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「PUBG JAPAN SERIES αリーグ」Phase1レポート

驚異の“3連ドン”でDetonatioNが2位に浮上。1位は連日ドン勝ちのSunSisterに

2月17日開催

 DMM.comは2月17日、バトルロイヤルシューター「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」の日本リーグ「PUBG JAPAN SERIES αリーグ」Phase 1を開催した。

東京会場はTV向けの撮影スタジオが使われている
試合前に談笑する選手達
実況解説は、予選に続いてOooDa氏とSHAKA選手
試合風景
Day 3最終戦に勝利しインタビューを受けるSunSister SuicidersのCrazySam選手

 今回は、2月10日と11日に闘会議を会場に行なわれたDay1、Day2に続くDay 3で、入れ替え戦を挟む形で2フェイズ制で行なわれるPhase1の最終日となる。この戦いで20チーム中上位15チームはPhase2に勝ち進み、下位5チームは、明日2月18日に行なわれる入れ替え戦への参加が義務づけられ、Phase2への参戦を渇望する在野の猛者35チームを含めた40チームで、残り5枠を目指して文字通りのバトルロイヤルが展開されることになる。

 Phase 1最終戦となるDay 3では、上位陣はプロチームとしてプライドを賭けた1位争奪戦、下位チームは15位以内に入るために死に物狂いで上位食いを狙うという、こちらもまさに熾烈なバトルロイヤルが展開された。

 「PUBG JAPAN SERIES αリーグ」は、闘会議レポートでもお伝えしたが、日本のeスポーツシーンにおいて、非常にユニークな試みを行なっている大会だ。その詳細については、先のレポートを参照いただきたいが、その最大のものは、全試合をオフラインで行なうところだ。今回、Twitchでの観戦ではなく、東京会場まで足を運んだのは、その取り組みを自分自身の目で確かめたかったからだ。

 「PUBG」は、インゲームアイテム(アバター)が現金でトレード可能なSteamをベースのシステムとして採用しているため、RMT狙いのチーターが蔓延している。人気のあるオンラインゲームでは宿命の対決といえる“開発元とチーターの戦い”はまだチーターのほうが優勢という状況で、日頃遊んでいればまだまだ目に付く存在だ。

 しかし、eスポーツにチーターが紛れ込むと、公平なスポーツとしての観点から、まったく成立しなくなってしまうため、PUBG Corpはグローバルで統一した厳しいレギュレーションを敷いている。「試合をすべてオフラインで実施する」というのもその1つだ。

 Day 3では、東京、札幌、名古屋、大阪、福岡の5都市にそれぞれ試合会場を設け、20チーム80名の選手は、いずれかの会場に赴き、試合に参加する。もちろん、交通費は全額支給され、さらに全選手はDMM.comと出演契約を交わし、ファイトマネーも支給される。このスキームは、「League of Legends」のプロリーグ「LJL」とほぼ同じもので、80名の選手達は、ゲームで生活の糧を得るという点では、すでに全員プロゲーマーだ。

 ちなみに、5つの会場の場所はすべて伏せられている。これもPUBG Corpが定めたレギュレーションで、場所を知ったファンが押し寄せ、大会運営に支障が出たり、特定の選手だけ異なる環境でプレイするような事態を避けるためだ。今回は、各地の参加人数のみ発表された。東京会場が45人、北海道会場が9人、名古屋会場が8人、大阪会場が13人、福岡会場が5人。ちなみにもっとも参加者の多い東京会場では、同一チームの選手が横並びになることは避け、全チーム全員がバラバラに座るようになっている。

 筆者が取材したのは東京会場だが、上記レギュレーションから、45人の選手達は、それぞれがDiscordで繋がった3人の仲間に対して喋りかける形となり、オンライン配信のみの“無観客試合”ながら、極めて賑やかな試合だった。逆に言えば、選手達がこんなに大声で喋り続けながら戦っているのかと改めて気づかされた。普段は実況解説の声でかき消されていた選手達の声をダイレクトに聞くことができて貴重な体験ができた。

