2018年2月1日 12:00
ついに「レゴ マーベル スーパー・ヒーローズ2 ザ・ゲーム」が発売された。本作はこれまでのレゴゲームの集大成である事に加え、“特濃”のマーベル・ゲームである。特定のヒーローや映画原作に留まらない、膨大なマーベル・コミックスのヒーローが山のように登場する作品だ。
日本でもそうだがコミックスは文化と時代を映す鏡だ。その時代の流行や、リバイバルなど様々な要素を貪欲に取り込み、その中でヒーローを活躍させる。本作は多次元宇宙を取り込んだ「クロノポリス」でアメコミが扱ってきたその多様性を再現している。西部劇あり、ギャング映画あり、謎のカンフー的東洋世界に水中帝国……何でもアリアリなのだ。「アメリカの娯楽史」も感じさせられる味わい深い世界を思いっきり楽しめるのである。
前回弊誌では「レゴ マーベル スーパー・ヒーローズ2 ザ・ゲーム」の基本的な魅力を紹介した。そこで今回は、ディープに、しっかりと本作の濃さ、ファンだからこそニヤリとさせられる魅力を語っていきたい。
ブラックボルト、グウェンプール……多彩なマーベルヒーローが続々登場
筆者はアメコミの原本を購入して集めるほどではないが、マーベルヒーローが好きである。映画やフィギュアを通じてヒーローに興味を持ち、「アントマンことハンク・ピムは、マーベルユニバースでの天才科学者であり、イエロー・ジャケットというヴィランになってしまったこともある」、「ハルクとシーハルクは従兄妹」などネットの詳しいでテータベースを通じて、ちょっぴりディープに知識を得ていた。
その筆者にとって、「レゴ マーベル スーパー・ヒーローズ2 ザ・ゲーム」はマーベルヒーローの奥深い世界を見せてくれるとても楽しい作品となった。映画「アントマン」は2代目であるスコット・ラングが主役だが、本作では初代のアントマン・天才科学者のハンクが、アイアンマンであるトニーと一緒に大きな研究を成し遂げるところがある。スパイダーマンのヴィランはコミック風になっていたりと、映画とコミックの要素をうまく混ぜているところが面白い。
デッドプールとグウェン・ステーシー版を組み合わせた「グウェンプール」は存在くらいは知っていたが、今回その奇妙なキャラクターの魅力が大爆発する。本作では彼女は「グウェンプール・ミッション」という独立したミッションを持ち、様々なヒーローをテーマにしたショートシナリオのホスト役を、超ハイテンションで務める。
彼女はデッドプール同様自分がコミックの登場人物であることを自覚しているのだが、本作でも「ねえちょっと見てこの四角い足! おかしな親指! 自分のミニフィギュアになっちゃった!」といきなり“第四の壁(舞台用語で、現実とフィクションの境界)”を超えて話しかけてくるのである。デッドプールを知っている人にとって、「女性版デッドプール」であるグウェンプールのこの演出は、たまらなく楽しい。
ロード画面ではスパイダーマンの“宿敵”ともいえるジェイムソン編集長が状況をわかりやすく整理して話してくれる。映画でもおなじみのマシンガントークに、他のヒーローはある程度認めてるのにスパイダーマンだけはこれでもかとけなすところなど、思わず笑ってしまうノリだ。本作は本当に大小様々なネタでヒーロー達ならではの要素が盛り込まれている。
「レゴ マーベル スーパー・ヒーローズ2 ザ・ゲーム」ではヒーロー達が広大なクロノポリスの様々な地域を巡っていくのだが、スパイダーマンやソー、ドクター・ストレンジといった映画で知名度を上げたキャラクターに、様々なヒーローが絡んでくる。その中でも大きく取り上げられるブラックボルトとメデューサの熱烈なカップルぶりは、原作に興味が惹かれた。
王位を巡る争いや、宿命のライバルとの戦いなど、各ヒーローのバックボーンを説明過多にならないバランスで盛り込んでいるところが楽しいのだ。「このヒーローはどういうコミックスに出てきているんだろう」と興味を惹かれる。そしてそのとっかかりとなる情報もきちんとキャラクターカードに記述されている。ヒーローを集めたくなり、さらに深くヒーローを知りたくなるゲーム性なのである。
