【特別企画】
「IV」トレーラーは全部捨てる!? 「キングダム ハーツ」20周年記念ステージイベントレポート
2022年4月12日 20:27
- 【KINGDOM HEARTS 20th ANNIVERSARY】
- 4月10日 開催
スクウェア・エニックスは4月10日、渋谷ヒカリエにて「KINGDOM HEARTS 20th ANNIVERSARY EVENT」を開催した。
先日は、その中から特別展示会場の模様を紹介したが、今回は新作「キングダム ハーツIV」などが発表されたステージイベントの様子を、時系列に沿って詳細にお伝えしよう。シリーズディレクターである野村哲也氏によるQ&Aコーナーや声優陣による思い出話など、ほぼ余すところなく掲載しているので、そこかしこに次回作のヒントが隠されているかもしれない。
一見、もはや新作が登場することはなさそうな野村氏の映像から始まるが……
イベントが始まると、前方スクリーンに映し出されたのは「キングダム ハーツ」シリーズディレクターの野村哲也氏。「キングダム ハーツIII」から3年……、という問いかけに対し、さまざまな渋谷の映像を背景に語られたのは、以下のようなことだった。
「『キングダム ハーツ』シリーズとしては完結ではないけれど、もう終わった感が凄くて抜け殻です。燃え尽き症候群。自分としては、やることはやって後悔はないと思ってます。消える意味があるから消えたわけですよ。変わったこと? 結構認知されるようになったというのが一番大きいですかね。1作目は、そんなに認知もされてなかったので結構無茶ができた。でも徐々に知られるようになって、なかなかこう昔ほどの無茶はできない状況です。それは変わったかな?」
続けて野村氏が語ったのは、変わらないことについて。
「変わらないことはまあやはり、開発する際の信念的なもの。『キングダム ハーツ』シリーズを作るということはこういうことだ、というのが自分の中では1回も変わった事はないですね」
ここで、20年越しに発掘されたという初期映像が披露され、さらにトークが続く。
「最初に『キングダム ハーツ』を作るとき。まだ数名しかスタッフがいない状態でプレゼン用の資料を作り、それをディズニーさんに見せた。そのときの初期映像というのが、この20年越しで発掘されまして、それを見ていただこうと思います」
こうして、画面にはその当時に作られたという初期映像が映された。なお、この映像は会場限定公開。初期映像では、主人公がキーブレードと思われる武器を振るモーションが映し出されると、続いてドナルドとグーフィーと共にパーティを組んでフィールドを走ったりジャンプしたりといったシーンへ。背景のオブジェクト数などは控え目ではあったが、それは紛れもなく「キングダム ハーツ」の原型だったと言えるだろう。
「この時はまだタイトルが『キングダム』なんですね。普段、ゲームの開発前にここまでのものを用意すると言うことはやらないです。これは、自分が初めてディレクターをやる、ディズニーにもOKを取らないと、というところで、かなり気合いを入れてこういう準備をした。この時点では、まだ『キングダム ハーツ』のストーリー自体もそんなにしっかり固まっているわけではなくて、世界観やゲームの構造みたいなのが何となく決まっていた感じですかね。これは初期に書かれたソラ。最初はディズニーっぽさを考えて、普通の人間よりは亜人っぽい方がいいのかな? と思ったんですが、今となっては人間にしておいて良かった。たぶん今のようなストーリー展開にはなってなかった。このイメージボードは、こういうのがあると楽しいな、みたいな感じで描いてたものです。ただ、海は根本にありますね。僕が海のそばで生まれ育ったのが一番大きいですね。学生時代の経験がいろいろこう刷り込まれてる」
また、野村氏はアクションが苦手だが、そんな人でも遊べるものをと考えながら「キングダム ハーツ」の制作に取りかかっていたという。「当時、自分はアクションゲームが苦手でした。自分はそれまでRPGばかり作っていたので、RPG+アクションで自由に動き回れるものを考えていた。当時、アクションに対する免疫がない人が多く、アクションは難しいとか、できない人が多かった。そういう人でもRPGとして楽しんでもらえるようにっていうところは、かなり意識して作ってました」
