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【特別企画】Coffee Lake-SはPCゲーミングに何をもたらしてくれるのか?

Core i7-8700Kはマルチタスクで本領を発揮する! Twitch配信や4Kなど多彩な環境でテストしてみた

 11月2日より、インテルの第8世代Coreプロセッサ、通称Coffee Lake-Sの国内での販売が始まった。Coffee Lake-Sは現在発売されているゲーミングPCの多くが採用しているメインストリーム向けのCPUで、Kaby Lakeの後継にあたる。Coffee Lake-Sを搭載したCore i7-8700Kの2017年12月現在の店頭価格は45,000円台前後、Kaby Lake世代のCore i7-7700Kが36,000円台前後となっている。

 プロセスルールは改良版の「14++」。最大の特徴は、コア数が4コアから6コアに進化し、スレッド数も8から12へと増えたことだろう。ソケットはKaby Lakeと同じLGA1151だが、コア数が増えたことでIntel 200シリーズのチップセットとは互換性がなく、使用するにはIntel 300シリーズのマザーボードが必要となる。

 コア数が増えることのメリットをユーザーが最も実感できるのは、マルチタスク処理においてだろう。例えば仕事用のアプリと同時に、オンラインゲームも起動して、さらにそのゲームの攻略動画を見るといったシチュエーションは、誰しも少なからず心当たりがあるのではないだろうか。

 下記のスペックを見ていただければわかるように、1コア当たりのクロック数はCore i7-7700Kの方が勝っている。しかし2コア増えたことで、全体のパフォーマンスではCore i7-8700Kの方が高くなる。このメニイコアならではの特徴が、ゲーミングPCで生かされているかが、ゲーマーとしては最も気になる部分だろう。

【Coffee Lake-SとKaby Lakeのスペックの違い】
Core i7-8700KCore i7-7700K
製品コード名Coffee Lake-SKaby Lake
プロセスルール14++14+
コア数64
スレッド数128
定格動作クロック3.7GHz4.2GHz
ターボブーストクロック4.7GHz4.5GHz
キャッシュ12MB8MB
TDP95W91W

 そこで、今回はゲームプレイ時のCore i7-8700KとCore i7-7700Kの性能差を比較するため、CPU、マザーボード、メモリ以外はすべて同じスペックを備えたゲーミングPCを2台用意し、様々なゲームを走らせたり、ゲームを起動した上に、動画配信やデュアルモニターへの出力、YouTube閲覧といったマルチタスク環境でどのくらい性能に差がつくかを実験してみた。

 ゲーミングPCは、サードウェーブデジノスのゲーミングPCブランドGALLERIAから、Core i7-8700K搭載モデル「GALLERIA ZZ (8700K)」とCore i7-7700K搭載モデル「GALLERIA XZ」を使用したスペックは以下の通り。

【GALLERIA ZZ (8700K)】
CPU:Core i7-8700K
チップセット:Intel Z370
GPU:GeForce GTX 1080 Ti 11GB
メインメモリ:16GB(PC4-21300/8GB×2/2チャネル)
ストレージ:3TB HDD、500GB SSD
光学ドライブ:DVDスーパーマルチドライブ
電源:Enhance 800W 静音電源 (80PLUS GOLD / EPS-1780GA1)
OS:Windows 10 Home 64bit
価格:239,980円(税別)
http://www.dospara.co.jp/5shopping/detail_prime.php?mc=7407&sn=3468

【GALLERIA XZ】
CPU:Core i7-7700K
チップセット:Intel Z270
GPU:GeForce GTX 1080 Ti 11GB
メインメモリ:16GB(PC4-19200/8GB×2/2チャネル)
ストレージ:3TB HDD、500GB SSD
光学ドライブ:DVDスーパーマルチドライブ
電源:Enhance 800W 静音電源 (80PLUS GOLD / EPS-1780GA1)
OS:Windows 10 Home 64bit
価格:219,980円(税別)
http://www.dospara.co.jp/5shopping/detail_prime.php?tg=13&tc=30&ft=&mc=6853&sn=0&tb=2

まずは各種ゲームベンチマークで2つのCPUを比較

 まずは定番のゲームでベンチマークを比較してみた。「ファイナルファンタジーXIV」では最高品質での4K環境(4,096×2,160)でも比較してみた。画面はすべてフルスクリーンで計測している。ベンチマークのスコアは以下のような結果になった。

【ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク】
Core i7-8700KCore i7-7700K
最高品質(4K)79767722
最高品質1970818288
高品質(デスクトップPC)2027318747
高品質(ノートPC)2186019980
標準品質(デスクトップPC)2362020712
標準品質(ノートPC)2333620883

 他にも主だったオンラインゲームのベンチマークでは以下のような結果となった。「ドラゴンクエストX」は、最高設定のフルスクリーン、フルHD(1,920×1,080)と4K UHD(3,480×2,160)で比較している。「ファンタシースターオンライン2」と「ドラゴンズドグマオンライン」のベンチマークソフトは4Kをサポートしていないため、フルHDのみの比較となっている。「PSO2」は最も高い「設定6」、「ドラゴンズドグマオンライン」は「最高設定」を選択した。結果はすべて8700Kが上回っているが、特に「PSO2」や「ドラゴンクエストX」ではっきりとした差が出ている。ベンチマークスコアは以下の通り。