デアデビルとキングピンは1920年代のアメリカを思わせる「マンハッタン・ノワール」で戦うのだが、この世界は白黒で描写される。西部劇世界「西部の町」ではトーテムポールそっくりな宇宙人が出てくるし、ヒドラに支配された世界「ヒドラ帝国」は第2次大戦のナチスに占領されたフランスを思わせる。ピラミッドの建ち並ぶ「エジプト」ではミイラとピラミッドのトラップである。スパイダーマンの悪役が邪悪に進化している未来世界もある。様々なアイディアを盛り込み、多くの作家がヒーロー達を使って様々な世界を描くアメコミ世界の自在な方向性を実感できるところも、大きな魅力だ。
「レゴ マーベル スーパー・ヒーローズ2 ザ・ゲーム」では日本語吹き替えの凄さもきちんと言及しておきたい。本作は200を超えるヒーローのセリフや、街中の会話、ミッション、サブミッションの会話……様々な音声が全て日本語で吹き替えられている。特に本作におけるボスである征服者カーンの「市民への放送」は威圧的な声なのにダジャレが入っていたり、弱気な本音を出してしまったりと、声優の見事な演技力がとても出ていて楽しい。
とにかくセリフが膨大なため、声優は“兼ね役”でこなしていると思うが、個性豊かなヒーローや、悪ぶっているヴィラン、ぶっちゃけ気味の市民の声など熱演が光る。この賑やかなゲームを日本語で楽しめるのは、本作の大きな魅力だ。
引き込まれるメインミッションに、盛りだくさんなサブミッション
ゲームの感触の良さも強調しておこう。膨大なメインミッションの他に様々なサブミッションもある、メインミッションがサブミッションのチュートリアルになっている部分もあり、本作はまずメインミッションを進めてから膨大なサブミッションに挑むのが良いだろう。
メインのミッションはかなり引き込まれる。ヒーローは世界を改変しようとするカーンに対抗するため、各地にある「ネクサスの破片」を探さなくてはならなくなるが、カーンに反感を持っているもの、その地域を支配するためにカーンの力を借りるヴィラン達との戦いなどで大混乱だ。ヒーロー達はそれらの地域へ向かいトラブルに介入することになる。
ここでヒーロー達のバックストーリーも描かれる。ワカンダの国王であるブラックパンサーが抱えているトラブルや、ブラックボルトのバックストーリーなど「カーンに対抗する物語」を軸に様々なヒーロー達のドラマが繰り広げられ、重層的に物語が描かれる。しかもかなりのボリュームなため、やめ時がわからなくなるくらいのめり込める。1つのミッションが終わっても「次はこのヒーローが出てくるのか!」、「この状況の裏で、こんなことが!」という感じでドンドン引き込まれていく。
サブミッションはオープンワールド上で受けることができる。広大なクロノポリスを自由気ままに飛ぶにはアイアンマンやソーなど飛行能力を持つヒーローか、乗り物を呼び出して移動する。火山地帯や大都会、異世界の都などめまぐるしく変わる風景が楽しい。「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」に出てくるクリー帝国は空中に立像が建っていてドラマを感じさせる。アスガルドには映画で強い印象を残した虹の橋と観測所もある。こういった名所を巡るだけでも楽しいだろう。
そして各地域では依頼をしてくるNPCやパズルなどがある。収集要素で面白いのが「ネコ」だ。各地に「Mr.ティドルズ」という黒猫がいて、近くに行くとニャーニャー声がするのだ。他にも「絶景ポイント」や像の上に銀色のシルクハットが被さっていたり、細かく探索するのが楽しい。
各地域では様々なヒーローの依頼を受けることもある。彼らの依頼をこなすとプレイアブルキャラクターとしてアンロックされる。さらにはレースなどもあり、本当に盛りだくさんだ。これらのザブミッションをクリアするには様々なヒーローの力が必要となるので、まずはストーリーミッションを進めていくのがいいだろう。サブミッションは本当に多彩なヒーローの力を借りることになる。
