは、「Bioshock」で舞台となったマップをモチーフにした10のステージ。荒廃前の景観を残しており、「Bioshock」のユーザーならその違いを見るだけでも楽しめるだろう。
戦いそのものは、「Bioshock」と同等で、タレットをハッキングして味方に付けられるところなども同じだ。エレクトロボルトでしびれたり、インフェルノで焼かれたり、スプライサー気分が味わえるのも良い。「Bioshock」ならではの味付けとしては、途中で誰かがBig Daddyとなるところだろう。特有のうめき声が聞こえたかと思うと、Big Daddyが姿を現わす。まるで「Left 4 Dead」のTankのような扱いだが、Big Daddyを倒せば高得点が得られるなど、見つけたらぜひ倒したい相手だ。
以上、「Bioshock 2」はシングルプレイに加えて充実したマルチプレイモードも搭載しており、前作以上に注目度の高い作品に仕上がりそうだ。発売時期は北米で2009年11月3日を予定。発売プラットフォームはPS3、Xbox 360、PC。日本語版の発売については未定だが、前作の日本語版を扱ったスパイクを筆頭に、水面下での獲得合戦は必至と見られる。早期の日本語版の発売にも期待したいところだ。
【マルチプレイモード】 | ||
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ラプチャーの狂気が感じられるマルチプレイシーン。スプライサー同士の殺戮をプレーヤー自身が体験することになるとは想像していなかった |
■ クライムアクションの真打ちが8年ぶりに登場! 「Mafia II」
「Mafia II」のデモブース。残念ながらプレイ映像は撮影禁止だった |
デモの説明を行なってくれた2K GamesのAlex Cox氏 |
Empire Cityは非常に広大で、そのクオリティも高い。そのクオリティは下記に掲載したプロモーションムービーで確かめてほしい |
当時としては極めてリアルで直接的な犯罪的暴力的表現の数々に、世界に衝撃を与えたクライムアクションゲーム「Grand Theft Auto III」が登場したのが2001年10月のことである。その後、映画では許されていたが、インタラクティブアクションではタブーとされていた犯罪行為そのものをゲーム要素として取り入れた「クライムアクションゲーム」の分野が一気に華開く。「Just Cause」、「25 to Life」、「True Crime」、「Saints Row」などなど枚挙にいとまがないが、当時飛ぶ鳥を落とす勢いだった「GTA III」に張り合える存在だったのが「Mafia」だ。
「GTA III」の翌年に発売された「Mafia」は、現代をモチーフにした「GTA III」に対して、1930年代のシカゴをモチーフにした古き良きアメリカ社会を描いており、映画「ゴッドファーザー」のお株を奪うような成り上がりストーリーが魅力で、広大な都市を自由に車で走り回れるサンドボックススタイルのゲームデザインが高く評価された。
実に8年ぶりの新作となる「Mafia II」は、「Mafia」を手がけたチェコのIllusion Softworksのスタッフを中核とした2K Czech(チェコ)が担当している。今回の舞台は1950年代のアメリカ。ハッキリとは明言しないが、ニューヨークをモチーフにしたらしいEmpire Cityが舞台となる。骨太のメインストーリーを柱に、シングルプレイのみという、ストイックなゲームデザインは初代とまったく同じようだ。
8年分の進化を感じさせる圧倒的にリアルなグラフィックスはまさに圧巻だ。キャラクタの表情、皺、瞳の力強さは映画顔負けの出来映えで、環境表現の部分でも、傘を差して足早で行き交う人々、NYらしい粉雪、排水口から立ち上る蒸気、爆発による砂埃、木箱の赤々とした燃え方、爆発の衝撃により激しく揺り動くカンテラの光、ビール瓶のふれあう音、旧式のエレベーターの稼働音、ショットガンのリロード音に至るまですべてが1950年代テイストで、古き良き時代の“犯罪大国”が見事に表現されている。それが1950年代のジャズやカントリーサウンドの調べに乗ってシネマティックに展開していく。演出の見事さは、ジャンル随一のクオリティだ。
デモでは、2人の仲間と共に密輸酒の売買を行なう業者を締め上げに行くという一連のシーンを実機で見ることができた。粉雪が舞う中、スリップに気をつけながら車を走らせる一行は、やがて目的地に到着した。ひとまずは向かいのビルに陣取り、向かいのビルの様子をうかがっていたが、そのうち気づかれ銃撃戦となる。外の敵を撃退した後は、中に踏み込み、待ち受ける敵を3人で撃退しながら奥へ進んでいく。奥には密輸業者のボスである“ファットマン”がいて命乞いをしてきたが、窮鼠猫を噛むで、味方のひとりを近距離から撃ってしまう。主人公らは速やかに反撃に出て、ファットマンを蜂の巣状態に。血だらけで倒れ込むファットマンの無残な描写は戦慄させられるものがある。
その後一行は、撃たれた仲間を抱きかかえ、燃えさかるビルを後にする。ところが外にはパトカーの大群が待ち構え、橋の中央で包囲されてしまう、という絶体絶命のシーンでデモを終えた。非常にシネマティックなストーリーラインだ。
物陰にうまく隠れながら射撃するという「Gears of War」以来スタンダードになっているカバーアクションも取り入れられており、シューティングアクションとしてもしっかりしている印象を受けた。カットシーンの会話シーン、射撃の仕方、カバーする際の動き方、ドアを蹴り開けるモーションなどなど、格好良く見せる演出に力を入れており、クライムアクションとしては見まごう事なき大作に仕上がっている。
気になる発売時期は2010年を予定し、発売プラットフォームはPS3、Xbox 360、PC。グラフィックス、ゲームデザイン、サウンドなど、クライムアクションの分野でようやく「Grand Theft Auto IV」を上回るタイトルが出てきたなという印象を持った。ゲーム性がゲーム性だけに日本語版がリリースされるまで少し時間が掛かるかも知れないが、完成が非常に楽しみなタイトルだ。
【Mafia】 | ||
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今回見た一連のデモシーンをスクリーンショットにしたもの。すべての実機からのもので、全編このクオリティでゲームが楽しめる |
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http://www.take2games.com/
□Electronic Entertainment Expo(英語)のホームページ
http://www.e3expo.com/
(2009年 6月 6日)