角川ゲームス、4月からゲームパブリッシング事業を集約

中裕司氏との新作「天空の機士ロデア」など新タイトルも発表。3DSにも参入


1月20日 発表



発表会にはそうそうたるクリエイター陣が出席した

 株式会社角川ゲームスは1月20日に都内で発表会を行ない、今後の体制の発表、および方針を説明すると共に、新作タイトルの発表を行なった。

 同社は設立から2年が経過しているが、4月からは新たに角川書店、アスキー・メディアワークス、エンターブレイン、角川ゲームスの家庭用ゲームパブリッシング事業を角川ゲームスに集約し、グループのゲーム事業の一体化を図り、コンテンツの強化を図っていく。今後はゲームクリエイターや海外パブリッシャーとも協力関係を結び、海外を含めた大きな市場を目指すとしている。

 発表会の冒頭、角川グループホールディングスの代表取締役社長を務める佐藤辰男氏は「満を持して事業を披露できる」と切り出し、「5年から10年後にこの発表会がターニングポイントだったと思えるのではないかと考えている」と、グループのゲーム事業として大きな変革を迎えたことを強調した。佐藤氏は「映画が得意な出版社と思われているかもしれないが、メガソフトパブリッシャーを目指している」とし、ゲームも含め1コンテンツマルチユースを推進すべく、IPを育てていきたいという。また、角川ゲームスに集約することで、販売統合を行いグループ力を結集していくという。

 発表会には任天堂の波多野信治代表取締役専務も出席。1月20日から予約が開始された新型携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS」に関して手応えを得ているとしながら、クリエイター陣には新しいアイディアをゲームにしてもらえることを期待しているとコメント。また、これまでにない発想を大切にして独創的で新しいソフトを開発して欲しいと開発陣にエールを送ると同時に、そういったクリエイターに対し「任天堂は協力することにやぶさかではない」と語り、楽しいソフトを開発して欲しいと語った。

 角川ゲームスの発足からこれまで大きな発表会などは行なわれてこなかったこともあり、今回はその方針の説明なども行なわれたが、発表会の中心は新規タイトルを含めたゲームのプレゼンテーション。今回は発売が待たれていたWii用アクション「アースシーカー」と、中裕司氏がエグゼクティブディレクターを務め開発をプロペが担当する新規タイトル「天空の機士ロデア」が発表されたので、順次ご紹介していく。


角川グループホールディングスの代表取締役社長を務める佐藤辰男氏は「5年~10年経った時に、ここがターニングポイントになると思えるのではないかと思う」と、角川ゲームスの本格的なスタートが大きな意味を持っていると挨拶安田善巳代表取締役社長。発表会のラストに行なわれた事業方針を説明する「角川ゲームスビジョン 2011」において、「クリエイターと共に良質なオリジナルゲームを作り、IPを育て、海外市場を狙っていく」と表明した
発表会では任天堂の代表取締役専務の波多野信治氏も挨拶を行なった。任天堂の新型携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS」の予約が開始されたのを引き合いに出し、「全ての販売店に体験台を置いて販売力を強化して取り組んでいきたい」と語り、「新しい発想が大切。独創的で新しいソフトを開発して欲しいし、そういったところには今後も協力していく」とクリエイター陣にエールを送った




■ 「アースシーカー」


船水氏の新作として期待を集めていた「アースシーカー」の発売日が遂に4月7日に決定した

 「アースシーカー」は、クラフト&マイスターの取締役を務める船水紀孝エグゼクティブディレクターの新作で完全新作として注目を集めていたWii用アクションゲーム。発売日が長らく明らかにされていなかったが、発表会で4月7日に発売されることが明らかにされた。価格は7,140円。

 会場で公開された映像では、大きな宇宙船が惑星に不時着するところからスタート。ゲームではあまり描かれることはないと言うが、バックボーンの設定が船水氏から説明された。

 何らかの理由で地球を離れることになった人類。地球の文化遺産を積み込んだ宇宙船で宇宙に旅立ったが、他の惑星に着く前に人類は絶滅してしまう。その後宇宙船はゲームの舞台となる惑星に到着するが、大事故を起こし不時着してしまう。この事故で積んでいた文化遺産はあちこちに散らばってしまうことになる。

