【特別企画】

「IV」トレーラーは全部捨てる!? 「キングダム ハーツ」20周年記念ステージイベントレポート

多数のマニアックな質問が寄せられたQ&Aコーナー

 ここからは、あらかじめTwitterで募集していた質問に野村氏が答えていくという、Q&Aコーナー。ネタバレも大いに含まれているので注意してほしい。

 最初の質問は「ノーバディのシンボルマークは生まれながらについているものなのですか? それともXIII機関がつけているものなのですか? 前者だとしたら、ゼムナスたち人型ノーバディも見えないだけでノーバディのシンボルマークがついているのですか?」というもの。これには野村氏がいきなり「なんでこれが気になったんだろ(笑)」と答えて、会場は大笑いに。真面目な回答としては「人型がついてなくて、ノーバディで人型は、ハートレスで言うところのピュアブラッド(自然に発生したもの)みたいなもんだと思っていただければ」とのことだった。

 次は「デミックスが何者なのか、人間時代がどうだったのかとても気になります」という質問。「この質問、すごく多かったです」と野村氏は言うが、続けて「例えばですね、ここでこの質問に答えるじゃないですか。そうしたらもう多分(作中で)描かないですけど、大丈夫ですか?」と、意外な返答が出てきた。「普通に俺がさらっと答えちゃうと、言っちゃうと今後出てこなくなります」とのダメ押しに、間氏も思わず「我々が凄い打ち合わせ不足でここにいるのがわかります(笑)」と言ってしまうほど動揺。最終的には「この答えは、まだちょっと今後に取っといた方がいいかなと思います」とのことで決着を見せた。

XIII機関のメンバーであるデミックス。※画像はDLC「KINGDOM HEARTS III Re Mind」より

 3つ目の質問は「『キングダム ハーツ』はシリーズを通して宇多田さんがテーマソングを担当されていますが、曲から新しいインスピレーションを受けることはありますか?」だった。これには、「毎回曲を頂いてからオープニングムービーを考える。そういう意味では毎回インスピレーション、宇多田さんの曲ありきで考えている。だから、なくてはならない感じです」と、詰まることなくサラリと答える野村氏。

 4つ目は「『キングダム ハーツ ユニオン クロス』の最終回で、プレーヤーがゼアノートの心に溶けたと思うのですが、ずっとゼアノートの中にいたのでしょうか?」というもの。これに関しては「実は『ダークロード』をやるとわかります」とのことで、質問が寄せられた当時は、「ダークロード」も「ミッシングリンク」も発表されていなかったため、これらをプレイすればわかるというものもいくつもあるということだった。

 次の質問は「『キングダム ハーツII』で、リクはカイリにキーブレードを手渡しますが、あれはどこで入手したのでしょうか? また、その経緯を今後描かれる予定はありますか?」。これについては「今後描かれる予定はありますか? ということなのですが、それはなんかしらやらないと投げっぱなしになっちゃうので、なんかするつもりでいます」との回答が寄せられた。

リクとカイリ。※画像は「キングダム ハーツIII」公式サイトより

 さらに「ヨゾラ戦の勝敗でストーリーが分岐されていますが、『キングダム ハーツ』シリーズで分岐の演出は初だったと思います。これは何か大きな意味があるのでしょうか?」との問いには、「ストーリー的な意味と言うよりは、ヨゾラが相当強くてなかなか勝てないだろうと思い、負けた時にもストーリーが見られたほうがいいかなっていう優しさで入れておきました」と、優しさから設定したということが明らかに。実際、来場者にヨゾラ戦で勝てた人に挙手してもらったところところ、ほとんどいなかったため、間氏も「テツ(野村)さんナイス選択です!」と言ったほど。

 質問はまだまだ続き、「『キングダム ハーツ ユニオン クロス』の最後について、あの時エフェメラはプレーヤーの真意に気づいていたのでしょうか? 別れ方が気になっていました」には、「『ユニオン クロス』をプレイした人は、エフェメラがプレーヤーとどういう別れ方をしたかのは知っていると思いますが、切ない別れになってます。エフェメラに関しては、今後もちょっといろいろあるよ」と、今後の展開を匂わせていた。「特にあの過去の物語に関しては、『ミッシングリンク』でかなり謎がとけるかなと思ってます」という発言もあったので、疑問を持つユーザーは「ミッシングリンク」が楽しみな作品になりそうだ。

