【特別企画】

ヌルヌル動くって本当? モニターの“144Hzと60Hzの違い”は中学生に分かるのか?「Apex Legends」で比べてみた

そもそもリフレッシュレートって何?フレームレートとどう違うの?

 検証を行う前に、前提となる基礎知識について解説したい。ゲーミングモニターは、その名の通り、ゲーミング向けとして設計されたモニターであり、一般的なモニターとは要求されるスペックが異なる。ゲーミングモニターで最も重視されるスペックが、リフレッシュレートだ。

 リフレッシュレートとは画面を描き換える周期(頻度)のことである。リフレッシュレートの単位はHzで表される。例えば、リフレッシュレートが60Hzなら、そのモニターは1秒間に60回画面を描き換えていることになる。通常のPC用モニターのリフレッシュレートは60Hzであるが、これは60Hzあれば、ネットサーフィンや文書作成、動画視聴といった、一般的な用途には十分とされているからだ。テレビ放送やネット動画、BDなどの動画コンテンツも60Hzを前提としているため、家庭用テレビも基本的には60Hzの製品が主流である(画像補完による倍速駆動で120Hzを実現している製品もあるが、ゲーム用の機能ではなく、eスポーツ系のゲームにおいてはむしろ不要)。

 しかし、ゲーム、ことに素早い動きが重要になるFPSやTPSなどの場合、リフレッシュレート60Hzでは十分とはいえないのだ。リフレッシュレート60Hzということは、画面を描き換えるのにかかる時間は、1秒間を60回で割った、16.67ミリ秒(0.0167秒)となる。例えば、ゲーム中、マウスを操作して後ろを振り向くのに0.2秒かかったとすると、その180度分の動きが、0.2÷0.0167=約11.9なので、11~12回の画面描き換えで表示されることになる。12回だとすると、1回あたり180÷12=15で、画面の描き換え1回ごとに15度分動いた映像が表示されるわけだ。

 これが仮に、リフレッシュレートが2倍の120Hzだとすると、1秒間に120回の描き換えが可能なので、0.2秒では24回、画面を描き換えられる。その場合、画面の描き換え1回ごとに7.5度分動いた映像が表示されることになる。基本的にFPSやTPSでは、リフレッシュレートが高くなっても、ゲームの速度自体が早くなるわけではないが、映像と映像の差が小さくなり、より滑らかに感じられるのだ。

映像のスピードに対してリフレッシュレートが追いついていない場合、このようにブレた画面が表示されることもある

 ゲーミングモニターのリフレッシュレートとは、最大で1秒間にその回数までの描き換えが可能なことを示す数値であり、いわば大が小を兼ねる数値でもある。高速ゲーミングモニターを接続すれば、必ずゲーム中の画面描き換え速度が上がるというわけではない。実際にゲームの映像を出力するPCの性能によるからだ。

 実際のゲーム中で1秒間に映像が描き換えられる回数を表す言葉がフレームレートである。単位はfps。ゲームジャンルのFPSと紛らわしいが、こちらはFrame Per Second、ゲームのジャンルはFirst Person Shooterの略だ。本稿ではフレームレートの単位は小文字でfps、ゲームジャンルの方は大文字でFPSと表記する。

 ゲーム中のフレームレートは、描画の負荷の大きさによって上下するが、実効的なfpsがモニターのリフレッシュレートの値を超えることはない(fps表示機能ではリフレッシュレートを超える数値が出ることもあるが、あくまで処理時間から計算したもので、実際に300fpsとかになっているわけではない)。つまり、ハイリフレッシュレートのモニターを使う場合、そのリフレッシュレートと同等以上のfpsを出せるPCでないと、せっかくのモニターも真価を発揮できないのだ。

 当然、同じPCでも、ゲームが異なれば、出せるフレームレートも変わってくる。ゲーミングモニターのリフレッシュレートとは、表示可能なfpsの天井を示すものだと考えてよい。だから、144Hzよりも180Hz、240Hzのほうが当然、余裕があるわけだが、その分、モニターの価格も高くなる。また、ゲームも年々高画質化が進み、PCへの負荷が高くなっているため、数年前のゲームで144fps出せたとしても、最新ゲームでは半分も出ないといったことはよくある。もちろん、ゲームの描画設定を下げて、負荷を軽くすればfpsは向上するが、見た目の綺麗さとのトレードオフとなる。

 また、60Hzと144Hzでは、1フレームの描画時間の差は約0.01秒だが、144Hzと240Hzではその差はわずか約0.003秒ほどなので、それだけ差が分かりにくくなる。そういったもろもろの点を考慮すると、現時点でゲーミングモニターを買うならリフレッシュレート144Hzの製品が、コストパフォーマンス的にもお勧めであろう。

 また、リフレッシュレートが60Hzのモニターの場合、27インチ以上では4KなどのフルHDを超える解像度の製品も増えているが、リフレッシュレートが61Hz以上のモニターでフルHDを超える解像度に対応している製品は少ない。これには、二つの要因がある。

 一つは解像度が高くなれば、それだけ高性能なPCが必要になるためだ。例えば、4KではフルHDに比べて縦と横の解像度が2倍になっているため、ドット数は4倍になる。つまり、描画の負荷も4倍になるのだ。それに対し、フルHD解像度のまま、フレームレートを60fpsから144fpsに上げる場合は、描画の負荷は2.4倍で済む。4K解像度でフレームレートを144fpsにした場合は、そのかけ算になるので、フルHD/60fpsと比較した場合の描画の負荷は、約10倍にもなる。超ハイエンドゲーミングPCでなければ、ハイリフレッシュレートかつ超高解像度でのゲームプレイは難しいのが現実だ。

 もう一つの要因は、プロゲーマーなどは、見た目の綺麗さ、精細さよりも、高いfpsを維持できることを優先するため、ゲーミング用途では高解像度の優先順位は低いのだ。

 説明が長くなったが、ゲーミングモニターを初めて購入するのなら、現時点では、eスポーツ系タイトルで勝ちを狙うのであれば、フルHD解像度でリフレッシュレート144Hzの製品が、費用対効果はもっとも優れているといえるだろう。もちろん、「Core i9」+「GeForce RTX 3080」のような超ハイエンドゲーミングPCをお持ちの方なら、リフレッシュレート240Hzのハイエンドゲーミングモニターと組み合わせることで、PCの性能をフルに発揮できるようになる。大体の目安だが、「Core i7」+「GeForce GTX 1070」/「GeForce RTX 2070」くらいのPCなら、リフレッシュレート144Hzのゲーミングモニターがスペック的にはちょうどよい。解像度は、フレームレート最優先ならフルHD、解像度も少し高くしたいならWQHD(WQHD(2,560×1,440ドット)の製品がオススメだ。