【特別企画】
「クロノ・クロス」本日で25周年! 狂気すら覚える細かな伏線に感嘆の声を漏らした、パラレルワールドを主軸にしたRPG
2024年11月18日 00:00
- 【クロノ・クロス】
- 1999年11月18日 発売
スクウェア(現・スクウェア・エニックス)が1999年11月18日にプレイステーション(PS)用で発売したゲームソフト「クロノ・クロス」が、本日2024年11月14日で発売25周年を迎えた。
本作は、1995年3月11日にスーパーファミコンで発売されたRPG「クロノ・トリガー」の続編。1996年にスーパーファミコンのサテラビューで配信されたテキストベースのアドベンチャーゲーム「ラジカル・ドリーマーズ ー盗めない宝石ー」の中のマルチストーリーのひとつである「Kid 盗めない宝石編」をベースとしており、それに大幅な変更が加えられた作品となっている。
当時としては画期的な画像処理を行なうことで、PSのソフトの中でも抜群の演出を可能にした作品で、またマップの2D表現も非常に美しい作品だった。
さらに本作は、シナリオと音楽に「クロノ・トリガー」、「ゼノギアス」などの加藤正人氏と光田康典氏、キャラクターデザインにイラストレーターの結城信輝氏らが携わっており、「クロノ・トリガー」に劣らない豪華な開発メンバーがそろった。
本稿は、「クロノ」シリーズなら「トリガー」よりも「クロス」派という、世間ではちょっと変わっているかもしれない筆者の視線で、「クロノ・クロス」の思い出を振り返りたいと思う。
なお、本作のリマスター版となるプレイステーション 4/Xbox One/Nintendo Switch/Steam用「クロノ・クロス:ラジカル・ドリーマーズ エディション」が2022年4月に発売されており、まだまだ新たにプレイしてほしい作品でもある。本稿では物語はほぼネタバレなく紹介するので、安心してほしい。
「ホーム」と「アナザー」を渡る物語
「クロノ・クロス」の物語は、パラレルワールドを主軸にしている。
本作は、「クロノ・トリガー」の「現代」から20年後のA.D.1020年、前作の舞台となったゼナン大陸の辺境にあるエルニド諸島から始まる。
主人公のセルジュは、エルニド諸島の辺境、漁村アルニ村で生まれ育った。ある日、幼馴染のレナにコドモ大トカゲの鱗を取ってほしいと頼まれたセルジュ。しかしコドモ大トカゲの鱗を集めて待ち合わせ場所に行くと、セルジュは不思議な光に包まれる。
そして気が付いた時、セルジュのそばにいたはずのレナの姿が消えていた。
「レナなら村で子守をしている」と聞いて、セルジュがアルニ村へ戻ると、優しかった村の人はみんなセルジュに冷たくなっており、レナもセルジュのことを知らないかのように振る舞う。
しかもレナはセルジュを見て「10年前におぼれ死んだ友達に似ている」と口にする。
自分がセルジュだと名乗ると、「冗談はやめて」と怒るレナ。どうやら本当にセルジュのことを知らないようだ。
しかしレナは、これも何かの縁だと思ったのか、「よかったらお墓をお参りしてあげてほしい」と告げる。セルジュのお墓だというところに訪れると、セルジュを探していたらしい謎の3人組、カーシュ、シュガール、ソルトンに声を掛けられる。
3人組に連れ去られそうになるセルジュだったが、そこを助けに入ったのはキッドという、かつてセルジュが夢の中で一緒に行動していた謎の少女だった。
キッドの助けで3人組を撃退したセルジュたち。
そして、ここから本作の40名を超える仲間たちがいよいよ大きく分岐しだしていく。ここでいかにもキッドと共に行動しそうなものだし、キッドも当然のようにそのつもりでいるが、なんとセルジュの返答次第ではキッドをここで仲間にせず、レナとポシュルを仲間にできるのである。
いざテルミナへと向かう、セルジュ一行。テルミナで、セルジュはカーシュが「アカシア龍騎士団」の一員で、アカシア龍騎士団は蛇骨大佐が率いているという情報を得る(ちなみにキッドを仲間にしなかった場合、テルミナで再び仲間にする機会が訪れる。さらに無視することもできるのだが……)。なぜ蛇骨大佐が自分を狙うのかを知るため、セルジュらは蛇骨館へと潜入するのだった。
蛇骨館でセルジュらは時の預言者と名乗る謎の老人に出会う。そして預言者はで「ここはセルジュが住んでいた世界ではない」と語り、10年前、セルジュが海で溺れた時「セルジュが助かった世界」と「セルジュが死んだ世界」のふたつの世界が生まれてしまったのだという。セルジュのことを「巨大なパズルの失われたピース」だという預言者。それゆえに次元の壁をこえてあいた空白が、セルジュを吸い寄せたのではないか、と予言者は語った。さらにふたつの世界はなんらかの形でつながっているという情報を得た、セルジュ。