【ミッシングリンク】
「キングダム ハーツ ミッシングリンク」では空白の時代が描かれるとのこと。多くの謎が明らかになりそうだ

 「ナミネと賢者アンセムは、いつどのタイミングで出会ったのでしょうか?」という質問には軽い口調で「これはあれじゃないですか、忘却の城からみんないなくなったタイミングじゃない? XIII機関がやられて、ソラもリクも出てってナミネがぽつんと。で、どうする? みたいな」と答えると、これまで質問を読み上げていた内田さんが「そのシーンを見てみたいです!」と反応。しかし、野村氏には即座に「そのシーンは描かないです(笑)」と返すなど、ここでも笑いの渦が巻き起こっていた。

 大勢が気にしていたという「『キングダム ハーツ 3D』ではリクの髪の毛が切られていますが、誰が切ったのでしょうか?また、『キングダム ハーツIII』ではデビルズタワーに飲み込まれた後に髪型が変わってますが、何かあったのですか?」というヘアスタイルの質問に関しては、「『キングダム ハーツII』でですね、皆さんに髪切れ髪切れと(笑)。切ったのは、皆さんの思いです。皆さんの思いが届いたから」と、ユーザーからの意見でそのようにしたことを告白。他にもユーザーからの思いで変わったことを聞かれると「ロクサスとかシオンの復活に関しては、かなりギリギリまで悩んだりしてました。復活させないルートの話も考えてあったんですが、あまりにも皆さんの思いが強いので復活になったというか、もっと悲しくしてどうするんだと。自分の中で、これはどうしようかなって悩んでる部分に関しては、皆さんの思いはかなり影響します」とのこと。

さまざまな質問に答えていく間氏と野村氏。進行の内田さんもノリノリだった

 「マスターオブマスターが姿を消そうとした『※の世界』の『※』は伏せ字ですか?それとも『※』には意味があるのでしょうか?」という問いには、「台本にはちゃんと書いてあるんですけど、伏せ字です」という返答がすぐに出てきた。正式名称もあるとのことだが、これも今後描かれると公言したので、新作を待つのが正しいようだ。

 「『キングダム ハーツ ユニオン クロス』でエフェメラとスクルドが2人きりになった際、データ世界から脱出したにも関わらず、空にノイズが走っていたのは何故ですか?」とい非常に細かい部分への疑問に対しては、いろいろと述べるものの「特に大きな意図はなく、データ世界側と現実世界側が崩壊に向かっているというのを表現したエフェクトだなあ(笑)」で、あっさりとオチがついた。

 続いての質問は「アイザの顔の傷はいつ、誰に付けられたものなのでしょうか? それが『異端の印』の形なのはなぜですか?」というもの。これには「リアとアイザ間に関してはストーリーがありますので、『キングダム ハーツIII』をプレイされた方だとわかると思うんですけど、2人が助けようとしてた女の子のお話とか……いろいろまだ2人の物語はあるので、今後も注目していただければなと」と、今後に含みを持たせる回答が出された。

 「マスター・ゼアノートは“キーブレード戦争の先にあるものを見るために”テラの身体を乗っ取ったとの事ですが、ヤング・ゼアノートの頃からそれなりの力があったようにみえます。何故若いうちに事を起こさなかったのでしょうか?」との質問には「力がなかったから。ゼアノートに関しては『ダークロード』を見ていただくのが一番いいかなと思います。ゼアノートのあの髪型の秘密も、ついに『ダークロード』で明かされます」とのこと。

 続いては「リアやアクアのように闇に落ちるのとハートレスになってしまう(ノーバディが生まれる)のはどう違うのでしょうか?」という質問。これには「闇に落ちるのと心が抜けちゃうのは話が全然違う。闇落ちしているのは心は抜けてなくて、心を持ったまま心が闇落ちちゃった。ハートレスになってしまうってのが心が体から抜けちゃうので、全然違う現象です」と、明快な回答が導き出されていた。すると内田さんが「アクアの闇落ちは公開された時、すごい反響でしたよね」と尋ねると、「そうですね。自分あんまり衝撃じゃなかった」と野村氏。それを聞いて間氏が思わず「そりゃそうだ(笑)。あなたが書いてる」と突っ込んだことで、またもや笑いが起きて質問コーナーが先に進まなくなる事態も。

