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「ポケモンGO」とは異なるARゲームを! 「Monster Buster」で提供する“物語体験”

3月19日~23日開催

会場:San Francisco Moscone Convention Center

 Narrative(物語)とは、ゲームにおいては、テキストや、ストーリーテリングだけでなく、プレーヤーに物語を感じさせる技法や、演出などでも議論される。プレーヤーにどのように物語を感じさせるか、自分が物語の中にいるのか……GDCにおけるGame Narrative Summitでは、ゲームのアプローチやテーマ、さらには技術的手法や、NPCの行動だったり、クリエイターが様々な手法を発表し、参加者は改めて「物語とは何か」を考えている。

 「CRAFTING RPG WORLDS IN REAL ENVIRONMENTS WITH AR」は、インディーメーカーのTag of Joyが開発したAndoroid/iOS向けARRPG「Monster Buster:World Invasion」をテーマに開発者のZilvinas Ledas氏とSarunas Ledas氏がゲームのストーリーテリングやゲームデザインを語った。

【「Monster Buster: World Invasion」Launch Trailer】
「Monster Buster:World Invasion」開発者のZilvinas Ledas氏(右)とSarunas Ledas氏

 「Monster Buster:World Invasion」は、「ポケモンGO」のように、街の中でモンスターを探すゲームだ。モンスターを探し出し、手持ちのモンスターと戦わせ、捕獲する。戦闘はRPG的なインターフェイスで、育てることでさらに強く成長していく。Windows Phone向けに開発していたが、2017年にAndroid/iOS版もリリースできたという。ビジネスモデルは基本プレイ無料で、アイテム課金制になっている。

 開発で気をつけたことは「過度なARにはしないこと」、「戦闘はプレーヤーが体を動かす必要がなく、つかれない」、「戦闘中は移動できない」といったことだ。ゲームの中の世界は現実に大きく影響を受ける。湖のそばや街の中、田舎や街中、スーパーマーケットなど場所によって現われるモンスターが変わる。また、夜や昼、雨や曇りなど天候や時間でも展開が変わる。

 本作の開発に関し、スタッフは「物語性」、「世界の永続性」、「プレーヤー達の協力」、「対戦」などに気をつけたという。ゲームのマップはGoogleのゲーム開発者向けAPIを活用し、現実とゲーム内のマップを重ね合わせた。現実の様々なオブジェクトがゲーム世界に変化をもたらす。歴史的な建物では特別なモンスターが出たり、それに合わせたストーリークエストを用意したりした。また、「雨が降っている間にウォーターエレメンタルを倒せ」など、現実とゲーム世界がクロスするような要素を盛り込み、臨場感を上げた。

「Monster Buster:World Invasion」、現実世界が冒険の舞台となる

 100m北へ行きクエストを受け、500m南に向かってクエストをこなす、といったように現実の世界が冒険の場所となる。しかし、こういった「現実を仮想空間に変換する」という要素は面白さをもたらすと同時に、「きわめて限定的な場所」になりやすい点がある。特定の街や場所をクエストがあったり、モンスターを出す場所にするのは比較的やりやすい。しかしモバイルARゲームに求められているのは普段生活している場所が冒険の場所になることだ。限定された場所でしか遊べないというのでは、ゲームの目的に合わない。

 そこでチームではGoogleが提供しているデータの分類に注目した。学校や施設など様々な場所に点在している類似の建物やオブジェクトを統括し、それらを組み合わせてクエストを作ることで、特定の場所だけではなく、様々な場所でゲームのストーリーが展開するようにしたのである。

 その工夫の1つが「代替案」。「動物園」の代わりに「ペットショップ」でもできるようにしたり、建物のイメージを膨らますことでクエストを生成しやすくした。……それでも人口の少ないところではドラマが作りにくい場合がある。そういった場所でもクエストが作れるようにプレーヤーがいる場所から地図データを読み取りポイントが作れるような方法も盛り込んだのだ。

地図のロケーションがクエストのポイントとなる

 Zilvinas氏は「現実の物をゲーム内に取り込み面白い冒険をすることは可能です。しかしそれだけでなく、現実世界にゲーム内の世界を持ち込むことでより楽しくARゲームをプレイすることが可能なのです」と語った。

 現実の世界がゲーム世界になる。そのコンセプトは魅力的だが考えなくてはいけない問題があり、その完璧な解決は難しいとSarunas氏は語った。考えてみれば多くのプレーヤーが離れた都市や違う国に行くことができない。RPGのゲーム世界のように広大な世界を旅することはできないのである。また同じ地域にいるレベル差のあるプレーヤーへのサポートも問題だ。

 年少者への配慮、地域に根ざしているだけに匿名性にも気を使わねばならない。もちろん「プレーヤーは長い距離を歩きたがるわけではない」というところも意識しなくてはならない、特に雨の日のイベントで歩き回らせたりはできない。また、ユーザーのモバイルのバッテリーや、インターネット通信環境など注意点も多い。

様々な留意点も提示された

 「モバイルはARゲームに最適です。しかしARゲームのメリットだけでなく、デメリットも意識しなくてはなりません」とSarunas氏は語った。物語に没入させてもゲームプレイに没入させすぎないこと、ARとゲームでのバランスを考えることなど様々な知見が語られた。

 前回のGDCでは「ポケモンGO」の開発者の体験が語られたが、今回はそれらを踏まえた上でのARゲーム開発と、それによるプレーヤーへの働きかけが語られた。地方でのイベントの少なさや、プレーヤーの差が開きすぎてしまう問題など、ARゲームは地域に根ざしているからこその問題もある。こういった参入メーカーが増えていくことでより現実を面白くするARゲームが出てきて欲しい。