【特別企画】
【特別企画】ゲームにこだわる人こそ遊ぶべき「レゴ ムービー2 ザ・ゲーム」
ブロックを組み立てて世界を変える楽しさ、ゲームの楽しさって何だろう?
2019年3月28日 07:00
3月29日の映画公開に1日先がけて発売されるプレイステーション 4/Nintendo Switch用ブロックビルドアドベンチャー「レゴ ムービー2 ザ・ゲーム」。映画のストーリーをベースに、世界をインタラクティブに冒険できるブロックビルドアドベンチャーだ。
ワーナーの「レゴ ゲーム」の面白さは、これまで弊誌で繰り返し伝えてきた。「レゴ マーベル スーパー・ヒーローズ2 ザ・ゲーム」「や、「LEGO スター・ウォーズ/フォースの覚醒」のレビューなどを参考にして欲しいが、開発元のTT Gamesは、作品を重ねるごとにそのノウハウ、ストーリーテリング、演出技術を積み重ね、今や世界の人々が楽しみにするシリーズとなった。
一方で、やはり興味を持ってもらえないところもある。本作は低年齢層向けに見えるし、実際ゲームの難易度そのものも低い。コアなゲームを求めるファンには「レゴ ゲーム」の魅力が伝わりにくい。そこで、今回は正面からどっしりと作品を紹介するレビュー形式ではなく、特別企画として、いくつかのポイントに絞った紹介をしたい。
“ゲーム”ってなんだろう? 映画にはないインタラクティブ性、プレーヤーが操作することで得られるエモーショナルな体験、クリエイターが提示する無茶な難易度をプレーヤースキルでクリアしていく爽快感、現実では味わえない体験の提示……方向性は様々だ。そういったクリエイターが突き詰めるゲームの楽しさを、本作は「LEGO ゲーム」という文法で突き詰めている。その凄さを、改めて紹介していきたい。
何でもレゴで解決! これまで以上に能動的なプレイスタイル
「レゴ ムービー2 ザ・ゲーム」は、映画「レゴ ムービー2」の世界がベースになっている。キャラクターも建物もレゴのジオラマのような、全てがレゴで組み立てられた世界。主人公・エメットが住む「ボロボロシティ」は、街の秩序が崩壊していたが、エメットそのものはそれまでと変わらず“フツー”の日常を過ごしていた。
しかし恐ろしい“クイーン”が街を急襲、エメットの友達のルーシーやバットマンを掠ってしまった! エメットは仲間を助け出すために宇宙へと飛び出していく……。ゲームでは様々なクエストをこなし、女王のいる星を目指していく。「レゴ ムービー2 ザ・ゲーム」では、映画には出てこないたくさんの星や、ゲームならではの凝ったギミック、やりこみ要素が詰まっている。
「レゴ ゲーム」はこれまで様々な映画作品をレゴの手法で再現、様々な状況をレゴならではの「オブジェクトの組み立て」で解決してきた。例えば目の前に燃えさかる炎があって前に進めないとき、目の前の車などのオブジェクトを壊し、消化器に組み立て直すことで炎を消す、というような、レゴならではのユニークな解決方法で難関を突破していくのだ。このゲーム性が多くのファンを獲得し、映画のゲーム化だけでなく、「レゴ ゲーム」オリジナルタイトルも登場している。
「レゴ ムービー2 ザ・ゲーム」は、そんな「レゴでものを作って解決する」というポイントにフォーカスした作品である。ジャンプ台の「バウンサー」やスプリンクラー、オブジェクトを攻撃する「ロボ・サイコロン」など様々なマシンを作り出し、難問を解決する。こういったアクションはストーリーミッションや、NPCが依頼してくるサイドミッション、さらには単純にフィールドを移動したり、隠された収集アイテムを集めるのにも使う。
「何かを作って事態を解決する」というのは「レゴ ゲーム」でずっと貫かれているテーマだが、今までそれは「ポイントを探し出す」ということが多かった。決められた場所で、その場だけのものを作るというものが多かったのだが、「レゴ ムービー2 ザ・ゲーム」では、自分が作れるアイテムを活用してその場に当てはめる形が多くなった。フィールドで決められた答えを探すという感じよりも、「ここならこのアイテムを使うんだな」というより能動的なゲームプレイが取り入れられたのだ。
この感覚はより「レゴを使いこなしている感じ」がする。自分の中での“ひらめき”がゲームを先に進ませる楽しさがあるのだ。もちろんストーリーミッションには「ここではこのアイテムを使うんだ」というヒントも豊富で進み方がわからない、というようなことがないように工夫されているが、アイテム集めなど収集要素はヒントがない場合もあるし、ジャンプ台を使って地形をショートカットできたり、自分の工夫でより効率的にゲームを進める爽快感がある。決められた答えを探すゲームから、自分で答えを探し出すゲームとなっている。これまでの作品からも、一歩前に進んだ作品になっているのだ。
