【特別企画】

「幕末浪漫 月華の剣士」アーケード版26周年。「サムスピ」に続くSNKの武器格闘ゲームを振り返る!

【幕末浪漫 月華の剣士】

1997年12月5日 稼働開始

 SNKの武器格闘ゲーム「幕末浪漫 月華の剣士」がアーケード版で稼働を開始してから本日で26周年となる。

 「月華の剣士」は、江戸時代が終わりを迎える時代、幕末が舞台で、武器を使ったキャラクターで戦う格闘ゲーム。稼働開始当時は、本作と同じく幕末に深い関わりがある剣客漫画「るろうに剣心」がブームとなっており、筆者はこその影響もあって、「月華の剣士」に惹きつけられた。

 本稿では「月華の剣士」を振り返っていこう。

SNKのもう1つの武器格闘ゲーム「サムライスピリッツ」とは異なる世界観

 「月華の剣士」は、武器を用いて闘うキャラクターを操作する対戦格闘ゲームである。SNKにはこのジャンルの先輩といえる作品「サムライスピリッツ」(以下、サムスピ)がある。

 だが、テーマとなる時代背景は大きく異なる。初代「サムスピ」の背景は江戸時代の1788年。「月華の剣士」の背景は、その江戸時代が終わろうとしつつある1853年前後、江戸時代末期と呼ばれる時代である。

 この違いは対戦を行うステージ背景や、キャラクターセレクトなどで使われるフォントにも現れている。

「月華の剣士」のステージ
「サムスピ」シリーズ2作目の「真サムライスピリッツ 覇王丸地獄変」のステージ

 この様に、「サムスピ」では江戸時代中期の「和」の雰囲気が強く、「月華の剣士」では洋装の人物がチラホラ見かけられる。ステージにある「カステラ」の看板など、西洋文化の到来も感じさせ、同じ江戸時代でも文化が異なるだけでなく、新時代、明治時代の到来を予感させる。

 また、世界観のみならず、ゲーム性も「サムスピ」と「月華の剣士」はは大きく異なる。

 「サムスピ」では、所謂「大斬り、強斬り」と呼ばれる攻撃を当てると、他の格闘ゲームにおける連続技や超必殺技を当てたときと遜色ないような大ダメージを与えられる。一撃一撃が重く、ジリジリとした戦いを楽しめる。

 それに対して「月華の剣士」は、一撃ではなく、連続して攻撃を当てる楽しさを追求している。

 「月華の剣士」では、キャラクター決定時に「剣質」というキャラクターの特性を2パターンから選ぶ。1つは攻撃力重視の「力」。力は必殺技から超奥義という超必殺技に連係させる「昇華」というシステムを持っており、これにより大ダメージの連続技を狙える。

 もう1つの特性は手数重視の「技」。こちらを選ぶと、連殺斬という、通常技を通常技でキャンセルできるシステムを使えつようになる。この様に、どちらの剣質も「連続攻撃」に重きをおいており、一撃必殺の「サムスピ」とは対極的だ。

幕末を舞台に、独自の世界観があったストーリー

 本作のストーリーには、所謂「中二心」をくすぐられる要素がある。

 「月華の剣士」の世界では現世と死後の世界があり、その2つの世界は普段は行き来ができないようになっている。この2つの世界を行き来するためのトンネルである「地獄門」の封印を朱雀・白虎・玄武・青龍の力を持つ「四神」が代を重ねつつ守り続けているためだ。しかしその四神の1人「朱雀」の手により地獄門の封印が解かれようとする……というのが「月華1」のストーリーである。

 現世とあの世、朱雀や玄武といったオカルトめいた設定がゲームらしい演出となっている。

右のキャラクターは「月華」シリーズの主人公である「楓」。作中における「青龍」の力の持ち主だ。彼は力を解放すると自分が自分でないような気がするなどと、青龍の力を使うことを恐れており、「月華」に登場する四神の力を持つキャラクターの中で彼のみ地獄門の守護者であるという運命に対して悲観的、消極的な態度を見せている。そのためか最終奥義のような大技を使った場合や、特定条件を満たしたときのみ力を解放する

