【特別企画】
「クロノ・トリガー」本日で30周年! 鳥山明氏、坂口博信氏、堀井雄二氏を始めとした豪華スタッフによる夢の大プロジェクトRPG
2025年3月11日 00:00
- 【クロノ・トリガー】
- 1995年3月11日 発売
スクウェア(現スクウェア・エニックス)より1995年3月11日に発売されたスーパーファミコン用RPG「クロノ・トリガー」が、本日2025年3月11日で発売30周年を迎えた。
本作は、エグゼクティブプロデューサーに「ファイナルファンタジー」シリーズの生みの親である坂口博信氏、ストーリー原案・シナリオ監修に「ドラゴンクエスト」シリーズの生みの親である堀井雄二氏、そしてキャラクターデザインに「ドラゴンクエスト」シリーズや漫画「ドラゴンボール」などで有名な鳥山明氏と、超ビッグネームが名を連ねる作品。当時は各所で大々的に取り上げられた。
他にも、ディレクターに北瀬佳範氏、時田貴司氏、松井聡彦氏、ストーリープランに加藤正人氏、音楽に光田康典氏、植松伸夫氏、フィールドグラフィックに「FF」シリーズのキャラクターデザインなどで有名な野村哲也氏や直良有祐氏なども参加している。
完成度の高さから、今でも高い支持を得ている本作。本稿では、そんなドリームプロジェクトの思い出を振り返ろう。
「時の引き金」を引いてしまった者達の物語
ガルディア王国歴1000年。主人公の少年クロノは、ガルディア王国の千年祭の会場で知り合ったマールと、幼馴染みで発明家のルッカらと3人で、ルッカが発明した転送装置の事故によって出現した歪みに飲み込まれてしまう。
たどり着いた先は、クロノ達が生まれるよりもはるか昔の、中世のガルディア王国であった。そこでクロノたちは、時空を巡る様々な物語へと巻き込まれていく。
本作はタイムトラベルを扱ったタイトルとなっており、クロノは現代と過去、未来を渡りながら、時間を越えて冒険をする。冒険の舞台となる時代は、原始、古代、中世、現代、未来と主にこの5つだ。それぞれで異なるマップになっており、特色もまるで違ったものとなっているので、ガルディア王国という同じ場所を舞台にしつつも、飽きることはまったくない作りになっている。
シナリオはいわゆる「一本道」なのだが、終盤では自由度が広がり、マルチエンディング形式に。また、終盤で発生するサブイベントの数々はタイムトラベルを主軸においた本作らしい内容だ。
タイムトラベルという禁断の術を手に入れてしまった少年たちが、行く先々の時代で色んな仲間との出会いを経て、やがては星の運命を揺るがす危機に立ち向かう、という王道のストーリーではあり、様々な作品に溢れた昨今ならばエンディングへのオチも見えてしまうのだが、当時はこれほどまでに作り込まれたシナリオの作品はなかなかなかった。タイムトラベルによって引き起こされるパラドクスで、物語の序盤からプレーヤーをぐいぐいと引き込んでいくシナリオはもちろんのこと、仲間になるキャラクターたちの描写が深いのも、素晴らしい。シナリオに欠点らしい欠点が一切ないため、完成度は未だに群を抜いて高い作品の一つと言える。
シナリオ以外の面で見れば、全く否定的な意見がないわけではないのだが、「好み」の範疇で片づけられるものが多い。
例えば本作は全体的にバトルの難易度が低かった。それはRPG初心者でも楽しみやすいゲームになっている、とも言えるし、RPG熟練者にはちょっと物足りない、とも言える。しかし、難易度が低いとはいえ、倒す順番などを考えないとならないような敵もいたり、バトルに工夫が全くないわけではない。様々なプレーヤーが楽しみやすいバトルに仕上がっていたように思う。
また、本作には隠し要素が非常に多く、攻略を見ずに全てを回収するのは難しいところもあった。当時はネットなどがなかった時代だったこともあり、攻略本で存在だけが明かされているものの、入手方法がまったくわからない武器などもあったが、今ならば「攻略を見てしまえばどうにかなる」というのもある。
本作のエンディングは全14種類あり、クリアするタイミングやイベントの状況次第で変化があるのだが、全てのエンディングを見るには「強くてニューゲーム」で何度もラスボスと戦わなければならず、少々苦痛ではあった。一番最初に見る事になるであろうエンディングでも充分満足できる内容のため、周回するかしないかはまさに本作への愛次第、といったところ。
ちなみに筆者は当時全エンディングを回り切ったのだが、やり切った感が圧倒的に強かったのを覚えている。一番好きなエンディングは、カエルにグランドリオンを渡した後、魔王城クリア前にラスボスを倒すと発生する「友との誓い」である。