預言者から蛇骨大佐へとつながる道を示され、再び蛇骨館へと進んで行く一行。その奥で一行はヤマネコと名乗る半獣の人物と出会う。キッドはヤマネコと対峙すると、「凍てついた炎」とおまえの命を受け取りにきたと言う。
ヤマネコと戦闘になるセルジュら。ヤマネコに勝利すると、ヤマネコは「人の世はまもなく終わりを迎える。その時セルジュが世界の敵になり、世界はセルジュの敵となる」と語る。
ここからいよいよ、セルジュの謎を巡る物語と、ホームワールド、アナザーワールド、というふたつの世界を行き来する旅が始まるのだ。
――そして本作の物語はここから、非常に複雑になっていく。ホームとアナザー、それぞれの時間軸で起こる出来事をきちんと理解しないと、ストーリーはちんぷんかんぷんかもしれない。
「クロノ・トリガー」や「ゼノギアス」も複雑に絡み合う物語となっていたが、本作はそこからさらに一歩踏み込んだ、シナリオの加藤氏のアイディアがぎっしりと詰まった作品となっているのだ。よって、加藤氏のシナリオをこれまで遊んできたことがあるプレーヤーならば、ぞくぞくするような展開が次から次へと待ち受けている。これが、筆者が「トリガー」よりも「クロス」派であるひとつの一因である。
また、本作の発売時のキャッチコピーである「殺された未来が、復讐に来る。」という言葉も、なんとも背筋がぞわっとする。ここまでで本稿内に大量のスクリーンショットを掲載してきたが、本作の世界観はどちらかというとハートフルに感じたプレーヤーも多いのではないだろうか。だが、「殺された未来が、復讐に来る。」のだ。なんとも世界観とキャッチコピーが噛み合っていないようにも感じるのだが、この「ズレ」感が筆者としてはたまらなく好みなのである。それは例えば大人気アニメの「魔法少女まどか☆マギカ」にも似たものだと言えば、伝わるだろうか(なお言うまでもないが、「クロノ・クロス」は1999年の作品で、「魔法少女まどか☆マギカ」は2011年の作品なので、「クロノ・クロス」のほうが遥かに昔に産み出された作品である)。
なお、ここまでのあらすじではあまり「クロノ・トリガー」との関連性を感じなかったかもしれないが、後半になるにつれて、本作が「クロノ・トリガー」の続編であることをひしひしと感じられるようになっている。いったいこの世界が「クロノ・トリガー」とどうつながるのか、それはぜひ自身の目で確認してほしいところだ。
ちなみにそもそも本作は「クロノ・トリガー」を前提に作られているということもあり、後半になるほど「クロノ・トリガー」で語られたワードが増えていき、「クロノ・トリガー」をプレイしていないと元々複雑な物語がさらに複雑になるという現象も発生してしまうのだが、「トリガー」で起こった出来事と、それと「クロス」する本作、全ての伏線が明らかになった時には、思わず叫びたくなってしまうはずだ。
44名もの仲間が物語を彩る
あらすじでも少々触れたが、本作ではなんと44名ものキャラクターが仲間になる。基本的に1周で全員をそろえることはできず、全員を仲間にするには最低3周する必要があるうえに、ちょっと一捻りあるような条件が多いため、まったく知らずにプレイしていると3周で全員そろうかもあやしい、といったところだ。
前述の通り、最初にキッドを仲間にできる機会でキッドを仲間にしてしまうと、以降レナを仲間にする機会は失われてしまう。
また、テルミナではスラッシュを仲間にするとピエールとアルフが仲間に加わらなくなったり、ピエール或いはアルフを入れるとスラッシュが仲間にならなくなるという三択が発生したり、序盤の某山場イベントでどういう選択をするかによって仲間になるキャラクターが変わってきたりする。
ストーリーの進行上、必ずいずれどこかで仲間になりそうなキッドですら、最後まで仲間にせずに終わることもできるのだ。
もちろん、ストーリー進行上、必ず仲間になるキャラクターというのも用意されているので、何も知らずにプレイしたら仲間が足りな過ぎてどうしようもない、ということはない。その点はやさしくできていたと言えるだろう。
エレメントを駆使して戦うバトル
ではその44名もの仲間をどこで駆使するのかというと、やはりバトルになる。とはいえ、本作のバトルは最大で3名までしか出せないのだが、本作には前作と同様に固有の属性があり、属性は白・黒・青・赤・緑・黄の6色もある。別に同じ属性でパーティを組まなければならない必然性はないものの、同じ属性で組んでおくと有利にバトルを運べたり、特にボスなどの強敵相手では属性の相性を意識する必要がある。
この属性は敵も持っているため、自分のパーティを赤・赤・赤の3名でそろえて積極的に赤属性の攻撃をしようと、敵が白属性の攻撃を挟んでしまうと赤・赤・白、にフィールドエフェクトが変わってしまう。つまり、特定の属性でパーティを固めていても、そんな簡単にフィールドエフェクトを一色に染め上げることはできないのだ。
