【特別企画】

MSX0の影響でMSX3がやや延期に。次世代MSXプロジェクト進捗レポート

MSX0のクラウドファンディングはついに89%に到達!

 GAME Watchでは、2022年から度々、西和彦氏が中心となって推進している次世代MSXプロジェクトについて紹介してきた。次世代MSXプロジェクトの第1弾「MSX0 Stack」は、2023年1月15日から「CAMPFIRE」でのクラウドファンディングがスタートし、3月7日時点で目標の89%を達成している。

 クラウドファンディング開始後の2023年1月29日には、西氏のインタビュー記事を掲載したが、インタビュー以降も西氏は積極的に次世代MSXプロジェクトの進捗状況をTwitterなどで明らかにしている。その中には、MSX3の延期と新ロードマップの公開、MSX0に接続できるROMカートリッジスロットの開発といった。そこで、西氏のTweetや公式サイトの記事を元に、次世代MSXプロジェクトの進捗状況を解説する。

【インタビュー時の西和彦氏】

MSX3の新ロードマップが公開。2024年にパナソニックやソニーのMSX筐体を使ったMSX3が登場する!

 次世代MSXプロジェクトには、以前の記事でも解説しているように、IoT向けのMSX0、メディアコンピューターとしてのMSX3、スーパーコンピューターのMSX Turboという3つのコンセプトがある。以前はこれらを総称してMSX3と呼んでいたが、紛らわしいのでMSX3は純粋にメディアコンピューターのMSX3のみを指すことにしたようだ。

 MSXシリーズの正統進化形ともいえるMSX3への期待は大きいが、現在はまずIoT向けのMSX0に注力しているため、西氏は、当初の予定よりもMSX3の登場が遅れると2023年2月27日にTweetし、新たなロードマップを公開した。

 新たなMSX3プロジェクトのロードマップは以下の通りだ。

・2023年第2四半期 MSX3 SDKをDEVCONのみで受注
・2023年第3四半期 1 chip MSX3
・2023年第4四半期 Type X3 pocket
・2024年 Type M3 KB、Type S3 KB

 まず、2023年第2四半期(4~6月)に、MSX3のソフトウェアを開発するためのSDKを開発者向けに提供する。MSX3 SDKの受注は今後開催されるDEVCONのみとなる。次に、第3四半期(7~9月)に1 chip MSX3をリリースする。これは、以前発売された1 chip MSXのMSX3版と見られ、キーボードを搭載しないコンパクトなユニットになると思われる。そして第4四半期(10~12月)には、Type X3 Pocketが登場する。こちらは名称だけで、MSX3であることは確かだが、詳細は不明だ。

 そして2024年に登場予定のType M3 KBとType S3 KBは、キーボード一体型のMSX3で、M3はパナソニック(旧松下)のMSX筐体のデザインを流用、S3はソニーのMSX筐体のデザインを流用する予定とのことだ。人気機種のパナソニック「FS-A1」やソニー「HB-F1」のガワを被ったMSX3が登場するかもしれないわけで、MSXファンには嬉しい。実際に実現するかはまだ不明だが、西氏はパナソニックやソニーに筐体デザインをライセンスしてもらう交渉を始めているようで、期待したい。

【この伝説の筐体が蘇るかも?】
パナソニックのMSX2「FS-A1」。MSX3プロジェクトではこの筐体が復活するかもしれない(写真:lynmockさん提供)

 1 chip MSX3、Type X3 pocket、Type M3 KB、Type S3 KBの4製品は、MSXM(MSXモジュール)をアップグレードすることで、2K/4K/8KのHDMI出力をサポートするという。CPUは、MSXturboRのR800をハードウェアでエミュレート(ただしクロックはMSXturboRの100倍近い700MHz)するほか、32bit ARMや64bit ARMも備える。GPUとしては、Jetsonシリーズを選択できる。

MSX0 Stackに直接接続できるROMカートリッジリーダーが完成

 現在クラウドファンディングが行われているMSX0 Stackについては、上記のインタビュー記事を参考にしていただきたいが、インタビューで西氏が語っているように、MSX0 Stackは基本的にはIoTをターゲットとしたプロダクトである。

 しかし、MSX0 Stackは、MSX/MSX2/MSX2+のエミュレーターであり、当然過去に発表されたMSX/MSX2/MSX2+のゲームソフトをそのままプレイすることもできる。ゲーム用途でMSX0 Stackが欲しいという人も多いことだろう。西氏も、ゲームを本命とするユーザーも歓迎だと語っている。

 ROMMSX/MSX2/MSX2+のROMカートリッジを持っている場合、そこからデータを読みだして、PC経由でMSX0 Stackに転送することで、そのROMカートリッジのゲームをプレイすることができるが、ROMカートリッジからデータを読み出すには、ROMカートリッジリーダーが必要になる。

 以前、アスキーから「MSXゲームリーダー」と呼ばれる製品が発売されていたが、現在は入手が困難だ。サードパーティ製のROMカートリッジリーダーが販売されているが、そちらも品薄になっている。西氏はインタビューで、ROMカートリッジだけでなくI/Oカートリッジにも対応した新たな製品を作ろうとしていると語っていた。しかし、2023年3月2日に西氏がTwitterで公開したROMカートリッジリーダーは、従来のROMカートリッジリーダーがUSB経由でPCに接続して使うのに対し、I2Cインターフェースに対応し、MSX0 StackのPort.Aに直接接続できることが特徴だ。つまり、PCを経由する必要がなく、ROMカートリッジのデータを直接MSX0 Stackに転送できるのだ。

