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プロゲーミングチーム「Team Liquid」のトレーニング施設「Alienware Training Facilities」見学レポート

日本のメディアとしては初潜入! ゲーミングハウスのイメージを大きく変える施設の秘密に迫る

6月13日 収録

 デルはプロゲーミングチーム「Team Liquid」のトレーニング施設、「Alienware Training Facilities」のメディア向けツアーを実施した。

 「Team Liquid」はオランダに本拠地を置く強豪のプロゲーミングチーム。元々は「Starcraft」のチームとして発足したが、現在では「Starcraft 2」はもちろん「League of Legends」、「Counter-Strike: Global Offensive」、「Dota 2」部門など多数の部門を持つマルチゲーミングチームとなっている。その実力は文字通り世界トップレベルで、数々の国際大会の上位の常連チームとなっている。

 今回ツアーが実施された「Alienware Training Facilities」は、「Team Liquid」のスポンサーの1つであるAlienware(デル)がスポンサードをして建設したトレーニング施設だ。この施設は「League of Legends」のチャンピオンチームとチャレンジャーチーム、そして「Counter-Strike: Global Offensive」部門の選手がトレーニングに使用しているのだという。

 筆者は「トレーニング施設」という単語を聞いたときに、選手が合宿のようなスタイルで、文字通り寝食を共にしつつ、トレーニングに明け暮れる施設なのだろうと推測していた。だが現地に到着して筆者が見たのは、想像とは圧倒的に異なるスタイルのトレーニング施設だった。

 本稿では写真を多めに使用し、「Alienware Training Facilities」内の様子をレポートしつつ、そしてそこから見えてくるプロゲーミングチームとスポンサー企業との関係性について興味深かった点をレポートする。

トレーニング施設に初潜入。あらゆることが想像と異なる!

Alienware Esports for North America(ALIENWARE 北米eスポーツ担当)のDavid Chen氏。今回のガイドをアテンドしていただいた

 まず本施設に入って驚いたのがロビー的なエリアにPCとPCデスクが置いてあったことだ。選手の練習場ではなさそうで、誰が使用するのか……と考えていたところ、今回のツアーでガイドを務めてくださった、Alienware Esports for North AmericaのDavid Chen氏から説明があった。

 説明によると本施設にはトレーニング施設としての機能はもちろん、本施設でトレーニングを行なう選手の書類や経理上の管理を行なうオフィスとしての機能も持っており、そのスタッフが使用するPCなのだという。また通常のオフィスのように会議室も複数用意されており、パートナーが来場したときなどに使用するメインの会議室には86インチのタッチパネルが設置されている。

 他にも「1UP Studios」というeスポーツのコンテンツ作りに特化したスタジオも施設内に併設されていた。施設内に写真や動画の撮影に使用するスタジオもあるので、撮影から編集までが本施設でワンストップで行なえるという仕組みだ。

 使用するPCやモニターなどの機材ははもちろんALIENWAREからスポンサードされたもので、PC本体は「ALIENWARE AURORA」や「ALIENWARE AREA-51」といったハイスペックなもの、また、ディスプレイも2枚か3枚と複数枚がデフォルトで、34インチの曲面モニターなどを使用しているスタッフもいるという。

 驚くべきことに、このトレーニング施設だけで50台以上のALIENWAREブランドのPC、ディスプレイは150枚以上にもなるという。David氏曰く、デルとしては設備を6人目の選手(「League of Legends」、「Counter-Strike: Global Offensive」は共に5人で1チームなので)として見ているという。

 当然のごとく選手が使うPCも惜しみなくハイスペックなものが使用されているし、会議室などに使用されている機材もかなり高価なものだ。David氏によると本施設にデルが投資した金額はその殆どがハードウェア関連で、数十万ドル(日本円に換算すると約数千万円)単位にもなるという。

 他にも動画のレビュー部屋があり、試合の結果を振り返りながら反省点を確認したり、新しい作戦などについての打ち合わせを行うという。こういったハードウェアや施設は試合に勝つためには必要なものと話す。