 人類は滅亡してしまったが、宇宙船は惑星に不時着するときに人類のDNAから再生を試みる。その再生された生命体がプレーヤーキャラで、惑星のあちこちを探検し不時着時に飛び散った文化遺産を集めていくことが大きな目的となる。

 登場するモンスターはどこかしら地球の生物と似ているところがあるが、その理由は、宇宙船が生物を再生しようとしたところ情報が不十分であることから(地球の映画や小説などの情報を元に保存されたDNAから生命体を再生しようとするため)、何となく地球の生命体に似かよった生命体を再生し、それがモンスターとして登場することになるのだという。宇宙船のコンピューターが生み出した世界を探検するSFアクションゲームとなる。

 巨大な敵が数多く登場するが、大きいモンスターは画面に収まりきらないほどの迫力あるものだという。


エンターブレインのソフト開発局の竹田健局長。「これまでヒットしたシリーズタイトルを定番タイトルとして発表してきたが、新規タイトルを発表していきたい」と発言。その期待の作品がこの「アースシーカー」となる開発を担当しているクラフト&マイスターの取締役を務める船水紀孝エグゼクティブディレクター。チェックのために遊んでいるという氏は「50時間から60時間やっているが、半分くらい」とコメント。かなり遊び応えのあるタイトルとなっているようだ発表会終了後に行なわれたフォトセッションでの竹田氏と船水氏
エンターブレインの浜村弘一代表取締役社長が船水氏に様々な質問を行なうといった形式でプレゼンテーションは進められたアクションゲームであるだけに、浜村氏の質問に答えながらのプレイは難しいようで、なかなか敵を倒すことができずに苦労していたCMに出演するのはお笑いタレントのブラックマヨネーズのお2人。どのようなCMに仕上がっているのか想像も付かないトークで煙に巻いたが、楽しいそうだという雰囲気は伝わってきた

プレーヤーキャラクターのグラフィックス。遺伝子により再生された、ある意味人類の生き残りと言える。星のあちこちに散らばってしまった人類の文化遺産を探し出しコレクションするのが大きな目的となる

 ゲームのジャンルはアクションだが、面白いのは時間を止めることができるという点。時間を止めることで敵と自分の立ち位置など戦略を練って、戦いを有利に進めることができるという。船水氏は「アクションゲームばかりを作ってきたが、知り合いの女性などにゲームを手渡すとアクションゲームは苦手でできないという人がいる。迫力がある映像のゲームだが、ゲームが苦手な人でもできるものを作ろうと考えていた」とこのシステムを考えついた経緯を説明した。

 また、モンスターには属性があり、その弱点を突いた攻撃を行なうことで敵を攻略していくことになるという。発表会では電気に弱い敵に対して雷を浴びせる攻撃を繰り出していた。

 「アースシーカー」ではプレーヤーは1人で戦うわけではない。ガーディアンと呼ばれるキャラクターがプレーヤーと一緒に戦ってくれる。6名まで付いて歩き共に戦うわけだが、1人1人別々に攻撃しても良いが、同じ攻撃を相手に繰り出すことでより強力な攻撃となる追加効果が用意されているなど、ゲーム的な要素もある。さらにガーディアンはどんどん成長していくため、育成要素も楽しめる。

 集めていく文化遺産は200種類以上用意されており、かなりやり込むことができそうだ。船水氏によればチェックのために50時間から60時間プレイしていると言うが、まだ半分程度しか進んでいないという。

 Wii用タイトルとして完成間近だが、ニンテンドーDSi用のソフトもリリースされる。こちらは、「アースシーカー」用のアイテムを作ることができるというソフトで、Wiiのゲーム内では作ることのできないアイテムをDSiウェアで作ることができ、作ったアイテムをWiiに持ってきてゲームで使用することができるのだという。アイテムの作成はミニゲームとなっているようだ。このほかにも、遺跡を発掘しDSiでクリーニングして新しいアイテムを探すといった要素も用意されているようだ。