快適な操作性の「レゴ マーベル スーパー・ヒーローズ2 ザ・ゲーム」だが、自由度の高いゲーム性のためか、細かい操作性に関して、足場や当たり判定などでちょっと思い通りにならなかったり、敵が多すぎてパズルを進めるのに戸惑ってしまったり、レースで他の車が邪魔になる場合などもあった。しかし、ある程度の大味さも本作の雰囲気に合っていると思う、ガチガチの攻略よりも、カジュアルに楽しむタイプの作品である。
TT Games、レゴゲームだからこそ実現できたマーベル世界
「レゴ マーベル スーパー・ヒーローズ2 ザ・ゲーム」で、筆者は前回と合わせ、基本的なゲーム要素、レゴゲームならではの面白さ、本作だからこそ実現できるヒーローの共演とその面白さを語ってきた。ここで今一度、「レゴゲーム」におけるTT Gamesの成長をピックアップしたい。
TT Gamesは様々なレゴゲーム制作を通じて着実に進化している。今作はオリジナルだが、レゴゲームは様々な映画とのタイアップも行なっている。映画公開とほぼ同時期に映画モチーフのゲームを出せるというのはかなりスゴイことである。映画は封切りされるまでディテールは確定しないが、ゲームで同じ場面を実現するという、そのスケジュール管理は困難を極めるだろう。「スター・ウォーズ」関連でも感じたのだが、アメリカの映画タイアップゲームはノウハウがかなり蓄積されていると感じる。
「レゴ マーベル スーパー・ヒーローズ2 ザ・ゲーム」はオリジナルストーリーであるが、公開されたばかりの「マイティ・ソー バトルロイヤル」の要素や、今度公開される「ブラックパンサー」の要素もきちんと盛り込まれている。キャプテン・マーベルが主要キャラクターとなっているのも、今後の映画化を見越してのことだろう。
多数のヒーローの共演、そして練られたシナリオ作りなど、本作に限らず、TT Gamesは他の業界スタッフとの協力体制がきちんとできているのだろう。本作では映画で語られない要素や、ゲームならではのヒーローの配置、各キャラクターの説得力のある言動や、描かれるバックボーンで、マーベル側のキャラクターへのこだわりをきちんと汲み取っているのが感じられた。マーベル・ユニバースという巨大なキャラクター群が参加している一大世界の壮大さを確かに感じさせる本作は、様々な人の興味をかき立てると思う。
そしてクロノポリスにおける、「多数の世界が入り交じる」というのは、DCヒーローや「ロード・オブ・ザ・リング」、レゴの様々なモチーフが集まる「LEGO ムービー」のゲーム化でノウハウを持っているのだと思う。「レゴ ワールド」で様々な世界を表現したフィールド作りのテクニックも関係しているだろう。様々な映画やレゴ世界をゲーム化しているTT Gamesにとって、クロノポリスやその世界のヒーロー達のドラマは「得意分野」だったのではないか。
演出やアクション、謎解きもかなり進化している。正直、数年前のレゴゲームはゲーム性が大味で、謎解きが独りよがりなところがあった。そういった点はかなり改善されている。正直なところもう少しだけヒントを出して欲しいとも感じたが、うるさくなってはいけないしこのバランスは微妙な部分だろう。またカメラアングルが変わる演出や、巨大ボスなどこれまでのノウハウを活かしてこれまで以上に盛りだくさんになっており、こちらも注目である。多くの人に「ぜひ遊んでみて欲しい」と薦められるゲームになっているのだ。
それでもやはり、「レゴ マーベル スーパー・ヒーローズ2 ザ・ゲーム」はマーベルヒーローに興味のある人にまず遊んで欲しい。マーベル・ユニバースの奥深さをぜひ感じて欲しいのだ。たくさんのヒーローがちょい役ではなく、きちんとバックボーンも感じさせられるバランスで配置されている、この重厚な世界を実感して欲しい。そして、世界を自由にたっぷり体験できるレゴゲームの楽しさにも触れて欲しい。家族で、友達とで本作を楽しんで欲しい。
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