「キングダム ハーツIII」のトレーラーで闇に落ちたアクアが登場。多くのプレーヤーを驚かせた

 それも一段落し、残った質問は2つ。「以前のインタビューではマレフィセントが黒い箱の中身を予知書だと思っている理由について、『キングダム ハーツ ユニオン クロス』で明かされる予定だと語られていましたが、今後明かされる予定はありますか?」には、「これは明確に明かしてはいないんですけど、そうじゃないかって思うような描写はあったと思うんですよね。ちょっとわかりづらかったとするならば、今後マレフィセント側の方で言わせた方が良いのかなと思います」とのこと。

 最後の質問となったのは「『キングダム ハーツIII』の終盤で、ゼムナスがリアのキーブレードを砕き、『キーブレードを失ったお前に……』と言っていますが、その後普通にブレードを使っていたように見えます。これはゼムナスが勘違いしただけですか?」。どうやらこの件についてはツッコミが多かったようで、野村氏も「自分もそう思うかと思ったんですけども、失ったというのは完全に失ってしまったという意味ではなく、その場から破壊されて消滅してしまったという意味での失った。仮にあの場でまたアクセルが出しても、まあまた壊しちゃうよって言うメッセージ的なもの」だそうだ。

 これで質問コーナーは終わりとなったものの、感想を聞かれた野村氏は「もうげっそり」と。「僕だけがしんどいコーナーなんです(笑)」ということで、確かに見ていても大変そうだったのが伺えた。とはいえ、「でも思い出してほしいですけど、なんだったらやるよ、って言ったのテツさんですからね」と間氏から突っ込まれ、苦笑いしながら「まあね」と返していたのが印象的だった。

20年分のアフレコ収録を振り返り、思い出話に花が咲く3人

 ここで野村氏と間氏は降壇し、変わって本シリーズにてソラ役を演じている入野自由さんと、シリーズの音響監督を務める東北新社音響監督の清水洋史氏が登壇。内田さんを交えて、3人での20周年思い出トークコーナーとなった。

左から内田さん、入野さん、清水氏

 まずは、耳慣れないであろう音響監督の仕事について清水氏は「セリフを収録する時の演出です」と説明。2人に出会ったのは小学生の時だが、1作目の収録時の学年は入野さんが中学2年生、内田さんが中学1年生だったそうだ。

 「キングダム ハーツ」は十代前半の少年少女が主人公で、それを実年齢の少年少女でやりたいということでオーディションになったとのこと。清水氏に、その当時のことを覚えている? と聞かれた内田さんは「デスティニーアイランドの海のシーンの台詞で、私は海が大好きで、当時海の近くに住んでいて、その住んでる海の情景を思い浮かべながらセリフを言いました。海が大好きだから、もう海というだけでテンション上がっちゃって、ああ、絶対この作品やりたいって思ってオーディション受けたのをよく覚えてます」と語ったのに対して、入野さんは「僕は何にも覚えていない」とコメント。それを聞いて清水氏は「自分と年の差がだいぶあるから2人が眩しくて、まさしくソラとカイリがそこに居るという感じでした。未知の未来に向けても、まだ怖いもの知らずの13歳、14歳。それはもう、ソラとカイリそのままだった」と、目を細めながら話していたのが心に残った。

初代「キングダム ハーツ」のソラとカイリ

 ここで、シリーズでリクを演じている声優の宮野真守さんからビデオレターが届いているということで、その映像が流されたのだが、冒頭で攻略本「キングダム ハーツ アルティマニア」に掲載されている入野さん、宮野さん、内田さん3人の写真が映し出され、壇上の2人は苦笑い(笑)。その本が発売されていた時期、宮野さんは「本屋でアルバイトしていたので、アルティマニアを手に取りやすい位置に出しました。この作品が、自分を世の中にどんどん知ってもらえるきっかけで、この仕事でもっともっと立派になっていきたいなって子供の頃に思っていました」と、ビデオレターの中で語ってくれた。

