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「PUBG GIRL'S BATTLE」、初代女王はDetonatioN所属のNigongo選手に

解説のSHAKA選手も舌を巻くプロそのもののムーブ。8キルドン勝で圧勝!

4月30日開催

会場:e-sports SQUARE AKIHABARA

 ゴールデンウィーク前半最後のお休みとなった4月30日、東京秋葉原e-sports SQUARE AKIHABARAでユニークなeスポーツイベントが行なわれた。DMM Gamesが日本でサービスをしているバトルロイヤルゲーム「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(PUBG)」の女性限定大会「PUBG GIRL'S BATTLE」が開かれたのだ。

会場となったe-sports SQUARE AKIHABARA。満席の人気ぶりで女性客も多かった
本イベントオリジナルロゴ

 eスポーツの世界的な盛り上がりに合わせて注目されているのが女性選手の活躍だ。日本でもCYCLOPS athlete gaming所属のプロゲーマーたぬかな選手や、この春に惜しくもチームとして活動を休止してしまったがNaturals北海道「Overwatch」部門所属のRoyal選手など、男性顔負けの実力を備えているプロゲーマーも生まれつつある。

 eスポーツは、世界中の関係者の悲願として、“オリンピックの正式種目化”を掲げているが、eスポーツをスポーツと同列に本当に語るのであれば、女性部門の創出は避けて通れないところ。その際に、牽引役となる女性スターが少しずつ増えているのは喜ばしいニュースだ。

 さて、「PUBG GIRL'S BATTLE」では、6名のゲストと、69名の一般参加者合わせて75名によるソロマッチが3戦行なわれた。マップはErangel、TPPモード、レッドゾーン無効化というオーソドックスなルール。ゲストには、ゲームが得意なストリーマーあるいはタレントばかりが集められ、69名の一般参加者は、女性であることを担保するために、最低1度は配信実績のある女性ストリーマー限定とした。

 スポンサーはマシンを提供したTSUKUMO、賞金を提供したビットキャッシュ、特別賞を提供したロジクールの3社が名乗りを挙げ、PUBG Corpの全面協力のもとで行なわれている。本イベント限定の公式ロゴも可愛らしい。

【出演者】
実況解説はお馴染み、OooDa氏とDeToNatorのSHAKA選手が務めた
はつめ選手
水沢柚乃選手
えっか選手
ゆっこ選手
てんちむ選手
逢坂愛選手

 ところで「女性だけで『PUBG』をやったらどうなるのか!?」というのは、「PUBG」ファンなら誰もが夢見るバトルロイヤルのシチュエーションのひとつだろう。「PUBG」のモチーフとなっている映画「バトルロワイヤル」でも、一見、屈強な男性が試合を引っ張っていると見せつつ、映画そのものの魅力は女性同士の凄惨なだまし合い、血みどろの殺し合いだった。

 本イベントは、筆者のみならず、楽しみにしていた「PUBG」ファンは多かったようで、放送開始前から「PUBG」の日本リーグ「PUBG JAPAN SERIES」を上回る視聴者数を達成。Twitchのコメント欄も、「ですわよ」、「かしら?」、「いいわね」と女言葉限定チャット(言うまでもなく、中身はほとんど男)で大盛り上がりだ。

 筆者自身も、どういう試合になるのかは未知数だった。昨今ではTwitch等でも女性が「PUBG」を配信しているケースが増えてきているが、「無茶苦茶巧いが、実は女性」というケースはほとんどなく、どちらかといえば「女性だけど、『PUBG』遊んでます」と自らバイアスを掛けて配信しているケースが多いように思う。“生き残れば勝ち”という「PUBG」の特性を活かして、息を潜めて後ろから狙えばキルを取れるが、正面切って戦うとボロ負けする。だからみんなギリギリまで動かない。そういうまったり女子会的な3試合になるのかなと予測していた。

 結果はどうだったというと、半分は当たり、半分は外れだった。当たっていた部分は、やはり“まったり女子会”的な部分だ。1つの家屋に複数人が長く同居し続けたり、隣同士で膠着状況が続いたり、よくわからない場所で突然動きを止めたりなど、解説のSHAKA選手も「どうして毎回こうなるのかよくわかりませんね」、「なぜこんな街にこんなに集まるんでしょうか」と解説に苦しんだり、OooDa氏も「これ何待ちですかね? 彼氏待ち!?」と煽りを入れるなど、女性大会ならではのムーブも見られた。

【女子会っぽい「PUBG」】
そもそも名前が可愛い
緊張しすぎて何もないところに降りてしまう
開幕直後にピストルで遠距離狙撃してしまう
Pochinkiに降りると宣言してチキって降りない
仲良くなってしまう
同居してしまう

 その一方で、今回、上位ランクを占めた女性プレーヤーたちは、日本のトッププロに勝るとも劣らないムーブで、次々にキルを取り、ドン勝を決めるなど、女性「PUBG」プレーヤーの認識を改めさせてくれた。

 とりわけこの選手は凄いと思わせてくれたのがNigongo選手だ。正直に告白すると、Nigongo選手の存在は、OooDa氏とSHAKA選手に教えて貰った。イベント開始前に後方で待機していた2人に、「誰が優勝すると思いますか?」と尋ねた。質問のニュアンスとしては、DMM Gamesが勝てると見込んで集めた6人のゲストのうち誰が勝つかと聞いたつもりだったが、ふたりは「DetonatioNのNigongo選手が巧いです」と即答してくれた。

