【特別企画】

新エージェント「キルジョイ」解禁! 国内初のリーグ「VALORANT Mildom Masters」が開幕

Absolute JUPITER、REJECTら強豪が順調な立ち上がりを見せる

8月20日開催

 8月20日、Mildom主催の「VALORANT」のプロリーグ「VALORANT Mildom Masters」(以下VMM)の第1回が開催された。「League of Legends」を手掛けたRiot Gamesによる新作FPS「VALORANT」はその競技性の高さから世界で大きな注目を集めているが、「VMM」は「VALORANT」を使った国内初のリーグ大会になる。本リーグは8月20日から10月15日までの毎週木曜日、Mildom及びTwitchで配信される予定だ。

 「VMM」には8つの国内チームが招待されており、彼らはこれから7週にわたってBO1の総当たり戦を行なっていく。予選リーグでTOP4に入ったチームは続くプレイオフラウンドへ進出でき、それを勝ち抜いた優勝チームには賞金100万円が贈られる。本リーグはRiot Games公認リーグではないものの、毎週木曜にハイレベルな試合が見られるというのは、「VALORANT」ファンにとっては嬉しいものだ。

【VALORANT Mildom Masters】
実況解説は、GGC 2020にも出演した岸大河氏とyukishiro氏
招待チーム一覧

 また本大会には優勝チームを含め、出場チーム全員に賞金が用意されているのもポイントだ。長期に渡って選手たちに活躍の場を与え、賞金も潤沢に用意された「VMM」のようなリーグは、選手たちにとって非常にありがたい存在だろう。今後このような国内リーグが増えるためにも、「VALORANT」ファンには是非「VMM」を支持してほしい。本稿では、そんな「VMM」第1回の模様をレポートする。

賞金総額は250万円
大会レギュレーション

新エージェント「キルジョイ」は競技シーンで戦えるのか?

 今回注目すべき点のひとつが、8月5日にリリースされた「ACT2」アップデートで新規に追加されたエージェント「キルジョイ」の存在だ。先日開催された大型大会「GALLERIA GLOBAL CHALLENGE」ではキルジョイはBANされていたため、「VMM」はキルジョイが解禁された初の国内大会となる。

キルジョイ

 タレットやトラップを設置するスキルを持つキルジョイは、防衛やサポートに適するとされるセンチネルに区分されるエージェントだ。キルジョイのスキルは全体的にエリアへの制圧力が非常に高く、またUltは範囲内の敵の動きを止める強力なもので、その性能はコミュニティから高い評価を得ている。しかし同時に、センチネルには他にもサイファーやセージなど強力なエージェントが多く、キルジョイを採用する際にどのエージェントを削るべきか悩ましいポイントだ。

 「VMM」第1戦では、第2試合のSunSister対REJECTの一戦が双方キルジョイを採用した編成の戦いとなっていた。まずはこの試合に注目して、キルジョイの競技シーンにおける立ち回りについて見ていきたい。

第2試合SunSister VS REJECT

 本リーグのMAP選択は、PICK/BAN形式になっている。双方が1MAPをBANし、その後片方のチームが任意のMAPを選択。選択権を与えられなかったチームが開始時の防衛・攻撃のサイドを選択できる形式だ。この試合ではREJECTがSPLITを、SunSisterがBINDをBANし、その後REJECTがASCENTをピックした。

MAP選択はPICK/BAN方式

 両チームの編成を見てみると、どちらもセージを外してキルジョイを採用していた。ゲームのリリース時は必須エージェントとして重宝された唯一のヒーラーであるセージだが、徐々にセージを採用しない編成が主流になりつつある。全体的に両チームの編成はほぼ同じだが、SunSisterはソーヴァを、REJECTはフェニックスを採用している点で異なった。REJECTの方がいくらか攻撃的な編成であるといえるだろう。