 さて、Day 3もDay 1/2を上回る、さらに進化したチーム戦を堪能することができた。闘会議レポートでも触れたが、「PUBG」のSQUAD戦は、SOLOとはまるで別のゲームになりつつある。

 チーム戦で基本セオリーになりつつあるのは、1人1台ずつ車輌を用意することだ。SOLOでは、その騒音の大きさから、遠距離移動に使われることがもっぱらで、サークルの収縮が始まると、位置が特定されることを避けるため乗り捨てられることが多いが、SQUADでは、最重要物資として乗り物探しがはじまり、最初から最後まで乗り続ける。

 その目的は、移動手段というだけでなく、遮蔽物がほとんどなくなる最終決戦で盾として使うためだ。このためオートバイやバギーより、遮蔽物の面積が広いヴァズやダチアが好まれ、相手に取られた車輌は、丁寧にタイヤをパンクさせ、余裕があれば破壊する。上位に食い込むチームは例外なくこのセオリーを忠実に守っている。

【大量水死事件ふたたび】
Day1初戦は、Day1の1戦目と同じ、サークル内の大部分を川が占める展開に。多くの選手が川に入りはじめイヤな予感がしたが、最終的に再び大量水死事件が起こった。川岸から狙い撃ちにしたDetonatioNはこのゲーム19キル+ドン勝で595ポイントを獲得した

 また、SQUADにおいて戦場を彩るのは、スモークグレネードだ。不利な状況で一方的に射撃された場合、岩陰まで一目散に隠れるのではなく、その場でグレネードを張る。それで仮に気絶しても仲間が助けてくれるし、煙に紛れて戦線を立て直すことができる。

 特に印象的だったのが、Day 3の2試合目で、複数車輌でサークル内を目指して移動するDetonatioNに対して、Astro 9が高所正面から待ち構えるという状況となった。DetonatioNは一方的に狙い撃ちにされ、続々と負傷者が出るという圧倒的に不利な状況で、普通ならそのまま全滅か半壊するところだが、道路上で全車両を停止し、その場でスモークを張って全員を戦線復帰させるという水際立ったチームプレイで、そのゲームをドン勝した。

【SQUADの醍醐味が凝縮していた第2戦】
2戦目は、Erangel南方の島にある空軍基地が最終決戦場になった。最終的に基地側がサークルから外れ、大乱戦となったが、最終的に勝ち抜いたのは、常にチームを意識して立ち回ったDetonatioN Gamingだった。中盤のスモークを使った退避もうまかったが、最終版のあえてバイクで2人だけ突っ込むアプローチもうまかった

 さらにトップチームが実践している高級テクニックとしては、包囲殲滅戦がある。Day 3最終戦では、SunSister Suicidersと、Zoo Gamingが相対し、膠着状況に陥った。3つの建物に篭もるZoo Gamingに対して、SunSister Suicidersは道を挟んだ窪地に布陣し、SunSister Suicidersが不利な状況だ。実況解説のふたりも、なぜSunSister Suicidersがその場に張り付いたままなのか怪訝に思っていたようだが、この戦いに勝利したのはSunSister Suicidersだった。

 膠着状況を打開したのは、SunSister SuicidersのエースSabrac選手。他の選手が窪地で敵を引きつけている間に、Sabrac選手が真後ろに回り込み、挟撃したのだ。お互いへの全幅の信頼がなければとても実行できない作戦だが、それを実戦でやってのけるのがプロチームだ。SunSister Suicidersもまた、この戦いにドン勝し、全日ドン勝という快挙で、逆転1位を達成した。

 最後の最後、各チーム1人ずつ残っているという状況では、個人のエイミングや手榴弾テクニックが勝敗を左右することがあるが、SQUAD戦の勝敗を分けるのは圧倒的にチーム力だ。このあたりが理解できてくると、「PUBG」の観戦は指数関数的におもしろくなってくる。

