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「鉄拳」プロのノビ選手・チクリン選手も参加した「鉄拳7FR ROUND2」交流会レポート

ゲームセンターに60人超のプレーヤーが集まる盛り上がりに

11月24日開催

会場:namco巣鴨店

 格闘ゲームは、ゲームセンターで生まれた文化だ。対戦後には相手と試合について振り返り、競い合う中で仲を深めていく、そんな習慣が格闘ゲームコミュニティを育んできた。格闘ゲームeスポーツシーンのトップを走るプロプレーヤーの多くも、そのルーツをゲームセンターに持っている。しかし家庭用機の性能が上がり、各家庭のネット環境が整うにつれ、ゲーマーたちの主戦場はオンライン対戦に移っている。ゲームセンターの数は減り、オフライン対戦の文化も廃れつつあるのが現状だ。

 namco巣鴨店で開催された「鉄拳7FR ROUND2」のイベント「NEXUS」は、古き良きゲームセンターの盛り上がりを回想させてくれるようなイベントだった。namco巣鴨店といえば知る人ぞ知る「鉄拳」のメッカだが、イベント当日には60人を超えるプレーヤーが集まり、首都圏外からこのためだけに来ているプレーヤーや、女性プレーヤーの姿も見受けられた。NEXUSに絆という意味があるように、プレーヤーたちがオフライン対戦を通して盛んに交流していた。

 当イベントにはスペシャルゲストとして、プロ「鉄拳」プレーヤーであるYAMASA所属のノビ選手と、Team遊ING所属のチクリン選手が招待された。プロ2名による講習会や組手、そしてエキシビションマッチなど、盛りだくさんの内容だった「NEXUS」を写真とともにリポートする。

【アーケード「鉄拳7FR ROUND 2」プレイヤー交流イベント”NEXUS”】

【namco 巣鴨店】
壁には国内外の有名プレーヤーのサインが並ぶ

ノビ選手直伝!初心者が覚えるべき鉄拳の基礎とは

 まず行なわれたのは、ノビ選手による初心者講習会だ。トッププロがゲームを基礎から教えてくれる機会は貴重なため、ステージ前には大勢のプレーヤーが押しかけ、講習を受けていた。ノビ選手はプレーヤーとしての実力が高いのはもちろんのこと、以前namco巣鴨店で3年間「鉄拳インストラクター」として活動していた経験もあり、初心者にも分かり易い説明に定評がある。

講習会の様子

 ノビ選手曰く鉄拳において重要なのは、3すくみを意識してプレイする事。この3すくみとは、上・中・下段のことではなく、「置き」、「攻め」、「スカ」のことだ。一般に鉄拳は、中・下段の択で相手の体力を削っていくゲームに思われがちだが、実際に実力に差が出るのはこの3すくみだという。

 「置き」とは、相手と距離がある状態で、自分の技を空間に出すこと。「攻め」とは前進して相手に技を当てに行くこと。そして「スカ」とは相手の技の空振りに対して反撃を決めることだ。これらはそれぞれじゃんけんの手のように、「置き」は「攻め」に勝ち、「攻め」は「スカ」に勝ち、「スカ」は「置き」に勝つ関係にある。

ホワイトボードを交えて説明をするノビ選手

 ノビ選手曰く、オンライン対戦を主にしているプレーヤーの多くは中・下段の択をダメージソースにしており、高段位プレーヤーの中にもこの3すくみを意識できていない人は多いとのこと。こういったプレーヤーの多くは「調子が悪い」ことが原因で、一日にして段位が急落することがあるが、そういった事故は3すくみに対する理解の無さが原因だという。ノビ選手曰く、3すくみを意識することで、勝率は安定するとのこと。

 講習後、ノビ選手、チクリン選手、鉄拳女子部員との組手も開催され、プロに挑戦したプレーヤーたちは個別のアドバイスを受けていた。

来場者に個人アドバイスをするノビ選手

初心者から上級者まで、ランダム3on3トーナメント

 次に開催されたのは、来場者全員がそれぞれランダムで3人ずつのチームを組み戦う、ランダム3on3トーナメントだ。当イベントには講習に来た初心者から、最高段位のプレーヤーまで集まっているが、トーナメントは実力の違うプレーヤーが交流できる場となった。来場者にはそれぞれ名刺代わりに配れるプレーヤーカードが渡され、プレーヤーたちはチームメイトや対戦相手とカードを交換し合っていた。

