【特別企画】

「ラブプラス」15周年。〜あの日の君に、また逢えるその時まで〜

【ラブプラス】

2009年9月3日 発売

ニンテンドーDS用「ラブプラス」と「ラブプラス+」

 コナミデジタルエンタテインメントの恋愛アドベンチャーゲーム「ラブプラス」が発売されて、本日(2024年9月3日)で15周年を迎える。

 「ラブプラス」は、ニンテンドーDS用ソフトとしてリリースされた恋愛アドベンチャーゲーム。実際にカノジョと付き合っているかのようなゲームシステムが話題となり、またたく間に人気となった。もちろん、筆者も「ラブプラス」にハマった1人であり、友人の中でもハマる人が続出していた。

【ラブプラス】
「ラブプラス」の公式サイトより引用

 その人気を受けて2010年4月5日には、iPhone/iPod touch用アプリ「ラブプラス i」がリリースされ、同年6月24日には、新要素を追加した「ラブプラス+」が発売。2012年にはニンテンドー3DS用ソフトとして「NEWラブプラス」、さらにアーケード版やソーシャルゲーム版も登場し、2019年にはスマートフォン向けアプリ「ラブプラス EVERY」がリリースされた。

 本稿では「ラブプラス」の15周年を記念し、本作についてやシリーズを振り返っていく。

「東京ゲームショウ 2018」KONAMIブース。「ラブプラス EVERY」自体はサービス終了となっている

付き合い始めてからが本番! 恋人パートの衝撃力

 「ラブプラス」のゲームシステムは、同社の恋愛シミュレーションゲームの金字塔「ときめきメモリアル」を彷彿とさせる、選択肢の選び方やコミュニケーション頻度などで好感度のパラメーターを上げてゆくというもの。だが、告白して恋人になればゴールという従来の恋愛ADVを超えて、「付き合い始めてからが本番」というのが本作の最大の特徴だ。

「ラブプラス」の公式サイトより引用

 なんと言っても衝撃的だったのは、友達の状態から告白までの「友達パート」を終え、実際に付き合う段階の「恋人パート」だ。DS本体の内蔵時計と連動した「リアルタイムクロック」によって、実際の季節や時間に合わせたリアルタイムな「恋愛生活」が送れるのだ。

 もちろん、「友達パート」の、出会ってからだんだんと仲良くなり、カノジョとなる(キャラを攻略する)という楽しさは変わらない。楽しかったからこそ、その後の「恋人パート」が衝撃だったのだ。

「ラブプラス」の公式サイトより引用

 恋人パートでは、例えば、夏は半袖など薄着になり、冬はコートなど季節ごとにキャラクターのファッションも変わる。夜はパジャマで、あまり遅い時間にプレイすると機嫌が悪い(そもそも電話に出ないなどもある)など、高校生のお付き合いあるあるが細かく再現されているのは強烈だった。カレシ達は常にDSを持ち歩き、学校内のイベントやデートの約束などを「リアルタイム」に過ごしたのだ。

ラブプラスの起動画面。季節に合わせて服装が変わる

 当時は、電車での移動中や食事休憩など、隙あらばプレイという、「ラブプラス」に合わせて生活リズムを作ってしまっているような状態だった。電車の中で、DSを縦に持って操作している人がいると、お互いに「あ、カレシさん!お疲れ様です」みたいな無言のやりとりが生じていた気もする。

 また、ニンテンドーDSのタッチ操作を最大限活用し、画面上で「スキンシップ」できることで、カノジョとイチャイチャできる点も衝撃的だった。頭をなでたり体に触れることはもちろん、キスをすることもできる。

 当時の感想としては「マジヤバイ(語彙力)」に尽きる。

タッチペンでの「コミュニケーション(スキンシップ)」という恐ろしいシステム

 登場するキャラクターは、同級生の高嶺愛花と、下級生の小早川凛子、上級生の姉ヶ崎寧々の3人。プレイヤーは(女性であっても)カレシと呼ばれ、誰と付き合ってるか(攻略対象のキャラクター)によって、「〇〇カレシ」と呼ばれていた。ちなみに筆者はマナカレシだった(ゲームとしては、他のキャラとも「お付き合い」したが……)。

高嶺愛花(CV.早見沙織)