【Windows版ドラゴンクエストX ベンチマークソフト】
Core i7-8700KCore i7-7700K
最高品質(4K)2165420422
最高品質(FHD)2289021803

【ファンタシースターオンライン2キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4】
Core i7-8700KCore i7-7700K
設定69937172825

【ドラゴンズドグマオンライン ベンチマークソフト】
Core i7-8700KCore i7-7700K
最高品質1657914669

 「オーバーウォッチ」は、フレームレート計測の定番ソフトFrapsを使って60秒間のフレームレートを計測した。各3回ずつ計測し、その平均値を比較している。グラフィック品質「エピック」で、トレーニングモードをプレイ。トレーニングモードは同じ動きを繰り返すNPCを相手に好きなキャラクターを練習できるモードだが、今回はゼニヤッタを使ってひたすらトレーニングBOTを撃ちまくった。結果は、フレームレートの最高値で大きく差が出るが、平均値ではCore i7-8700Kがやや有利という結果になった。

【オーバーウォッチ】
Core i7-8700KCore i7-7700K
最高FPS193167
最低FPS135129
平均FPS158152

 「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(PUBG)」もFrapsで60秒間のフレームレートを各3回ずつ計測して平均値を出した。設定はソロの、TPS視点でフルスクリーン、解像度はフルHD、画面スケール「100」、画質設定「ウルトラ」でプレイしている。パラシュートで降下した後、1人で移動している時に主にフィールドで計測した値となっている。

【PUBG】
Core i7-8700KCore i7-7700K
最高FPS143141
最低FPS119112
平均FPS128120

 「コール オブ デューティ ワールドウォーII」もFrapsで同様に計測した。最初のミッション「D-Day」の同じシーンで各3回ずつ試行している。設定はディスプレイ解像度フルHD、レンダリング解像度ネイティブ、PRE-T2X解像度50%、アンチエイリアスはフィルミックSMAA T2x、テクスチャ解像度「高」、ノーマルマップ解像度「高」、スペキュラマップ解像度「高」、空の解像度「ノーマル」となっている。

【コール オブ デューティ ワールドウォーII】
Core i7-8700KCore i7-7700K
最高FPS340251
最低FPS185140
平均FPS242198

 HTC Vive用のVRタイトルとしてSteamで配信が始まったばかりの「Fallout 4 VR」も試してみた。こちらはフレームレートを図る代わりに、フレームタイミングで比較した。フレームタイミングは、アイドルを示す薄緑のゾーンが広いほど安定しており、快適にプレイできる。今回はスタート直後の、我が家でくつろいでいるシーンで比較している。

 2つを比較すると、Core i7-7700Kの方は、GPUに一部遅延が発生しており、CPUの処理もムラがある。Core i7-8700Kのほうは、芝刈り後のように波が落ち着いており、CPU、GPUともに余裕のある状態になっている。

【Core i7-7700K】

【Core i7-8700K】

【Fallout 4 VR】

 「World of Tanks」をサービスしているWargaming.netは、12月23日に最新エンジン「Core Engine(コアエンジン)」を導入した新バージョンの「WoT」である、「World of Tanks 1.0」を発表した。新たな4Kテクスチャーが実装され、ハイエンド環境ではよりリッチなゲーム体験が可能になる。この「WoT 1.0」のパフォーマンスを確認できる最新のベンチマーク「World of Tanks enCore」が配信開始されたので、最新ベンチマークでも、マルチタスク環境でのテストを行なってみた。

 設定はフルHD、4K(4,096×2,160)ともにフルスクリーン、グラフィック設定は「超高品質」、アンチエイリアス設定は「TSSAA HQ」となっている。ベンチマークの映像は4Kテクスチャーが使われているため、の55インチモニターで見ても、すぐ近くの雑草まで滑らかに表示される。爆発や水の表現などもすべて、以前のバージョンから大きく進化している。

【World of Tanks enCore】
Core i7-8700KCore i7-7700K
超高品質(FHD)3649835697
超高品質(4K)1166611583

「FFXIV:紅蓮のリベレーター ベンチマーク」を使ったマルチタスク実験

Twitchで配信、配信動画をブラウザで表示しながらのベンチマークテスト

 次に通常のゲームプレイ以上の負荷を掛けた状況でのパフォーマンスを検証するため、「ファイナルファンタジーXIV:紅蓮のリベレーター」のベンチマークを使って、マルチタスクで様々なシチュエーションをテストし、負荷がかかることでノーマルベンチからどれだけスコアが変化するのかを検証してみた。

 まずはよくある動画配信サービスとの併用。今回はフルHDのモニター2台をデュアルモニターにして、FirefoxでYoutubeで「FFXIVプロデューサーレターLive」を見ながらプレイという「FFXIV」ユーザーならありがちな状況を再現してみた。ちなみに、以下のテストもブラウザはすべてFirefoxを使用している。