 「月華の剣士」では凶行に走った朱雀の野望を食い止め、自らの敗北を悟った朱雀が地獄門へ身を投げ自害を行うところでストーリーが終わるが、この地獄門の問題は完全には解決しておらず、それが続編「幕末浪漫第二幕 月華の剣士 〜月に咲く華、散りゆく花〜」のストーリーへ繋がる。幕末という時代を忠実に再現しただけでなく、そこにオカルト的な要素を組み込んだストーリーは大変魅力的である。

こちらの画面は続編「幕末浪漫第二幕 月華の剣士 〜月に咲く華、散りゆく花〜」のもの。楓は青龍の力を受け入れ、最初から青龍の力を解放した姿で戦うようになった。覚醒した楓は髪が金髪になり、一人称も「僕」から「俺」へと変わり、やや好戦的な性格になる。余談だが「月華2」では、覚醒前の楓が隠しキャラクター扱いになった

 SNKの格闘ゲームはストーリーに力を入れている作品が多く、「月華の剣士」もこの部類に含まれる。筆者もストーリーを知るために、主人公である楓でCPU戦をクリアしたいという意識が強かった。だが、SNKの格闘ゲームにはもう1つの特徴がある。後半のボスクラスのキャラクターが非常に手強いのだ。今作でいうと、中ボス「暁武蔵」(あかつきむさし)と最終ボス「嘉神 慎之介」(かがみしんのすけ。以下、嘉神)がかなり手強い。

画像左のキャラクターが「暁武蔵」、右が「嘉神 慎之介」。アーケード版でも暁武蔵は隠しコマンドの入力で使用可能で、ボスキャラクターに恥じない強力なキャラクターである。剣質「力」での昇華システムを使ったコンボのダメージは必見だ

 武蔵を退けた後は最終ボス嘉神との決戦。嘉神は最初は武蔵ほど凶悪な性能を感じないため、このゲームは何事もなくクリアできるのでは?と思ってしまうのだが、嘉神から1ラウンドを奪取すると、剣から青い炎を纏いつつ空を浮遊した構えになり、攻撃力もアップ。さらに上空からビームのようなものを放つ超奥義を使うようになった本気の嘉神と闘うことになる。

 筆者は何度も力を解放した嘉神に1コインクリアを阻まれたが、ある時やっと1コインクリアを達成した。撃破後、美学のために自害する嘉神を見届けた後、キャラクター個別のエンディングで楓は自分の青龍の力を受け入れた演出はドット職人の美しさに感動したものである。さらに「青龍の力を受け入れたという」演出が、次回作で常時楓が青龍の力を解放した状態で闘うことの説明になっているのも、続編で驚かされることになった。ストーリーに力を入れているSNKは流石だな! と思ったエピソードである。

現在でも対戦会、大会が行われる人気タイトル

 「月華1」はどちらかというとストーリー重視の作品であるが、続編である「月華2」はかなり対戦重視の作りとなっており、「EVO JAPAN」のような格闘ゲーム大会のサイドトーナメントでもよく姿を見かける、息の長いタイトルだ。

 執筆時点では2024年のEVO JAPANのメインタイトル発表、エントリー開始がアナウンスされたタイミング。EVO JAPAN 2023では「月華2」のサイドトーナメントが開催されたので、EVO JAPAN 2024でも期待したい。もし見かけた際には、美麗なグラフィックと、「サムスピ」とは違うコンボによって生み出されるザクザク感をその目で体感してほしい。

2020年のEVO JAPANの風景。メインタイトル以外のタイトルでもアーケード筐体や家庭用ゲーム機が設置されて会場のあちこちで大会が行われている

□PS4版「アケアカNEOGEO 幕末浪漫 月華の剣士」のページ
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□Xbox Series X