【Phase 1最終戦はドラマティックな展開に】
Day 1最終戦は、西の果てが最終収縮先となったため、エリア外の戦いが熱かった
熱戦が繰り広げられたSunSister Suiciders対Zoo Gaming。SuicidersのSabrac選手が後ろに回り込んでいるのがわかる
こちらはJupiter NovaとDetonatioN Gamingの“頂上”決戦
最終決戦の各チームのポジション
孤軍奮闘するDetonatioNのVuelo選手
車を盾にスモークグレネードを巻いて奮戦するVuelo選手だったが、業を煮やしたV3 FoxのManju選手に車毎突っ込まれてあえなく戦死する。そのManju選手も撃破され、SunSister Suicidersが漁夫の利ドン勝を収めた

Day 3でもっとも高いスコアを稼いだのはDetonatioN Gaming
MOST KILL賞はV3F_Manju
Phase 1トップチームはSunSister Suiciders
「PUBG JAPAN SERIES αリーグ」Phase 1成績表

 ところで、このDay 3の主役を担ったのはなんといってもDetonatioNだ。「League of Legends」で国内トップレベルのチームを擁する名門チームだが、「PUBG」のSQUAD部門は、2017年11月に、「Battlefield」部門をベースに設立されたばかりで、まだ目立った実績は残していない。

 「PUBG JAPAN SERIES αリーグ」では、Day 1に1回、そしてDay 3に2回ドン勝を決め、さらに解説のSHAKA選手も絶賛するチーム力で、「PUBG」トップチームの仲間入りを果たした。ドン勝を逃した第3試合も、残り1人の状況から4位に食い込んでおり、RascalJesterに並ぶ、安定感も見せつけてくれた。いまもっとも注目のチームと言っても過言ではない。

 冒頭でも触れたようにDay 3をもって「PUBG JAPAN SERIES αリーグ」Phase 1は終了となった。Phase 1の1位となったのは、連日ドン勝という有無を言わさぬ実績を残したSunSister Suiciders。ただし、彼らは20位凡退も繰り返しており、“ドン勝か20位か”というムラのある結果が特徴となっている。

 SunSister Suicidersは、この結果をもって、3月にルーマニアで開催される「PGL PUBG Spring Invitational」への参戦が決定した。「PGL PUBG Spring Invitational」は、賞金総額10万ドル(約1,060万円)をかけて、全世界から16チームが集う。日本の実力が世界にどこまで通用するのか注目したい。

 余談だが姉妹チームのSunSister Royaltyも、12月に行なわれたGeForce CUPでMVPを獲得したWesker選手を擁する実力派のチームで、来週2月24日、25日に行なわれるIntel Extreme Mastersの「PUBG」部門にアジア代表として参戦が決定している。彼らは満を持して明日の入れ替え戦にも出場予定で、勝ち抜きが期待される。層の厚さはSunSisterが国内随一と言えるかもしれない。

 2位となったのは、Day 1で15位と低迷していたDetonatioN Gaming。Day 2にドン勝を決めるなど尻上がりに調子を上げ、Day 2からカウントして3連ドン(3戦連続ドン勝)を決め、15位から一気に、1位とわずか10点差の2位まで順位を上げた。Phase 2では追う立場から追われる立場に変わるが、持ち前の高いチーム力を発揮できるかどうか注目したい。

 3位は、予選1位で、Day 1でも1位だったRascalJester。Phase 1ではとにかくドン勝に恵まれなかったが、常に上位に食い込む安定した戦いで3位の座を維持した。あのSunSister Suicidersですら20位に落ち込むのを見ると、「PUBG」がいかに運の要素が大きく、安定して高スコアを出すのが難しいゲームなのかというのを痛感させられるが、さりげなく実践しているところはさすがといったところ。

 RascalJesterは、DMM主催の「PUBG JAPAN CHAMPIONSHIP 2017」で2位となったBuhidou Gamingを前身とするチームで、GeForce CUP等でも活躍するmaron選手をはじめ実績のある選手が揃っている。Phase 1はまさかの1位からの降格となったが、巻き返しに期待したい。

 そして上位陣が確定した一方で、入れ替え戦への参戦チームも確定した。入れ替え戦に参戦するのはPUBGRU、Oracle、バナナマン、Astro 9、DT SBELLIONの5チームとなった。明日、この5チームの中で何チームが残留できるのか注目したいところだ。