3on3トーナメントの様子

 注目のノビ選手は、5歳の「鉄拳」プレーヤーたいたい選手とチームを組みトーナメントに挑んだ。たいたい選手は5歳ながらジャックを使いこなし、コンボも覚えている様子だった。三段の相手プレーヤーに対し接戦を演じたたいたい選手だったが惜しくも負けてしまい、チームの勝敗は大将のノビ選手に託された。

5歳のたいたい選手

 たいたい選手のためにもチームを勝利に導きたいノビ選手だが、相手チームの大将は真鉄拳神の仁使いペイちゃん選手だ。ノビ選手は自身のメインキャラクターであるドラグノフで試合に臨んだが、「鉄拳7FR ROUND2」はノビ選手が普段プレイしているコンソール版「鉄拳7」とバージョンが違うため、ところどころ慣れないプレイが見られた。

 実力者同士の試合は接戦になったが、最後の最後でノビ選手がまさかのレイジアーツを暴発させ、冷静に反撃を決めたペイちゃん選手が勝利した。ノビ選手のチームは1回戦敗退という結果となり、敗因を聞かれると「大会の大舞台には慣れているけど、5歳児が見てるプレッシャーには勝てなかった」とコメントしていた。

敗北したノビ選手(左)とペイちゃん選手(右)

ノビVSチクリン 白熱のエキシビションマッチ

 イベントを締めくくったのは、プロ2名による3本先取のエキシビションマッチだ。プロ同士のハイレベルな戦いを見ようと、大勢のギャラリーが集った。さらにこの戦いに際して、来場者たちは事前に勝利者予想をしており、予想が的中した人にはプレゼントも用意されているため、プロ2名は自身に投票してくれた来場者のためにも負けられない。

 実力は互角かと思われる両名だが、チクリン選手の使うギースというキャラクターは家庭用版より、調整前のバージョンである「鉄拳7FR ROUND2」の方が強力だ。ノビ選手は普段より性能が高いギースにどこまで対応できるかが勝利の鍵となってくる。

チクリン選手(中央左)とノビ選手(中央右)

 まずノビ選手はサブキャラクターのスティーブを起用し試合に臨むも、チクリンギースの強さと圧倒的なコンボ火力の前に1ラウンドも取れぬまま第一ゲームを落としてしまう。これにノビ選手は思わず「ちょっと待って……」と漏らしていた。

ノビ選手(左)とチクリン選手(右)

 続く第2ゲームからはノビ選手はメインキャラクターのドラグノフを起用し、反撃ののろしを上げた。得意の展開の早い攻めとノビ選手の代名詞ともいえるロシアンフックアサルトが光り、試合は1-1になる。

アーケードのノビ選手といえばこの「変態カスタム」だ。

 しかしここからさらにチクリン選手が対応していく。「鉄拳7FR ROUND2」ならではのギースのゲージ効率の良さを最大限に活用し、大ダメージコンボや当身を駆使してノビ選手を追い詰めていく。そして最後にはパーフェクトで勝ち、試合はチクリン選手の勝利となった。

握手で試合を終える両名

 イベントを大いに盛り上げてくれた両名だが、彼らは12月8日に鉄拳ワールドツアーのファイナルを控えている。最終調整の最中にこうして時間を割いてバージョン違いのゲームセンターイベントに登壇したのは、彼らのコミュニティへの強い思いあってこそだ。

ゲーセン文化への想いを語るノビ選手

 彼らは2人ともゲームセンターに勤務していた経験があり、ゲーセン文化に強い思い入れがある。こうしてイベントを開催して、プレーヤーたちにゲームセンターの楽しさを知ってもらうことも、プロの務めだと思っているとのこと。ノビ選手は最後に「ゲームセンターが毎年半分以上なくなっている中、俺たちができるのは鉄拳を盛り上げることだけ。だからこういったゲームセンターでのイベントを東京だけでなく全国各地でやっていきたい」と熱く語った。

【記念撮影】