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プロリーグを見据えた「PUBG」の公式リーグ、ついに堂々開幕!
予選1位のRascalJesterがトップスタート。画期的な大会運営スタイルにも要注目
2018年2月11日 14:03
DMM.comは2月10日、オンラインバトルロイヤルシューター「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUND」の日本リーグ「PUBG JAPAN SERIES 2018」を開始し、幕張メッセで開催されている「闘会議 2018」DMM.comブースにおいて開幕戦を行なった。「PUBG JAPAN SERIES 2018」は本日より3月24日までかけて実施される。
前代未聞の規模で行なわれる超特大eスポーツリーグ「PUBG JAPAN SERIES 2018」
正式サービス開始からわずか1カ月あまりでスタートした「PUBG JAPAN SERIES 2018」。2月10日よりスタートしたものは、プロリーグの前哨戦となるアルファリーグと呼ばれるもので、プロリーグに向けてのテストリーグとなる。
ただし、テストとはいえ、その内容はPUBG Corporationが定めるレギュレーションに則った本格的なもので、1月に38チーム152名による予選を行ない、20組80名の選手を選出。その20組で、SQUADマッチを18戦行ない、総合スコアで日本1位チームを決めるというものだ。しかも、リーグ運営において、日本のeスポーツシーンにおいて画期的な取り組みがいくつも行なわれているのだ。まずはそれについてご紹介しておきたい。
ひとつはリーグをすべてオフラインで行なうことだ。開幕戦から計6試合は闘会議のDMM.comブースを会場にオフラインで実施される。全国から旅費や宿泊費を負担して、80名の選手を一カ所にを集めるだけでも凄いことだが、それ以外の12試合も、全選手はテクノブラッドと提携する全国のネットカフェに設けられる「指定されたオフライン会場」で試合を行なうことを義務付けられる。そこには審判員が常駐し、試合中はチート行為がないかどうか、キルスコアがいくつかどうか、ヘッドセットを付けているかどうか、しっかりチェックされる。
「指定されたオフライン会場」には、本大会の機材提供を行なっているサードウェーブのゲーミングPC「GALLERIA」が設置され、全プレーヤーが全期間を通じて、まったく同じPC環境でプレイを行なう。ちなみにそのPCは、開幕戦に使われている80台のPCが全国に送られるということで、予備や配信用も含めて、100台のGALLERIAが、「PUBG JAPAN SERIES 2018」のために全国で使用される。前代未聞の規模と言える。
もうひとつは、アルファリーグ中に、入れ替え戦を行なうことだ。前半後半、2つのフェイズで構成され、フェーズ1が終了した時点で、下位5チームは、入れ替え戦への参加を義務づけられる。入れ替え戦は、その下位5チームに加え、下克上を狙う在野の35チームが参戦し、5つの枠を目指して、40チームが凌ぎを削る。これにより中だるみを防ぎ、すべての「PUBG」ファンにプロリーグ前哨戦への参加機会を提供するというわけだ。
そして3つ目は、繰り返しになるが「PUBG」のプロリーグを前提としたリーグであるところだ。アルファリーグ、ベータリーグの先には、プロリーグがあり、「League of Legends」のプロリーグ「League of Legends Japan League(LJL)」や、「オーバーウォッチ」のプロリーグ「Overwatch League」のように、メーカーからファイトマネーが支給される形で運営される見込みで、予定通りにいけば年内にも「PUBG」のファイトマネーで生計を立てるプロゲーマーが誕生することになる。
荒々しくも魅力的。進化を続ける「PUBG」のSQUAD戦
単一タイトルのeスポーツトーナメントとしては前代未聞の規模で行なわれている「PUBG JAPAN SERIES 2018」だが、初日の2月10日は、3試合が行なわれた。実況解説は、eスポーツキャスターの岸大河氏と、DetonatioN Gaming所属のプロゲーマーすもも選手。ちなみにすもも選手は、12月に行なわれたGeForce CUPで、ソロ部門でドン勝を決めた国内トップクラスの実力者だが、DetonatioN Gamingではあくまでソロ部門の選手ということで、本大会には出場していない。