両チームのエージェント編成

 本試合は前半戦、防衛側であるSunSisterがゲームを有利に進め、ラウンド差は一時7-1まで開いていた。このリードには防衛側、Skyfull選手が操るキルジョイの動きが一役買っていた。Skyfull選手はBサイトにタレット及びアラームボットを設置することで守りを固め、その他4名の選手はそれぞれミッドとAサイトを集中して守っていた。アラームボットが敵の接近を通知してくれるのは言わずもがな、タレットも時間稼ぎはかなり有用だ。というのも、タレットは攻撃力こそ低いものの、耐久値が120以上とかなり高く、また着弾時にヒットストップが発生するため、タレットがあるだけで敵の攻撃はかなりペースが落ちる。そのため、他4名がBサイトを留守にしていてもキルジョイだけである程度守りがきき、リテイクも容易になるというわけだ。

 また、キルジョイのナノスワームというスキルも防衛戦で非常において強力だ。発動から5秒間周囲に連続ダメージを与えるこのスキルだが、特筆すべきなのは設置してから任意のタイミングで起動できる点だ。有効なポイントに設置しておけば、複数の敵が範囲内に入るのを待ってから発動することもできる。実際この試合でSkyfull選手はB地点の小屋に隠したナノスワームを発動することで、ダブルキルを達成していた。

Skyfull選手ダブルキルのシーン

 前半終了時点でSunSisterが7-5で有利という展開になっていたが、ここからREJECTの反撃が始まった。REJECTは新規に加入したEROC選手がキルジョイを操っていたが、こちらはBサイトではなく、AサイトやAサイトにつながるキャットウォークを固めるためにキルジョイを使っていた印象だ。反対にSunSisterは攻撃に回ってからのキルジョイの運用に多少苦労していたようだった。やはりキルジョイのスキルはどれも防衛向きなものが多く、特にタレットやアラームボットは攻めで活用させるのは中々難しいようだ。

 スコアを巻き返すにつれ徐々に勢い付いていったREJECTは、やはりDep選手やHaReee選手の個人技が光っていた。第17ラウンドでは8-8同点の状態からDep選手がオペレーターでの4人抜きを決め、チームをパーフェクト勝利へ導いた。特に3キル目、相手オーメンのスモークを見てヘヴンから降りていった勇敢なプレイングは圧巻だった。このプレイはチームの士気を上げるのに一役買ったことだろう。

Dep選手4人抜きのシーン

 試合を決したのは第22ラウンド、この時点でのスコアは9-12のREJECT有利だった。まずSunSisterはBサイトへ攻撃を進めたが、EROC選手キルジョイとFeez選手オーメンの守りの前に2人失ってしまう。その後SunSisterはAサイトに照準を切り替えるも、ミッドで待ち構えていたHaReee選手がUltを発動して残りの3人を鮮やかにキル、試合はREJECTのパーフェクトラウンドで幕を閉じた。試合後のインタビューでキルジョイの性能について尋ねられたDep選手は「めちゃくちゃ強いと思います」と語り、次週以降への意気込みを聞かれると「全勝を目指すので応援をよろしくお願いします」と語った。

最終ラウンドはREJECTがパーフェクト勝利

今後Absolute JUPITERを倒すチームは現れるのか?

 本リーグの注目ポイント2つ目は、あはりAbsolute JUPITERの存在である。Absoluteは「CS:GO」時代から国内のFPSシーンでは敵なしと言われていたが、先日の「GGC」でも鮮やかな優勝を決めるなど、彼らは今国内の「VALORANT」シーンにおいて圧倒的最強チームとして君臨している。本大会の優勝候補筆頭もやはりAbsoluteであり、反対に言えばAbsoluteを止められるチームが登場するか否かが見どころの一つとなってくる。本リーグの形式は決勝までの全試合が血も涙もないBO1だ。この形式であれば、「GGC」決勝でREJECTがAbsoluteから1ゲーム選手したように、番狂わせもあり得ない話ではない。