 ROMカートリッジからゲームを直接起動することはできないが、手持ちのMSX/MSX2/MSX2+用のROMカートリッジのゲームをPCを使わずに、MSX0 Stackだけで気軽に遊べるようになるので、MSX0 Stackをゲーム目的で利用しようと考えている人には嬉しいニュースだろう。さらに、このROMカートリッジリーダーは、MSX0 Stackだけでなく、今後登場予定のより小さい製品であるMSX0 StickやMSX0 Stampにも直接接続して利用できる。現時点では、このMSX0対応ROMカートリッジリーダーの発売日や価格、販売方法などは発表されていないが、西氏はクラウドファンディングのリターン品が到着する7月には間に合わせたいとTweetしている。

【MSX0 Stackに直接接続できるROMカートリッジリーダー】
MSX0 Stackに直接接続できるROMカートリッジリーダーの試作品
ROMカートリッジを挿入したところ

MSX0 Stack単体でビデオ出力が可能に、オプションでHDMI出力も

 MSX0 Stackでゲームをプレイしたいと考えている人には、もう一つ朗報がある。これまで、MSX0 Stackから外部モニターに映像を出力することはできないとされていたが、それを可能にする2つの手段が明らかにされた。

 一つは、MSX0 Stackから直接ビデオ出力(NTSC出力)が可能になったというニュースだ。これは、MSX0 StackのPort.Bにビデオ端子(RCA端子)を接続するだけで、ソフトウェアによってビデオ出力を実現したものだ。西氏いわく「あくまでもオマケ」ということで、MSX2+の全ての画面モードに対応するのではなく、256×212ドット8色までの対応ということだが、単体でビデオ出力できるようになったことで、MSX0 Stackの可能性はさらに広がる。

 さらに、M5Stack用のオプションとして発売されている「Display Module 13.2」をサポートすることも表明された。Display Module 13.2をMSX0 Stackにスタックすることで、HDMI出力が利用できるようになる。こちらは他の画面モードにも対応すると予想される。最初に紹介したMSX0用ROMカートリッジリーダーとDisplay Module 13.2を利用すれば、MSX0 Stackに大画面テレビを繋いで、MSX/MSX2/MSX2+のROMカートリッジのゲームをそのままプレイすることができるようになるのだ。

【MSX0 Stackからのビデオ出力やオプションのDisplay Module】
MSX0 Stackから直接ビデオ出力が可能に
Port.Bにビデオ端子を接続する
FacesIIを使わなくてもBattery Bottom2から直接ビデオ出力ができる
実際のビデオ出力の様子。256×212ドット8色までとなる
こちらはオプションのDisplay Module 13.2。HDMI出力が可能だ
Display Module 13.2を利用したHDMI出力の様子

MSX0 Stickも4月1日にクラウドファンディング開始予定

 現在行われているMSX0 Stackのクラウドファンディングは2023年3月31日に終了予定だが、続いて4月1日からMSX0ファミリーの第2弾「MSX0 Stick」のクラウドファンディングが開始する予定である。MSX0 Stickは、MS5Stickに疑似RAMを追加し、MSX-DOSやMSX BASICのインタープリターとコンパイラが導入されたもので、液晶画面はさらに小さくなるが、基本的にはMSX0 Stackと同じように使える。さらに、切手サイズのM5Stampに疑似RAMを追加したMSX0 Stampも開発中であり、こちらもクラウドファンディングを予定している。

 MSX0 StickやMSX0 Stampは、MSX0 Stackよりも小さく安価であり、IoTデバイスとして他の機器に組み込むにも適している。また、MSX0 StickやMSX0 Stampにも、最初に紹介したROMカートリッジリーダーを接続できる。

【MSX0 StickとMSX0 Stamp】
MSX0 Stickの試作品。ボディカラーがMSXブルーになっている
MSX0 StampにROMカートリッジリーダーを接続したところ。MSX0 Stamp本体は右中央の小さい基板だ

Groveセンサーのプラグ&プレイをQRコードで実現、漢字BASICも搭載

 MSX0ファミリーは300種類以上ものGroveセンサーを利用できることが大きな魅力だ。どのセンサーが接続されているかをMSX0側で知るための手段として、QRコードを採用することに決まったようだ。Groveセンサーごとに用意されたQRコードをスマートフォンで読み込ませることで、いわゆるプラグ&プレイ(周辺機器などを接続すると自動的に必要なソフトウェアが組み込まれ、利用できるようになる仕組み)をMSX0でも実現するとのことだ。センサー利用のハードルを下げてくれる、素晴らしいアイデアだ。

 さらに、漢字ROMと漢字BASICを搭載し、漢字を使ったプログラムも容易に作成できる。MSX2では漢字ROMがオプションのモデルも多かったが、MSX0は漢字ROMが標準搭載となったMSX2+相当なので、漢字表示に対応しているのは嬉しい。

【QRコードを利用してGroveセンサーのプラグ&プレイを実現】
Groveセンサーの背面にQRコードを貼り付け、そのQRコードをスマートフォンで読むことで、プラグ&プレイを実現する
漢字BASICを搭載し、漢字を使ったプログラムも容易に作成できる
漢字を使ったプログラムの例

ミニチュアMSXのガチャガチャもクラウドファンディングに登場!

 さらに、MSX0 Stampと過去のMSX筐体のミニチュア数種類をセットにしたガチャガチャも、4月からのクラウドファンディングで頒布を開始するとのことだ。ミニチュアモデルの中に、MSX0 Stampを収納して使うような形になると思われるが、MSXファンならずとも欲しくなりそうだ。

 今週末の3月12日には、秋葉原で次世代MSXプロジェクトの開発者会議「DEVCON 3」が開催される。DEVCON 3では、まだ明らかにされていない次世代MSXプロジェクトの最新情報が公開されるだけでなく、抽選で当選した開発者に、MSX0 Stackの試作機が貸与される。DEVCON 3についても、レポートする予定だ。