 続けて、思い出の台詞を聞かれた宮野氏は「どうしたソラ、もう終わりか。だらしないな」を最初に挙げた。「あの頃のあんな僕が演じさせていただけるという美麗なキャラクターで、当時は凄く嬉しかったですね。だから発売されてからプライベートでずっと言ってました。友達に『どうしたソラ』って、俺やってるんだぜって何回言ったことか」とコメント。続けて「『確かに、俺になれたらとてもいいことがあるな。お前には絶対にできないこと。ソラの友達になる』は、彼がいるから自分がある。ソラがいるから自分がいられるというその感覚を素直に伝えないあたり、その言い回しが憎いなって思いますよね。あの2人の会話の流れが、なんかほっこりしますよね」と、ソラとの会話シーンでの台詞も選んだことを発表した。

 そして最後に「僕もたくさんの経験をさせてもらっている『キングダム ハーツ』ですが、それが20年も続くのは素晴らしいことだし、その後リクを主軸にプレイできるソフトもたくさん出たんですけど、今後もまたリクを操作できるようなタイトルが出てきたら僕も楽しいし、『キングダム ハーツ』の世界観は可能性が無限大なので、そうやって色んな主軸を作って再集結するみたいな、そういう広がりを持ったストーリーが描かれることを僕は願ってます。皆さんもぜひ期待して頂き、今後広がっていく『キングダム ハーツ』の世界を一緒に楽しんでもらいたいなというふうに思っております」と結んだ。

思い出話に盛り上がる3人。

 ビデオレターが終わると、入野さんが「『キングダム ハーツ』の時は全部じゃなかったけど、3人のシーンは3人でね、一緒にマモちゃんも含めて収録したのは覚えてる。楽しかったよね。近くにお団子屋さんがあって、収録終わりに食べに行ったりとか。打ち上げがあって、みんなで遊びに行ったりね」と当時の思い出を語ると、清水氏も「居酒屋行ったよね」と、思い出話は尽きず。この後も、「宮野君はストレートに演じてましたね。楽しいー! と。そういう意味では『キングダム ハーツ』のストーリーと重なってる部分があると思う」と清水氏は述べ、入野さんは「声はドンドン成長していくから、その辺の難しさがあったよね。前の声出してくださいもあるし、でも、どうやってソラになればいいかっていうのを、すごく悩みながらやってた」と振り返るなど、3人のトークはますます盛り上がることに。

 ここで、事前にファンの方々から投稿された思い出深い台詞が、ゲーム中のシーンと共に発表されることになった。ソラの台詞として選ばれたのは「繋がる心が俺の力だ!」、そして「俺にはよくわからないんだ この世界が本当に本物なのか そんなの、考えたこともなかった……」の2つ。これを受けて入野さんは「やっぱりこの2つは選ばれるだろうなっていう感覚はあるんですけど、特に2つ目は『キングダム ハーツIII』の終わりで言ったんですが、何回も録りました。当時ゲームでこれが流れる時、鳥肌が立ちましたね。自分の声が流れているんだっていう不思議な感じでした」と、率直な感想を述べていた。

 続けて発表されたカイリの台詞で選ばれたのは、「忘れないで 私が いつでもそばにいること」。合わせてシオンの「ふたりは親友だもの それだけは忘れないで」も挙げられた。これを聞いて内田さんは「カイリもシオンも、忘れないでと言ってるところが繋がってるんだなあという感じがしますね」とコメントし、入野さんは「声が一番安定していて凄いと思う」と絶賛。

 他にも、王様の「さあソラ いっしょに鍵をかけよう」やドナルド&グーフィーの「僕らはキーブレード使いじゃないけど ソラのキーブレードをいっしょに握ってるんだ」、「3人で1人前だからね」が選ばれたのを見て、清水氏が「『キングダム ハーツ』の大変で面白いことは、ドナルド&グーフィーや王様はもちろん、ソラ、カイリ、リクという『キングダム ハーツ』の世界観の中に誕生したキャラクターとディズニーのキャラクターが同じ画面の中に存在して一緒にしゃべり、あまつさえそれ以外のいろんなディズニー作品に行く。カルチャーがまったく違うから、最初のころは卒倒しそうになったんですよね。この世界をどうやればいいんだって。でも、それがね、いいんですよ。だんだんあの面白くなってくる」と、音響監督ならではの切り口で語ってくれた。