 こういった新要素については今後順次明らかにしていくとしている。楽しみに待ちたいところだ。


【スクリーンショット】
文化遺産を集めると言うことで、フィールドのあちこちには地球の記憶とも言うべき文化遺産が散らばっているようだ。アクションゲームであるにもかかわらず時間を止めて立ち位置といった戦略を練ることができるというシステムが面白い
登場するモンスターが微妙に地球の生物に似ている店についてもキチンと設定が用意されている。この惑星に不時着する時に、地球から持ち出した遺伝子を元に生物を再生しようとしたが、情報が欠落してしまい、コンピューターは微妙に違った生物を再生してしまう。モンスターには属性が設定されており、攻撃するときはそれに応じた攻撃方法で攻撃していくこととなる




■ 「天空の機士ロデア」


開発を手がけるプロペの中裕司代表取締役社長(左)と角川ゲームスの長谷川仁プロデューサー(右)

 2つめに発表されたタイトルは、中裕司氏がエグゼクティブディレクターを務めプロペが開発を担当し、角川ゲームスの長谷川仁氏がプロデューサーを務める、Wii/ニンテンドー3DS用フライングアクション「天空の機士ロデア」だ。

 長谷川プロデューサーは開口一番「これまでタイトルを厳選して進めてきた」とコメントし、その第1弾タイトルとなるのがこの「天空の機士ロデア」なのだという。長谷川氏は「中氏には『名作を作りたいんです』と口説いた」と言うことで、自信作として着々と開発が進められているようだ。

 物語は広大な天空の大陸「ガルーダ」を舞台に、人々を守るために永き眠りから目覚めた機械の戦士「ロデア」を主人公に、ヒロインである「イオン」との心に響くストーリーが描かれていく。ジャンルは「フライングアクション」と言うことで中氏の得意なスピーディな展開のアクションだが、中氏は「『天空の機士ロデア』はプロペだけでは作ることができない」と説明。今作ではアクションだけでなく、きっちりと感動できるストーリーを描けているアクションと言うことで、そのストーリーや世界観といったところを実弥島巧氏がシナリオを担当することで補っているという。

 主人公のロデアのCVは中村悠一さん。発表会で公開されたビデオレターでは「ロデアは機械なのだが、より人間らしく表現するのがボクの課題」とコメント。イデアとの演技についてかなり細かい指示を受けたと言い、「楽しみにして欲しい」とコメントした。一方ヒロインのイオンを演じる花澤香菜さんはイオンについて「機械オタクでちょっと天然が入っている」とキャラクターについての感想を述べ、「わくわくがいっぱい詰まっている」と作品の感想を語った。

 アクションの根幹をなすのは空を飛ぶと言うところにあるが、その操作はWiiリモコンだけで実現できる簡単なものだという。画面にはポインターが表示されており、飛びたいと思うところにポインターを合わせボタンを押すだけで、後はWiiリモコンを振る大きさやスピードなどを判定して様々な弧を描いてロデアは飛んでいく。空中戦が重要な要素となっている本作だが、弧を描いて飛んでいき敵の後ろに回り込んで敵の弱点を探しながら戦うなど、飛ぶという行為は敵との戦いにおいても重要な意味を持つようだ。

 操作自体は簡単だが、フィールド内にはあちこちにアイテムが配置されており、上手く飛ぶことでこれらのアイテムを連続して取っていくことができる。そのスピード感と連続でアイテムを取っていく快感は、アクションゲームを作ってきた中氏のゲームらしい仕上がりで、映像を見ていても非常に気持ちいい出来となっていた。

 ストーリーを進めていくモードの他に、対戦モードも用意しているという。2人から4人まで参加して競走するといったゲームで、こちらも楽しめるという。開発は現在進行中で、発売も価格も未定という状態。今回発表されたのはWii版のみで、ニンテンドー3DS版についてはアナウンスされるのみに留まった。安田氏も同作については「時間をいただいてしっかり作る」と語っており、完成までにはもうしばらくかかりそうだ。


長谷川プロデューサーは「中氏には『名作を作りたいんです』と言って口説き落とした」と開発に至った経緯を明かした中氏は「プロペだけではできない」と語り、様々なクリエイターが共に作り上げることで、アクションだけでなくしっかり感動できるストーリーと世界観を共有した作品であることを強調した

会場で発表されたスライドの数々。コンセプトの1つが空を飛ぶという夢を実現させること。「空を飛ぶアクションは難しいイメージがあるが、コントローラー1つでできる」と、中氏は誰でも簡単にアクションを実現できる点をアピールした。また、主人公のロデアの声を担当する中村悠一さんと、ヒロインのイオンの声を担当する花澤香菜さんのビデオレターが公開され、それぞれキャラクターの印象などを語った

