【特別企画】
「LoL WCS2021」グループステージは本日20時開始! 日本代表「DFM」悲願のベスト16入りをふりかえる
2021年10月11日 18:49
- 【Worlds2021】
- 10月5日〜11月6日 開催
日本のチームが初めて世界大会に出場したのが2015年。当時の日本には自国サーバーがなかったこともあり、「弱小リーグ」として扱われていたが、それから6年の時を経て悲願のグループステージ進出となった。リアルタイムで観戦していた筆者も歓喜の声をあげてしまった。抱き合う「DFM」の選手たちを見ていると、こちらまで目頭が熱くなった。
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— LoL Esports (@lolesports)October 7, 2021
「LoL」は、ライアットゲームズによるPC用MOBAで、世界で最もプレイされているオンラインゲームだ。その今年1年のプローシーンを締めくくる公式大会「WCS2021」では、世界中から各リーグの上位チームが集まり、「LoL世界1位」の座を1カ月をかけて争う。1年で最大の「LoL」eスポーツ大会であり、世界中の「LoL」ファンが注目している。
今年の「WCS」には、世界各地から全22チームが出場し、「プレイイン」、「グループ」、「ノックアウト」と3つのステージを勝ち抜いていくこととなる。「LJL」のような新しく、強豪リーグに比べて世界戦で結果を残せていないリーグのチームにとっては、「プレイイン」を勝ち抜き、強豪リーグの上位チームがシードとして待つ「グループステージ」に進むことが第1の目標となる。
そのプレイインステージには「DFM」を含む10チームが参加。5チームずつ2つのグループに分かれ、グループステージへの参加枠をかけて争った。「DFM」はグループBに配属され、北アメリカリーグ(LCS)の強豪チームで因縁の相手でもある「Cloud9」とのプレイオフを制し、グループ1位でグループステージへ進出した。
本稿では、そんな「WCS2021」における「DFM」の“これまでの戦い”を記載している。本日24時から始まる、「DFM」のグループステージ初戦「T1」戦に向け、これまで応援していた人も、グループステージ進出と聞いてこれから応援しようと思っている人も、プレイインテージの試合をおさらいして気分を上げてほしい。
初日は因縁の相手である「UOL」に勝利し、これまた因縁の相手である「C9」に敗北
プレイインステージ初日、「DFM」の初戦の相手となったのは独立国家共同体リーグ(LCL)代表の「Unicorns Of Love(UOL)」だ。プレイインは各チームと1試合ずつしか戦わないルールのため、初戦で勝利し勢いをつけられるかが重要となるのだが、まだ日本のチームは「UOL」に1度も勝ったことがない。「UOL」ミッドのNomanz選手の攻撃的なプレイが強力なチームで、彼を抑え込んで勝利できるかが注目だった。
試合は序中盤こそトップレーンでオブジェクトの不利を背負ったものの、Steal選手の「タロン」が機動力を生かしながらキルを取り、ドラゴンを獲得。獲得ゴールドで差をつけられないよう、うまく耐えながら試合をコントロールしていった。
試合が終盤にさしかかると「DFM」は得意とする集団戦で見事なプレイを連発。Geang選手の「レオナ」の見事な仕掛けや、育った「タロン」とYutapon選手の「ミス・フォーチュン」、Aria選手の「ルブラン」というキャリー陣の得意ピックが仕事をし続け、それまでの不利をひっくり返すと、そのまま圧倒。バロンを獲得して有利を決定的にした後はそのままの流れで、相手のネクサスを破壊して勝利した。
このままの勢いで勝ち続けたい「DFM」に立ち塞がったのが、北アメリカリーグ(LCS)の強豪チームである「Cloud9(C9)」だ。LCSは世界4大リーグの1つであり「WCS2021」には3チームを送り出している。「C9」は国内第3シードとして本大会の出場権を得たため、シード権を獲得できずにプレイインからのスタートとなるが実力は本物。前評判では、ほぼ確実にグループリーグに駒を進めることができるとされていた。