「強くてニューゲーム」では物語が始まった途端にラスボスを倒すこともできるのだが、それで見られるエンディングの「ドリームプロジェクト」は、いわゆる開発室的なエンディングになっている。もちろん、鳥山明氏、坂口博信氏、堀井雄二氏らのコメントもあり、こちらは必見のエンディングのひとつだった。
続編である「クロノ・クロス」が好きな人や、いずれ「クロノ・クロス」もプレイしたいと思っている人ならば、古代、現代、未来にある全ての次元のゆがみを突破し、時の闇で夢喰いとのバトルに勝利することで見られる「夢の終わりしとき」をオススメしたい。
グラフィックはSFCのなかでもトップクラス
iOSやAndroid、Steamなどで配信されている本作だが、Steam版リリース時にグラフィックがさらにリファインされたこともあって、非常に美しいグラフィックになっている。
だが、本作は当時からスーパーファミコン(SFC)タイトルとしてはトップクラスのグラフィックだった。綺麗さだけではなく、アニメーションもとても丁寧に作られており、3頭身で描かれたキャラクターながらに笑ったり、驚いたり、さらにはバトルモーションではさらに微細な部分にまでこだわりを持って作られており、バトルエフェクトも豪華。
これはリファインされた後の画像ではあるが、当時SFCでこれだけ背景などが美しく描かれた作品もなかなかになかったと思っている。とはいえ、これは筆者がそもそもスクウェアのグラフィック激推し勢なためもあるので、「他にもあったよ!」という異論は受け入れたい。
加藤正人氏と光田康典氏の黄金タッグ
鳥山明氏、坂口博信氏、堀井雄二氏の3名に焦点が当たることが多い作品だが、筆者は実際にシナリオの全体を統括していた加藤正人氏と、そしてメインコンポーザーを務めた光田康典氏のふたりに焦点を当てたい。
シナリオライターの加藤正人氏と、コンポーザーの光田康典氏は、その後「ゼノギアス」や「クロノ・クロス」などの作品を手掛けることとなるクリエイター陣だ。
「クロノ・トリガー」、「ゼノギアス」、「クロノ・クロス」……この3つの作品を並べただけでも、加藤氏と光田氏の相性の良さというのは感じ取れるのではないだろうか。Android/iOS/Windows用シングルプレイ専用スマートフォンRPG「アナザーエデン 時空を超える猫」で加藤氏と光田氏が再びタッグを組んだ時は、手を叩いて喜んだものである。
加藤氏は、入り組んだ舞台の上で複雑に絡み合う人間模様を描くのに、非常に長けた脚本家だ。だからこそ、読んでいて頭を使う場面もある。
そんな加藤氏のシナリオをそっと彩るのが、光田氏の繊細な楽曲だ。繊細といっても、柔らかな耳馴染みのいい曲ばかりというわけではない。実際、本作のテーマ曲である「クロノ・トリガー」では力強いメロディも取り入れられ、それでいて伸びやかな音がゲームを彩る。
一方で、「風の憧憬」のような中世のフィールドでかかる曲では、ノスタルジックな曲調で使われている音も非常にシンプル。のどかな世界という言葉がぴったりで、光田氏といえば「風の憧憬」や「時の回廊」のような曲を思い浮かべる人も多いのではないだろうか。
この加藤氏と光田氏の親和性の高さは特に素晴らしいと、筆者は常々思っている。加藤氏の読み手の心を掴むシナリオ運び、その意図を完璧に汲み取って美しい音で奏でる光田氏、これが合わさることによって相乗効果で、より深い感動を得られるのである。
少々話がそれるが、「KiRite」というアルバムを知っているだろうか。加藤氏が物語を紡ぎ、光田氏が音楽を奏でる絵本付きのオリジナルCDで、加藤氏による物語を読みながら光田氏による音楽を聴く、という内容だ。キリテという少年とコトノハという少女の話なのだが、両者の描写があまりに素晴らしいので、加藤氏と光田氏のタッグが好き、という人にはぜひ聞いてほしいアルバムとなっている。ぜひこの機会に、この名作アルバムを紹介させてほしい。
きわめて完成度の高いRPGとしていまだに名前の挙がる「クロノ・トリガー」。 移植も、PS、ニンテンドーDS、携帯アプリ、スマートフォン、Steamとで移植されており、現在でもプレイすることが可能だ。
スマートフォン版は個人的には操作感が少々……という感じではあったので、今プレイするならばSteam版が最も適しているだろう。歴史に名を残す名作RPGを、30周年のこの機会にぜひまたプレイし直してみてもらえれば幸いだ。
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