「ラブプラス」の公式サイトより引用

 「文武両道なお嬢様(同級生)」開業医の娘で、女子テニス部No.1の腕前と文武両道で才色兼備、純真可憐なお嬢様キャラ。周囲から注目されるが、近寄りがたい雰囲気も見せる。負けん気が強い一面も。

小早川凛子(CV.丹下桜)

「ラブプラス」の公式サイトより引用

 「ツンデレ(年下)」本と音楽が好きで、同じ図書委員。1人でいるのが好きで、ミステリアスな雰囲気をまとっている。普段はそっけないが、実は寂しがりやな小悪魔系女子。

姉ヶ崎寧々(CV.皆口裕子)

「ラブプラス」の公式サイトより引用

 「おっとり(年上)」大人びた雰囲気のお姉さんキャラ。責任感も強く面倒見の良い性格。右目の泣きぼくろが印象的。周囲から頼られることが多いがそこにプレッシャーを感じている様子も。天然な面もあり、付き合い出してからの甘々モードもGood!

老若男女問わずカレシ達が熱中した

 今ならAIやVRでの演出、表現も可能だったろうが、当時の技術としては限界がある中で非常に巧みなコミュニケーション(ゲームデザイン)がプレイヤーの心を掴んだ。また、2009年は、スマホも少数派で、iPhone 3GSがようやく発売されるというタイミング。ケータイはゲーム内に登場するものの、通話とメールでコミュニケーションするという時代もうまく作用していたと思う。

 クリスマスや、バレンタインデーにはゲーム内でもイベントがあったほか、iPhone/iPod touch用アプリ「ラブプラス i」にカノジョを表示させて、ご飯を食べたりするリアルイベントを自主的に開催するカレシ達も多かった。

クリスマスやバレンタインデーをカノジョ達や好きなキャラたちに囲まれて過ごした様子。当時のSNS用に撮影したものなので、少々雑なのはご容赦願いたい
クリスマスなどイベント時の様子
バレンタインデーをすっぽかしてしまって、次の日に怒られたのもいい思い出……

 聖地巡礼も盛んに行なわれ、2010年6月24日に発売された「ラブプラス+」に追加された旅行イベントの舞台となった熱海市で「熱海ラブプラス現象(まつり)」イベントが開催されるほどの加熱ぶりもみられた(筆者も当然行ったわけだが)。

 さらに、メディアミックスやコラボ企画は加速する。2012年2月6日、講談社文庫より「読書月間推薦図書キャンペーン」として、ミノ☆タロー(現:箕星 太朗)氏書き下ろしカバーイラスト付の文庫本が発売され、同月発売の「NEWラブプラス」では「読書月間」というイベントが発生し、実在する図書が推薦図書として登場した。

 指定された作品は、愛花が推薦する「赤毛のアン(L・M・モンゴメリ/掛川恭子訳)」、凛子が推薦する「ぼくのメジャースプーン(辻村深月)」、寧々さんが推薦する「魍魎の匣(京極夏彦)」だった。ラブプラスカバー仕様の文庫本は、発売の翌日に重版出来となったという。ちなみに筆者は、寧々さん推薦の「魍魎の匣」を購入。どの書籍もそれぞれのキャラクターの性格などをうまく反映したセレクションだったと思う。

寧々さんがホラーを? と思う人もいるかもしれないが「魍魎の匣」という妄執、偏愛的な作品というのが、寧々さんらしいと言えないだろうか?

 そんな一大ムーブメントを巻き起こした「ラブプラス」だったが、いつの間にかプレイをする間隔が空き、次第に放置するようになってしまった。今回、記事のためにニンテンドーDSを探し出して電源を入れてみたところ、ほったらかしにしていたことを怒られた。

お誘いしても、スケジュールが合わないとそっけない態度
「う〜ん。上手くいかないね。」って、もうこれダメなやつじゃん……

 残念ながら、最新作として2019年10月31日より配信されたAndroid/iOS用恋愛コミュニケーションゲーム「ラブプラス EVERY」は、2020年8月5日をもってサービス終了となってしまった。コナミデジタルエンタテインメントからは、「ときめきメモリアル」とともに「ラブプラス」も継続して開発してゆくと過去に表明があったので、それを信じて今後の続編を期待したい。