また、「C9」は「DFM」にとっても因縁深いチームでもある。「DFM」は2018年のWCSでも「C9」と対戦し、あと一歩のところで敗北している。また、今年行なわれたの春大会である「Mid-Season Invitational(MSI)」では2度も戦い、大番狂わせとなる1勝をもぎ取りながらの1勝1負とし、多くのファンに「DFM」の可能性を感じさせた。そんな「C9」との戦いは、勝てばグループステージ進出に大きく前進する重要な試合だった。
この重要な1戦は、経験豊富な「C9」がBan/Pick(チャンピオン選択)から優位に進めていく展開となった。「DFM」Aria選手の得意ピックで、国内でも1度も倒されていない「ルブラン」をBan(使用禁止)せず、敢えて取らせるように誘導。加えてEvi選手が得意ピックである「ナー」をピックしたのを見ると、ルブランにも、ナーにも強い「サイラス」をピックした。確かにAria選手のルブランは強力だが、「C9」のミッドを務めるPerkz選手は世界レベルで活躍する選手。ピック段階で有利をとってしまえば、負けることはないという判断だろう。
ピックで不利を背負ったこともあり、試合は終始「C9」のペースとなってしまう。序盤から「C9」のジャングル、Blaber選手の動きもあってトップで大きな優位を築かれ、ミッドではAria選手が「C9」のボットレーン2人のガンク(奇襲)でキルをとられてしまう。
「DFM」はカウンターを狙うものの、「C9」は冷静に対応していき、ミスなく有利を広げていく。結果、最後までPerkz選手のサイラスに暴れられ、完封勝ちのような形で「C9」が勝利し、DFMは1勝1敗で初日を終えることとなった。
何としてもなりたい2位を確定させた「テレポート」
「C9」との因縁の戦いには敗れ、グループ1位での突破は困難となったが、グループ2位での通過はまだ可能な状況で迎えた2日目。プレイインステージでは、各グループ1位になるとそのままグループステージへの進出が決定するが、2位になると別のリーグの3位と4位チームで行なうプレイオフの勝者と戦い、そこで勝ち残ったチームがグループステージに進むことになる。
ただし、プレイインステージで3位以下になってしますとプレイオフに勝ち残った後、Aグループ2位のチームと対戦することになる。まだ芽はあるように思えるが、問題なのは、Aリーグには中国リーグ(LPL)代表の「LNG Esports(LNG)」と韓国リーグ(LCK)代表「Hanwha Life Esports(HLE)」という、優勝候補ともいえる2チームが配属されていることだ。3位以下になると、このどちらかと戦わなければならないため、少しでもプレイインテージ突破の可能性を広げるのであれば、グループBで2位になるのはほとんど必須。そのためにもここから先の試合は落とすことができなかった。
2日目の相手は初日を2連勝で迎えたトルコリーグ代表「Galatasaray Esports(GS)」。試合は序盤から両チーム共にボットレーンでキルを取り合うと、続けざまにボットで交戦が起こる展開に。両チームのジャングラーがボットに向かい、3vs3の集団戦になるかと思いきや、そこにトップからEvi選手の「アーゴット」がテレポートで合流。一方の「GS」のトップであるCrazy選手は、レーンに戻るためにテレポートを使用しており、合流することが不可能な状態だった。
Evi選手の強襲は見事に刺さり、「DFM」が1キルを獲得。Evi選手はさらに、敵のフラッシュ(移動スペル)先を読んだ見事なスキルショットを決め、追加でキルを獲得した。テレポートの有無が圧倒的な有利を生んだ形だ。試合はそのまま、育った「DFM」の面々が圧倒していく。途中、GSが集団戦で食らいつくシーンもあったが、「DFM」は集中力を切らさずにゲームを運び、勝利した。
続く3日目、相手チームは東南アジアリーグ代表の「Beyond Gaming(BYG)」。前評判では「C9」と並んで強力なチームとされ、特にボットのDoggo選手の動きは注目されていた。「DFM」にとっては、勝てば2位が確定する大事な戦い。勝負を決めたのはまたしてもEvi選手のテレポートだった。
試合は開始2分の時点で再び「アーゴット」をピックしたEvi選手がトップレーンでのダメージトレードで優位にたち、相手にテレポートを使用させるとに成功。そのタイミングで「BYG」のジャングラー、Husha選手がボットレーンにガンクを仕掛けたのを見て、Evi選手はボットにテレポート。そこに両チームのミッドレーナーもテレポートで駆けつける展開となったが、「DFM」は一方的に2キルを獲得。1試合目と同様に、テレポートを活用しリードを作った。