難しさなんていらない! シンプル操作で得られる爽快感
「レゴ ムービー2 ザ・ゲーム」の面白いところはその間口の広さにある。アクションゲームの基本である「タイミング良くジャンプしろ!」をあえて排除しているところからもその濃厚な思想が見て取れる。本作の場合、非常にゆっくりとしたタイミングでジャンプボタンを押すだけで、動く足場や危険な場所の移動ができるのだ。
簡単でゆっくりとしたタイミングは達成感やスリルをスポイルするか? そうではない。身もすくむような高さや、手すりから手すりへ飛び移る緊張感、難関を突破していく感じなど、カメラワークやキャラクターのアクションでわくわく感を増してくれる。実際には簡単な操作だが、スゴイアクションを自分の手で差せてくれる気になるのだ。
こういった簡単操作で派手なアクションを見せる手法は、「レゴ ゲーム」ならずとも、昨今のアクションゲームでも取り入れられているが、プレーヤーに爽快感のある体験をさせてくれるこの演出は、素晴らしい。タイミング良くボタンを押すことで進行する「QTE(クイックタイムイベント)」は、シビアなものやコマンドがとても長いものもあり、ユーザーから批判を浴びるところがある。
「レゴ ムービー2 ザ・ゲーム」の開発者は明確な答えを出している。「そんなにタイミングを厳しくして、それは面白いのかい?」、そう、タイミングをとびきり甘くしても、かっこよくて気持ちいいのだ。
もう1つ、オープンワールド、「レゴ ゲーム」としての非常にはっきりしたゲームデザインも面白いところだ。「レゴ ムービー2 ザ・ゲーム」はストーリーモードそのもののボリュームは大きくはない。ストーリーを進める、というのはそれほど大きい要素ではないのだ。ストーリーをクリアしてもその後も訪れる惑星は増え続けるし、様々なサブクエストが用意されている。
探索要素も山盛りだ。各地にある遺物を集めることでより多くのパーツが集められる。映画のキャラクターやDCヒーローなどの他に、半魚人やショップの店員など様々なキャラクター、乗り物、さらにはオブジェクトが入手できる。
「レゴ ムービー2 ザ・ゲーム」では、建物がほとんど建っていない「ニセボロボロスター」という星がある。本作ではアイテムボックスを空けて手に入るものだけでなく、様々な星でスキャンすることで多彩なオブジェクトを入手できる。これらを使ってニセボロボロスターで様々なオブジェクトを自由に配置することが可能だ。クエストを進めるだけでなく、自分だけのレゴジオラマを作ったり、様々な星を多彩な乗り物で探索するなど、様々な遊び方が可能なのである。
ドキドキできるボス戦、巨大ボスと知恵で戦う楽しさ
「レゴ ムービー2 ザ・ゲーム」では画面に収まりきれないような超巨大なボス戦が待っている。そしてそんなボスと“ひらめき”で戦うのだ。例えば今回紹介するカメレオンは自分の体の色に合わせたオブジェクトを食べてしまう。武器となるフルーツ型オブジェクトを“ペンキ棒”で塗り、カメレオンに食べさせるのだ。
そうするとカメレオンはその長い舌を伸ばしたまま気絶してしまう。エメットはその舌をよじ登り、身体にいるエイリアンを倒すことでダメージを与えていく。この身体をよじ登るシーンも迫力たっぷりだ。簡単な操作、低い難易度で、強力な敵に知恵と勇気で立ち向かっていく楽しさを、しっかり感じることができるのである。
「レゴ ムービー2 ザ・ゲーム」は低年齢層を意識したゲームであるし、その世界観はほのぼのとしていて、ハードなゲームを求めるユーザーには魅力が薄いかもしれない。しかしその遊びごたえや、しっかりした演出、ジャンプの感触や低い難易度など、全てが練られ、しっかりしていることがわかるだろう。
「レゴ ゲーム」が一足飛びにこの完成度にたどり着いたのではない。以前の「レゴ ゲーム」は先に進む道がわからなかったり、何をやるにも「後でまたここに来て下さい」といわれたり、当たり判定やゲームプレイにも練り込みの余地があった。「レゴ ムービー2 ザ・ゲーム」は、ユーザーの声に耳を固めながら完成度を上げていった“職人魂”のようなものを感じるだろう。
ここまでゲーム開発の経験値がしっかり伝わるゲームは少ないのではないかと筆者は思う。そしてその完成度の高さがブランドの信頼を生まれさせ、E3の体験会などで海外のメディアの人気を呼んでいるのだ。本作は子供向けではあるが、子供だましでは決してなく、欧米のゲームの水準、技術力の高さや演出、ユーザーへの心配りなど、様々なポイントを感じることが出来るゲームである。ゲームに一家言ある人、ゲーム開発者や、開発に憧れる人にこそ触って欲しいゲームである。
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