【特別企画】
「FF14:蒼天のイシュガルド」本日10周年! アルフィノの成長を描きつつ、1000年に渡る竜詩戦争に決着をつける重厚なファンタジー
2025年6月23日 00:00
- 【ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド】
- 2015年6月23日 発売
スクウェア・エニックスのMMORPG「ファイナルファンタジー14(FF14)」の拡張データディスク第一弾となる、「蒼天のイシュガルド」が本日2025年6月23日でリリースから10周年を迎えた。
「蒼天のイシュガルド」では、「新生エオルゼア」の世界観を紹介するメインストーリーから一転して、シナリオ重視の王道なストーリーが描かれた。特に本作の中心となるNPCのひとりアルフィノは、光の戦士と対をなす、実質もう一人の主人公である。
さらに「お使い」感の強かった「新生」と比較しても、全体的にスマートなシナリオ運びとなっており、遊びやすさが増しただけではなく、重厚なストーリーに入り込みやすいように改善されている。また、ジョブはタンクの暗黒騎士と、ヒーラーの占星術師、DPSの機工士が追加され、新たにアウラ族も追加された拡張データディスクとなっている。
本校では、そんな「蒼天のイシュガルド」を10周年を機に振り返っていく。なお、「FF14」は今でも新規プレーヤーをたくさん増やしているタイトルのため、できるだけネタバレ少なめに振り返りたい。とはいえ、多少のネタバレは含むため、「絶対にネタバレを知りたくない」というこれから遊ぶ予定のある人は注意してほしい。
ちなみに「蒼天のイシュガルド」は現在、フリートライアルで遊べるシナリオとなっており、無料で遊ぶことができる。
非常にいいところで終わったパッチ2.51から、当時は約4カ月待ちました
「蒼天のイシュガルド」の舞台となるイシュガルド皇国は、長らくエオルゼアとの接触を拒み続けてきていた。
しかしアルフィノは「新生エオルゼア」の頃から地道にイシュガルドと接触し、ついにイシュガルド教皇庁直属「神殿騎士団」の総長アイメリクとの会談にこぎつけた。
アルフィノはエオルゼアをひとつにするためにイシュガルドにも都市軍事同盟への参加を要請するが、アイメリクは、現在イシュガルドは1000年続く竜との戦争「竜詩戦争」のため、戦力に余裕がないことを告げて、軍事同盟への参加を断った。
そんな最中、ガレマール帝国のソル帝が崩御。新皇帝ヴァリスが即位し、帝国とエオルゼアとの緊張感はより高まる。
さらにイシュガルドには、初めて蛮神「シヴァ」が顕現する事態に。
イシュガルドを襲った悲劇はこれだけに終わらなかった。イシュガルド教皇庁は、幻龍「ミドガルズオルム」が、ドラゴン族への進軍開始の合図となる「竜の咆哮」を発したことを確認したのだ。
しかしイシュガルドとエオルゼアに国交がないため、モードゥナにある黙約の塔にイシュガルドの神殿騎士を派遣するのは難しい。
そこで光の戦士と「暁の血盟」らに黙約の塔と、幻龍「ミドガルズオルム」の調査が依頼された。
黙約の塔で目覚めたミドガルズオルムは、自身の子である「七大天竜」が竜の咆哮を発したのだろうと、光の戦士に告げる。
黙約の塔から戻った一行は、竜の咆哮がミドガルズオルムのものではないにしても、竜との戦争がまた間近に迫っており、イシュガルドに危険が迫っていることを知る。
そして、竜の咆哮で集った竜の進軍が始まってしまう。イシュガルドは、暁とクリスタルブレイブ、そしてグランドカンパニーに支援を要請した。
アイメリクはドラゴン討伐の要である蒼の竜騎士、エスティニアンを一行に紹介する。エスティニアンは竜の眼から力を得るが、その代償としてドラゴン族の心情もわかるのだ。
エスティニアンによれば、竜の咆哮を発したのは七大天竜のひとつである邪竜「ニーズヘッグ」。ニーズヘッグの目的は、イシュガルドに保管されている、邪竜ニーズヘッグの眼球の奪還なのは間違いない。
アイメリクは光の戦士にイシュガルド防衛への参加を依頼する。もしもイシュガルドが陥落してしまえば帝国の手もエオルゼアに迫りかねないため、一行は手を取り合うのだった。
皇都イシュガルドと大審門は、「雲廊」と呼ばれる石橋で結ばれている。雲廊に侵攻してくるドラゴンを止めるため、光の戦士や神殿騎士、グランドカンパニーらと共に、「皇都イシュガルド防衛戦」が始まり、ニーズヘッグの眷属であるヴィシャップを退けることに成功し、辛くも勝利した光の戦士たち。
この防衛戦によって、イシュガルドもついに他国と協力することへ柔和な姿勢を見せ始めた。
そして、ウルダハで戦勝記念式典が開催されることとなったのだが……。