「DFM」は最序盤についた差をそのまま手放すことなく、全てのレーンで勝利。キルとオブジェクトを次々と獲得し、最終的には22キル対4キル、タワーを1本も折らせないという完璧な形で勝利した。この時点で「DFM」は2位を確定させ、Aリーグ2位の「HLE」との対決を避けることに成功。グループステージ進出に大きく近づいた。
「UOL」から託されたバトン。「C9」を再戦で撃破という熱いドラマ
しかし、ここからがこの日の本番、まさかの展開が待ち構えていた。グループBは最終戦、「C9」と「UOL」の試合を残していた。「UOL」はここまで0勝3敗ではあったが、ここで勝てば「BYG」との4位決定戦を行なうことができ、グループステージへの望みをつなぐことができる。そのため、残った力をふり絞り、全力で「C9」に挑むこととなった。一方の「C9」は、ここで勝てば1位でグループステージ進出決定。負ければ「DFM」と1位決定戦を行なうこととなるため、全敗の「UOL」相手でも気が抜けなかったはずだ。
当然、ここまで全勝の「C9」が、ここまで全敗の「UOL」に敗北することは考えにくいが、何が起こるかわからないのが「LoL」のプロシーン。なんと「UOL」は格上である「C9」に対して、メタではない「セナ」と「サイオン」の組み合わせによる奇策を投入。これが見事にはまり「UOL」が「C9」に勝利したのだ。これにより、「DFM」と「C9」は3勝1敗で並び、まさかのタイブレイクに突入することとなった。
ライバルからバトンを受け取った「DFM」は、前回の反省を生かしてか、Ban/Pickの流れを大きく変えた。「DFM」はミッドレーンでピックされる「ツイステッド・フェイト」、「サイラス」に加えAria選手の得意な「ルブラン」まで自らBanし、Perkz選手の封じ込めを狙う。対する「C9」もこれまでの試合の結果を踏まえて、Evi選手の「アーゴット」をBanした。
ピックは、「DFM」が「オリアナ」、「エズリアル」をキャリーとした、序盤こそ弱いものの、集団戦では強力な構成をとった。対する「C9」は「ジェイス」、「ゾーイ」という遠距離からダメージを出し、レーン戦で強力な「ミス・フォーチュン」で序盤から優位をとっていく構成だ。「DFM」にとっては、いかに序盤を耐えてキャリー陣の装備が整うのを待つか、その後、相手の遠距離からの攻撃をどう掻い潜って集団戦を仕掛けるかが勝利の鍵となる組み合わせだ。
試合は序盤、「C9」のサポート、Vulcan選手の使う「アムム」がスキルショットをミスし、無防備に敵前に出る形に。そのミスを見逃さなかった「DFM」は、Yutapon選手がファーストキルを獲得。その後もSteal選手がボットガンクを決め、本来序盤は不利なはずのボットレーンで優位を築いた。
一方の「C9」は、ジャングルの序盤に強いチャンピオン「オラフ」を活かし、「ドラゴン」や「リフトヘラルド」といったオブジェクトを獲得していく。「DFM」の面々が装備を整える前に、ドラゴンを獲得していき、素早く試合を終わらせるためにテンポをあげていく作戦だ。
試合が20分に差し掛かったタイミングで仕掛けたのは「C9」。「アムム」のフラッシュからの仕掛けで集団戦を狙うも、これに対して「DFM」が見事に対応。マップを広く使って一旦引き、カウンターの形を作って集団戦に勝利、大量のゴールドを獲得した。
その後の集団戦でも「DFM」は勝利しバロンを獲得したものの、「C9」も粘りをみせる。序盤に獲得していたドラゴンの有利を活かし、集団戦後の僅かな隙をついて4体目のドラゴンを撃破し、チームの火力を上昇させる「インファーナルソウル」を獲得。火力とミニオン処理能力を得て、DFMに対してプレッシャーをかけていく。
試合は33分、倒すと絶大なバフを得られる「エルダードラゴン」をめぐる集団戦で勝負が決まった。ドラゴン前にポジションを取った「C9」に対し、「DFM」は裏に回って攻める形をとった。ポジショニングや視界で有利をとっている「C9」に対して、攻めなければいけないという難しい状況を打開したのは、Evi選手の「セト」だった。
Evi選手は、相手の仕掛けに対し、前に出ながら敵の攻撃を受けることで敵陣に隙間を作ることに成功。そこにSteal選手の使う「シン・ジャオ」が飛び込んで、敵のキャリーである「ミス・フォーチュン」をキル。更にはこの2人を壁にする形でAria選手とYutapon選手が火力を出し集団戦に勝利。これにより「DFM」がエルダードラゴンとバロンを両方獲得した。