話が世界観に変わると、ファンタジーは好きじゃないと公言する。「僕は正直、あんまりファンタジーすぎる世界が好きじゃない。何とでも作れてしまうし、何でもありじゃないですか。とはいえ、すべてが現実の世界というのはあまり面白みがない。その両方の中間みたいなところが面白いっていうか、自分たちの現実からちょっとだけズレると、そういうファンタジーの世界があるのが共感というか、ワクワクする。初めてのディレクターで初めて好きにつくれるタイトルだったので、それが濃く根幹にはあります」
そして最後に、こう付けくわえた。「シンプルに言うと、心が繋がっているということです。あとは、誰もが主人公になれるっていう、その2点です。心のつながりに関しては色々思うところはありますので、そこは変わってないなと思いますね。そこを描きたいなと思って、ずっと描いているという感じです。だから、ソラは消えました。でも、消えても心は繋がっている、ということです」
ここで映像は終わるのだが、これが実は新作「キングダム ハーツIV」発表の伏線になっていたとは、このときは誰もが思わなかったことだろう。
下村陽子さんが熟考の末に選んだ5曲が披露されたミニライブ
続いてミニライブが開催。生演奏で5曲が披露されると、今日の進行役として「キングダム ハーツ」シリーズにてカイリ/シオン役を担当した声優の内田莉紗さんが登壇。さらに、シリーズ楽曲を手がけている作曲家の下村陽子氏がゲストとしてステージに招かれた。ミニライブで披露されたのは、ゲーム中で使用されたBGMをピアノと弦の五重奏でアレンジした楽曲。これについて内田さんが伺うと「20周年の記念すべきイベントに相応しい内容にしようということで、『キングダム ハーツ』シリーズでは初となる室内楽にチャレンジしました」と下村氏は答えた。
選曲の基準についても「いろんなタイトルから選択しましたが、『Dearly beloved(タイトル画面のBGM)』は絶対必要だよね。『Sora(ソラのテーマ曲)』は、やっぱり主人公だし必要だよね。『Vector to the Heavens(シオン戦のBGM)』、シオンの曲は本当にありがたいことに、皆さんすごく好きだと言ってくださる方が多いので選びました。そして『Nachtflugel(ヨゾラ戦のBGM)』(uはウムラルト)は、今までに演奏したことがなくて、かつ最近の曲ということで。最後は、タイトルが自身でもすごく気に入ってる『Link to All(一部イベントでのBGM)』。これは、ライブの最後の曲にふさわしいんじゃないかなと思って選ばせていただきました」と解説してくれた。
この20年間で一番の思い出を聞かれると「一番最初に曲を作ってた時にすごい大変でボツをくらったとか、しんどいことも、すごく嬉しいこともたくさんありました。今日のようなイベントでファンの方達とお会いする機会があると、どんなしんどさも吹っ飛んじゃいますね」としみじみと語り、ステージから降壇した。
20周年をお祝いするトークとの触れ込みで始まった、野村氏と間氏のトークショー
かわって登壇したのは、「キングダム ハーツ」シリーズブランドマネージャーの間一朗氏と、「キングダム ハーツ」シリーズディレクターの野村哲也氏。どのような話が飛び出すのかと思いきや、野村氏が開口一番「寝てないんですよ」と発言し、会場は笑いの渦に。さらに「リハーサルを全力でやり過ぎた結果、もうヘトヘトで」との言葉に、間氏が「ここから盛り返しましょうよ」とツッコミを入れるなど、ちょっとしたお笑いの場に。
そのような緩い感じで始まった2人のトークだが、「今日は何かの発表ではなく、基本的には20周年のお祝いをしましょうよ」と間氏が言うと、野村氏も「まあ、おじさんがしゃべる場(笑)」と、のんびりした雰囲気。しかし、以降は真面目な話題へと移っていった。
まずは冒頭で上映された初期映像について「22、3年前にディズニーさんに対して見せるために作った映像ですが、この会場限定でアーカイブにも残りません」ということで、会場にいた人以外は決して見ることができない、幻の映像であることを強調。野村氏は続けて「生配信できない理由もいっぱいあるんですよ。その場合、海外にも配信しなきゃいけないが、そうなると字幕がほしい。ということは、事前に台本が必要になるんですね。つまり、僕らは台本通りにしゃべらなきゃいけない。それは無理なんです(笑)」と、なんと生配信が不可能な大胆な理由も笑いながら公表してくれた。