時は2015年2月。パッチ2.51、メインストーリー2.5後編のエオルゼア。
ウルダハではイシュガルド戦勝記念式典が行なわれていた。そこで仕組まれた謀略により、「暁の血盟」と光の戦士(プレーヤーキャラクター)は、ウルダハの女王であるナナモ・ウル・ナモ暗殺事件に巻き込まれる。
……というところで終わるのが、「新生」の物語。
「え!? ナナモ様が暗殺!?」という衝撃の展開から、「蒼天のイシュガルド」がリリースされるまでの4カ月の間、我々プレーヤーは当時非常にもだもだしながらその続きを待っていたものだ。
今でこそ、パッチリリースのタイミングが変わったこともあり、4カ月待つのは普通となったが、当時は大体3カ月に1回のペースでパッチがリリースされていたこともあって、4カ月は非常に長く感じたのを、今でも覚えている。
そして、2015年6月、満を持してリリースされた「蒼天のイシュガルド」。
容疑者として追われる身となってしまった暁の血盟のメンバーは散り散りに。それでもなんとか逃げ延びた冒険者は、アルフィノ、タタルと共に、イシュガルド四代名家のひとつであるフォルタン家のオルシュファンに助けられる。そして当主エドモン・ド・フォルタン伯爵が後見人となり、3名は皇都イシュガルドに入ることができるようになったのだった。
堕ちた英雄が訪れたのは、北方の地クルザスを領する山の都「イシュガルド」。
国教「イシュガルド正教」の長たる教皇が王権を有し、戦神ハルオーネを主神とする宗教国家である。
四代名家率いる貴族たちが剣と槍を掲げ、仇敵ドラゴン族から都市を守り、戦い続ける。
「竜詩戦争」とも呼ばれる千年もの果てなき戦いを――
固く閉ざされた大審門の扉を開き、歴史ある皇都に足を踏み入れた光の戦士たち。
彼ら異端の者たちの到来が、千年の歴史を揺るがす変革の始まりとなることを、この時知る者はいなかった――
物語の途中で何度も泣いた、とにかく何度でも泣けるストーリー
この物語の中心となるのは「憎悪」である。1000年に渡る竜と人間の間に育まれた憎悪を巡る物語なのだが、その憎悪がさらなる憎悪を呼び、とにかく憎しみに満ちた物語が描かれる。
光の戦士と、本作の第二の主人公とも言えるアルフィノ、蒼の竜騎士エスティニアン、そして氷の巫女イゼルの4人で旅を進めていくのだが、旅の中で各人は少しずつ親交を深め、特にアルフィノは、己の幼さを知り、そして恥じ、新生時代と比べて飛躍的に心の成長を遂げることとなる。
この物語、こうして書いてしまうと一文で終わってしまうのだが、このアルフィノの成長物語が、凄まじく素晴らしかったのである。
「新生」でのアルフィノは、第七霊災から世界を守ったルイゾワの孫ということもあって、どこかお高くとまっている部分があり、それでいて立場的に上に立つキャラクターという感じもあって、よくも悪くも「お坊ちゃま」だった。
だが「蒼天」ではそれを反省し、改めて己の器を省みて、自身の成長につなげることができたのだ。
アルフィノは、なんだかんだと真面目なキャラクターなのだと伝わるイベントが多く、真っ直ぐになりすぎたあまりにエスティニアンにからかわれたりもするようになったが、ここからアルフィノのキャラクターが非常にしっかりし始めて、各NPCの紡ぐ言葉ひとつひとつがとても尊いものに思えたものだ。
「新生」時代には見ることができなかった一人のNPCキャラにスポットを当てた物語は実に素晴らしく、「蒼天」のストーリーで重要な役割を果たすこととなった。
しかし、「蒼天」がただのアルフィノの成長物語なわけではない。「蒼天」のもうひとりの主人公は、もちろん我々光の戦士だ。
この光の戦士を取り巻く環境は、様々な登場人物の思惑もあって、本当に刻一刻と変わってゆく。
なぜ1000年もの長い間、竜と人間の戦争が続いているのかというその真実を追いつつ、真実を知った後、光の戦士たちは竜と人間の争いを止めることになる。
このあたりの話は非常に王道だったのだと思うのだが、それでも「ええっ」と驚くような展開がたくさんあり、そしてその真相に迫っていく中で、プレーヤーは何度も涙を流すような場面に遭遇することとなる。
その多くは非常に重要なネタバレになるためあえて触れないでおくが、イシュガルドの平和のために散った犠牲者たちのことを思うと、10年経った今でもぐっと涙を堪えるほどだ。
特に心が動かされたシーンでネタバレにならない程度の話を挙げるのならば、ニーズヘッグ征竜戦だろうか。特にニーズヘッグ戦の前半では「蒼天」のテーマ曲である「Dragonsong」が流れ、これがまた一層涙を誘う戦いとなっていた。
「蒼天」のクライマックスにふさわしい盛り上がりのあるバトルとなっており、とにかく竜と人とを悲しみの螺旋へと陥らせるこの戦いに終止符を打つのだ、という気持ちを高めさせられたものだ。
