【特別企画】

「CHAOS;CHILD」10周年! Xbox Oneにて発売されたCERO「Z」の狂気に満ちたサスペンスアドベンチャー

【CHAOS;CHILD】

2014年12月18日 発売

画像は「CHAOS;CHILD」Steamページより

 MAGES.(旧:5pb.)より2014年12月18日に発売されたXbox One用ソフト「CHAOS;CHILD」(カオスチャイルド)が、本日2024年12月13日で発売10周年を迎えた。

 本作は、「CHAOS;HEAD」(カオスヘッド)や、「STEINS;GATE」(シュタインズゲート)、「ROBOTICS;NOTES」(ロボティクスノーツ)などで知られる「科学アドベンチャーシリーズ」の第4弾にあたり、同シリーズ第1作の「CHAOS;HEAD NOAH」の設定を引き継いでいる。よって、舞台となるのは「CHAOS;HEAD NOAH」と同じ渋谷の街だが、前作から6年が経過した2015年の出来事となっており、前作終盤で発生した大地震からは大分復興を遂げている。

 本作は、主人公やプレーヤーの思考を裏切っていくことによって、恐怖が襲い来る作品になっている。また、前作の「どのような妄想をするか」によって物語が分岐する「妄想トリガー」を引き続き採用している。

 あまりに過激な残虐描写が多いことから、レーティングは「CHAOS;HEAD NOAH」に引き続き「Z」となった本作。本稿では、そんな「CHAOS;CHILD」の魅力を振り返りたい。

 なお、本作はとにかく「ネタバレ厳禁」な作品となっている。本稿は本作が持つ謎の本質には一切触れないが、もしも今現在進行形で本作をプレイしている人がいたら、この記事を含め、「CHAOS;CHILD」を含んだ全ての情報を断つことを、強くおススメする。

 また、「CERO Z」となった所以の残虐的な場面のスクリーンショットも多数含むので、耐性がない人は注意してほしい。

【Xbox One用ゲーム『CHAOS;CHILD』オープニングムービー】

次々と襲い来る凄惨な事件たち

 まずは本作のストーリーを振り返る。

ストーリー

 舞台は、2015年10月の渋谷。6年前に起きた大災害、渋谷地震から復興された街に新設された私立高校「碧朋学園」に通う宮代拓留は、自身が設立した新聞部の活動の一環として「ニュージェネレーションの狂気の再来」と称される連続殺人事件を追っていた。

 ネット放送中に視聴者の前で謎の死を遂げる者。
 ストリートライブ中に歌いながら死ぬ者。
 ラブホテルの天井から吊られ回っている死体。
 胃の中におびただしい数のシールが詰め込まれて死亡した者。
 自宅のテーブルの上で、串刺し状態で焼死していた者。

 事件の発生日は6年前の渋谷を騒がせた事件の日付と一致していた。

 鍵となるのは、事件現場に残されている、不気味な力士を模したような、通称「力士シール」。

 秘密結社「300人委員会」の暗躍や、「ギガロマニアックス」と呼ばれる自身の妄想を現実化する事ができる者の存在によって、妄想の扉が再び解き放たれる。

 用語や設定の多くは前作の「CHAOS;HEAD」と同じものが使用されていることが多く、「CHAOS;HEAD」を遊んでいるほうが本作をより理解しやすくなるのは間違いないのだが、いきなり本作から入っても充分プレイできる内容になっており、基本的に過去作の主人公らも登場しないので、ここからでも安心してプレイしてほしい内容となっている。

 さて、ここからは本作で起こる残虐な事件を5つ振り返っていこう。

第1の事件:「こっちみんな」

 ニュージェネレーションの狂気の再来、第1の事件。

 ニコニヤ動画で「未来が見える」として話題になっていた、生主の大谷悠馬。2015年9月7日、自宅で生放送中にカメラの前から一度姿を消し、ドアをノックする音が聞こえた後、カメラの前に戻ってきた大谷からは、右前腕がなくなっていた。

 なくなった腕は細かく切断されて皿の上に載っており、大谷は切断された腕を自分で食べ、その直後、血涙を流しながら机に突っ伏し、カメラを見つめたまま死亡した。

 死亡した様子が「こっちみんな」のアスキーアートに似ていたことから、その名前が付いた。

画像は「CHAOS;CHILD」公式サイトより

第2の事件:「音漏れたん」

 ニュージェネレーションの狂気の再来、第2の事件。

 ニコニヤ動画の歌ってみたの歌い手でアニソンコピーバンドのボーカル・高柳桃寧は、不思議な魅力を持った歌声でファンを増やしていた。

 高柳が趣味のストリートライブ中に、歌いながら失血死。

 なお高柳は実際には歌っておらず、カッターで自らの腹を割きスピーカーを埋め込んで自分の歌声を流していたため、「音漏れたん」の名前が付いた。

画像は「CHAOS;CHILD」公式サイトより

第3の事件:「回転DEAD」

 ニュージェネレーションの狂気の再来、第3の事件。

 ラブホテル「妖精のダンス」の回転ベッドの上で、柿田広宣が天井から釣り下ったロープに首を締め付けられて死亡するという事件。現場には血を流した警官と有村雛絵が倒れていた。

 ベッドの回転によって巻き付いたロープが締め付けられていたため、「回転DEAD」の名前が付いた

画像は「CHAOS;CHILD」公式サイトより

第4の事件:「ごっつぁんデス」

 ニュージェネレーションの狂気の再来、第4の事件。

 ニコニヤニュースの記者でニコニヤ動画を視聴する世代を中心に人気を集めていた渡部友昭が、碧朋学園の学園祭において、突然血や胃液とともに大量の力士シールを嘔吐して死亡した。被害者の胃の中には、おびただしい数の力士シールが詰め込まれていた。

