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世界大会への切符を賭けた「PUBG JAPAN SERIES βリーグ」が開幕
SunSister Suicider'sが安定の1位スタート。野良連合 Rosso BiancoやTHE SHABLESらの新鋭にも要注目
2018年5月20日 10:09
DMM Gamesは5月19日、PC向けバトルロイヤルシューター「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(PUBG)」のプロリーグ設立に向けた公式リーグ「PUBG JAPAN SERIES(PJS) βリーグ」を開始した。初日は上位リーグとなるCLASS1の3試合が行なわれ、PJS αリーグで2位だったSunSister Suicider'sが安定した試合運びで暫定1位となった。
「PUBG JAPAN SERIES βリーグ」はその名のとおり、αリーグに続くトライアル的な公式リーグの第2弾。順調にいけばβリーグの後、待望のプロリーグがスタートすることになる。
現時点ではそのプロリーグの詳細は明らかになっていないが、PJS βリーグの目玉となるのは、上位2チームに対して、ドイツベルリンで開かれる「PUBG」の世界大会「PUBG Global Invitational 2018(PGI 2018)」の出場権が与えられるところ。名実共に日本代表として世界大会に出場できるとあって、選手達のモチベーションも高い。
さて、αリーグ Phase2終了から約1カ月のインターバルを挟んでスタートしたβリーグでは、様々な改善が行なわれている。もっとも大きな変化は2部制になったことだ。PJS開始後、国内で「PUBG」のチーム設立が相次ぎ、入れ替え戦の競争倍率が上がっていることを受け、βリーグから1クラス20チームから、2クラス計40チームに倍増。
CLASS1はトップリーグで、すべてオフラインで試合が行なわれ、プロリーグとして一定のファイトマネーおよび、ドン勝に対して報奨金が与えられる。αリーグ同様、リーグは2Phase制で行なわれるが、各Phase終了時点で20チーム中下位6位は自動的にCLASS2に降格する。
CLASS2は、CLASS1入りを目指して凌ぎが削られる下位リーグ。試合はすべてオンラインで行なわれ、ファイトマネーの支給はない。各Phaseの上位6位は自動的にCLASS1へ昇格できる一方、下位6チームになると、恒例の入れ替え戦強制参加となる。CLASS2下位6位と、在野の数十チームによる入れ替え戦で上位6名が新たにCLASS2に参戦するという流れになる。
CLASS1の会場は、PJS αリーグが行なわれた都内某所のスタジオに戻り、20チーム80名を1フロアに集める形で試合が進められた。当初、αリーグでは、この都内の会場に加え、地方在住者の利便性を考え、地方のネットカフェから参戦することもできたが、βリーグでは最初から全員を一カ所に集める形に変更された。毎週都内に出張しなければならない選手達は大変だが、やはり80名が集まる姿は壮観だ。
フロアのギリギリまで選手席が配置され、そのおかげで、実況解説を行なうOooDa氏とSHAKA氏の席が別フロアに移動になっていたほどだった。プロリーグに向けて完全にフェアな環境を構築するためとはいえ、この徹底ぶりは素晴らしい。
ちなみにドン勝したチームに対する選手インタビューは、インタビューは苦手だというSHAKA氏に変わって、先日行なわれた「PUBG GIRL'S BATTLE」で優勝したNigongo(にごんご)選手が務めた(参考記事)。インタビュアーを務めるのは初めてということで、ガチガチに緊張していたが、本人は「eスポーツに関わる様々なことにチャレンジしてみたい」と意欲旺盛で、新しいタイプの女性eスポーツアスリートだ。
大会方式については、マップは引き続き「Erangel」のみとしつつ、ゲームモードは世界戦で導入されているFPP(1人称視点モード)を新たに採用。PJSは1日に3試合ずつ行なわれるが、そのうちの1試合をFPPで行なう。
CLASS2の試合は、5月18日にすでに行なわれており、毎週金曜にCLASS2 3試合、毎週土曜にCLASS1 3試合という形で進められる。
さて、CLASS1の試合の方は、まだ全チームに優勝の可能性がある開幕戦というだけあって、活気に満ちた熱戦が繰り広げられた。ちなみにチームの並びは、関係者席のある手前から、αリーグの順位順に並んでおり、1位と2位のUSG_Hyster1cJamとSunSister Suicider'sの選手達のムーブを間近で見ることができたのだが、やはり上位チームほど、コミュニケーションも活発で、声も大きい。
中でももっとも声が大きかったのがUSG_Hyster1cJamのオーダーclockbox選手だ。彼はTwitchの配信でも、ロビーの待機中に「Unsold Staff Gaming所属、clockboxです。皆さんよろしくお願いします」と落ち着いた声で礼儀正しく挨拶することで知られるが、今日の彼は、チームリーダーとしていつもとは違う大声で矢継ぎ早にオーダーを飛ばしていた。
彼はαリーグにおいて巧みな指揮でチームを総合優勝に導いたが、本日はチーム内チャットに使用しているDiscordが不調で、1~2戦目では途中からDiscordが使えなくなり、オーダーを出せない状況になったり、3戦目では誤操作でモニターを消してしまい、輸送機からの着地を失敗するなど、踏んだり蹴ったりで可愛そうだった。ぜひこのトラブルをバネにDAY2以降から頑張って欲しい。