ルールは、PUBG Corporationが定める国際大会のレギュレーションの則ったもので、マップは「Erangel」、ゲームモードは「SQUAD/TPP」、レッドゾーンは「無効化」。ポイントテーブルは1位が500ポイント、2位400ポイント、3位350ポイントと、順位に応じて減衰し、降格圏内となる16位以降は一律100ポイントとなる。キルポイントは1キルにつき5ポイント。チームで20キルすればそれだけで100ポイントとなり、上位を目指すにはしっかりキルを取ることも重要になる。
予選を勝ち上がった20チームは、予選1位のRascalJesterを筆頭に、野良連合、SunSisters、SCARZといった国内の「PUBG」シーンを彩る強豪チームをはじめ、Unsold Stuff Gaming、DetonatioN Gaming、CYCLOPS athlete gamingなど、他のタイトルでも実績を挙げているプロチームなど、国内の主要チームがほぼ勢揃いしている。
イベントの開幕には最初にメインステージで選手入場が行なわれた。20組80名ということで、次から次に引きも切らずチーム紹介が続き、甲子園の選手入場のような華やかさだ。どのチームも事前に決めたポーズを決め、出場できることに喜びを感じていることがわかる。やはりこういうオフライン大会は、実施することそのものに大きな意味があると感じさせられる。
選手達は、入場後そのままメインステージ左右に並べられた指定のプレイエリアに移動し、試合の準備を始めた。手前から奥に向かって予選での順位通りに並び、1位のRascalJesterから、4位のSunSisters Suicider'sまでが最前列に並び、客席からは選手達の肩越しにプレイ状況がよく見える。この辺の演出もうまいなと思わされる。ただ、逆に言うと、プレイ中の選手の表情が覗けないのは残念なところで、せっかくカメラを配置しているのだから、どんどん顔を抜いて欲しいところだ。
さて、本日行なわれた3試合は、いずれもドン勝したチームが入れ替わり、実力伯仲した熱戦が繰り広げられた。「PUBG」は、バトルロイヤルをeスポーツまで昇華させてしまった希有なタイトルだが、SOLOとSQUADではまったくゲーム性が異なり、eスポーツルールとして採用されているSQUADは、まさにチームベースのeスポーツらしい、チームワークを随所に滲ませる戦いが随所で繰り広げられ、観戦していて非常に楽しい。それはアーリーアクセスから正式サービス、幾度のアップデートを経て、どんどん進化している印象がある。
たとえば、DUO/SQUAD限定の気絶システム。SOLOなら撃たれるとそのまま死んで終わりだが、SQUADでは気絶状態となり、非戦闘状態になるものの少しずつ移動して逃げることができ、一定時間内に仲間が救援することで戦線に復帰させることができる。この気絶周りの立ち回りは、「PUBG」SQUAD戦の最大の見所と言っても過言ではない。
一例を挙げると、気絶した敵を、すかさず追撃して殺すのではなく、あえてワンテンポ遅らせて手榴弾を投げることで、救援に来た味方もろとも倒したり、逆に気絶した仲間を救うために、ひとりが煙幕を張り、ひとりが応戦して敵を引きつけ、そしてもうひとりが助けるなど、チームプレイが熱い。
あるいは、輸送機から降下後、散開してそれぞれが物資を集めるが、トップチームは、ある程度集まったところで、一階がガレージになっているような家に集合して、物資を融通し合う。それによって物資のばらつきをなくし、総合的な戦闘力を高めていくのだが、それが極自然に行なわれる。この“物資”は、乗り物も含まれる。1台に4人乗り込むのが一般的だが、全滅の危険があるため、1人1台が鉄則で、4台が隊列を組んで収縮先に向けて疾走していく。縦一列もあれば、横一列もあり、一糸乱れぬ行軍は非常にカッコイイ。