【天空の機士ロデア】
「天空の機士ロデア」のロゴと登場キャラクター。右が主人公のロデアで、左がヒロインのイオン
中央のスクリーンショットに登場するのが、ボス敵の1つ。このボス敵が「最も巨大なボス敵」なのかはわからないが、中氏は「これまでの自分の作品で最も大きなボスを登場させようと思った。大きいものが画面に入りきらない」と言い、敵の後ろに回り込んだりしながら、弱点を探しながら戦っていくことになるという。また、空中戦が大きな特徴の1つで、飛行機などとの戦闘も用意されているという




■ 角川ゲームスビジョン 2011


角川ゲームスの今後の方針を安田氏が説明するという趣旨で用意された「角川ゲームスビジョン 2011」。トークセッションのゲストとして招かれたのは、株式会社グラスホッパー・マニファクチュアのCEOを務める須田剛一氏

 最後に行なわれたのが、角川ゲームスの代表取締役社長の安田善巳氏と、ゲストとして招かれた株式会社グラスホッパー・マニファクチュアのCEOを務める須田剛一氏によるトークセッションだった。

 須田氏はプレゼンテーションの行なわれた2タイトルについて「我々は発明するのが仕事」と切り出し、船水氏と中氏のタイトルにはそれぞれ「発明」があり、楽しみだとコメント。「凄く刺激を受けたし勉強になった」と続けた。

 安田氏はこのトークセッションでニンテンドー3DSのタイトルとして「天空の機士ロデア」以外に釣りゲーム「フィッシュオン」を制作中であると発表した。この春の発売を予定しており、開発は釣りゲームの制作では定評のあるシムスが担当。10以上のポイントで釣りが楽しめ、20種類以上のルアーが登場。釣り以外にも3Dで描かれた水中の中を鑑賞できるという。また、魚が飛び跳ねる表現などを3Dで迫力いっぱいに描いているという。

 安田氏は今後の角川ゲームスとしての方針として、クリエイターと楽しく仕事をしていくことで強力なIPを育てていき、市場を活性化したいと語った。また、新しいIPの作成と育成を通じて海外市場も視野に入れて作品を作り出していく一方で、角川グループが持つ文学などのコンテンツとクリエイターを結びつけていきたいとも語った。「角川」という出版を基本事業とするグループ企業の持つ「編集者の視点」をプロデュース能力に活かし、新しい作品を作っていきたい意向だという。

 トークセッションに参加した須田氏は海外市場への展開について触れ、「(自分も)海外展開への一翼を担えれば」と答えた。須田氏と角川ゲームスのコラボも今後期待できそうだ。


「角川ゲームスビジョン 2011」で安田氏から発表された大きなトピックの1つが、ニンテンドー3DS用釣りゲーム「フィッシュオン」が今春発売されるという発表。開発はシムスが担当クリエイターの自由な発想を大切にし、クリエイターと共に成長していくパブリッシャーを目指すと語った安田氏角川グループの原点に戻ると語り示されたスライドがこちら。1980年代のゲームのスタート地点であるテーブルトークRPGを原点としてJRPGが発展していったと語り、その道筋を作ったのが雑誌「コンプティーク」であり、それこそが角川の原点だと説明
最後に示されたのが角川ゲームスのビジョン。1つはフランチャイズタイトルとなるオリジナルタイトルをクリエイターと共に作り上げパブリッシュしていくと言うこと。もう1つは角川の持つIPとゲームクリエイターとを結びつけ、タイトルとして世に出していくことだとした
4月からは大きく体制が変わり、ゲームパブリッシング事業を角川ゲームスに集約し、体制を強化していくクリエイターと共に強力なIPを作り世に出しフランチャイズタイトルを育てることと同時に、そういったタイトルによって海外市場でも強力に推進していきたいと安田氏は締めくくった

【アースシーカー】
(C) 2011 ENTERBRAIN, INC. Developed by Crafts&Meister Co.,Ltd.
【天空の機士ロデア】
(C)KADOKAWA GAMES / PROPE

(2011年 1月 20日)

[Reported by 船津稔]