ところで、この開幕戦で個人的に注目していたのが、SunSister Royaltyの元メンバーたちだ。SunSister Royaltyは、2017年10月に行なわれたDMM主催の公式大会PUBG JAPAN CHAMPIONSHIP以前から活動しているプロチームで、SunSister Unknownを前身とし、韓国大会「PUBG ASIA INVITATIONAL G-STAR 2017」や世界大会「Intel Extreme Masters Katowice 2018」など、姉妹チームであるSunSister Suicider'sと並んで豊富な国際大会への出場経験を持つ。「Intel Extreme Masters Katowice 2018」終了後に、チーム事情で解散してしまったものの4名中3人は現役で活動しており、しかも過去の活動実績を買われて、CLASS1のチームにスタメン出場している。ディフェンディングチャンピオンであるUSG_Hyster1cJamに加入したのがCiNVe選手、野良連合に加入したのがWesker選手とfiachan選手だ。
とりわけWesker&fiachanのコンビは、“「PUBG」が巧いと思う日本人選手”に必ずと言って良いほど名前の挙がる有名選手だが、PJS αリーグには入れ替え戦を除いて一度も出場していないため、彼らの実力が、PJSにおいてどの程度のものなのか注目していた。
古巣の姉妹チームであるSunSister Suicider'sが安定した試合運びで圧巻のドン勝を納めた後の2ゲーム目。彼らが所属する野良連合 Rosso Biancoは、スターティングポジションは13位という下位だったため、公式配信ではなかなか彼らのムーブを映してくれなかったが、25分を過ぎた終盤戦で、全員が生存していることが判明。しかも、サークルのほぼ中央に位置する絶好のポジションだ。
最終収縮地点は、遮蔽物の少ないなだらかな丘陵地帯で、必ずしも先に入るのが有利とは言えないポジション。言い換えればほぼ全方位から射線が通るポジションで複数チームに包囲されているわけだが、持ち込んだ3輌の車両を巧みに用いて即席の壁を作り、周囲から向かい来る敵を伏せ撃ちで1チームずつ潰していった。関係者席ではWesker選手の無双っぷりに「Wesker、すげえなあ」の声が漏れる。
最終的にSunSister Suicider'sとの直接対決も制し、PJS2試合目にして早くもドン勝をおさめた。Wesker選手4キル、fiachan選手4キル、LyzeFelt選手4キル、liavely選手2キルの計14キルという見事なスコアだ。
試合後に話を聞いてみると、Wesker選手は「こういう場でドン勝できてホッとしました」とまさしくホッとした表情で話してくれた。fiachan選手は「いつも通りやれれば勝てると思っているので、普段通りの動きをやっていきたい」と淡々と応えてくれた。2人は、2018年3月のIEM Katowiceで、16チーム中16位という屈辱を味わっている。「PGI 2018」への出場について尋ねると、「僕らは海外で悔しい思いをしてきたので、日本も世界に通用するということを証明したい」と強い意欲を見せてくれた。
ちなみに彼らは3ゲーム目も、終盤まで4人残り、2連ドンかと思わせたが、最終収縮先に嫌われ7位に終わり、初日の総合順位は4位に留まった。初日の活躍により、今後は彼らが配信で映される機会も増えると思われる。今後も引き続き注目したい。
初日の最終結果は、1位、3位、4位という安定した結果を残したSunSister Suicider'sが暫定1位となった。SunSister Suicider'sも、αリーグ終了後にMolisJP選手から、XhanZ1119選手に入れ替えを行なっているが、その影響を感じさせない盤石のムーブだった。
2試合目が終わった時点で、エースのCrazySam選手に調子を尋ねたところ、「良いですよ」と即答。付け加えて「こういうと調子に乗っていると思われるかもしれませんが、僕らはこれまでの経験が違うんで、いつも通りに戦えば問題ないと思います」と力強く語ってくれた。彼らの安定感は、プロとしての経験がモノを言ってるわけで、有言実行しているところがまさにプロらしい。
そして2位には3ゲーム目で17キルでドン勝という野良連合Rosso Biancoを上回る活躍で勝利した姉妹チーム野良連合 4Uが付けた。彼らは入れ替え戦を1位で勝ち上がってきた新鋭チームで、野良連合 白虎組を前身に、メンバーの半数を入れ替えて望んでいる。メンバー入れ替えが奏功したパターンと言える。
3位には2戦目をドン勝した野良連合Rosso Biancoではなく、1度もドン勝していないTHE SHABLESが入った。THE SHABLESは、PJS αリーグ Phase2から参戦した新鋭のチームで、αリーグ Phase2でもドン勝をおさめ、βリーグではいきなり初日から3位に付けるなどダークホースと言えるチームだ。
Most Killも、3戦で11キルしたTHE SHABLESのSixVII選手が獲得した。このSixVII選手は、αリーグでは3位のJUPITER NOVAに所属していた選手で、そのJUPITER NOVAは絶対的エースを欠いた影響で、まったく精彩を欠き、暫定20位の最下位に落ち込んでいる。「PUBG」のSQUADは、SOLOやDUOとは異なるゲーム性で、オーダーの指揮のもと、密接なチームワーク、あうんの呼吸が要求されるが、1人の選手の出入りで、ここまで結果が変わるのだからチーム戦は恐ろしい。
SixVII選手は活躍できた理由について、残る3名の選手が先行する後を付いていき、自分は彼らのフォローに回る役回りで、フリーで自由に撃てたことを挙げていたが、新チームでその作戦が機能しているところが凄い。チーム毎に異なるオーダーや、可能な限りキルを避けるチームムーブ、味方の危機を救うための総力を挙げたおとり作戦やスモーク展開など、SOLOでは見られないSQUAD独特のムーブがPJS最大の魅力と言える。そのあたりを意識しながら観戦するとより楽しめると思う。
PJS βリーグは、4週目の入れ替え戦を挟む形で、毎週金曜と土曜に、CLASS2とCLASS1の試合がそれぞれ行なわれる。「PUBG」ファン、eスポーツファンは、国内のFPS界のトッププレーヤーが集うこのリーグをたっぷり堪能したいところだ。