いわゆるオフィスエリアになる。今回はE3期間中ということで人が少なかった。ちなみに施設全体の広さは8,000平方フィート(約224坪ほど)とのことでかなり広い。必要な設備をしっかりと抑えつつ、ゆとりを持った空間に感じた
会議室の一例。机に「League of Legends」のサモナーズリフトのプリントが!
同施設内にある「1UP Studios」の作業風景。作業中の風景を撮影しても良いとのことだったので撮影させていただいたが、ちょうど「Fortnite」部門で使用するためのクリエイティブを作成しているところだった。こちらでは「Team Liquid」のクリエイティブを作成するのはもちろん、外部の会社からも依頼されることもあるという
撮影スタジオも施設内にあり、撮影からクリエイティブの制作までワンストップで作業が可能だという。さらに同じ施設で選手と過ごしているので、より自然なスタイルで選手を撮影できるのも長所だという
こちらは施設内のカフェテリア。専用のシェフが常駐しており、栄養バランスはもちろん、細部まで気を使っているという

 選手のスケジュールとしては週末に大会などを実施するので月曜日がオフ、火曜日から金曜日までが仕事といった具合で、朝はミーティングルームで試合のレビューなどを実施し、11時から14時位まで練習。3時間程度の練習の後、昼食を取る。そして3時間程度練習し、休憩して、再度練習をするというのが大まかなタイムスケジュールだという。

 食事をとるために外に出るのは交通渋滞に巻き込まれてしまったりと効率が悪いので、この施設には専属のシェフが在籍している。国籍が異なる選手もいるため、料理のバラエティにはこだわりがあるそうで、選手が食べたいものをできるだけ準備するようにしているという。もちろん栄養面についても考慮するのは当たり前で、食後に眠くなりにくいようにといった要素も考慮しているとのことだ。

 他にも運動ジムに通ったり、心理学者やコミュニケーションの専門家によるコンサルティングなども行なっているという。David氏によると「99%効率よく動かないとすべてが無駄ですよね」と言い切っていた。

 プロゲーマーの生活というとどうしても特殊なものをイメージしてしまうが、David氏が「朝起きて、出社して、仕事をして、食事をとり、定時に自宅に帰るというのは当たり前じゃないですか?」と話していたのが印象的だった。当初はトレーニング施設とのことだったので、合宿のように選手全員で泊まり込みでトレーニングする施設なのかなとイメージしていたが、「仮に1つ屋根の下に暮らしていて、喧嘩などが起きたら大変ですよね」という一言で、あらゆることが腑に落ちた。またオープンオフィスが故に選手も他のスタッフと交流することができ、気分転換になる要素もあるのだという。

 文字通りトレーニング施設を隅から隅まで見させていただいた感想は、何もかもが筆者の考えていた「ゲーミングハウス」と異なることだった。一言で言ってしまうと「プロゲーマーはゲームで最高のパフォーマンスを出すことがが仕事なのだから、最も効率の良い方法や機材を使うべき」ということなのだろうだが。ただその理想を達成するために、金銭的な面はもちろんだが、それ以外にも多くのコストを払ってきたのだと推測される。

 David氏に「Team Liquidとここまでの関係を築くのに1番大変だったことは何ですか」と聞いたところ、「会社の役員を説得すること」だった。リアルな回答だが実際にeスポーツというものをちゃんとビジネスとして昇華させるのは非常に難しかったのだろう。そしてそんな困難の数々を乗り越えて結果を残し、こういった施設を作ることができたのはTeam LiquidのメンバーとDavid氏、そして他の関係者たちの信頼関係があったのは間違いない。

 ALIENWAREがスポンサードすることで、選手はもちろんのことスタッフにも最高のパフォーマンスで仕事をしてもらう。その結果チームが好成績を残し、スポンサードしている企業として宣伝効果やブランディングなどががリターンとして帰ってくる、という素晴らしい関係性を築けていることがわかった。プロゲーミングチームと、それをスポンサードをする企業。お互いがお互いの強みを活かし、メリットを出し合うことができている貴重な例の1つと言えるだろう。

こちらはトレーニングルーム。写真には映っていないが、同室にコーチ・アナリストの席も用意されている
巨大なスクリーンが用意されている会議室。ここで試合の振り返りをしたり、作戦の共有などを行なうのだという