 「VMM」第1回目のAbsoluteの対戦相手はSCARZとなった。SCARZは「CS:GO」のトッププレイヤーをそろえた国内強豪チームの一角で、8月初旬に開催された「RAGE VALORANT JAPAN TOURNAMENT」ではグランドファイナルでAbsoluteと相まみえた。結果はAbsoluteの2-0勝ちとなったが、公式戦でAbsoluteと対戦した経験を活かせば、今回のBO1でAbsoluteに対して勝利することも不可能ではないだろう。

Absolute VS SCARZ

 試合はAbsoluteがSPLITを、SCARZがBINDをBANし、選ばれたMAPはASCENTとなった。両チームの編成はオーメン、ソーヴァ、サイファーまでは同じで、SCARZはキルジョイとセージを、Absoluteはレイナとジェットを採用していた。SCARZはセンチネルを3体採用した構成となっており、これは防御や索敵に特化した編成と言える。反対にAbsoluteはデュエリストを2体採用しており、特にTakeJ選手のレイナはゲーム中屈指の攻撃的な性能を持つエージェントだ。

 この編成を考えれば、SCARZ側はまず前半の防衛側でスコアを稼いでおきたいところだ。SCARZはその思惑通りピストルラウンドに勝利し、そのまま4-4までは拮抗した展開が続いたものの、徐々にAbsoluteがSCARZの守りに穴を見出していく。例えば9ラウンド目、SCARZ側のキルジョイがAロングの入り口にナノスワームを設置していることがわかると、Absoluteは3人割いてキャットウォークからAサイトへ侵入。TakeJ選手がファーストキルを決めると、ライフオーブを消費してディスミスを使いTakeJ選手が索敵、そのまま4キルを決めて見せた。チーム一丸となってレイナの攻撃的な特性を生かす攻めに、SCARZ側は対応しきれていない様子だった。

レイナの透明になるスキル「ディスミス」

 そしてAbsoluteは防衛に回っても強かった。圧巻だったのは攻守が逆転した後半第14ラウンド。SCARZ側はAとBに分散して攻めを試みるもAbsoluteは華麗にその攻撃捌き、瞬く間に人数差は4-1のAbsolute有利に。残されたSCARZのryota選手は一人でも多く敵を倒して後続のラウンドを有利に進めたいところだったが、マーケットにいたところ、Bサイトにいたcrow選手のリーコンボルトが飛んできた。これによりryota選手の位置がバレ、すかさず駆け付けたBarce選手のオーメンがパラノイアで視界を塞いでキル。最後の一人まで手を緩めないAbsoluteの完璧な連携だった。

はるかBサイトから飛んできたリーコンボルト

 SCARZはその後も手を変え品を変え攻めてみるが、一向にラウンドは取れない。勝負を決したのは第17ラウンド、SCARZはキルジョイのUltを使ってBサイトへラッシュをかけるも、crow選手がロックダウンの範囲外から2キル。さらに裏から回っていたTakeJ選手も追加で2キル。その後SCARZ側は残されたオーメンが瞬間移動Ultを使って強引に設置までこぎつけるも、これに対してはLaz選手がすぐさま対応してキル。連携の取れた守備にSCARZはなすすべもなく、試合は13-4という大差でAbsoluteの勝利となった。

悠々と解除するLaz選手

 勝利インタビューでLaz選手はチームは「GGC」後イベントなどで忙しく、チームとしてキルジョイ対策の練習はできていなかったことを明かした。それでいてここまで圧倒的な展開を作ることができたのは、彼らの地力の強さにあるのだろうか。次週以降への意気込みを聞かれるとLaz選手は「全勝を目指していきます」と力強く語った。

DAY1を終えての順位表

 「VMM」ではAbsoluteが宣言通り全勝優勝を果たしてしまうのは、はたまたどこかで番狂わせが起こるのか。毎週木曜日は「VMM」を要チェックだ。