フライングマウントの実装と、より一層美しくなったフィールドたち
「蒼天」からはフライングマウントが解禁され、マップに点在する風脈を解放することで空を飛べるようになった。
今でこそ「新生」エリアもフライングマウントで飛べるようになっているが、このころは「蒼天」エリアしかフライングマウントに対応していなかった。しかし、空を飛べるようになったことには本当に感動したものだ。
なお、高難易度コンテンツでフライングマウントが稀にドロップするということもあって、いわゆる「極」コンテンツでのフライングマウント争奪戦も激しかったものだ。
今でこそトークン99個で必ずフライングマウントをとれるようになったが、この頃はまだフライングマウントを交換で手に入れることはできず、筆者が「極ラーヴァナ討滅戦」のフライングマウントを手に入れるまでに、トークンは350個を超えていた。
そして「新生」エリアも美しいフィールドが多かったが、「蒼天」エリアはより一層美しい世界が待っていた。
特に「蒼天」の物語に入ってから比較的すぐに訪れることになる「アバラシア雲海」は、陰鬱な雰囲気の皇都イシュガルドと打って変わって空と緑が美しいエリアで、筆者はここでどれだけの時間を過ごしたかわからない。10年経った今でも、何かあるたびに訪れてスクリーンショットを撮影するお気に入りのエリアのひとつだ。
他にも、アバラシア雲海とはまた違った雰囲気の雲海である「ドラヴァニア雲海」や、「FF」ファンならおなじみの「三闘神」が祭られている魔大陸「アジス・ラー」、「機工城アレキサンダー」が見える「低地ドラヴァニア」など、次々と襲い来る素晴らしい景色の数々には圧倒されっぱなしだった。
こういったスクリーンショットの数々は、ほぼ全て約10年前の当時にPS4で撮影したもので、今改めて見返すと、まだまだスクリーンショットが下手くそだったなぁ、と自分の技術のなさをしみじみと感じ入ったりもするものの、こうしてスクリーンショットで当時を振り返ることができるのも、MMORPGの良い点である。
BGMも素晴らしかった「蒼天」、「機工城アレキサンダー」は今でもライブの人気楽曲
「FFXIV」の音楽のメインコンポーザーは、「新生」から引き続き、祖堅正慶氏が担当している(メインテーマの「Dragonsong」は植松伸夫氏作曲)。
本作はあちこちに「憎悪」が散りばめられた作品だが、BGMが常に重々しいのかと思えばそんなことはなく、さわやかな曲から悲しい曲、荘厳な楽曲まで、実に様々な音楽が本作を彩っている。
その中でも特に異質だったのは、8人レイドの「機工城アレキサンダー」だっただろう。なんと、「機工城アレキサンダー」の曲はスチームパンクなロックとなっており、最初に内部に突入した時には度肝を抜かれたものだ。
特に「ローカス ~機工城アレキサンダー:起動編~」、「メタル:ブルートジャスティスモード ~機工城アレキサンダー:律動編~」、「ライズ ~機工城アレキサンダー:天動編~」などは、10年経った今でも、祖堅氏率いる「FF14」公式バンド「THE PRIMALS」のライブでも演奏されている人気楽曲となっている。
「ライズ ~機工城アレキサンダー:天動編~」は、アレキサンダー・プライムの時間停止攻撃と楽曲のシンクロ。時間停止中は時報のような音が鳴り、時間が動き出すと共に再び元の早い曲へ戻るのだが、ライブ演奏にもこの時間停止が取り入れられており、時間停止になるとファンもピタリと動きを止めるという光景を見ることができる。
ちなみに「THE PRIMALS」は7月から全国ツアーを開始する。チケットは軒並みSOLD OUTだが、公式リセールがあるので、興味がある人は公式リセールでのワンチャンに賭けてみてほしい(ちなみに筆者は外れて、リセール絶賛申込中である)。
□「THE PRIMALS Dark Decades Tour」のページ
以上、駆け足で振り返る「蒼天」を振り返ってみた。「蒼天」を始めた頃は、いろいろな意味で憂鬱だった。イシュガルド自体も閉塞感の強い街で、光の戦士は逃亡中の身。物語も喪失感が強く、前にも書いた通り、何度も泣いた。しかしそれは全て、「蒼天」で多くのNPCの内面を深く描いてくれたことによる没入感からだったとも言える。
このあとハイデリン編は、「紅蓮のリベレーター」、「漆黒のヴィランズ」、「暁月のフィナーレ」へと続き、「蒼天」はその道の中の一本ではあるのだが、「蒼天」はこの一本だけでプレイする価値があると思える作品に仕上がっている。
「蒼天」10周年のお祝いはもちろんのこと、これからプレイを考えている人たちへの灯火にもなれば、幸いだ。
(C) SQUARE ENIX