ここで間氏が話の方向の軌道修正を行ない、シリーズ20周年について振り返ることに。これまでに発売されたのは13作品で、累計販売本数が3,500万本に及ぶと発表。さらに、「キングダム ハーツIII」が2021年9月で、全世界で670万本も発売されているということも公表されたのだが、どうやら野村氏は700万本と事前に聞いていたようで「結構ゲタを履いていたなと思った」と、これまた会場の笑いを誘う一言をポロリ。
今冬配信予定だった「ダークロード」完結までのストーリーが8月に無料配信へ
ここで間氏が「お待たせしている作品の話があります」というと、Android/iOS用アプリ「キングダム ハーツ ダークロード」のPVがスクリーンに流された。上映が終了すると「こちら、ちょっと完成したものを皆様にお届けするのに時間がかかっておりまして、誠に申し訳ございません。8月までお待ちいただけないかというところです」と、恐縮しながら延期を発表した。ここで助け船を出すべく野村氏が「以前からお伝えしてますが、『ダークロード』はその前の『ユニオン クロス』でフラッシュのイベントシーンを作ってる2人のスタッフが担当していまして、2人しかいないうえに自分が加筆をしてしまいました」とコメント。そのために、なかなかのボリュームになってしまったそうだが、「皆さんが疑問に思うところは、『ダークロード』をプレイしていただければいろいろ謎が解けますので、是非とも楽しみに待っていただければと」とも追加。会場からは、ねぎらいの拍手が飛んでいた。
若き日のゼアノート、旅立ちの物語――
— キングダム ハーツ DR公式 (@KHDR_PR)October 5, 2021
エンディングまで一挙公開!
『KHDR』オフライン版アップデート(Ver5.0.0)
今冬配信決定!#KHDR#KHUX#_KH#KH20thpic.twitter.com/ONz5N4mo5z
多数のグッズが紹介され、一部は特別展示会場で見ることも
ここでゲームタイトルの話は一段落となり、グッズ紹介が行なわれた。「『ダークロード』がリリースされるまでシリーズとしての展開が何もないのではなく、さまざまグッズを用意しています」と間氏。最初に披露されたのは「KINGDOM HEARTS Tamagotchi(キングダム ハーツ たまごっち)」だ。グッズの監修を行なっているのは野村氏なのだが、その作業で疲れているのか「毎週毎週監修がガンガンくる。いつ終わるんだろうと思いますよ(笑)」と、ついつい本音を吐露してしまった。間氏が「素晴らしいことじゃないですか、毎週ちゃんと持ってきてくださって、アップデートも教えていただいて、こちらの方に確認ができて、いいものができあがるわけで」とフォローを入れる流れも、もはやお約束に。
この他にも、Zoffからコラボレーションメガネが発売されたり、SuperGroupiesより受注生産限定で今夏頃に全45種類の時計がリリースされる話、さらには初情報としてサマンサタバサ プチチョイスから「キングダム ハーツ」の世界観を詰め込んだお財布小物やXIII機関をモデルにしたシリーズ、キーブレードをモチーフにしたファスナーチャームなどが登場することが公表された。
また、一部グッズはスクウェア・エニックスからも発売されるとのこと。このタイミングで野村氏から「松下、ちょっと来て」と呼ばれステージに招かれたのは、「キングダム ハーツ」シリーズマーチャンダイジングの松下将人氏。2人に恐縮しながらも、開発に3年以上がかかったというアルバ&アーテルセットとトランクケース、さらには「20周年のモノグラムデザインが日本の伝統文様をモチーフにした和柄のデザインになっていて、和物グッズに非常に合う」とということでさまざまな和物グッズなど、数多くのアイテムを紹介してくれた。
和物が多いことについては野村氏が「和モダンが好きなんです。モノグラムとか、昨今はいろんなところが真似してますけど、今回は和柄でいこうとしたところ、いいデザインがいっぱいあがってきて、全部使いたいなあと思った結果こうなりました。これは確かにラインナップ多いですよね」と、その理由を教えてくれた。さらに松下氏より「江戸切子と『キングダム ハーツ』とのコラボレーションアイテムや、シリアルナンバー付きの20周年記念オートマティックウォッチもあります」との発表も。野村氏は「値段にかなりパンチが効いているものの、今回手に入れないともう2度と入手できないだろうと思うので予約しよう」と考えているそうだ。