 その状況からネット上では、「ごっつぁんデス」の名前が付いた

画像は「CHAOS;CHILD」公式サイトより

第5の事件:「上手に焼けました」

 ニュージェネレーションの狂気の再来、第5の事件。

 全裸の女性が自宅のテーブルの上で、頭から串焼きの串のような鉄筋が突き出た状態で焼死していた。遺体は激しく焼失しており、身元確認は困難な状態となっていた。部屋には犯人の存在を示す物的証拠は残っておらず、ガソリンや灯油を使った形跡も無く、鑑識の人間もどうやって燃えたのか判別できない程だった。

 その状況からネット上では、「上手に焼けました」の名前が付いた。

画像は「CHAOS;CHILD」公式サイトより

 いずれも凄惨な事件ばかりとなっており、残虐表現には大変耐性のある筆者ですらも、当時はプレイしながら背筋がぞわぞわしたものだ。

 特に第1の事件「こっちみんな」の、チーズだと思って自分の腕をカットしていくというシーンは、改めてそうと知って見直すとそれはもう恐ろしい。

 プレーヤーを「CHAOS;CHILD」の世界に引き込むためとはいえ、冒頭からこんな恐ろしい事件を用意してくるだなんて、どうかしている……と思いつつ、この狂った世界にいきなり心を鷲掴みにされてしまったのも、事実である。

 主人公の宮代拓留がこの猟奇事件に魅了されて追うことにしたのも、そして拓留がこの事件を追ううちに精神を蝕んでいくのも、プレーヤーの心理状態と非常に一致している。そしてプレーヤーは、拓留と共に最終的には誰も信じられなくなっていくのだ。

事件を丁寧に描いていく大ボリュームのシナリオ

 本作のシナリオは、非常に濃く、大ボリュームとなっている。単純なシナリオの総量で言えば、「STEINS;GATE」すらも大きく上回っているほどだ。

 しかもシナリオはとても読みやすく作られており、それだけの大ボリュームながら、中だるみらしい部分がまるでなかった。「科学アドベンチャー」シリーズも4作目ということもあってか、シナリオの質は目を見張るものがあり、物語を進めていくのが一切苦にならない(精神的に蝕まれる意味では、苦痛はあるのだが)。

 とにかく伏線の回収も見事で、予想の遥か上を行く展開を見せてくる。筆者は幼い頃からミステリ小説が好きなこともあって、「こうきたらこう来るんでしょ、わかるんだから」とふふんを鼻を鳴らした場面もあったのだが、その大半でそれを裏切られる展開が待ち受けていた。

 ひとことで言うなら「何、このすごいシナリオ」という言葉がぴったりで、グロに耐性のある人限定にはなってしまう内容でがあるが、「全人類に遊んでほしい作品」のひとつというほど、本作のできは素晴らしい。

 特にシナリオの真価を感じるのは2周目以降で、謎が明かされてから読むことによって「なるほど……」と唸ってしまう言い回しが実にたくさんある。だが、初回はあえて余計な先入観を持たずに、素直に目の前で起こる出来事を自分なりに推理していくのが良いだろう。

 なお、各ヒロインのルートがあったり、ささきむつみ氏の可愛らしい絵柄から本作を「ギャルゲー」と思っている人もいるかもしれないが、本作はギャルゲーとは程遠い。

 だが、「CHAOS;HEAD」から引き継がれた「妄想トリガー」システムによって、ムフフな展開が待っていることもある。「妄想トリガー」は、特定の場面で、主人公が次の展開を妄想するシステムで、ポジティブな妄想をするか、ネガティブな妄想をするかを選択し、その選択によって妄想の内容が変化するのだ。

 この妄想トリガーの選択は個別ルート分岐にも影響していくので、そういったシステムはギャルゲーに近いのは間違いない。

画像は「CHAOS;CHILD」Steamページより
画像は「CHAOS;CHILD」公式サイトより

 終盤になって「なんだってー!?」という怒涛の展開が待ち受けているのはもちろんのこと、本作では「マッピングトリガー」という渋谷の地図に写真やメモを貼って事件を推理する新システムによって、事件を丁寧に整理していくので、謎をばらまくだけばらまいて訳がわからなさすぎて苦痛、というようなこともないのだ。

 また、本作はかなりシリアスな文面に寄っており、これまでの「科学アドベンチャー」シリーズではちょっと寒いくらいのネットスラングが多用されていたが、本作ではほぼそういった用語が出てこない。これまで多用されるネットスラングの雰囲気がどうにも合わなかったという人でも、楽しめる内容になっていることを強調したい。

画像は「CHAOS;CHILD」公式サイトより

 ゲーマーの間ではしばしば「記憶をなくして遊びたいゲーム」なんていう無茶な話が語られるが、「CHAOS;CHILD」はまさに記憶をなくしてもういちど遊びたい1本に加えられる。もしこの記事を見て、薄ぼんやりと思い出したけれど詳細は覚えていないという人がいたら、その人はむしろラッキーである。その薄ぼんやりさのまま、本作を再びプレイし直して、再びあの衝撃を食らうことができるのだから。

 本作はXbox One以外にも、PS4/PS3/PlayStation Vita/Nintendo Switch/Android/iOS/Steamなど、実に多様な環境でプレイできるので、ぜひ10周年を機に改めてプレイしなおしてほしい。そしてまだプレイしたことのない人は、触ってみてほしい。