はたまた、4人が1つの拠点に篭もる際、綺麗に4方向をカバーし、死角がないようにする。全体マップを見ると、各選手の向いている方向がわかるが、綺麗に4方向を向いている。圧巻なのは建物の制圧だ。乗り物、手榴弾、スモークグレネード、スタングレネードなど、あらゆる手段を駆使して、4人が呼吸を合わせて同じ拠点に攻め込み、一気に制圧する。「PUBG」ではフレンドリーファイアが存在するため、下手に全員で動くと味方を撃ってしまう。ここまで来ると、高度に訓練された特殊部隊の動きそのものであり、「PUBG」のSQUADは、このチームプレイの進化を見るのが非常に楽しいわけである。
個人的にこの3試合で、もっとも見事なチームプレイを魅せてくれたのは、SunSisters Suicider's。とりわけドン勝した第2試合目は、サークルの収縮先にも恵まれていたが、逆に言えば、周りから狙われる中での建物に篭もっての迎撃戦、建物がサークルから外れた後の一気呵成の攻め込み、強襲による強ポジションの制圧、最後までチームを意識した立ち回りと、勝つべくして勝った試合だった。
eスポーツタイトル「PUBG」。今後の課題は“最初の20分”をいかに魅力的にするか
初日は、Zoo Gaming / Penguin、SunSisters Suicider's、野良連合 Rosso Biancoの3チームは抜群のチームプレイで、ドン勝をもぎ取った。初日のトップに輝いたのは、2位2回という安定した成績を残したRascalJester。とりわけ最終戦は、序盤で2人失い、残り2人になった時点で、生き残りを重視したソロプレイに移行し、漁夫の利を狙う戦術を採用。こうした判断も非常にうまい。
初日から抜群の盛り上がりを見せてくれた「PUBG JAPAN SERIES 2018」だが、eスポーツとしての「PUBG」は、発展途上な部分もまだまだ残っている。Intel Extreme Mastersの「PUBG」レポートでもお伝えしたように、「PUBG」のSQUAD戦は、とにかく立ち上がりが重い。これは正式サービスがスタートし、数度のバランス調整が施された結果、解消されるどころか、悪い方向に洗練されていっている。
たとえば、最初の輸送機の降下では、20チームがあたかもお互いに示し合わせたかのように別々の位置に降下するし、たまたま同じ街に2チームが降下し、つばぜり合いを始めた場合でも、必ずお互いが引くのだ。
この結果、3試合とも、開始20分が経過しても、全チーム、70名近くが生存するという事態になっている。野良のゲームであれば、20分経過すれば、ゲームはもう終盤であり、20~30名が残っていればいいほうだ。ところがトップチームによるSQUAD戦だと、全チームが生存する状況になるため、最後の10分の盛り上がりはもの凄いものになる。終盤戦では、視界内に50名以上がひしめく大乱戦になるからだ。最初の20分と、終盤の10分の温度差の是正、これが「PUBG」SQUAD戦の課題だと思う。
ちなみに、何故毎回そうなるかというと、現時点でのレギュレーションでは、キルポイントよりも順位ポイントの方が圧倒的にウェイトが高く、リスクを冒してキルを取るより、極端を言えば、家のトイレに篭もっていた方がスコアが高くなるからだ。だから、どんな上級者でも積極的に戦うよりは、できるだけ回避する方向の立ち回りになる。
象徴的だったのが1試合目だ。この試合では、中盤サークル内の大部分が川になり、ほとんどのチームは、隠れ場のない川沿いへの布陣を避け、あえて川の中に入ることを選んだ。水中では無力化してしまうが、その代わり水中に潜ることで、敵の視界から逃げられ、相手の攻撃をほぼ無効化できる。この試合でも呉越同舟とばかりに、30人近くの選手が水中に姿を隠しながら次の収縮先を見守っていた。ところが、終盤の収縮先は、川からかなり外れてしまい、川岸は上陸するタイミングを逃した選手達で死屍累々となった。これは選手達のスポーツマンシップの問題というよりは、純粋にレギュレーションの問題だと思われるため、eスポーツ向けの積極的に戦うことにメリットを付与するレギュレーションの改定が望まれるところだ。
さて、試合は明日2月11日も引き続き3試合が行なわれる。予選、初日ともに1位のRascalJesterがその差を広げるのか、いずれかのチームが華麗にドン勝を連発して1位の奪還するのか、注目されるところだ。試合の模様は、「闘会議」DMM.comブースもしくは、Twitchの「PUBG」公式チャンネルで観戦することができるので、ぜひ観戦してみてはいかがだろうか。