あわせて、キーブレードをモチーフとした手持ちサイズのキーブレードチェーンも、9月に発売される予定とのこと。スイッチを入れると鍵穴型ライトが照射される仕組みだが、明るい会場だったためか床に向けて照らしてもライトが見えず、野村氏には「今下に向けたけど、何も映ってない(笑)」と言われ、間氏にも「スマホのほうがきっと明るいでしょうね(笑)」とオモチャにされまくり。それにめげず「スマホのほうが明るいでしょうが、これで照らしてほしいです」と、しっかりアピールしていた。
グッズコーナー最後には、現在新宿のARTNIAと秋葉原スクウェア・エニックス カフェで開催されている「KINGDOM HEARTS 20th ANNIVERSARY CAFE」において、ARTNIAでの開催期間延長が発表された。ARTNIAは5月6日までの予約が満了していたが、これで行けるという人もいるのではないだろうか。
グッズ発表が終わり、間氏が内田さんに「何か気になったものはありましたか?」と尋ねると、「やはりカフェは行きたいです」との回答が。そこにすかさず野村氏が「裏で松下に“行きたい”と言えばいけますよ」というと、思わず「そうですか!」と答えてしまう内田さんに、間氏が「“そうですか!”じゃないです(笑)」と笑いながらツッコミを入れるなど、このコーナーでも笑い声が絶えることはなかったのが印象的だった。
実は今日の目玉として発表されたのは「キングダム ハーツ ミッシングリンク」だった
松下氏が降壇すると、内田さんが野村氏に「映像があるんですよね?」と聞くと、なぜか「そうなんですが、これを流すともう今日の目玉がなくなる」との返答が。一体どのような映像が飛び出すのだろうかと思いながらスクリーンを見つめると、そこに映し出されたのはスマートフォン向けの新作タイトル「KINGDOM HEARTS Missing-Link(キングダム ハーツ ミッシングリンク)」だった! これには会場から歓声が上がり、今日一番の盛り上がりを迎えることに。
ここからは「ミッシングリンク」の話題となり、最初に話が持ち込まれた時に野村氏は「本当にこんなハイクオリティなグラフィックスがモバイルで出せるの?」と半信半疑だったそうだ。が、実際に仕上がってみれば「まあ出ましたね」とのことで、「なかなかのクオリティだと思わないですか?」と絶賛。間氏も「バトルや森のシーンなどを見ていると、本編さながらですね」と感心したそうだ。
世界観的なものとしては「舞台は多層都市スカラ・アド・カエルム。『ユニオン クロス』をやられていた方は最終回を見たと思うんですけど、あそこが今回の舞台となります。先ほどの映像でも出ていましたが、今作は秘密結社のキーブレード使いたちのお話になります。組織がいくつか存在していて、それぞれの組織が思惑に基づいて動いているという世界になりますね。時代としては、唯一描かれてなかった『ユニオン クロス』から『ダークロード』の間の話。今回、『ミッシングリンク』でストーリーが全部繋がるという形になります」と野村氏が解説してくれた。
さらに「『キングダム ハーツ』シリーズらしいアクションが楽しめるスマートフォン向けのゲームです。縦でも横でも遊べます」との発言が飛び出し、間氏が「縦でも横でもって、あんりま聞いたことないですよね」と思わず突っ込むと、その理由は野村氏いわく「あれです。現場のこだわりです」とのこと。続けて「アクションは映像を見てもらえればわかると思うんですが、据え置きハードと遜色ない感じになっているほか、最大6人でのプレイも可能」だそうだ。
AR的な要素も含まれているものの、野村氏は「僕はね、あれイヤなんですよ」とバッサリ。「僕は、どちらかというと家にいながら色んな所に行きたい」との考えから、「世界中どこでも行ける」仕様になっているそうだ。「南極にも行けますが、移動にはある程度ポイント的なものが必要です。その目的地まで自分で歩けばポイントは不要です」との追加説明も行なわれたが、詳細は追って公表とのこと。
他にゲームシステムに関して明かされたのは、ピースというものを集めてキーブレードにセットすることで、さまざまな能力を発揮することが可能になることと、拠点からクエストを選ぶとストーリーが進行し、その一方でこの星のさまざまな場所にも移動できるということ。
最後に、「ミッシングリンク」は「クローズドβテストを本年中に実施させていただきたいと考えております。開発チームからは秋ぐらいというふうに伺っておりますので、募集が開始されましたらぜひみなさんご応募いただければと思います」との発表が間氏から出ると「据え置きハード並の開発現場になっていますので、ぜひ期待していただければと」と野村氏もコメントするなど、その気合の入りようを教えてくれた。