また、本作には「エレメント」という技や魔法を各キャラクターのエレメントグリッドに装備して使用するシステムになっている。そのため、何はともあれエレメントの数を揃える必要があった。
……と、記憶を思い出してほしいのと、初心者の方にもわかりやすく説明するために、めちゃくちゃ色んなことを省いたのだが、本作には他にも弱・中・強攻撃、それに伴う命中率、エレメントの配置、あれやこれやと考えることがあり、このバトルがとても奥深い。身も蓋もない言い方をすると、この時期のスクウェア作品にありがちだった「理解すれば面白いのだけど、理解するまでにとんでもなく時間を要する」作品のひとつだった。
「難解なストーリー、難解なバトル、それで本当に面白いの?」と首を傾げられてしまいそうだが、「ハマれば中毒性がある」というまさにその通りなゲームで、筆者はその魅力に憑りつかれてしまったひとりなのである。
光田氏による素晴らしい楽曲の数々
筆者が「トリガー」より「クロス」派なことの理由のもうひとつは、光田康典氏による民族音楽の結集もある。
特にオープニングのBGMである「CHRONO CROSS ~時の傷痕~」の評価は今でも非常に高く、前半のゆったりとしたリズムから後半の上がりだすテンポといい、この楽曲の裏で常に響く切なさの色といい、それがムービーとの相乗効果で織り成す効果といい、あまり余韻を残すことなくあえてパッとくる終わり方といい、とにかく「ドラマチック」という展開になっており、光田氏自ら「一番の会心作」と語る一曲だけはある仕上がりとなっている。
この曲を初めて聞いたのは恐らく発売前のPVだったように思うのだが、この曲とOPデモだけで心をぐっと掴まれてしまい、「あ、私はトリガーよりもクロスのほうが好きかもしれない」と感じた瞬間だった。
また、「夢の岸辺に アナザー・ワールド」も外せない一曲のひとつだろう。この楽曲は前出の「ラジカル・ドリーマーズ」のメインテーマのアレンジとなっているのだが、当時は「ラジカル・ドリーマーズ」をプレイできる環境にあった人が少なかったため、そうとは知らずに聞いていた人も多いはずだ。
最初にワールドマップのBGMとして聞くことになる「時の草原 ホーム・ワールド」は前作のテーマ曲「クロノ・トリガー」のアレンジとなっており、明るめな曲調で、アルニ村で最初に感じた本作へのイメージそのままを表しているのに対して、「夢の岸辺に」はひどく儚い、それでいて少しダークな曲調のBGMとなっており、「時の草原」とは対極的な曲になっている。まさに「夢」というような神秘さを感じさせる一曲だ。
他にも語りたい曲があるのだが、曲名だけでネタバレになってしまうようなものも含んでおり、もどかしい。隠れた名曲といえばタイトル画面を放置したままにしておくと流れるプレイデモ画面のBGM「時のみる夢」は前述の「夢の岸辺に」と前作のテーマ曲「クロノ・トリガー」を融合させたアレンジが秀逸な一曲。「夢の岸辺に」が儚さを前面に出した曲ならば、こちらは疾走感を前面に出したアレンジとなっており、光田氏の名曲である「ゼノギアス」の「飛翔」が好きな人ならば絶対に気に入る名曲だろう。
本作の楽曲は現在でも非常に愛され、2019年に「クロノ・クロス」20周年記念として光田氏が開催した「クロノ・クロス」ライブツアーは、東京、大阪、名古屋、台湾公演の全てがあっという間にソールドアウト。追加公演(東京・中野)が決定したほどだった。
この公演はBlu-rayとしても販売されているので、ぜひ見てみてほしいライブの一本だ。特にアンコールで演奏された「マブーレ」で見せたライブメンバー全員の楽しそうな姿は、何度円盤を見返しても心がほっこりする。ちなみにこのライブツアーには光田氏自らも演者として参加しており、光田氏の様々な姿を見てみたい人にもぴったりである。(光田氏は何年経っても外見にほぼ変化が見られない、ゲーム業界の「王子」のひとりだと思っている筆者である)
まだプレイしたことがない人は、ぜひ、この25周年の機会に「クロノ・クロス:ラジカル・ドリーマーズ エディション」をプレイしてみてほしい。エンカウントOFFやゲームスピード変更、オートバトル、バトル強化など様々な便利機能も追加されている。
筆者は2年前「クロノ・クロス:ラジカル・ドリーマーズ エディション」が発売された時に改めてプレイし直したが、今プレイしても色あせない輝きを持った作品だと信じている。あくまで「クロノ・トリガー」の続編である部分は忘れないでいただきたいところで、できれば「クロノ・トリガー」をプレイしてから「クロノ・クロス」をプレイしてほしいという順番はあるものの、本作が持つある種の狂気にも似た細かな作り込みには、きっと感嘆するはずだ。
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