 というわけで、本イベントでは最初からNigongo選手ばかり注目していた。6人のゲストに交じってたまにNigongo選手がモニターに映されると、1人だけ明らかにムーブの質が違うのがわかる。チームの強さというのは試合全体を見なければわからないが、個人の技量は少し見ていればすぐにわかる。序盤のファーム(装備回収)、敵を認識した後の立ち回り、キル後のアイテム回収の手際、最終ムーブに向けての立ち回りなど、うまいプレーヤーは個々のシーンのクオリティが違う。

 1試合目、2試合目は、Nigongo選手はわずかに映った程度で、気づいた時にはキルされてしまっていたが、3試合目は20分過ぎに映し出された時には、ギリースーツに、背中にはM24という最強装備になっており、ドン勝に向けての準備が完了していた。

 3試合目ともなると、ドン勝まで詰め切れる実力を持った女性プレーヤーが誰なのかわかってくる。本大会でもっとも好戦的だったといっていいSamuraiCoCo選手、確実にキルを重ねながら上位まで食い込んでいたH4ru選手、大胆な動きで実況解説陣を驚かせていたchofu選手、そしてプライドを賭けて臨んでいるファミ通Appのゆっこ選手、1戦目でドン勝したMayuchin選手、2戦目でドン勝したSalmon選手など、彼女たちを中心に試合が進んでいった。

【「PUBG GIRL'S BATTLE」を盛り上げた女戦士たち】
今回の6人のゲストの中では最上位だったゆっこ選手
常にスコープを覗いて射撃していた感がある武闘派のSamuraiCoCo選手
ドン勝はできなかったが、3戦目の最終ムーブでも、車を使って中央に布陣するという大胆な戦術で2位を獲得したChofu選手
2戦目では、最終収縮をヒールで凌ぐという頭脳プレイで5キルドン勝したSalmon選手
鮮やかなムーブで初戦をドン勝したMayuchin選手。2戦目以降は活躍できなかったが、良い動きを見せていた
2戦目最終収縮に敗れたNana07x選手。徹底した待ちのスタイルが特徴的だった
ドン勝には恵まれなかったが、Nigongo選手と並んでトップクラスの実力を備えているH4ru選手
3戦目、待望のドン勝を獲得したNigongo選手。名実共に1位の実力を備えた女性プロプレーヤーだ

Nigongo選手。DetonatioN Gaming公式サイトより

 中でも目覚ましい活躍を見せたのがNigongo選手だ。小屋に篭もるMayuu選手を、グレネードを使わず、そのまま扉を開けて強襲して3試合目初キルを決めると、最終決戦ではほぼすべての敵をなぎ倒し、圧倒的な強さでドン勝を決めた。途中、側面から撃たれた際は、煙を上げている車に乗り、坂で別の車に乗り越え、撃ってきた敵を車でひき殺して、最終収縮地点に移動するというアグレッシブな動きを見せ、最後も有利な位置で待ち受けるChofu選手に先に撃たれてから、素早く向き直って撃ち切るという凄技を見せた。Nigongo選手は、そのまま総合優勝を獲得し、賞金5万円分のビットキャッシュと共に、5月中旬より開催されるPJS βリーグにゲスト出演することが決定した。

 Nigongo選手は、優勝インタビューで「こういう場で結果が残せて嬉しい」と語り、「PUBG」歴約1年という熟練プレーヤーで、最高レートは2,600と、トップランカーであることが明らかになった。SHAKA選手の「どうやったら撃ち合いが強くなるのか?」という質問に対して、「自分の強み、弱みを自分の中で分析したり、プレイを見てくれた人のアドバイスを頂いたりして、強いところを伸ばして、弱いところを直していくことが大事」と語り、この見事な回答にはSHAKA選手も「今まで僕が言ってきたことよりも深い内容でした(笑)」と称賛。プロとしてゲームに対してひたむきに取り組んでいるだけでなく、活動を支援してくれているOPENRECの視聴者に対する細やかな気遣いも見せるなど素晴らしいコメントで、やはりeスポーツの発展には女性の力が必要不可欠だと感じた。

 DMMによれば、「PUBG GIRL'S BATTLE」は、スポンサーを募る形で定期開催していきたいという。今回参加したゲスト6人も、次回でのリベンジを予告。この流れで、女性チームが生まれ、女性チームがPJSに参加するようなことになれば、日本の「PUBG」コミュニティもより盛り上がるだろうし、一般の人びともeスポーツに対してもっと関心を寄せてくれるようになるかもしれない。将来的な女性部門創出に向けた第一歩として大成功と言えるイベントだったのではないだろうか。

【Nigongo選手最終ムーブ】
2台の車を使って一気にサークルまで寄せていく
フライパンに被弾しながら積極的に攻めていくNigongo選手
何度も危ない状態に陥りながら的確にキルを決めて行く
これはChofu選手の視点。先に撃っておきながら、Nigongo選手に逆転負けを喫してしまった

【Nigongoキラーのmoco_moco選手】
試合を見直していて気づいたが、Nigongo選手は1戦目、2戦目ともmoco_moco選手にキルされている。moco_moco選手は、「Nigongo選手を2キルした選手」として敢闘賞の活躍と言えるだろう