 次に、動画にTwitchの配信をプラスしてみた。デュアルモニターの片方でフルスクリーンのベンチを回し、サブモニターに配信用の「OBS Studio」、配信された動画を確認するためにブラウザで立ち上げたチャンネルページ。そして相変わらずのYoutubeと、全部で4枚の映像が同時に動くことになる。

 最期に、同じ構成にさらにウェブカメラをプラスしてみた。ウェブカメラにはテレビの映像を映して、中は常に動いている映像が流れるようにしたうえで、配信映像の右下に小窓で配置した。これで5枚が同時に動くことになる。ここまで高負荷をかけると、さすがにCore i7-7700Kは息切れしてきた。

 ベンチマークのスコアだけを見ると差が小さく見えるが、実際には、Cire i7-7700Kの方は動画再生の同期が取れなくなったり、エンコードに大幅な遅延が発生したりといった症状が出た。特に4Kでは、音が映像の数秒後に聞こえるほどの遅延が発生したり、チャンネルページがずっとローディング中のままになってしまったりと安定しなかった。

 メインモニターを優先するために、サブモニターの処理が遅れていたのかもしれない。Core i7-8700Kではそういった障害は一切発生せず、すべてが遅滞なく動作しており、多コアの強みである高い処理能力を生かせているようだった。

 PCでゲームをすることの最大の利点は、ゲーム画面の横に並べて動画を見ることができるマルチタスクにあるといっていい。そんなマルチタスクシーンで強みを発揮する6コアのCore i7-8700Kは、現代にフィットしたCPUだといえるだろう。

【「FFXIV」マルチタスク実験】
Core i7-8700KCore i7-7700K
ベンチマーク1970818288
ベンチマーク+YouTube1858717367
ベンチマーク+YouTube+Twitch配信1759416776
ベンチマーク+YouTube+Twitch配信+ウェブカメラ別窓"1683015848
ベンチマーク(4K)79767722
ベンチマーク(4K)+YouTube74707292
ベンチマーク(4K)+YouTube+Twitch配信72667253
ベンチマーク(4K)+YouTube+Twitch配信+ウェブカメラ別窓70546958

4Kに対応した「World of Tanks enCore」でのマルチタスク実験

 続いて「World of Tanks enCore」を使って、「FFXIV」と同様のマルチタスク検証を行なった。ベンチマークの結果では、Core i7-8700KもCore i7-7700Kもいずれのテストでも3段階ある中で最も高い「高いパフォーマンス・レーティング」を取ることができた。ただ遊ぶだけなら、Core i7-7700Kでも十分にゆとりある性能で超高画質な新しい来春公開予定の「World of Tanks 1.0」を楽しむことができるだろう。

 グラフを見ていただけるとCore i7-7700Kも健闘しているように見えるが、こちらも「FFXIV」の時と同様に、処理が重くなるにつれてサブモニター側で動画の描画に遅延が発生し、フルHDで最も負荷が高いカメラと動画の併用では大きくスコアを落とす結果となった。やはり安定性ではCore i7-8700Kが一歩抜きんでているという印象だった。

【「WoT 1.0」マルチタスク実験】
Core i7-8700KCore i7-7700K
ベンチマーク3649835697
ベンチマーク+YouTube3463833522
ベンチマーク+YouTube+Twitch配信3247031617
ベンチマーク+YouTube+Twitch配信+ウェブカメラ別窓3223129995
ベンチマーク(4K)1166611583
ベンチマーク(4K)+YouTube1135411002
ベンチマーク(4K)+YouTube+Twitch配信1097010653
ベンチマーク(4K)+YouTube+Twitch配信+ウェブカメラ別窓1067410435

【World of Tanks enCore】

配信する人にも観る人にも等しくメリットがあるCore i7-8700K

 ベンチ結果を見ての通り、普通にゲームで遊ぶだけだけという人なら、Core i7-7700Kでもまだまだ十分に戦えることがわかる。ただ、PCをマルチタスクで活用するなら、Core i7-8700Kを導入したほうが安定した環境を手に入れることができることがわかった。いくつもウインドウを開いて、仕事とゲームと動画視聴を使い分けているような人は、Core i7-8700K導入を考えてみることをオススメしたい。

 Core iシリーズがメニイコア化することで、これまではXeonシリーズを考えていたようなシチュエーションでも、Core iで事足りるようになってくるかもしれない。単純にゲームのパフォーマンスを求める人だけではなく、ゲーム内で映画を撮影したり、スクリーンショットでコラージュ画像を作ったりという、クリエイティブなゲームの楽しみ方をしている人たちも、Core i7-8700Kのメニイコアが力強く応援してくれるはずだ。

 ここ数年プロセスルールの進化スピードが緩めであるため、GPUさえ買い替えていれば、まだまだ戦えると思っている人も多いことだろう。しかし、今回テストを通じてCore i7-8700Kのパワーと安定感を体感してしまった後となっては、自前で使っているCore i7-7700では物足りなく感じてきた。GPUは替えたけれど、マシンパワーはあればあるほどいいという人はCPUでもかなりのパフォーマンスアップが見込めるCore i7-8700Kの導入を検討してみてはどうだろう。