 続けて発表されたのは、ロクサスの「俺の夏休み−−− 終わっちゃった」と、アクセルの「おまえらが何度逃げようが 俺が何度だって連れて帰ってやる!」という台詞。これには入野さんが「ロクサスが大好きな友達がいて、俺にこの台詞を言って満足してました(笑)」と、プライベートで言われたことをコメント。続けて清水氏が「ロクサスを演じている内田(昴輝)くん、ちょっと下だけど、入野君と似てるとこがあった。10代の半ばぐらいまでは、仕事は自分の意思でやってるっていうよりは大人に見られてやってる感覚がある。ちょっと噛んだりとかすると、怒られると思うよね。そこで先生の顔を見るために後ろを振り向く。先生は怒ってないよと目で告げる。でも入野君と内山君は、子供の時から振り返らなかった。入野君は『くそー!』と言って自分で腹を立てる。内山君は何も言わないけど、拳を握りしめて震えている。2人とも、自分のやりたいことができなかったってことを悔しがる。たくさん子供たちを見てきたけど、そういう態度だったのは2人だけ。同じ態度を取る子供が出てきたら、きっと伸びるはずだと思ってるけど、まだ出てきてない」と、入野さんと内田さんに当時から感心していたことを述べると、これに入野さんが「自分ではわからないから貴重な意見をありがとうございます」と返していた。

 台詞の発表は続き、アクアの「つながっている」、テラの「マスターだろうと関係ない この力 友のために使う!」、ヴェンの「友達が 守るものがいるから強くなれる。つながる心が俺の力だ!」が、さらにはデミックスの「黙れ 裏切者」、アンセム「おいおいおいおい 入ってくるな!」、ナミネ「行くべき場所はないもかもしれない けどね 行きたい場所はあるの 会いたい人はいるの」も選ばれたことが公表された。

 これらを聞いていた清水氏がしんみりと「今日アフレコにまつわる記憶を思い出して、20年やっていると色んな方とお付き合いしたんですが、先ほどちらっと言ったアクセル役を演じた藤原さん。20年っていう時間の中で、残念ながらこの世界の人ではなくなってしまいましたけど、先ほど発表されたセリフを録った時の事をすごい覚えてて、鳥肌が立ったんですよね。基本的に、僕のスタンスとしては客観的に見てやるので、作品の中にあまり没入して自分が感動しないようにしようと思っていつもアフレコやってるんですけど、この時だけはちょっと感動しちゃって」と、2020年に亡くなられた藤原啓治さんに言及する場面も。

 こうして思い出話で盛り上がった3人でのトークは終わりを迎え、壇上には再び野村氏と間氏が現われた。

満を持して「キングダム ハーツIV」が発表!

 ステージに登場した野村氏は「アクセルの話をすると、やっぱりちょっと切なくなりますね」と述べた後、話題を変え「裏でスタッフと話をしていたら、見てる方は腰が痛くなるし、ステージ側は疲労していく。途中で普通に休憩入れればよかったなあと。そんな反省をしつつ、この会もそろそろ終わりです」とコメント。

 そして「皆さん、腰が痛くなっただけで、他に何かいいことあったでしょうか? みんな食いしん坊でしょうし、もっともっともっとということで、最後の最後に見てもらいますかね」と思わせぶりな台詞を言うと会場が暗転、スクリーンに映像が流れ出した。それこそが、大勢のユーザーが待ちに待っていた「キングダム ハーツIV」だった。上映中は会場からは悲鳴にも似た驚きの声があがり、終わると割れんばかりの拍手が巻き起こるなど、このイベント中で間違いなく一番盛り上がった場面だっただろう。