2つの強力なバフを手に入れた「DFM」は、そのまま試合を決めにいき、敵ネクサスに侵攻。「C9」も最後まで火力を活かして追い返そうとするが、またしてもEvi選手が一瞬の隙をついて仕掛け、「ミス・フォーチュン」をキル。これにより火力がなくなった「C9」の陣形は崩壊。「DFM」の面々がエルダードラゴンのバフを活かして「C9」のメンバーを次々と撃破し、そのままネクサスを破壊して勝利した。
国内チームの初のグループステージ進出、しかも、因縁の相手、かつ強豪チームである「C9」を破ってのグループ1位通過ということもあり、勝利の瞬間「DFM」の選手達は立ち上がり、抱き合って喜んだ。キャスター陣も歓喜の声をあげたほか、ツイッターでは「#DFMWIN」がトレンド入りをするなど、盛り上がりを見せた。
現場の熱量がすごい!🔥
— Riot Games Japan (@RiotGamesJapan)October 7, 2021
配信を支えてくれているスタッフの皆様も、ありがとうございます✨✨#DFMWIN#Worlds2021https://t.co/MjpRFsKVNQ
グループステージの相手は伝説のチームと、かつて敗れた強豪チーム
「LJL」は世界的に見れば下位のリーグで、「LoL」の日本サーバーは現在も人口の少ないサーバーの1つだ。にも拘らず、初出場から6年目の快挙。「LJL」ファンでもある筆者としても感慨深いものがある。
ここから先は、国内チームにとって初のグループリーグという未知の領域となる。プレイインステージで「DFM」は相手のミスをしっかりと咎めるプレイをする一方で、自分たちは大きなミスをせず勝利を掴んできた。「DFM」のプレイはハイレベルで、特に集団戦での連携は目を見張るものがあった。少なくとも、「DFM」は新興リーグの中ではトップクラスのチームに位置しており、4大リーグのチームに対しても、一矢報いる可能性が十分にあるだろう。
とはいえ、ここから当たるチームは4大リーグのトップチーム。どれも格上のチームであり、ミスをせず、相手の小さなミスは確実に突いてくる強豪ばかりだ。
「DFM」にとっては、 グループステージで1勝するだけでも大きな成果といえるだろう。しかし、何が起こるかわからないのが「LoL」。「DFM」の選手達には1試合1試合の勝利を、そしてその先にあるノックアウトステージ進出を目指し、精いっぱい戦って欲しい。
The#Worlds2021Groups!pic.twitter.com/9Q1gMf9JB9
— LoL Esports (@lolesports)October 9, 2021
さて、本日10月11日より行なわれるグループステージでは、4チームずつのグループに分かれ、グループ内で各チームが2回ずつ対戦し、上位4チームがノックアウトステージに進むこととなる。
「DFM」が配属されたのはグループB。LPL代表の「Edward Gaming(EDG)」、LCK代表「T1」、LCS代表の「100 Thieves(100T)」と争う。最後に、これらのチームを簡単に紹介しておこう。
「EDG」は本大会の優勝候補筆頭。2018年の「WCS」では「DFM」を圧倒し、日本に対して世界の壁の高さを突き付けたチームでもある。Viper選手とMeiko選手の超強力なボットレーンに対し、Yutapon選手とGaeng選手がどこまで戦えるかが注目だ。
「T1」はかつての世界王者である「SKT T1」を前身としたチームで、「LoL」でもっとも有名な伝説のプレーヤーFaker選手が所属している。ミッドレーナーであるFaker選手に対し、Aria選手がどのようなプレイを魅せてくれるのか気になるところだ。
「100T」はベテランであるトップのSsumday選手とEvi選手のマッチアップが気になると同時に、ジャングルのCloser選手と、ミッドのAbbedagge選手の動きに注目したい。Steal選手とCloser選手のマップコントロールの争いや、ミッドレーンとの連携が見どころとなりそうだ。
特に「EDG」と「T1」は、本大会の中でもトップに位置するチーム。そんな両チームに対して「DFM」がどのような試合を魅せてれるのかが楽しみだ。