【特別企画】

箱の中でジブリの世界観が広がる! 「宮崎 駿のパノラマボックス」が公開

7月にジブリパークで展示予定の作品がメディア向けにお披露目

【宮﨑 駿のパノラマボックス取材会】
3月17日 開催
会場:スタジオジブリ 第1スタジオ

 今年の7月8日より、愛知県長久手市にある「ジブリパーク」で展示予定の「宮崎 駿のパノラマボックス」。こちらは、宮崎駿監督が、2023年に公開した映画「君たちはどう生きるか」の制作中から取り組み始めたプロジェクトだ。ジブリパークでの展示に先駆けて、ひと足先に、実際の展示物を見られるメディア向け取材会が3月17日にスタジオジブリ 第1スタジオで開催された。

 今回のイベントでは、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーと宮崎吾朗監督の2名が登壇。この「宮崎 駿のパノラマボックス」が生まれることになった経緯などについて説明が行なわれた。本稿では、その模様を一部抜粋しながら「パノラマボックス」についてもご紹介していく。

右から鈴木敏夫プロデューサー、宮崎吾朗監督

「パノラマボックス」という言葉は宮崎駿氏が発明

 そもそも「パノラマボックス」とは何か? という話になるが、宮崎吾朗氏によるとそうした言葉は存在せず、宮崎駿監督が発明した言葉だという。似たようなものとしては、「アートボックス」などがあり、簡単にいうと紙を切り抜いて奥から手前に向かって重ねていきながら空間を作りあげていくという作品である。

魔女の宅急便/「おーいあぶないよ」。引きで撮影するとこのような見た目になっており、ボックスの内部に各作品の世界が広がっている
ピアノ線のようなものが見えるところも面白い
写真で撮ると、何にフォーカスを当てるかによって見え方が変わって面白い

 こうした技法自体は、16世紀頃から存在していた。オペラの舞台では書き割りで奥行きを表現しているものがあるが、それをお土産にしたおもちゃなどもその当時売られていた。宮崎駿監督自身がこうしたものを最初に見たのは、内箱が切り紙細工キャラメルのおまけであった。

「パノラマボックス」の原点はキャラメルのオマケだった!?

 一般的にこうした「パノラマボックス」のようなアート作品は、舞台を見るように真横から見るものが多い。だが、宮崎駿監督の「パノラマボックス」の特徴は、縦構図を多用しているところである。そのため、カメラを俯瞰や煽りで映像を撮影するときのように、視点を上下に動かすことで異なる絵が見られるようになっているのである。

ハウルの動く城/「お茶にしましょう」
なぜか、見ているとほっこりとした気分にさせてくれる
アート作品としても素晴らしい仕上がりだ

 もうひとつ、展示にも特徴がある。この「パノラマボックス」は、若干低い位置で見られるように設置されている。これは子どもたちが少し背伸びすれば中の方まで見られるようにするためだ。大人からは見下ろすような形になるのだが、腰を落としてのぞき込むことで違った見え方がするのである。

角度によっても見え方が変化する。腰をかがめて鑑賞しよう

 実際にジブリパークで展示される「パノラマボックス」は全部で31点だ。現時点で完成しているのは、そのうちの23点で、残りの8点はまだ制作が続いている状況である。今回の取材でも23点の作品が見られたのだが、そのうち一般向けに解禁がOKになったのは本記事で紹介している7点だ。

千と千尋の神隠し/「鬼のふろ屋」
妖艶な雰囲気は作品のイメージ通りだ
とにかく書き込みがすごい

2022年6月から「パノラマボックス」の制作がスタート

 この「パノラマボックス」の制作が始まったのは、今から4年ほど前の2022年6月である。当時はまだ「君たちはどう生きるか」の制作中ではあったのだが、宮崎駿監督の作画の仕事は全て終わっており仕上げなどの段階に入っている頃だった。そのため、自身はあまりやることがなかったことからこの作品を作り始めている。

崖の上のポニョ/「怪船あらわる」
セル画を重ねたような立体感がある

 ちなみに、この頃は2022年11月にジブリパークがオープンするという時期でもあった。そうしたことから、宮崎駿監督いわくジブリパークのために「俺の作品を何か展示してあげよう」と、作り始めたという。今回「パノラマボックス」として展示予定のものには、「風の谷のナウシカ」や「魔女の宅急便」、「崖の上のポニョ」、「となりのトトロ」など、ジブリ作品を代表するようなタイトルが網羅されている。

 この「パノラマボックス」においてどの作品をとりあげるのかということについては、宮崎吾朗氏への相談はまったくなかった。その代わりに、最初に10点の作品が完成したと聞いたときに、宮崎吾朗氏は「10個だと展示室が埋まらないから、もう10個ぐらい作ってもらえないかな?」と頼んでいる。

となりのトトロ/「ねむいよー」
気持ちよさそうに眠っている

 そこから2年ほどかかり20点の作品が完成したのだが、それでもプラス10点ほど作品がないと展示室が埋まらないことから全部で31作品になったそうだ。つまり、作品の内容のオファーはしなかったものの、最終的に31点になったのは宮崎吾朗氏がその数だけ頼んだからである。

 今回取材できたのは、「パノラマボックス」としては完成しているものだったが、外観はまだ手つかずの状態となっていた。実際にジブリパークで展示される際には、そちらもしっかり仕上げられる予定である。作品自体はいずれも宮崎駿監督が自ら手掛けている。使用した材料は紙と鉛筆、そして絵の具という使い慣れた道具ばかりだ。実際に作り始めるときは明確な設計図を書いているわけではなく、ラフなレイアウトのようなものがあるだけだったという。

作品のタイトルはジブリ作品のキャッチコピーを考えてきた鈴木プロデューサーではなく、宮崎駿氏自身が考えたものだ

 写真としては紹介できないのだが、今回の取材で展示されていた作品の中には「紅の豚」に登場する主人公ポルコ・ロッソの愛機「サボイアS.21」など、立体的に作られていたものが「パノラマボックス」の内部に含まれている作品もあった。ほかの作品では、ボックスの中が赤くライティングされているなど、異なる世界観が楽しめるようになっていた。

 こうした作品はひとつずつ仕上げるのではなく、並行して制作されている。もちろん作業を完全にひとりでやっているわけではなく、背景などは美術監督に描いてもらっている部分もあるため、同時に5作品ほど並べながら制作していたという。

風の谷のナウシカ「ワァーごめん」
ナウシカの表情が爽やかだ
背景には青い目の王蟲が描かれている

 制作については、早い作品はひと月ほどでできるものもあれば、3年間ほったらかしにしていたものもある。また、制作途中で嫌になって捨ててしまったものから新しい作品に移植したものもあった。こうして完成した「パノラマボックス」の作品は、本人が映画の中で気に入っているシーンを題材にしたものもあれば、作品の中にあるイメージから作りあげているものもある。また、既存の作品だけではなく、完全オリジナルのものも含まれている。

君たちはどう生きるか/「インコ帝国」

 さらに面白いところは、作品に付けられているタイトルだ。「ワァーごめん」や「ねむいよー」など、なにやら意味が深そうなものが付けられているのだが、宮崎吾朗氏によると、スタッフからタイトルが必要だといわれて適当に付けていたため、あまり深い意味はないのではないかと説明した。

 さて、これらの「宮崎 駿のパノラマボックス」は、7月8日よりジブリパーク内にあるジブリの大倉庫の企画展示で31点が公開される予定だ。VRのような立体作品とは少し異なるが、写真で見るのと実物を目の前で見るのとでは少し印象も異なる場合があるので、ぜひジブリパークでその出来栄えをチェックしてみてほしい。