【KINGDOM HEARTS 20th 発表トレーラー】

 ここで、「キングダム ハーツIV」のCoディレクターを務める安江泰氏が登壇し、3人で話を進めていくこととなる。

 口火を切ったのは野村氏で、「あんまり話せないが、とりあえず言っておかないといけないのが、今回見ていただいた映像はすべてリアルタイム。ムービーが1つもないんですよ」と、その口から驚きの報告がなされた。野村氏自身も「最初に森の映像が送られてきた時に、なんで実写の映像を持ってきてんだと。ちょっと悪ふざけが過ぎるぞと思ったら、作りましたよ、と。しかもリアルタイムです」ということで、高いクオリティにヤバいなと思ったそうだ。

 また、ゲーム制作に使用しているエンジンに関しては安江氏が解説してくれ、「今回の映像については、アンリアルエンジン4(UE4)で開発を進めていたんですけど、実は裏で別働隊がUE5を検証しておりまして、最終的にはUE5を使用し更にクオリティの高いものを出すということで動いてます」と、開発内情を教えてくれた。さらに野村氏は「今日見ていただいたのはUE4の映像なので、これ全部捨てる」と、驚きのコメントを追加。「キャラクターもまだ最終形ではなく、ソラがリアルでビックリしたかもしれないですけど、あの世界だからこそああなっているということで、いつもの感じのソラの表現もありますよと。いろんなソラが見られるんじゃないかなと思います」と、キャラクターに関してもまだまだという見解も示してくれた。

リアルよりのグラフィックスになっているソラ。この世界だからこそとのことだ

 ただし、「続報はしばらくない」とのことで、今回の発表は「変な形でリークされないように、公式で先打っておこう」という意図だったそうだ。また、「ワールドに関しても仕込んでいるところなので、それも楽しみにしてほしい」とも付け加えていた。

 間氏は「シリーズが冒頭のテツさんの映像からは終わった感が凄かったように見えたのがね」と突っ込むと、「でも、今日の会場がヒカリエだったこととか、冒頭の俺の映像もヒカリエ。喋ってるところはヒカリエじゃないですが、渋谷の映像もちょこちょこ挟んでいたし」と野村氏が答え、ここにきて冒頭の映像が伏線だったことが明かされ、会場はすっかりステージの2人に呑まれていた。

 また「キングダム ハーツIV」ではロゴが変わることも、野村氏の口から告げられた。その理由としては「“ダークシーカー篇”が終わって“ロストマスター篇”が始まるから」だそうで、ロゴ制作も試行錯誤が大変だったと吐露。他にも、「VERUM REXが次回作ではという噂がファンの間にはあったけれど、次の1作を悩んだのは確かです。でも、全力で作る作品をどちらにするかなと考えて、結果「IV」でいこうと決めた。VERUM REXでいく未来もあったんですけど、やっぱりみんなソラが気になるかな」ということで、噂されていた方向ではなく「IV」に舵を切った背景も語られた。

 「IV」に関しては現時点で発表できる内容は以上ということで、続報をお待ちいただきたいと間氏がコメントすると、「1ついいですか?」と野村氏。さらなる発表か!? と思い注目したのだが、「続報はE3のタイミングではありません」とのことだった。また、「現時点では“このワールドありますよ”とも言えないし、“このキャラ出ますよ”も同じく言えない。ただ、『ミッシングリンク』のナレーションがあったじゃないですか。声色を変えてもらってるんですけれど、同じ方なんです」と、最後に大きなヒントを残してくれた。

 これでイベントは終了……と思いきや、サプライズで宇多田ヒカルさんからのビデオメッセージが上映された。そこでは、20年もの長きに渡って一緒に歩んでいくとは思わなかったので感慨深いこと。毎回、日本語と英語の両方の歌詞を書くのは難しいこと。さらには自身がまだ「キングダム ハーツ」をプレイしたことがないものの、子供が成長してゲームを遊ぶようになったら一緒に楽しもうと思っていることなどが語られ、3時間にわたったイベントは終了を迎えた。

イベント最後には、出演者のフォトセッションが行なわれた。左から順に間氏、下村氏、入野さん、内田さん、スクウェア・エニックス ホールディングス理事で「キングダム ハーツ」シリーズ初代ブランドマネージャーを務めた橋本真司氏